女神と契約した俺と悪魔と契約した七人の女の子

片山樹

9

「ポテトL一つ。それとMのコーラとえぇーと、榊原。
 お前は何が良い?」

「オレンジ」

「ならオレンジジュースを」

 俺と榊原姫神は最寄りの赤と黄色のバーガー屋に来ていた。店内はそこまで混んでいなかったのであっという間に番号を呼ばれる。
 紳士っぽくというか「行け」という相手の眼つきにビビって、慌てて俺は取りに行った。

「ほらよ。榊原さん」
 オレンジジュースとストローを彼女に渡す。

「あ、ポテトも食っていいから。ちなみに今回は俺の奢りだ。安心しろ」

「あ、そう。でっ、それで下僕はここに私を呼び出して何をする気?」

「い、いやぁー。あのさぁー榊原さん。俺が誘ったみたいに言ってるけど俺ね、どちらかといえば榊原さんが誘ったよね?」

「私は立ち話でも良かったというか……立ち話するだけで済む話を下僕は何故か勘違いして、わざわざ店まで……」

「あぁーはいはい。すいませんでしたね。俺がわざわざここまで呼んで」

「そこまで僻まなくても良いんじゃない? 下僕」

「ねぇーあのさぁー。さっきから下僕下僕と言ってるけどそれって俺のこと?」

「そう、下僕。下僕山。というかここに下僕しかいないじゃない? 下僕山」

「おい。そろそろブチ切れていい? 下僕って言われるの凄いムカつくので」

「あぁー勿論良いけど。そのときは覚悟した方が良いよ。
学園生活終わるという条件付きだから」

「そうだな。確かに女の子に手を出した男は皆からの評判は悪くなるからな。何気に色々と考えてるんだな」

「寧ろ考えることの方が多い。どちらかといえば行動できない系だから」

 確かにそうだ。榊原は休み時間中、ずっと本を読んだり、ぼぉーっとしてたり、次の授業の準備とかをしてる奴だ。って、こいつもぼっちなんじゃね?
 少しだけ親近感湧いたけど、こいつは例外だ。
 ぼっちじゃなくてウザいから誰も近寄らないだけだ。

「それで……なんのようだ? 榊原。
 普段は大人しいお前がこんなことを誰かと接するなんて珍しいからな」

「ねぇ、あのさ……下僕。お嬢様を助けて」
 俺に対する悪口は一級品だが助けてと言われては助けないわけにはいかない。

「お嬢様? 誰だそれ?」

「はぁ? 何それ? 本気で言ってんの?」

「おいおい。大きな声出すな。他の客の邪魔になるだろ」

「はぁー。ほんと、下僕山ね。下僕山というかもう使えない山ね。ゴミ山ね」

「そこまで言わなくても良いだろ? 榊原」

「ねぇ、さっきからずっと思ってるんだけど……その榊原って呼び捨てやめてくれる? ほんっと、イライラするから」

「あ、あのなぁー。それなら下僕もやめろ!
 それとほんとの『ん』と『と』の間にちっちゃい『つ』入れるな! それされたら、普通の五倍増しぐらいでイライラするから」

「だって仕方ないでしょ? 下僕は下僕なんだし。
 でっ、それで。下僕。さっき言ったことホントなの?」

 はぁー仕方ねぇーな。まぁ、下僕で良いか。

「あぁー大マジだ。本気でお嬢様とか何とかいうのも知らねぇーよ。で、そのお嬢様ってのはどこのどいつだよ?」

「はぁー。これだから下僕は。というか、ぼっち山は困る」

「お前もぼっちだろうがよ!」

「私は別にぼっちじゃない。友達を作らない主義なだけ」

「あのな、その台詞を言うのは友達を作らない奴が言う台詞じゃない。それは友達を作れない奴が言う台詞だ」

「あのごめん。私、ソロ充だから」

「あのすいません! 今日から師匠と呼んでもよろしいでしょうか! いや、師範代とお呼びしても良いでしょうか?」

「絶対に呼ぶな。呼んだら、殺す」

「す、すいません。師範代……」

「師範代言うなっ!」
 脚で思い切り、蹴られた。
まじいてっー。テーブルがガタンとなったから近くに座ってる女子中学生二人組がチラチラ見てる。

「ねぇー、アレって痴話喧嘩だよね? ね、それしか考えられないよね?」

「うん。絶対にそうだねぇー。アレはどっからどう見ても痴話喧嘩さ。アレは男が悪いと見たね」

「どうして分かるの?」

「ふっ、それはねぇー、長年の深夜ドラマのお陰さ」

「へぇー深夜ドラマって痴話喧嘩とかよくあるの?」

「深夜ドラマより昼ドラマの方がドロドロ系だけど深夜系は色々とえっちいのがあるのさ。まぁ、まだ……には早いかなぁ~」

「えぇー酷いぃー! 酷すぎる!」

 おいおい。声が筒抜けだぞ。中学生共。
少しは静かにしやがれ。
 それと痴話喧嘩じゃねぇーつの。


「痴話喧嘩……俺達カップルみたいだな?」

「はぁ? 何言ってんの? 下僕の分際で」

「あのさ。それよりも下僕下僕って言ってるけど、何で下僕って呼んでんだよ?」

「だって、下僕ってお嬢様の下僕なんでしょ?」

 お嬢様の下僕?
 なんだ……それ?
 ん? それって……もしかしてお嬢様って。

「おい。それって花園先輩の事を言ってるのか?」

「せ、先輩……。あのさ、殺していい? お嬢様の事を先輩と呼ぶ奴は許さない。何、アンタ? 少しだけお嬢様に気に入って貰ったからって先輩呼びしてんの?
 とりあえず、死ねば? いや、死んで。ここで死んで」

 あぁーまた変な奴が現れたよ。
少し頭がイカれてる。ちょっとというかめちゃくちゃめんどくせぇー奴がまた一人増えた。


「あぁー、悪い悪い。俺が生徒会長の彼氏ですまない」

「あぁーイライライライラっ、イライライライラ、あっ、痛っ!?」

「ん? どうした?」

「舌噛んだ……痛いっ……」

 ズルズルと音を立てオレンジジュースを飲んで「痛いっ……」としかめ面をする彼女の姿は不意にも可愛いと思ってしまった。

「あぁーそれで舌を噛んだ馬鹿で阿呆で間抜けな榊原さん。 オレガセイトカイチョウサントツキアッテシマイスイマセンデシタ」

「ねぇー反省してる感が全く伝わってこないんだけど?
 それと馬鹿で阿呆で間抜けな榊原さんっていうのお嬢様が気に入りそうだから絶対にお嬢様にだけは言わないで!」

 よしっ、今まで主導権を握られていたがこれから復讐だ。反逆の篠山君の始まりだぜ!

「ねぇー聞いてる……かな? ササヤマリク(死ねば良いのに)君。もしも言ったら殺すから。包丁持って、ぶっ刺し行くから覚悟しててね」

「なぁー。榊原さんや、今まで気になってたんだが、そのお嬢様――すなわち、花園先輩とはどういったご関係で?」

「私は花園雪お嬢様――花園家六代目当主のメイド」

「め、メイド? っていうか、花園家六代目当主ってなんだよ……それ?」

「下僕には知らなくていいこと。これで私からの説明は終わり。じゃ、私……帰るから」

 そう言って榊原が立ち上がる。
あの……まだ色々と謎が残ってるまんまなんですけど。

「あ、そうだった。忘れてた。
 最後に三つだけ約束ね。
まず、一つ目。『絶対にお嬢様の素性を言わない事。勿論私の正体も』
 次、二つ目。『お嬢様が良いと言うまでずっと偽彼氏役を続ける事』
 最後、三つ目。『気を付けろ』
 じゃあ、帰るから。じゃあね、下僕」

 意味の分からない事を言って、そのまま榊原は店を出て行った。
 とりあえず今のまま偽彼氏役を続けて、正体さえ明かさなければ良いだけだよな?
 というか、最後の三つ目って絶対カマかけてるだけだろ。三つとか言ったけど実際二つしか考えてなくて……適当にこれ入れたんだろうな。

 まぁーひとまず一軒落着か?

 って、待て待て。逆か。
桜さんとは仲直りできてないし、振り出しに戻るか。

 まじで許さん……榊原の野郎。

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