東方魔人黙示録
そんなこんなで
人生最大の告白戦争を終えた俺はパルスィと共に地霊殿へと戻った。のだが...地霊殿に戻ってみれば、よくわからない状況に陥っていた。
まあ...簡単に言うとさとり様がリグルと幽香、そして映姫の3人に取り押さえられていた。いや、マジで何をしてるの君たち。
なんとも言えない感情を抱いていると幽香がこちらに気づき、優しい笑顔となった。
「おかえりなさい」
「た、ただいま。それで何してんの?」
「地霊殿の主があなた方の邪魔をしないように取り押さえていたんですよ」
どこか自慢げな表情をする映姫。
「邪魔というと...心を覗かないようにか?」
「そうです。にしても骨が折れましたよ...」
「僕たち3人で押さえ込むのが精一杯だったっすよ......」
疲れ切った表情のリグルはため息をする。
なんか知らないところで頑張ってくれたんだな。
「なんかありがとう」
「いいっすよ。それじゃあ僕らは戻るっす」
「もう行くの?ゆっくりしていきなさいよ」
「たまには邪魔されずに二人っきりを楽しみなさい。いっつも邪魔されるんだから」
よくわかってらっしゃる。ただ言わせてください。大半は君らが元凶だからね?そこ理解してて言ってます?
「さて、行きますか」
「あのぉ〜...なぜ私は縄で括り付けられてるのでしょう?」
そういえばさとり様ずっと拘束されてるけど、どうする気なの?気のせいか幽香の顔が黒い笑みへと変貌していってるんですが。絶対にロクデモナイこと考えてるな。
「もちろん邪魔させないためよ?ほら地上に逝きましょう」
「嫌です!!絶対嫌です!!」
「拒否権はない。ほらリグル行くわよ」
「は〜い」
上機嫌にさとり様を引き摺っていく幽香と同情するように彼女を見つめるリグル。あいつドが付くほどのSだからなぁ......あの人生きて帰ってこれるか?まあ大丈夫か。さとり様だし。
映姫もそそくさと帰って行った。なぜか強欲を片手に担いで。
「......って!まてぇい!!何平然と強欲を連れてこうとしてんだ!?」
「この子との勝負に勝ちましたので今日一日は好きにさせてもらう条件を会得しました」
「主〜...!助けてぇ〜!」
「それではまた」
映姫も映姫で上機嫌に帰って行った。
その後、さとり様と強欲の叫び声が数分続いたのは言うまでもない。
さてと、変に気を使ってもらったが何をするわけでもない。ダラダラと過ごそうかな。
「またダラけようとしてるでしょ」
「ダメか?」
「たまには動きなさいよ」
動けと申されましても...手っ取り早い運動といえばあれだよなぁ...
「じゃあ......運動相手なってくれよ」
「いいわよ。私もたまには動きたいし」
「なら...やるか」
二人は後ろに飛び距離を取った。
「久々に本気でやろうぜ?」
「途中で飽きないでしょうね?」
「さぁな...先手必勝!感情 アルマーニイレイザー!!」
右手を前に突き出し、パルスィに向けると青い魔力のレーザーを放った。青いスパークを撒き散らしながら進むそれはまるでレールガン。
対するパルスィはただ緑色のバスケットボール大の弾幕を撃つ。だが、彼女の弾幕は一発一発の威力が桁外れに高い。
アルマのレーザーとぶつかると青と緑の火花を散らし、爆ぜた。相殺され少々驚くアルマに間髪入れずまた弾幕を放つ。今度は一発だけでなく、その数は数十発ほど。
「撃ちすぎだってーの!感情爆破!憤怒!」
自信の魔力を一点に集中し、大爆発を起こした。その威力は迫り来る弾幕をすべて巻き込む。爆風によって起こった粉塵によって視界が悪くなった。パルスィは警戒をする。
不意に右の端で何かが動いた。爆煙を割きながら大鎌の刃が迫っていた。パルスィは寸でのところをしゃがみ込む。
「危ないわね...」
「視界が悪い中、よく躱せるな....」
「煙に少しぐらい動きがあれば気付くわよ」
「なるほどね〜...んならこれはどうだ?道先 滅亡への最短距離」
光速でパルスィの目の前に移動し、零距離で指を鳴らした。
パチン!という音と共に閃光を放った。零距離からの目眩しにはパルスィも目を瞑る余裕はなく、もろに光を見てしまった。
「うっ!目が...!」
「ギヒヒ!感情 怒りと憎しみの輪廻!」
赤い武器型の弾幕と黒い武器型の弾幕がパルスィを囲うように配置される。その数、ざっと数千本。
狂気の笑みを浮かべて指を鳴らした。音が合図となり、一斉に弾幕がパルスィに襲いかかった。未だに目が眩んでいる彼女に容赦なく弾幕が襲いかかる。
だが、不利な状況の中であるはずのパルスィはニヤッと笑った。
「感情爆破...嫉妬!」
バリバリと緑色の雷のようなものがパルスィの体から放出。徐々に雷の放出量は上がり、チャージされているようだった。迫り来る弾幕がもうすぐそこまで迫るとパルスィは両手を広げ、自分の中にある嫉妬という名の雷を放出した。
溜まりに溜まった雷はアルマの弾幕をすべて相殺した。
「はぁぁ!?」
「何を驚いているの?私に使い方を教えたのはあなたよ?」
「でも...お前使わないって言ってなかったか!?」
「こうでもしないと面白くないじゃない。嫉妬 ジェラシーボンバー!!」
ハート型の弾幕を撃ち、アルマに接近した瞬間爆発した。
「あっぶねえな!」
「まだまだ行くわよ?」
休みを与えることなくパルスィのジェラシーボンバーはアルマに襲いかかった。
「なら...感情解放!憤怒!!」
アルマの八つの枢要罪である憤怒を解放。赤い炎がツノから噴出。攻撃力がアップし、爆破能力が追加される。
「憤怒 想いの波動!」
地面を思い切り殴り、地面を水面の波紋のように畝らせる。ただ、畝るだけでなく憤怒の能力により畝ったところから爆発する。まるで爆発が広がって進んでいるようだ。
それを見て焦るパルスィだったが、小さく笑い右目を抑え込む。
「ふふふ....!!感情解放...嫉妬...!」
パルスィの力の源である嫉妬を解放。全能力が上昇、さらに周りの生き物が嫉妬すればする程能力はさらにアップする。
「マジかよ...?」
「頑張って覚えたの。あなたに近づきたくて」
「......ギヒッ!嬉しいな。だが、まだ慣れてないと見える」
「ええそうよ。持って数秒の強化能力。だからこれで決めてあげる」
パルスィは右手を構え、彼女の中にある嫉妬が集まっていく。どうやらこの攻撃で終わらせるようだ。それに応えるようにアルマも自身の感情全てを左手に込める。
「嫉妬の極 怨み恨み!」
「枢要罪 全ては無へ!」
二人の声が重なると共に攻撃が放たれた。
緑色のレーザーが空間を破りながらアルマに迫る。
言葉にできない色に染まったレーザーがスパークを撒き散らし、パルスィに迫る。
二つのレーザーが激突すると大気が一瞬揺れた。
そして、相殺した。
二人はバタンと倒れると疲弊しきっているようで息は荒かった。
「これって......どっちの勝ちだ?」
「さぁ...どっちかしら...」
「......ギヒヒ初めての引き分けだな」
「ふふ...そうね。引き分けね...」
二人はそう言って笑った。何処か清々しい笑い声であった。
数秒して、笑い疲れたのかアルマは立ち上がりパルスィの隣に座った。彼女も起き上がろうとしているが慣れない感情解放を使った反動か体に力が入らないようだ。
「大丈夫か?」
「...大丈夫に見える?あなたよくこんな疲れるものをホイホイ使えるわね」
「別にホイホイ使ってないだろ。というか俺も最初はそんなもんだったぞ?」
「ふぅん...まあいいわ。今回はこの様だけど次はこうならないわよ」
パルスィは楽しそうに笑い、ゆっくりと起き上がった。
「もういいのか?」
「正直、起き上がるので精一杯......おんぶ」
「へ?」
「お・ん・ぶ!!」
「はいはい。わかったよ」
パルスィに背中を向けるとゆっくりと彼女は体を預けた。嬉しそうに俺の背中に頭をこすりつけた。
すいません。くすぐったいのでやめていただきます?
「ほら!早く帰る!」
「背負われてるくせに態度デカイな〜」
「背負われてるんじゃない。背負わせてあげてるの」
「なんじゃそりゃ...」
背中にべったりとくっつくパルスィに小さく溜息が出たが、悪くもないと思えた。
このまま、ずっと二人でいれるかな。いや、何があっても俺たちはもう二度と離れない。ただまあ...心配なことはあるけどな...
十年後...俺はどうなるのだろうか。魔王の集会......穏便に済めばいいが......
一人、悩んでいるとゴン!という音と共に背中に鈍い痛みが走った。まるで鈍器で殴られた気分...どうやらパルスィが頭突きをしたようだ。
「な、何すんだよ!?」
「何をそんなに悩んでるか知らないけど。あなたらしくないわよ?行き当たりバッタリがあなた。悩まないであなたの思い通りに動けばいいじゃない」
「......はぁぁ...そうだな。確かに俺らしくないな」
「そうよ。だから早く帰りましょ!」
「何をそんな急いでんの...?」
「べ、別に...!」
なんで顔赤くしてんだか...
行き当たりバッタリ...か。そうだよなぁ...そんな悩むことじゃないよな。何かあったらその時に考えればいいじゃん。めんどくさいし?
「帰ろうか」
「うん!」
それに何があろうと俺はパルスィが居てくれれば大丈夫だ。
例え...どんな結末を迎えることになろうとも...
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