他称改造人間になった俺

チョーカー

長いエピローグ3

 「そりゃ、敵対してるお前らにとって、俺達は悪の秘密結社なんだろう」
 そう言い、男はゆっくりと立ち上がった。
 男。そう称するより青年と呼んだほうがしっくりする年齢だろう。
 端麗な顔立ちではないが、だからといって醜い不細工でもない。
 どこにでもいそうな平凡な容姿だが、今までの振る舞いが異端の存在だと証明している。
 「でも、俺達は悪の秘密結社なんてものでもない。本来だったら人体実験だって被験者に詳しい説明と許可を取ったうえで・・・。まぁ、法に反してるのは事実だけどな」
 そう、言いながら俺に笑顔を見せてる。 コイツは何なんだ? コイツの言ってる事は何なんだ?
 俺は自ら人体実験を志願したと言ってるのか?
 俺の考えを察したのか、男は言葉を続ける。
 「君の疑問はわかるよ。単純は話さ。 被験者を集めるのに下請けの組織に依頼してるんだが、そこが悪質で確実に人を集める方法に手を出しちゃったのさ。
 要するに・・・
 俺達が悪いわけじゃない」
 寒気がした。何かうまく言えないが、異常差を感じる。なんでこいつはこんな話を笑顔を崩さず続けられるんだ。
 「安心してよ。君を拐った連中はきっちり処理したよ。そもそも、俺ら組織に対しての裏切り行為だからね」

 「言いたい事はそれだけか?」

 最初に動いたのは三宅桜花ではなく、野見耕太郎でもなく、まして俺でもなかった。
 柳沢みゆき 誰よりもこの闖入者に飲まれることなく動いていた。
 彼女は、男の背後に周り、頭部に銃をつきつけている。
 「動くと撃つよ。まぁ動かなくても撃つけど」
 言うが速し、彼女はトリガーを引いた。
 予想以上の轟音が部屋に響く。間違いなく弾丸は発射されたはずだが、男は無傷だった。
 「ゼロ距離でも避けるか、化け物め」
 避けた。 一瞬、それが弾丸を避けたという意味だと気がつかなかった。
 俺はさっき、こんな奴に襲いかかろうとしていたのか。
 いつの間にか、桜花とグラサンもみゆきの加勢に入り、周りに弾丸が飛び交っている。
 目の前に戦いは現実離れしており、現実感がない。
 そんな状況で俺は、立ちすくむことしかできなかった。

 ただ、『ここは俺の居場所じゃないんだなぁ・・・』

 なんとなく、そんなことをぼんやりと考えていた。

 
 

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