東方魔人黙示録

怠惰のあるま

《自称人間の能力》



里の周辺を一人、歩く人影があった。
その者は突然止まり空を見上げため息をする。彼ーーアルマは城を抜け出したようだ。
外に出て気分転換...と言いたかったがむしろ悪くなるだけだった。
いつもの騒がしい光景がつい最近のことなのに懐かしく感じる。今更戻ることもできない...後悔することばかりだな。
そろそろ戻らないと変に騒ぐだろうし帰るか。

「お兄様ぁぁ!!」
「は?」

今、フランの声がしたけど気のせいか?
辺りを見渡すと、こっちに向かって全力で飛んでくる物体が見えるが...まさか、ねぇ?

「お兄様!」
「フ、フラン!?」
「お兄様だ!お兄様だ!やっと見つけたぁ!」
「ちょ、待て!その勢いで来るな!おわっ!」

魚雷の如きスピードーで頭突きをされ、後ろに数十センチほど吹き飛ばされる。
軽く頭をぶつけさすると俺の上に乗っかるフランが嬉しそうに抱きついた。

「いっつぅ......ってフラン!なんでここにいるんだ!?」

俺の質問に後ろからついてくるように現れたレミリアが答えた。

「決まってるでしょ?あなたを探してたらここに来ただけよ」

レミリアの言葉を理解できない、なぜ俺を探す必要があるんだ。俺は家に帰ると伝えたはず...それに魔界にいることがなぜわかる?

「はぁぁ?そうじゃねえ!なんで俺の居場所がわかったかって聞いてんだよ」
「妖夢から教えてもらった!」
「妖夢に?......他の奴らにも言っておいてくれ、俺は戻らないって」
「どうして?お兄様はフラン達のことが嫌いになったの...?」

今にも泣きそうなフランを宥めながら機嫌を損ねないように俺の気持ちを伝える。

「そうゆうわけじゃない!おれはやらなきゃいけないことがあるんだ!!」
「やらなきゃいけないこと?」
「魔王の仕事ですか?」

突然話に入り込んできたのは何処からともなく現れた妖夢だった。その顔は何処か怒っていた。

「この村の人に聞きました、あなたは魔王だったんですね」
「じゃあ、戻ってきたっていう魔王は......」
「お兄様のこと?」

フランとレミリアは驚いたように俺の顔を見た。仕方ないか、どう見たって魔王らしからぬ見た目の男が魔王だったら俺でも驚く。
しかし、気づけば二人は真剣な眼差しで俺を見つめていた、観念した口調で言った。

「ああそうだ。俺は魔界をすべているはずの魔王さ」
「なぜ魔王の貴方が幻想郷に?」

フランをよかし体についた土埃を払いながら素っ気なく言う。

「約束を破る奴に教える筋合いはねぇよ」

その言葉に妖夢は苦虫を潰したような顔をし、目をそらした。

「なら...仕方ないわね」
「お兄様、力尽くでも理由を話してもらうからね!」

レミリアとフランが完璧に臨戦体制に入る。
その後ろで妖夢は刀を抜こうと鞘に触れた時、アルマの指が鳴った。
すると、妖夢のすぐ目の前に立っていた二人が咲夜の時と同じく人形のように地面に崩れ落ちる。
突然起こった目の前の怪現象に妖夢はただ立ち尽くし、残った彼女に魔王は先ほどとは打って変わった優しい表情で忠告した。

「悪いけど、お前ら生き物は俺には勝てないよ、小さな感情を一つでも持ってるならな」
「レミリアさん達に何をしたんですか!!」
「それを言ったら俺の負けだ、それじゃあもう会うことはないだろう」
「まってくーーーーっ!」

去ろうとするアルマを止めようと手を伸ばす妖夢の目の前から彼は姿を消した。

またもや姿を消したアルマのことを伝えるためにレミリアたちを担ぎ、紫達と待ち合わせていたある建物の中で合流。
二人の姿を見た紫達は何があったのかを聞いた。

「アルマを見つけることはできたけど捕まえれなかった、と...」
「すいません」
「妖夢は悪くないわ。問題はアルマが二人に使った能力よ」

妖夢の話を聞いてレミリア達をこのような状態にしたアルマの能力について話し合っていた。

「アルマが指を鳴らしたらレミィたちはこうなったのね?」
「はい、いきなり意識が消えたかのように」
「意識を消す能力かしら?」
「でも...意識はあるんですよ?うっすらとですが...」

二人の顔を見ると目は少し開いているが、その目に光は灯っておらず虚ろに見える。
まるで、何か大切なものが抜けているように見えた。

「そういえば、アルマさんは感情がどうこう言ってました」
「......アルマの能力は感情を消す能力ってとこかしら?」
「そうとしか考えられない、でもどうする?この子達」

紫達が悩んでいると建物の扉が開かれ、持っている傘を回しながら不適に笑い伝えた。

「簡単よ。何かしらショックを与えればいい」
「誰!?」
「あらあら、珍しい人が来たわね」

そこにいたのは花の大妖怪と呼ばれる風見幽香であった。
妖夢達に近づきながら自分がいる理由を教える。

「あの馬鹿がろくでもないことをしているみたいだからお灸をすえにきたのよ」
「半人君のことかしら?」
「あら...半人ってこと知っていたのね、なら早くあの馬鹿のところへいきましょ」

幽香がアルマのところに行こうと建物を出ようとするが、それを止め妖夢は気になることを聞いた。

「アルマさんのこと知ってるんですか?」
「知ってるも何も......私はあいつが魔王になる前からの知り合いだもの」
「え?」

幽香の言葉に紫と幽々子以外の全員が固まってしまった。

「どうゆう関係なんですか......?」
「ただの幼馴染」

その後、幽香に対する嫉妬の念が増えたのはアルマと彼女は知らない。



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