女神と契約した俺と悪魔と契約した七人の女の子

片山樹

7

 放課後。いつものように先輩が教室に来た。
しかし彼女の手には鞄が無い。
 どうやら今日は生徒会があるらしい。
言われなくてもそれぐらいは容易に分かるが彼女が待つ廊下へと向かう。

「今日はそ、そのごめんなさい。生徒会があって……一緒に帰れない」

「分かりました。では明日一緒に帰りましょうか?」
 少し他人行儀っぽいけど慣れて無いから仕方ない。

「う、うん。分かった。じゃ、じゃあねぇ〜」
 手を振って、彼女は生徒会室へと向かう。

 廊下から教室へと顔を動かすと皆の視線を一気に集める。睨まれてるけど俺の学校生活大丈夫かな?

「ねぇ、さっきの美人な人って誰?」
 俺の隣の席に座っている金髪碧眼美少女こと――音坂琴美が喋りかけてきた。
 昨日から「キモい」とか「こっちみんな」と言われるだけだったので彼女が普通に喋りかけてきたのはこれが一番最初である。
 先輩……ありがとうございます。
貴方のお陰でやっと転校生と仲良くなれそうです。

「ねぇ、早く教えなさいよ。この変態」

 変態というあだ名は消えていませんが……。

「あぁーえぇーと。俺の、その、……アレだよ。アレ」
 人前で自分の彼女を言うのって恥ずかしい。

それも会話の中で「さっきの美人誰?」
「あ、さっきの? 俺の彼女」

 こんな展開本当にあんのかよ。
 あまりにも出来過ぎだろ。

「な、何よ? はっきり喋りなさいよ。ほら、早く!」

 あぁーもう恥ずかしい。
それにこの台詞言うの初めてだし。

「お、俺の彼女だよ。さっきの」

 はぁ? 嘘つくなという表情をされた。

そりゃそうだ。隣の、それも友達が誰一人居ない陰キャラの俺に彼女?
 何それどこのファンタジー?
って感じなのは重々分かる。俺も逆の立場だったらそう思う。だけどね、これは本当なんだ。
 真実はもう少し複雑だけどね。

「ねぇー変態。私ね、言っていい冗談と言っちゃ駄目な冗談があると思うのね。貴方が今言ったのは後者。
 とりあえず謝りなさいよ」

 そこまで言わなくても良いだろ!
それに事実だし。

「喧嘩したら駄目だよ? 二人共!」
 そう言って、俺等の口喧嘩に入ってきたのはクラスの学級委員――木下キノシタ穂乃果ホノカだった。
 木下穂乃果――彼女は俺が唯一このクラスで対等に話すことができる女子の一人だ。
(音坂は俺の事を変態呼ばわりしているのでノーカン)

 彼女は俺が転校してきた時、真っ先に学校の事などを教えてくれた人物だ。彼女が居なければ俺のぼっちライフは酷い有様になっていただろう。例えば移動授業の時とかに教えてくれたり、学校の規則を分かりやすく教えてくれたりなどゲームで言うところの初心者専用案内人ナビゲーターだった。まぁ、時間が経つに連れて、というか俺が色々とこの学校について分かるようになってからは会話が特に無かった。目が合う度に笑顔で返してくれるぐらいの関係ってところだ。
 正直転校してきた直後、彼女に心を揺れ動かされていたと言っても良いだろう。見た目は普通に可愛いし、茶髪のショートとか超タイプだし。おっちょこちょいだし。
 もう、最高でした。だけど彼女はクラスの人気者で、俺はクラス唯一のぼっちで……。
 正直な話。先輩に出会わなければ、木下穂乃果という人物に絶対に叶わない恋をしていたんだろうなぁーと思う。
 だけど俺は真理に気づいてしまったのさ。
彼女は学級委員だったから転校生の俺に優しくしてくれていただけってことに。
 もうこの真理に辿り着いた時は一瞬にして、悲しくなったね。お風呂場の湯が数ミリ単位で増えたね。

「だってこの変態がさっきの人は彼女とか言うから」

「あ、それ本当だよ。木下さん。ねぇ、篠山君!」
 突然、木下に呼ばれ焦ってしまう。

「お、おう。も、勿論だ。木下さん」

「えぇー。何それ? 篠山君! 私の事は穂乃果って呼んでって言ってるじゃん」

「い、いやぁー。それはちょっと抵抗があるというか……なんというか」

「呼べば慣れてくるから大丈夫だよ。篠山君。
 あ、勿論。音坂さんも穂乃果で良いからね」

「……あ、ありがとう。木下さん。あのもう一度言ってくれるかしら? ちょっと今の私、変態に汚染されて頭おかしくなってるみたいだから」

「さっきの人は篠山君の彼女さんってことだよね」

「ねぇ、変態。それ本当なの?」

「うん……そうだ」

「そ、そう。貴方、今後の人生運全部ここで使っちゃったのね……可哀想に。寧ろ良かったわねとでもいうべきかしら?」

「はいはい。そうかもな。じゃあ、俺忙しいからもう帰るな」
 そう言って、鞄を手に取った俺は教室を後にする。

 向かう場所は――桜さんの元へだ。

 といっても、教室に行くのは少しどうかと思ったので校門の前で待つことにした。

 校門で待ち続けて、十分ぐらい経った頃だろう。

 彼女が歩いてきた。
 以前とは違い、髪型が一つ結びになっている。
その結果、髪は左右に揺れている。
 表情はどことなく暗い。

「あ、あの……桜さん?」
 横を通り過ぎていく彼女に声をかけた。
彼女は自分が声をかけられているとは気づいていないみたいだ。

「あ、あの! さ、桜さん!?」
 彼女がやっと気づいてこちらをちらりと見る。
そして彼女は俺に言った。

「リア充は嫌いです。死んで下さい」と。

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