東方魔人黙示録

怠惰のあるま

告白戦争:終幕...そしてーーーー

パルスィが行きたいという無縁塚まで訪れた。相も変わらず寂しい場所だな。こんなところに数年住んでいたとは自分でも驚きだ。
それにしてもパルスィはなぜここに来たかったのだろう。

「なんで無縁塚に来たかったんだ?」
「無縁塚...今はそう呼ばれてるけど。昔は違ったのよ」
「そうなのか?」
「覚えてない?ここは昔、自然豊かな森だった」

森...?こんなにも寂れた場所が森だったのか?影も形も残ってねえな。

「どうして...こうなっちまったんだ?」
「一人の親がここで死に子供の怒りが森を滅ぼし無縁塚と変えた」
「......!!」
「思い出した...?」

そうだ......ここは昔、パルスィと幽香と映姫とリグルの五人で過ごした大切な思い出が残った場所だ。
どうして...どうして今まで忘れていたんだ!!こんなにも大切な場所なのに...!

「ながぁい間...暮らしたね...」
「ああ...ああ...!」
「ごめんなさい...記憶がなかったのは私のせいなの」
「え...?」
「ここに来た理由はそれを伝えるため」

パルスィは申し訳なさそうに記憶がなくなった理由を語ってくれた。





△▼△





あなたのお父さん...アニマが殺されて怒りに我を忘れたあなたはこの森を破壊し尽くした。まるで収まらない怒りをぶちまけているようだった。
これは誰にも言ってないけど、本当は私はあの森にいたの。
すぐに破壊音の聞こえる方に向かったわ。そこにいたのは赤い炎に包まれ我を忘れたあなただった。
すぐに逃げようとしたけど腰を抜かした私はその場にへたり込んでしまった。我を忘れたあなたは私に襲いかかったわ。思わず目を瞑った。けれど数秒経っても攻撃は来なくて恐る恐る目を開いたらアニマが立ってた。

「よう!パルスィちゃん」
「おじ...さん...?」

いつもの満面の笑みを見せて、暴走するあなたの攻撃を受け止めていた。なおも襲いかかろうとするあなたを思いっきり殴って吹き飛ばしたアニマは呆れた顔をしてた。

「さぁてバカ息子が......怒りに飲まれやがって...パルスィちゃん頼みがある」
「頼み...?」
「ああ、この札をあのバカに貼っつけてくれ」
「で、でも...!」
「パルスィちゃんにしかできない。頼む」

札を受け取った私はあなたの方を見据えた。すると、また同じように飛びかかったあなたをアニマは受け止めた。その隙に私は札を貼り付けたわ。そしたらあなたは意識を失って地面に倒れた。

「記憶を弄るだけの札だ。そのショックで気を失ってるだけだから安心していいよ」
「記憶...?」
「すこぉし記憶を改変したんだ。でないとこいつこの森を焼き尽くしたことを重荷に感じるはずだ。これ以上...こいつの心に傷を与えるわけにはいかない」

その時のアニマの顔はとても悲しそうだった。いつも笑っている彼からは想像できないほどに悲しそうな顔。

「それでっと...俺はもう消える」
「え..?」
「さっき死んじまってさ。今回は特別に閻魔様に数分だけ戻らせてもらってるんだ。それでそろそろ時間」
「い、嫌だ...!おじさんいかないでよ...!」

泣いている私を優しくアニマは撫でてくれた。
少し涙が収まった私にアニマはあるお願いをしてきた。

「これからバカ息子が迷惑をかけるかもしれないが...パルスィちゃん...こいつを頼んでもいいか?」
「......うん。アルマはあたしが...!」
「お願いするぜ?」

そう言っていつもの満面の笑みを残してアニマは...おじさんは消えていった。
その後、目が覚めたあなたは数日が経って私たちの前から姿を消した。





△▼△





「その後はあなたの知っての通り...ただこれだけはわかって...あなたは悪くない...!」
「俺は......見えない何かから逃げるようにお前たちの前から姿を消したんだ...その正体は...自分自身だったんだな」
「アルマ...」

パルスィは今にも泣きそうな顔をしていた。俺は優しく頭を撫でた。
すると、何がおかしいのかわからないがクスッと小さくパルスィは笑った。

「やっぱり親子ね...撫で方がそっくり...」
「パルスィ...ありがとう。俺を止めてくれて...」
「ううん...あれはおじさんが居てくれたから」
「違う。俺の記憶を弄ったっていう札はこれのことだろ?」

スッ...と古臭い紋章が刻まれた札をパルスィに見せると目を見開いた。やっぱりこの札だったか...

「どうして...あなたが...?」
「これは魔王に代々引き継がれる記憶の札と呼ばれるもんだ。これは相手をよく知り、思い、記憶をほとんど共有している相手じゃないと効果が発動しないんだ」

たぶん親父は自分では効果が発動しないとわかってたのかもな。記憶の共有の時点で条件をクリアできていない。
だがパルスィなら...俺の隣に長い間いて、俺のことを知ってくれて......思っていてくれた。

「ずっと隣にいてくれたパルスィじゃないとダメだったんだ.......俺を救ってくれたのはお前なんだ。だから......これからもずっと俺のそばにいてくれ」
「......当たり前でしょう?おじさんのお願いでもあるし、ずっと隣にーーーー」
「そういう意味じゃない」




言えーーーー

後悔することないようにーーーー

俺のずっと溜め込んでいた気持ちをーーーー

今ここでーーー


首を傾げて言葉の真意を理解できてないパルスィに俺は大きく息を吸い込み、俺の本当の気持ちを伝える。

「俺はパルスィが好きだ!だから俺の恋人として.......ずっと隣にいてくれ!」
「え.........?」

頬が熱くなっていく。俺の顔は真っ赤になっているだろう。だが、言えた。数十年溜め込んでいたこの気持ちを....やっと言えた。
パルスィは呆気に取られているのか、口を押さえ固まっていた。

「あの...パルスィ?」

声をかけるとパルスィの頬に一筋の線ができた。それは...涙だった。

「え?」
「何よ...!何で...あなたはいつも...!!」

涙を流しながらパルスィは俺の胸を何度も小突く。俺はなぜ泣いているのか、怒っているのかも分からなかった。
ただ一つ、パルスィから初めて嫉妬以外の感情を感じた。
それは俺が求めていたパルスィからの《好意》だった。

「あたしが...!先に言おうとしてたのに......!!なんで先に言うのよ...!!」
「は...はは...!なんだ...やろうとしてたことは同じだったのか...」

俺は気の抜けた笑みを浮かべ地面にへたり込んだ。二人が告白を同じ日にしようだなんてな。こんなことってあるんだな......

「いつまで怒ってるんだよ?」
「うるさい...!」

拗ねるように真っ赤な顔を逸らす彼女に俺は苦笑する。そして、確認するようにあることを聞いた。

「なぁ......俺でいいのか?俺みたいな気分屋でさ」
「何を今更...あたし以外にあんたの相手ができる人いるの?」
「ギヒヒヒ...いねえな!」

ジトッとした目で睨むパルスィを俺は抱き寄せた。

「パルスィ...ずっとそばにいてくれよ?」

少し驚いた様子のパルスィだったがすぐに優しい笑みを零し答えた。

「アルマこそ...もう何処にもいかないでね...?」
「ああ...もうお前から離れないよ」

アルマは自分を強く抱きしめるパルスィに答えるように同じように強く抱きしめた。まるで二人はもう二度と離れないように抱きしめ合っていた。






告白戦争......終幕。

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