東方魔人黙示録
《子は親に似る》
はいCM終わり! 続きどうぞ!
「あなたさっきから何を一人でブツブツ言ってるの?」
「アルマは今、第四の壁を越えてるだけだから気にしないで」
「第四の壁って何よ」
「気にしたら負け」
さぁてさて、妖魔状態になったイラは意識がはっきりしているようで心配する必要はないようだ。破月さんの言う通り、子供の事を心配するだけでなく信用してあげないとな。
しかし、いつの間にあの子は妖魔状態を制御できるようになったのか。破月さんとよく手合わせしてたからか?
俺が首を傾げているとリティアが心を読んでいるかのように答えた。
「イラは自分の中の何かを受け入れて制御できるようになったみたいだよ」
「何かって...ああ、怪物か」
「怪物ってなんのこと?」
「桜も何度か見たことあると思うが俺とパルスィの中には感情の怪物がいる。そいつらがイラの中にも存在してたようだ」
俺達の子供だ。いてもおかしくない。
そもそも感情の怪物は副産物のような存在だ。強い感情は時に身を滅ぼすと言うだろ? あれは言葉の綾ではない。強い感情は形を伴って怪物となり主を殺す。
本来、感情と言うのは本人の一部でもあり時には精神的なショックから身を守るためにあるものだ。それが形となった怪物達は主を守る存在なんだが......それは主人が怪物を受け入れた場合だ。
主に否定された怪物は暴走し、主の精神を喰らいやがて消滅する。
まあ、例えるとお前俺じゃない! と言われた影っぽい何かさんが暴走して襲いかかってくるイメージ。え? その例えは何だって? どこかの仮面をラテン語で叫んでる方々のお話です。
「その例えはどうかと思う」
「じゃあ、パルスィが考えてよ」
「無理」
「おい」
そんなバカな事を話していると爆音が鳴った。原因はイラが持っていた大剣を破月さんに向けて振り下ろしたから。
彼女は持ち前の強固な肉体を生かし片手で刀身を受け止めるが、それと同時に深紅の剣は刀身を光らせ爆発を起こした。
憤怒の象徴とも言える深紅の剣は触れたもの斬り裂いたものすべてを爆散させる。正直怖い。
だが、至近距離で食らったというのにも関わらず破月さんは平然と立っていた。しかし、多少ダメージはあったようで受け止めた手を汚れを払うように動かしていた。
「はっはっは! 効くねぇ!」
「片手で止めといて、しかもあの爆破を直で食らってもその程度で済むとか...ちょっと落ち込むよ...」
「落ち込んでる暇なんかないよ!!」
その言葉の通り、破月さんはイラに急接近すると拳を何発も振るい落ち込む暇を与えずイラを追い詰めていた。
一発一発が重傷に至る破壊力。その拳が何発もしかも常人では到底目で追えないような速度で襲い掛かってくるのだ。しかし、イラはギリギリとは言え、それを上手く流していた。
伊達に長年修業をしてもらってはいないというところか。だが、それでもレベル差が縮まるわけではない。
「どうした? 躱すだけで攻撃しないと勝てないよ!!」
破月さんの挑発にも反応せずイラは彼女の攻撃を躱し続けている。
何か策があるのか。それとも躱すことで精一杯なのか。見てるだけの俺たちではわからない。だが、あの子の闘争心はまだ沸々と湧き上がっている。たぶんだが何かを狙ってる。
一発逆転の一撃か、それともキューソネコカミの一撃か。しかし、俺は何か面白いことをしてくれると信じてる。なぜなら、あの子は俺の子だからな。
「このまま続けても面白くないな...もう終わらせようか」
そう言って破月さんが攻撃の手を止めた。その時だ。イラが不気味にほほ笑んだ。
彼女は油断していたのだろう。さっきまで一切攻撃を仕掛けようとしてこなかったのだ。終わらせようと思った一瞬の油断。それがあの子に狙われた。
イラは彼女の懐に入り込むと赤く輝く拳を溝に殴り込んだ。
「嫉怒 憤罪の爆心地!」
イラが殴った場所から赤いラインが破月さんの全身に広がっていく。緑の文字が書かれたラインが全身に刻まれると赤と緑の閃光を放ち爆発した。しかし爆風などはなく、まるで破月さんの中で爆発が閉じ込めらているようだった。
謎の爆発を受けた破月さんは膝をつき血を吐いた。どうやらさすがの彼女も内臓的な爆発は耐えられなかったようだ。しかし、我が子ながら恐ろしいことをするもんだ。発想は面白かったがな!!
「どうだ!」
「や、やるねぇ...一瞬の油断でここまで追い込まれるとは...だが...」
ガッツポーズをとって大いに喜んでいたイラの後ろに破月さんは一瞬にして回り込むと首の後ろを手刀でトンッ! とたたいた。
うん。イラも完全に油断していたようで意識を失った。
「相手にとどめを刺すまで油断したらダメだって何度も言ったろ? ってもう意識はないか」
「破月さんも優しいねぇ」
「何がだい?」
「あなたならあの攻撃耐えれたでしょう?」
内臓的な攻撃で血を吐いていたが多分この人膝をつかなずに耐えれたと思うよ。だって前に戦った時、俺の多段爆発を立ったまま受けきった女だよ? 耐えれるにきまってる。
「まあ、そうだけどさ。少しぐらいは自信持ってもらわないとイラはあんたみたいに自分を過小評価するところがあるからね」
「俺は事実強くないぞ。過小評価ではない」
「あなたはもう少し自分が強いことを自覚したら?」
そういうけど桜さん? 俺実際君より弱いよ? 戦ったら確実に勝てんよ? 勝算なんてゼロに等しいから。
「はぁ...そうゆう性格してるからイラもああなったんじゃないの?」
「それは否めなん」
「なら親としてもっと威厳を持った行動をしてくれないかしら?」
「えぇぇ...これでも取ってるよ?」
「オレから見てもあんた威厳ゼロだよ」
破月さんまでそんなこと言うの? くそ! やっぱり俺の味方はパルスィだけだ!!
「うん。私からもお願いだからもうちょっと威厳をもって」
「まさかの裏切りだよちくしょう!!!」
わかってたさ! コメディの展開だとここで裏切りが来ることぐらい知ってたよ!!
だけど悲しいものは悲しいんだよ!! ああもういいや。それよりも気になることがひとつあるしな。
「結局のところイラへのご褒美ってなんだったん?」
「ん? ああそのことかい。簡単だよ。オレを嫁にするってことだよ」
「はぁぁ!?」
「え、えーっと...つまり結婚?」
「になるね」
な、なんか大胆というか。なんというか。イラはてっきり破月さんのことをもう一人の姉として見ているかと思っていたが。まあイラもいい年だし、別に子供の恋愛沙汰に文句は付けないよ。しかし、他の作者様のキャラクター様に恋をするってどうよ? この世界の管理者の管轄外のキャラクター様だよ?
況してや結婚て大丈夫なん?
「まあオレに勝てたらの話さ」
「お、おう...そうか...」
イラの子供を見れる日は当分こないなとしみじみ思う俺ちゃんです。
△▼△
そんなこんなでイラを連れて地霊殿に戻り、治療を済ませて起きるのを待ってます。
そんな中、桜がジッと俺を見ていった。
「変なところまで親に似てるわね」
「なんだよ。馬鹿にしてるのか」
「別に。それよりもイラも強くなったわ」
「それはそうよ。私たちの子だもの」
そう言って胸を張りどや顔を見せるパルスィに桜は苦笑いをする。俺はかわいいから頭をなでつつ桜に聞いた。
「で? 実際のところお前は何しに来たの?」
「疑ってるようだけど本当にイラとリティアの成長を見に来ただけよ」
「ふぅん...ならいいが」
「まあ、ついでだし久々の授業でもしようかしら」
「ああ、いいんじゃないか。この子らも喜ぶよ」
「...他人事みたいに言ってるけどあなたにも授業を受けさせるわよ?」
「はぁぁ!?」
なんで!? 俺にこれ以上何を学べと言うんだ!?
強くなるとしたらお断りだぞ。俺はパルスィを守れればそれでいいんだ。異世界の奴らとやり合う力なんていらねぇ!
「てか、マジで俺に何を学べと?」
「あなた魔力の操作苦手でしょ?」
「ギクッ...!」
「この際だからうまく操作できるようにしてあげる」
「嫌だ! これ以上強くなりたくない!!」
「ワガママ言ってないで行くわよ」
「嫌だぁぁぁぁ!!」
半ば無理矢理引き摺られ授業を受けることとなった俺でした。
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