女神と契約した俺と悪魔と契約した七人の女の子

片山樹

4

 俺の隣の席に金髪碧眼美少女がやってきた。
これは紛れもない事実だ。そう、ゲームでも小説でもアニメでも無く、紛れも無い事実。
 要するにノンフィクションなのだ。
嘘だろ、皆はそんな事を口走るだろう。
 なら、少し顔を右側に向けてみよう。
やはり金髪碧眼美少女がいる。
 さらに授業を受けているのだ。
俺が彼女を見ている事に気づき、彼女がこちらを見る。

「ねぇ、何? なんか用なの?」

「べ、別に何もねぇーよ」

「あっ、そ」

彼女が口を尖らせ、つまらなさそうに言った。

ほら、事実だっただろ?

「って……俺は誰に言ってるんだが」

「ねぇ~何言ってんの?」

気味悪そうに彼女が言った。

「いや……別に何も。ただの独り言だし」

「ねぇ、あんたさ、もしかして……」

数秒の間が空き、琴美の顔が苦笑いとなった。

「幽霊とか見えちゃう系の人?」

彼女が興味津々にそう尋ねてきた。

「えっ? 何で?」

「いや、別に……何も無いわよ!」
 あぁ、なるほど。自分がオカルト大好きっ子ってことがバレたくないんだな。
 分かる分かる。お前の気持ちは察したよ。

「お前の事はよぉ〜く、分かった。安心していいぞ。
俺にもそんな時期があったあった。辛くなった時はいつでも相談に乗ってやるから安心してくれ」

「何よ! あんたが思っている事は間違っていると思うけど……まぁ、いいわ。私が困ってたら……そ、その……助けてね」

 どうやら、俺と琴美の思っている事は違うようだ。

「はいはい……わかったよ。俺の見当違いだったようだ。それで何で俺が幽霊とかが見えると思ったんだ?」

「いや……別に何もないわ。気にしないで!」
 顔を真っ赤にしてそっぽを向く彼女を俺は可愛いと思ってしまった。

***
 2時間目、3時間目、4時間目という風にあっという間に時間が過ぎていつの間にか放課後になった。

「帰ってアニメでも見るか……」
 そう思い、鞄を持ち家へと帰宅する。

 玄関のドアはいつもと何も変わらない。

ただ俺をいつも「おかえり」と言っているみたいだ。

「ただいまぁ~」と俺は少し小さな声で言うといつもは小さな声なのに妹が俺の所に来て、「おかえり!」と可愛い声で言ってくれるのだが、今日はそんな気配もしない。

 そればかりか、不思議な事に俺の知らない靴がある。
それも女子用の靴だ。
 もしかして妹の友達が来ている?ーーそんな事は無い。
 妹は多分だが、引っ越してから友達ができていないはずだ。元々、引っ込み思案な我が妹がそんな簡単に友達作りというそんな高度な技術が出来るはずがないのだ。
 さらにこの靴には大体の検討はついている。

どうせ、雪なのだろうと俺は思いながら靴を脱いでリビングの方に向かう。
 リビングの方では、妹の声と俺が聞いたことがある声が楽しそうに喋っていた。

ドアを開けるとやはり居たのは先輩だった。

「お邪魔してますよ。ふふっ」

「どうぞどうぞ、っておい。何、人の家に勝手に入ってるんだよ!」

「いやぁー違うよ。お兄ちゃん! 私が家に入ってもいいと言ったんだよ」

「いやいや、恵美がそう言っても、ダメなもんはダメだ! 帰れ! これは、命令だ。帰れ!」

「そんな言い方……しなくてもお兄ちゃん……」

「いや……良いんですよ。義妹エミちゃん。
私は、もう実家に帰らせて頂きます……」と悲しげに言う先輩は何となくだが、自分でも引き止めざるおえない状況になってしまった。

「あぁー……もういいよ。いて、いいよ。
だけど、家の人に連絡しとけよ!」と俺。

「ハァーーイ」と子供の様に言う雪は可愛らしく感じた。

まさに、無邪気に遊ぶあの頃のエミを思い出す。

「ってか、先輩は朝からどうやって中に入ったんだよ?」

「あぁ、それはねぇ〜」

「えっ? 恵美はどうやって先輩が家に入ったのか? 
知っているのか?」

「うん。知ってるよ。ってか、さっきその話をしてたんだぁー」

「へぇー気になるなぁ。教えてくれよ」

「これを見て下さい」
 そう言って、先輩が取り出したのは鍵だった。

「…………」

「どうしたんですか?」

「何がどうしたんですか、だ! 馬鹿! お前それ人の家の合鍵だろ!」

「俺は別に良いんだが、恵美が怖がってるだろ?」

「全然怖くないよ。逆に雪ちゃんなら嬉しい」

「まぁー恵美が良いんなら良いけど。もう二度と合鍵は使うなよ? 良いな、分かったな!」

「はい。分かりました! 勿論、絶対・・使いません!」

「ん? 何か嫌な予感がしたんだが……まぁいい。
 それよりも先輩と恵美はいつからそんなに仲が良くなったんだ?」

「あぁーそれはね。朝だよ。あ、そっか。お兄ちゃんが学校に行った後だったもんね。恵美がね、歯磨き粉切れたから、探してたら雪ちゃんが歯磨き粉の場所知っててさ。
 もう、本当に助かったんだぁー」

「それは微笑ましいな。先輩。ありがとうございます……? 
って、おい! 普通に考えてなんでお前が知ってんだよ!」

「伊達にストーキングしてるだけの事はあるなって褒めて下さっても良いのに」

「褒めねぇーよ、誰も。それより何のためにストーキングしてんだよ?」

「勿論、愛の為です。私達、二人の愛を育む為の」

「へぇーそうなんだぁー。愛を育む前に亀裂ができると思うがな」

「亀裂なんて絶対起こさせませんよ。必ずにね」

「そのもしもの話なんですが、もしも俺が浮気とかしたらどういう事になりますかね?」

「その時はもちろん……血が飛び交うことでしょうね。
一方的にですけど」

彼女のニコニコ笑顔が一瞬鬼の形相に見えた気がしたが……気のせいだろう。

「あの、引きましたか?」
 普通にしとけば……結構可愛いと思うんだがな。

「個性的で面白い人だなぁーと思ってます」

「そ、それは良かったです」

✢✢✢
 先輩と妹と共にアイスやお菓子食ったりして、テレビを見始め、一時間半経った頃だろう。
 外は既に暗くなっている時間帯。
先輩がそろそろ家に帰ると言ったので家まで送ることにした。恵美に早めに帰ってくると言ったら茶化された。
 家を出て、数十メートル先に進むと二人の会話は途切れ、話すことが無くなる。
 これが俺等だ。
だがしかし、話が無いのは寂しいので自分から話しかけるとでもしよう。

「なぁ、前から聞きたかったんたけど何で偽彼氏ニセカレが必要なんだよ?」
 こういうのは確かにもっと早めに聞くべきだったのだが、言うタイミングが無かったのだ。

だからこんなタイミングになった……だが仕方ないか。

「聞きたいんですか?」

いつもの口調に戻り、単調になっている。

「あぁ、まぁーな。一応、偽彼氏ニセカレやってるし、お前が何の為に偽彼氏が必要なのか気になるからな」

右人差し指をデコに当て、考えるポーズを取り、よし決めた的なはっとした表情をして、

「私のボディーガードになって欲しかったんです」

は? ボディーガード?

貴方の身体を守る?
それって貴方の処女を守るっていう事でいいんですかね?
それとも普通に身体を守るということですか?

「普通に考えて、後者だろ!」と心の中でツッコミを入れて、

「ボディーガード?? どういうことだ?」と尋ねてみた。

「私が生徒会長をしているというのはご存知ですよね?」

こくっと首を下に下げる。

「まぁーな。寧ろ、そんなことぐらいしか先輩の情報は知らないって言っても過言では無いし。それで何でボディーガードが欲しかったんだよ?」

「それはですね、実はストーカー被害にあってるんです」

「す、ストーカーだと……」

「はい、多分だと思うんですが、私のファンだと思うんですが……困ってるんです」
寂しい顔をしながら彼女が言った。

「ふぅ〜ん、そうか。それは残念だったな」

「何なんですか? それが彼女に言う台詞ですか?」

「勘違いしないうちに言っておくが、お前はただの偽彼女な! それに俺にとっては、お前がストーカー行為にあっていようがストーカー行為にあっていなくてもどうでもいいんだよ」

「この……最低クズ人間……厨二病時代の例のアレを流してもいいんですか?」
 彼女がニコニコしながら言った。

たが、しかし俺もそんなに甘い人間ではない。

「そうか、やれるもんならやってみろよ。でもお前がその気なら俺も作戦があるんだがな」

「何が、あるんですか! 変な事は言わないでください!」

俺は自分のポケットの中に入れておいたボイスレコーダーを取り出す。

「フッフッフ……甘かったな。さっきの俺の家に不法侵入していた事を警察に届け出してもいいんだぞ」

彼女が下を向く。

ふっ、勝ったぜ。

「それで貴方は何がしたいんですか? 私のミラクルボディで何がしたいんですか? どうせ、いやらしい事をしたいんでしょ? そうですか……あなたも所詮、男性ですからね……期待していた私がバカでした……もういいです。もう気にしないでください」

お、おい……俺はそこまで言ってないだろ。

「ちょっと、落ち着け。とりあえず言えることは俺はお前に欲情してなねぇ~から」

「ちょっと待ってください! 私のような美少女が隣にいるというだけでも嬉しくないんですか? それに欲情しないと言われたら、結構ショックなんでやめてもらってもいいかなぁ?」

怒り口調でいつもより怖さ三倍増しの彼女の顔を見たくないので俺は彼女の顔から目を背け彼女に「ごめんなさい」と言う。

こういう場合は謝れば勝ちだ。

俺はそれを知っている。

どんな事でも謝れば解決するわけではないが、大きな喧嘩とかの発端などになるかもしれないのでできるだけ先に謝るべきだ。

それが篠山ササヤマ流人生成功法の一つである。

「それならボディーガードを頼んでもよろしいですか?」

彼女が不安そうな表情を一切してなく、元の美貌と自信溢れる彼女に戻った。

ど、どうしよう……するべきなのか?

ボディーガードとなると彼女に時間を割かなくてはならないーーそれはすなわち、アニメや漫画、はたまた小説などを見る時間が減る。

それは俺にとって自由時間が無くなるという事は俺の生活習慣が変わる事も意味している。

それ、やだ!

「頼んでもいいですよね?」

もう一度彼女が言った。

彼女の表情は少し口が引きつっていて、俺に目で何かを訴えていた。

それは断ったら、『あんたの学園生活グチャグチャにしてやるわよ』と語っているみたいだった。

こ、こいつ……悪い女だぜ。

それならもう、こう言うしかないじゃないか。

さぁ、皆さんご一緒に!!

「お願いします。やらせてください!」

こうして、俺は偽彼氏として……ボディーガードとして、彼女の盾として俺は働くことになったのであった。

ちょっと、待ってくれ。

俺って、偽彼氏というよりボディーガードという立場じゃダメなのか?

それに俺等の学校には【生徒会長、花園 雪】のファンクラブとかあるからそいつらに頼めばいいんじゃないか?

とか思ってしまった。

先にそれを考えて置けばよかったと少し後悔。

しかし、自分の口で「やらせてください」と言ってしまった以上はやらないとな。

俺はそう思い、彼女に微笑む。

彼女は俺の顔を見て、

「一段と増して、顔がキモいわね。
それと私、もうここで居るから。恵美ちゃんによろしくね」
と言い残して俺の前から立ち去った。

 自分から離れていく彼女の背中を見ながら俺は――。

「俺が助けれる範囲では必ず救ってやるから安心しろ」と呟いた。
 それはクソッタレな自分の世界を変えてくれた彼女に対する恩義なのかもしれない。
 もしくは恋心――?

「いや……そんなことは無いはずだ。多分……」

「女神と契約した俺と悪魔と契約した七人の女の子」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く