東方魔人黙示録

怠惰のあるま

告白戦争数分前


今宵、妖怪の山にある花畑で、ある三人が密会をしていた。
花畑の主である風見幽香。
虫達の王リグル・ナイトバグ。
地獄の閻魔四季映姫・ヤマザナドゥ。
三人ともある一つの危機に瀕していた。事の発端は映姫がある物を見てしまったからだ。二人を呼んだ映姫は自分が見た内容をこぼすこと無く話した。
その内容に幽香とリグルは信じることができなかった。

「それは本当なの?」
「はい。パルスィが自分で言っていました」
「という事は...二人は晴れて恋人になるという事?」
「そうなりますね」

ある危機とはパルスィが桐月アルマに告白するという事だ。
付かず離れずの関係を保っていた二人のどちらか一方が告白をしたら十中八九、くっついてしまうだろう。
それだけは阻止せねばなるまいと三人は思っているようだ。

「二人のあの付かず離れずの関係を見るのは好きだったわ。ただ、くっつくのなら話は別...」
「僕らだってアルマが好きなんですよ。抜け駆けはパルスィさんでも許さない...」
「なら...わかってますね?」

三人の目には光が灯っていない。あるのは嫉妬という感情のみだ。

「これで何回目の阻止かしら」
「...10回目に到達した時、数えるのはやめた」
「お喋りはここまでです。では行きましょうか」

ここに最悪の同盟が生まれた事、さらには地底に向かっている事をパルスィは気付く余地も無かった。




△▼△





みなさん朗報です!手が動かせるようになりました!
いやぁ...長かったよ...半日しか経ってないけど。それでも動けないっていうのはとても辛いものですよ。
とりあえず回復は早い事がわかった。明日にはある程度は動けるようになりそうだ。
......さとり様が先ほど気持ちが悪いくらい嬉しそうな顔をしていたがパルスィ何かしたのか?
でも、こいつはこいつで部屋に戻ってきてからずっと真剣な顔をしていた。さとり様を止めに行っただけで何があったよ...

「おーいパルスィ」
「......なに?」
「さとり様に何か言われたのか?」
「...べ、別に何もされてないわよ」
「ふーん...」

絶対にされたな。
急に顔を真っ赤にして何もされてないってどう見ても怪しいだろ。
深くは追求しないが......どうせあの人の事だ。死なない代わりに一つ条件がある。とか言って何か条件を約束させられたんだろ。

【な、なんの事でしょう...?】

図星かよ。
心配してくれてる人の気持ちを軽く踏みにじってますよ?

【だ、だって最大のチャンスだと思ったので...】

は?チャンス?

【いえ、なんでもありません。ところで地上から三人ほどここに向かってくる方がいますよ?】

とうとう心を読むだけでなく居場所まで特定できるようになったか...
ん?待て、三人?本当に三人ぴったしが向かってきてるんですか?

【はい。しかも、すごぉぉぉく黒い感情に包まれてます】

なんであいつらは毎回毎回タイミングを見計らったように来るんだよ!!
これで何回目だ!くそ!せめて動ければ...

【あの〜...どうしました?】

その三人...絶対に幽香と映姫、そしてリグルですよ。
毎度の事ながら女の勘は怖いな。いや映姫がいるから監視してるのか。浄瑠璃の鏡...恐ろしい...

【話が見えないのですが...?】

あれ?さとり様はてっきり知っているかと。あ、そっかあの時ショックで心を読む暇も無かったんですか。それじゃあ仕方ありませんね。
けど、どうせすぐに気付かれるだろうから先に言っておきます。
明日、パルスィに気持ちを伝えます。

【......ふぇ?】

前にさとり様が言ってた事が不安になって来て、決断する事にしました。

【そ、そうだったんですか......あなた達って本当にお似合いですね】

どうゆう意味です?

【ふふふ...今は秘密です。さあ、あなたが安全に告白できるように私頑張りますよ】

な、なんか嫌に協力的ですね。いつもだったら絶対に三人に加担するか中立の立場に立つのに...

【わかってませんね!!わたしはあなた達の関係を見守るのが生きがいなんです!!】

さ、叫ばないでくださいよ。心の叫びって声よりも響くんですから...でもまあ本気だってことはわかりました。喜んでいいのかわかりませんがね。
それでは...お言葉に甘えてさとり様。あの三人を止めておいてください。

「任せてください!!」

いつの間にか部屋の入り口に立っていたさとり様は親指を立てて任せろと言わんばかりに堂々とそこに立っていた。
勇ましい姿のはずなんだが...顔がにやけすぎてかっこいいと思えない。

「さ、さとり様?どうしたんですか...?」

心話を聞いていないパルスィは困惑した表情であった。

「大丈夫です!あなた方はわたしが守りますよ!!では行ってきます!!」

そう言い残しさとり様は死地へと向かい走って行った。
今のあの人のテンションだったら止めてくれそうだ。まあ、安心はできない。あの三人だ。とてつもなく強いだろうなぁ...
幽香は根本的にスペックが半端じゃない。能力無しだったら俺じゃあ敵いません。
リグルは虫達の王だ。虫達を操ることができる。即ち、毒持ちの虫だって操れる。恐ろしいよ...
映姫は...映姫は...なんだろう...説教しか思い浮かばない。ああ、でも悔悟の棒があるか。あれって罪の重さに比例して痛みが強くなるんだよねぇ。うん。俺が殴られれば悲惨な目に会う。
......さとり様大丈夫かな?





△▼△






「と、言うわけなので力を貸してください」

さとりは地霊殿を飛び出して勇儀さんの元へと向かっていた。事の顛末を全て聞いた彼女は同情していた。

「あの二人が結ばれない理由がわかった気がする......」
「アルマがヘタレなのは『結果』ではなく。それを阻む者達だったようですね」
「さすがに可哀想だねぇ...よし!ここは私も頑張ろうか!」
「ありがとうございます。それでは行きましょうか」






△▼△





「はぁぁ...早く体動かないかな〜...」
「無理でしょ」
「む〜...座りながら動ける椅子ないかな〜...」
「ないでしょ」
「......返しがつまんない!」
「え、えぇ......」

人の気も知らないでわがまま言わないでほしいわ...妬ましい...
でも、少し適当に私も悪いか。考え事してる時にちゃんと返せるわけがないけど。ましてや...こ、告白について考えてるんだから...なおさらよ!
こいつは私が告白しようだなんて一欠片も思ってないわよね。告白しようとする素振りを一切見せないんだもの。
......こいつって本当にヘタレ。

「なんかバカにされた気が...」
「き、気のせいよ!」
「ふ〜ん...なあパルスィ?」
「なに?」
「明日になったらーーーーー」

ドカァァァン!!
不意に部屋の壁が破壊された。
爆発のせいで舞う粉塵で視界が悪い。しかし、アルマは瞬時に気づいた。この爆発を起こした者の正体を。

「元気ぃぃ?」
「ゆ、幽香...!」

一切の光を灯さない虚空の目をした風見幽香がそこに立っていた。



告白戦争ーーー勃発


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