東方魔人黙示録
《俺は勉強がやりたくない》
地霊殿のある一室に連れて来られた俺とパルスィは桜先生による授業を受けさせられています。
イラとリティアはいません。リティアは看病。イラは療養です。ちなみに破月さんもイラの看病をしてくれるそうだ。起きたら今日の修行について話すことがあるらしいよ。なんか照れ臭そうにしてたが気にしないでおこう。
そんなわけで俺ら二人だけしかいないが桜先生の授業が始まります。
「それじゃあ早速始めるわよ」
「せんせ〜まず何をするんですか〜?」
気分が乗っているのかパルスィが手を挙げて質問をした。それについて、桜先生がにこやかに答える。
「最初は魔力について教えるわよ」
その答えに俺は言った。
「せんせ〜受けたくないで〜す」
「その要望には先生答えないわよ」
「え〜...めんどくさ〜い...」
「全く...パルスィ」
「勉強してるアルマが見たいな〜」
「さぁ早く授業をやろう!!」
俺の切り替えの早さに呆れたのか桜先生が小さくため息をすると何処にしまっていたのか、大きな黒板を出現させた。
そこに桜先生が簡易的な人型の絵を二つ書き、それを指差し棒で指しながら喋り始めた。
「まず最初に人間と悪魔が持つ魔力の違いについて教えるわよ。右が人間。左は悪魔と考えてね」
「せんせ〜どっちも同じですけど〜?」
「ふん!」
俺の嫌味ったらしい質問に桜先生がチョークを投げてきた。仕方ないのでコメディらしくおでこに当てようかと思ったのだが、パルスィがそれを受け止めてしまった。もう! ボケ殺し!
「アルマに何するの...?」
「え...いや...その...」
「は〜い。パルスィ落ち着こうね〜」
「はぁい」
助かったように胸を撫で下ろし桜先生は授業を続ける。
「まず最初は人間の魔力について。そもそも人間には素質や体質がないと魔力を操作、況してや保持ができない。それは何故でしょうか。はいアルマ君答えて」
あ、俺に当てるの? めんどくさ。
「はぁぁ...魔力ってのはそもそも魔の力。即ち人が持っているはずのない不思議な力だから」
「あら意外。ちゃんと答えれるのね」
「伊達に魔王やってるわけじゃありませ〜ん」
「じゃあ次よ。素質や体質のない人間がどうやって魔力を保持、操作ができるようになるでしょうか」
その問題にはパルスィが元気に手を上げた。
「はぁい! 少しずつ耐性を付けて慣らしていく!」
「正解! 魔法使いは何も素質があるからなれる訳じゃないわ。努力をして魔法使いになれる人間もいるのよ」
例を挙げるとしたら魔理沙かな。
あの子は元々普通の人間だ。魔法に関しては能力やミニ八卦炉などの魔法具を使っている部分もある。
故に彼女には魔力に対して耐性がない。そのため、魔法の森に群生している魔力が含まれたキノコを使って彼女は少しずつ魔力に耐性を付けている。そのキノコは魔法の森という名前の所以とするものでもある。
そのキノコの胞子は少量はどうってことないのだが浴び続ければ人体に多大な被害を与える。それこそ魔力に耐性のない者には毒と変わらない。アリスは素質があるため普通に住めるのはその為だ。というかあいつ人間じゃないし。
まあ、人間の体は不思議なもので毒などの体に害あるものには抗体が作られる。それと同じで魔力の抗体が生まれて初めて魔力に耐性ができる。その前に死ぬこともあるから賭けと同じだがな。
「人間は魔力に耐性がない分。自由に魔力の色が選べるのが利点ね」
「色?」
初めて聞く単語のようでパルスィは首を傾げた。その疑問には俺が答えよう。
「簡単に説明すると赤、青、黄などの色別に使える魔法があるってことさ。例えば赤だったら炎系だ」
「へぇ〜魔力によっても使える魔法が違うのね」
「そうゆうこと。その逆で悪魔は色を選べない」
「え? どうして?」
「最初から色が決まってるからよ。その代わり人間よりも上手く魔法を扱えるわ」
人間は全ての魔法属性を平均的に使える魔法使いと例えるなら、悪魔は一つの魔法属性を極める魔法使いってところだ。
「そうなんだ。じゃあアルマは?」
「ん?」
「だってアルマは半人半魔でしょ?」
「それを詳しく教えれるように人間と悪魔の違いを教えたのよ。こいつは特殊すぎるから。色んな意味で」
「バカにしてます?」
「してないわよ。たぶん」
今たぶんって言ったよね。言ったよね?
まあ、特殊なのは認めますよ。自分が嫌なくらいよく理解してますし。
「それでアルマはどうなの?」
「簡単なことよ。人間みたいに全ての魔法を使え、尚且つ悪魔と同じぐらい魔法を極められるのよアルマは」
「いいとこ取り?」
「まあそうゆうこと。ただ、その特殊な魔力の所為で操作が下手くそのようね」
「悪かったな下手くそで」
俺だってな。好きで下手くそになってる訳じゃないんだよ。ただなんか上手く使えんだけだ。
「それで。この俺の特殊な魔力をどう制御すればいいんだ?」
「制御も何もあなたが使ってる異法を真似ればいいじゃない」
「......はい?」
「異法も異質だけど魔力を使うんでしょ? ならその要領でーーーーーー」
「勘違いしてるようだが俺は制御なんか一度もできてないぞ」
桜が話している途中だが俺は勘違いしているだろう彼女にそう言った。すると、案の定驚いた様子。というか信じられないと言った感じ。まあだろうね。
「う、嘘でしょ!? 魔力を制御できてないなら異法を使う時どうしてるのよ!」
「出せるだけの魔力を全部使ってる」
「おかしいでしょう!!」
「えーっと...魔力を制御できない状態で魔法を使うとどうなるの?」
パルスィが不思議そうな表情をして聞いてきた。それに対し桜は冷静さを取り戻して疑問に答えた。
「例え話だけど。ここに小さな瓶と水がいっぱい入った壺があると考えてね。それで壺の水を瓶の容量以上の水を入れるとどうなるかしら?」
「瓶に入り切れなくて溢れる。あ...」
「そうゆうことよ。アルマは壺で異法が瓶よ。必要以上の魔力を注ぐと異法は確かに発動はする。けれど、必要ない分の魔力は無駄に消費されてしまう。それを続ければ魔力は枯渇して倒れてもおかしくはないのだけど...」
何その化け物を見るような目。俺はいたって普通の魔王だよ。
確かに魔力を幾ら使っても減ることはないけどさ。うん。魔王だから仕方ないってことで!! と許されるわけないか。桜がめっちゃこっちを睨んでる。
納得行くまでずっと睨まれるなこれ。はぁぁ...仕方ない。
「俺の魔力は暴食の所為でほぼ無尽蔵なんだよ」
もう一度説明するが俺の中には感情が具現化した怪物共がいる。その内の一匹である《紫色の目をした食欲の怪物》別名、暴食の化身。
身体中の至る所に口を作り出し、無機物だろうと有機物だろうと食べてしまう。食べた物は全て魔力に変換され、俺の中にストックされる。
さらには暴食に限界はない。そのため食べれば食べるほどに魔力は回復する。つまり、ほぼ無限だ。
そのおかげで俺の魔力はそう簡単に尽きることはない。尽きたところで暴食を使えばそこらのもので魔力を回復できるし。ある意味チートかな。
「そんな訳で魔力が枯渇することはない」
「つくづく思うけど。あなたも大概チートよね」
「否定はできない」
怪物のおかげとは言え元は俺の能力から生まれたようなもの。暴食の能力だって俺が能力を使えば発動できるものだし、うん。チートかな?
いや、それ以上にチートな奴らいるし俺は可愛い方だ! 俺は至って普通。うん普通。
「魔力がほぼ無限なのはわかったわ。ただ今後、その暴食の力が使えない状況になった時のためにも魔力の制御ができるようにならないとダメね」
「ですよね〜」
「という事で...構えなさい」
「...はぁぁ!?」
「あなたはどちらかというと実戦向きでしょ? ならこっちの方が効率的よ」
待て待て。思ってた授業と違う。
例えるなら動きたくない時に突拍子も無く体育の授業を受けさせられてる感じだ。
いやマジでやりたくないんですが。
「因みに能力の使用は無し。使って良いのは魔法、又は異法だけよ。じゃなきゃ意味無いから」
「マジかよ...はぁぁ...暴食...出ろ...」
指を鳴らし俺の中にいる暴食の怪物を呼び出した。俺の周囲に紫色の霧が発生。それと共に現れたのは霧と同じ紫色の長い髪。真っ白いワンピースを着た小柄な少女。こいつが暴食の怪物 《紫色の目をした食欲の怪物》。どう見ても14歳そこらの少女だが、怪物の中でも1、2を争う強さの怪物だ。
「どうしたのマスター?」
「悪いがお前無しで戦えと言われたんでね。ちょっと出ててくれ」
「えぇ! 私マスターと一緒に居たい!!」
「ダメだ」
「やぁだぁやぁだぁ!!」
「後でパルスィの料理好きなだけ食べさせてやるから」
「ほんと!?」
チラッと暴食がパルスィの方に視線を向けるとOKのサインを暴食に向けた。それを見て嬉しさからかピョンピョンとその場を跳ねていた。
「悪いなパルスィ」
「そのぐらいなら大丈夫よ。暴食、こっち来て大人しくしてなさい」
「はぁい!」
嬉しそうにパルスィの元に行くと膝枕させて貰っていた。羨ましい...
「余所見しない!」
「あだっ!?」
羨ましがっていたら桜に叩かれた。
「全く...それであれが怪物?」
「イッテェ...ったく...ああ、そうだ。今、俺の中には暴食の力はない。つまり魔力は無尽蔵では無くなった。これで良いんだろ?」
「ええ、さぁ実習を始めましょうか!」
さてさて、実習が始まるが俺は勝てるかな? 
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