比翼の鳥

風慎

第7話【翼の章:第一村人発見(後半) ~ ルカール村】

 次の日の朝。
 ルナはツバサに、飛行魔法を教えて貰ってたの。
 けど、凄く難しい……ツバサって凄い。こんな魔法を作って制御しちゃうなんて。
 もしルナが覚えられなくても、昨日と同じ様にツバサが運んでくれるから良いって言ってたけど……できればルナも使えるようになりたいなあ。

『……解答いたします。この魔法は複雑なため、サポートの必要があります。私の方で、ルナ様に合わせて最適化致します。』

 本当? じゃあ、コティ、お願いね!

『……了解いたしました。解析開始。――――解析中――――解析中――――――――――――解析完了。ルナ様に合わせて魔法を最適化……完了。ルナ様にフィードバックいたします。』

 あ、何となく魔法の動きが分かるようになったよ。
 凄いね! コティありがとう! これなら何とかなりそうだよ!

『とんでもありません。ルナ様の望むがままに、お進みくださいませ。』

 その後、ルナも飛行魔法が使えるようになったの!!
 ちょっとまだ危ない所もあるけど、コティも手伝ってくれるし、大丈夫!
 あれ? ツバサ……なんでそんなに悲しそうな顔しているの? ルナ頑張ったよ!!

『父上も父上ですが……ルナ姉上もたいがいですな……なんという才能でしょうか……。』
『あれを、真似しろって言われても普通は無理ですわね……。流石、ルナお姉さまですわ。』

 ん? 此花ちゃん? 咲耶ちゃん? なんでそんなに疲れた声なんだろう?
 けど、空を飛ぶって気持ちが良いの!! 見てみて!! びゅーん!! んふふ♪
 そんなルナの姿を見て、ツバサはなんだか変な笑い顔……けど、少し優しいその目は好きなの。

 そして、ついに、ルナ達は村に向かって飛び立ったの。
 今日はワイバーンさん? は来なかったなぁ。残念。
 ツバサの後ろを飛んでいるんだけど、やっぱりツバサは凄い!!
 綺麗にまっすぐと、飛んでいくの。
 ルナもまっすぐ飛んでいるつもりだけど、途中で何かに遮られたり、横から力が加わったり……。
 難しいね……。コティが助けてくれなかったら危ないかなぁ……。

 そうして、しばらく飛んだら、ツバサが降り始めたの。
 あ、あの広い所に降りるつもりかな? 分かったよ!
 今ちらっと村っていう物が見えた! なんか色々建物? っていうのがあったよ!
 うわー。凄い楽しみだなぁ。

 そして、ツバサを追ってフラフラとしながらも広場に降り立ったの。
 ふう……何とか到着ね。ツバサは余裕だなぁ。やっぱり凄い!!

「ルナ、お疲れ様。あと5km程で目標の村に着くよ。ここからは打ち合わせ通り歩いて行こうね。少し疲れたようだから、休憩してから行こうか。」

 ツバサはルナの事を見ていてくれている……。
 ちょっとルナが疲れたのもすぐに分かってくれた。
 何だか嬉しいな! 胸の奥がむずむずするの……。
 こういう時は……ツバサに抱きつくと治るんだよね!
 だから、ツバサに抱きついて、エネルギー補給したの。

『……解答いたします。ツバサ様はルナ様のバディの為、身体的接触により、深層心理の安定化及び、精神的な繋がりを強化する事が可能です。』

 んふふー♪ ツバサの温もりー♪ コティのいう事は難しいけど、ツバサとくっつけば良いのね!?

『……その通りです。より、情動的な変化を共有する事で、その瞬間に繋がりを最大限まで高める事が可能となります。』

 むぅ……相変わらずコティのいう事は難しいの……。
 けど、とりあえず、ルナも頑張ってツバサにくっつくね!

『……了解いたしました。ツバサ様がルナ様に対し、身体的接触を拒むのは、ツバサ様がヘタレなだけですので、ルナ様が積極的に行動を起こしていれば、問題ないと推測されます。』

 へた……? コティはいつも難しい言葉を使うのね? ルナにも今度教えてね?

『……了解いたしました。』

 そうやって、コティと話していたらツバサが何かに気が付いたように、一点を見つめていたの。
 ん? ツバサ? そっちに何かあるのかな?
 ルナも探知で、ツバサのいる方向を探ってみたら……これは? 何かに人が囲まれているの?
 ツバサを見たら、行くぞって言う顔で見つめて来たの。
 うん! 行こう! 誰か襲われているなら助けないと!

 ツバサもルナも走り始めたけど、途中で、襲われている人が……このままじゃ駄目かも……。

「ルナ。先に行く。後からサポートよろしく。」

 うん! 分かったよ! ツバサ、気を付けてね!!
 ツバサは魔法陣を展開したと思ったら、あっという間に飛ぶように駆けて行ったの。
 ほえぇー! 凄いよツバサ!! ルナもあんな風に出来るようになるかなぁ?

『……解答いたします。身体強化の魔法は、解析が難しいうえに、他人の強化方法を自分に最適化する必要があります。今のツバサ様の強化方法では、ルナ様の体がついて行きません。解析及び、最適化にはかなりの時間を必要とします。』

 そっかぁ。じゃあ、その辺りは残念だけど、しばらくは無理だね。
 もし、何かわかったら教えてね? コティ。

『……了解いたしました。』

 ルナは走りながら、ツバサの様子を探知で窺っていたの。
 凄い……あっという間に、敵を減らしていく。
 あ! なんか少しだけ大きいのに突っ込んだ!
 どうやらツバサは、何かを撃退したようなの。

 もう少しで……到着……ツバサ大丈夫!?
 ルナがツバサの体に怪我がないか調べていると、ツバサが頭を軽く撫でてくれたの。
 うふー♪ ツバサも無事みたいだし良かった。

 もう、既に人を襲っていた何かは、全部逃げて行ったみたいだったの。
 あ……少し離れた所に、頭が無い黄色い動物が横たわっているの。
 ふーん? あんなものが襲って来るんだ……覚えておこっと。

 ツバサが襲われていた人に近付いていって……その姿を見たら突然体を震わせていたの。
 ん? ツバサ……どうしたの? そう思ってツバサの顔を覗きこんだら……。

「獣っ子!!!キターーーーーァアアアアアアアアア!」

 ……ツバサって……時々よく分からない事を言うの。
 何だかわからないけど、この叫びもきっと変な事なの。
 それが何となく分かっちゃうんだ……。

 その後、助けた人とお話ししたんだ!
 ルカール村のリリーさんって言うんだって!!
 それでね……なんでか、頭に大きなお耳と、お尻に尻尾があるの!
 可愛いなぁ……何だかツバサも見ていて嬉しそう。
 ツバサもルナも、見たことのない耳と尻尾を見ていたら、リリーさんが気になったようで声をかけて来たの。

「ツバサ様、ルナ様。お二人は私の事が気持ち悪くないのですか?」

 そんな事ある訳ないよ!
 可愛いもん!! フワフワでとっても綺麗!!
 そうしたら、リリーさんが、耳と尻尾は嫌われてるって教えてくれたの。
 何でだろ? こんなに綺麗で可愛い物なのにね!!

「いやいや!!その獣耳に、しっぽ!!最高じゃないか!!そのモフモフ感は、正に至高!!それをけなすなんて、とんでもない!!」

 あ! ルナもツバサの気持ち……何となく分かるなぁ。
 モフモフ……フワフワって事だよね! ルナ、分かるよ! 気持ちよさそうだもん!!
 ルナが頷いたら、ツバサは「そうだろう?」って言いそうなほど、嬉しそうに微笑んだの。
 そんなルナ達の様子を見て、リリーさんが少し驚いたように言ったの。

「お二人ともとっても変わっていますね。」

 そうかなぁ? だって綺麗だよ? ルナ好きだな。その耳と尻尾!
 そんな風に、皆で話しながらリリーさんの後ろに着いて行ったんだ。


 ルカール村って言う所に着いたの。
 何だか木で出来た壁みたいなものに覆われていたの。
 これなんだろ?
 そう思っていたらリリーさんが、頭を下げてこう言ったの。

「ようこそ。ルカール村へ。何も無いところではありますが、一村民として心より歓迎いたします。」

 その頭を下げる姿がとても綺麗で……ルナ、思わず見とれてしまったの。
 凄いなぁ。リリーさんって凄い!

 ルナ達が村に入ったら、そこは不思議なものでいっぱいだったの。
 これが……家! あ、他の獣人さん!! 凄いなぁ!! あ、あれなんだろ?
 楽しいの! 見てみてツバサ! あれ何!?

 けど、獣人さん達は何故か、ルナ達の事を睨んで来て……何だろう? 凄く嫌な感じがする。
 この気持ちは何? 心がザワザワするの。そんな目で見られるの……なんか嫌なの!
 ふと、ツバサを見たら、ツバサも何か考えているみたい。
 ツバサと目が合ったの……そうしたら、少し微笑んで……黙って手を握ってくれたの!
 うふー♪ 嬉しいな! 久し振りにツバサがルナに自分から触れてくれたの!!
 手を握り返したら、ツバサも少し力を込めてくれたの。
 大丈夫! 分かってるって言われた気がして、それだけでルナは安心できちゃうんだ。

 リリーさんとツバサが何か話していたんだけど、ルナはフワフワしていて話を聞いていなかったの。
 そうしたら、ツバサがいきなリリーさんの頭……じゃなくて耳を撫で始めたの。
 それを見てたら……あれ? 何だろう? ルナ、何だかとっても胸がムカムカしてきて、思わずツバサの腕を引っ張っちゃったの。
 ううー何だかよく分からないけど、気分が悪いの! ツバサにはルナだけ見て欲しいのに!
 何で!? ツバサ、ルナにもナデナデしてよ!!

 それからツバサはずっとルナの頭をナデナデしてくれて、んふふー♪ 嬉しいな!
 けど、さっきのあの気持ち……なんだろ? 何だか嫌な感じだったな……。
 ルナは胸に何かモヤモヤするものを抱えたまま、リリーさんの家に到着したの。

 うわぁ……凄い! この中に人が住めるんだ! ルナの洞窟と全然違う!!
 あ、壁の一部が横に動いた! 凄いなぁ。リリーさんはそのまま中に入っていって……しばらくしたら戻って来たの。

 中に入ったらもっと色々あって……ルナ、色んな所を見てたの。
 あの部屋の真ん中にあるの何だろう!? 床が土じゃない! これなんだろ! 奥にも色々ある! ほぇー!! 凄いなぁ!!

「はい。ツバサ様は、ここで履物を脱いでくださいね。ルナ様は、その水桶で足を洗いますので、そこに腰掛けてくださいね。」

 うん! 分かった! ここに腰掛ければいいのかな?
 そうしたら、リリーさんが水の入った物をルナの足に持って来て、水をかけてくれたの。
 わ!? なんか冷たい……うふふ……なんだかじっとしていられない……はう!?

「うわー。裸足なのに綺麗な足!」

 リリーさんがそう言っていたけど、ルナはそれどころじゃなくて……。
 終わったころには肩で息をしてたの。
 そんなルナを、ツバサは何だか笑いながら見ていたの。
 酷いよ! ツバサ!!

 足を綺麗にしたら、囲炉裏って言う所にツバサと一緒に座ったの。
 この真ん中にあるのなんだろう? これは……灰? かけてあるのは……なんだろう? 不思議だなぁー。

 そうして、奥の部屋に綺麗な女の人が横たわっていたの。
 レイリさんって言うみたい。リリーさんのお母さんなんだって。
 ルナ、お母さんいないから、よく分からないけど、とても優しくて柔らかそうな人なの。
 けど、なんだろう? 魔力が足りない感じがする。

『……解答いたします。レイリ様より、魔力を繋ぐバイパスが構築されております。魔力が何者かに吸いだされているようです。』

 え? じゃあ、魔力が足りないのもそのせいかな?
 ……あ、ツバサも気付いているみたい。なんか、その魔力の線を見つめているね。
 なら、ツバサに任せておけば大丈夫だね!!

 ルナはそんな風に、話をするツバサとレイリさんを見つめていたの。

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