女神と契約した俺と悪魔と契約した七人の女の子
3
俺と花園雪が付き合い初めて二週間を過ぎようとしていたある日。勿論俺は花園雪に告白された次の日に桜に謝りに行こう行こうと思っていた。
しかし、しかしだ。
いつもいつもこの偽彼女《花園雪》のせいで俺は謝りに行きたくても行けなかったのだ。おまけに彼女は俺から避けているみたいだったので近づくことができなかった。
俺ってもしかして……嫌われてんのかな?
いや、嫌われたのか。
「はぁー。最悪だぜ」
自室のベットに大の字になって、呟く。
そろそろ起きて、学校に行く支度でもするとしよう。
そう思い、身体を起こした瞬間。
――ガチャガチャ。
明らかに何か物音がした。
「ん?なんだ?この音は?」
俺の両親は今、海外に旅行中で家には俺と妹しかいないはずなのだが妹がこんな、早い時間に起きているはずがない。今、海外に旅行中という如何にもラノベの主人公みたいな設定だけど俺には可愛い幼馴染は居ない。
「はぁー、おかしいぜ」
二つの意味のおかしいという言葉を胸に慌てて下に降りる。そして恐る恐る音がしている台所に向かうと、
「イタタ……手切っちゃったよぉ。
あっ……おはようございます! リクくん!」
そこには、制服にエプロン姿という花園雪がいた。
「あっ……うっ……うん……おはよう……」
とりあえず、挨拶は肝心だよな。
うんうん。挨拶は大事大事。
「って、おい!? いやいやいや……今自分でこれが当たり前の日常だと思ったけど、違うよね? これは違うよね?
どう勘違いしてもどう解釈してもおかしいよね?
朝起きたら、家族ではない女の子が料理作ってるとか明らかにおかしいだろ! ラノベかよぉー!」
「ん? どうしたの? いつもこうじゃん……」
真面目な顔で先輩が応える。
「えっ? そうだったっけ?」
「うん。そうだよ! もう~リクくんったら…」
少し照れながら雪が言った。
「わかった ちょっと顔洗ってくるわ」
そう言って、俺は洗面所へ向かい顔を洗う。
二週間の間に色々と時間が進み、俺達の気持ちの進展を進んだのだろう。
水はとても冷たく、そして目にしみる。
あぁー気持ちいい………最高だぜ……
「…………」
鏡を見て、我に振り返る。
「いやいや……普通に考えてなんであいつ家にいるんだよ!」
そして俺は慌てて台所に向かう。
「おい!これはどういうことだ?」
「どういう訳もないわよ。ただ好きな人に朝ご飯を作りに来ただけよ」
「あぁーそうか……それなら納得! っていくかバカ!」
我ながらナイスノリツッコミだと思う。
「テヘッ許してちょ!」
右手をピースをして少し前に体重をかけて、胸元が見える。
「可愛いけど、なんかうざい……」
ちょっと頬を赤くしながら俺は言った。
というか今更だけど女の子のエプロン姿を見れるというのはそれはそれで中々ポイントが高いのではないのだろうか。
「うざいは余計だぞっ!」
「はいはい……わかったから理由はわかった。
ならどうやって入った?」
「うーん……っとね……私は魔法少女だから玄関の鍵を魔法で開けたの!」
「へぇーそうか……魔法少女ねぇー……そんな嘘で騙されるほど俺は馬鹿じゃねぇーぞ」
「はいはい……わかりましたよ。もう、ユーモアのユも分からないぼっちはこれだから困るわね。普通にドアが開いてたわよ」
で、出たな。本性。
彼女について少しばかり説明を入れておこう。
彼女の名は――花園雪。現生徒会長だ。
歳は俺の一個上であり、生徒や先生からの評判は高い。
表の顔は皆の相談に良く乗り、皆のからの人望も厚い人だが、裏の顔は口がめちゃくちゃ悪く、ぼっちの俺が昔書いていた黒歴史本をどこからか入手してそれをネタに俺を扱き使う悪魔ということにオレペディアに二週間前載せた、というのが俺の知り得る彼女に関する事だ。
それよりも普通にドアが開いていただとそんなことは無い。昨日の夜は確かに玄関は閉めたはず。
俺がそんな大事な場所を閉め忘れるはずが無い。
で、でも……忘れていたのかもしれないし。
「あぁーごめん。それ嘘」
「なんだ……嘘かよ…」
ほっと一安心。
「でも私は玄関から入ってきたわ。」
「ん? どういうこと?」
「あっ……ちなみに私は鍵をかけたわけじゃないからちゃんと貴方は鍵をかけて寝ていたわよ」
さらに謎が深まる。
「ふーん……なるほどねぇー……さっぱりわからん……」
「やはり君は単細胞のようだね、ワトソン君」
「あの……そんな言い方しなくてもよくね?」
「ダメよ。貴方は私の彼氏なのよ。もっとシャキッとしなさいよ」
もっとシャキッとするのとワトソン君になるのは別だと思うけどな。
「はいはい……わかりましたよ。まぁ〜俺は偽彼氏ですけどね」
皮肉たっぷりに言ってやった。
これ日頃の恨みとかも入っている。
先輩は偽彼女さんの顔が少し引きつっていたからざまみろと思ってしまった。
ドアが開いて、第三者が現れる。
「おはーよう……お兄ちゃん」
妹の恵美が起きてきたようだ。
中学二年生の彼女は俺とは違い、若狭の至り病――つまる所、厨二病には感染していないので一安心だ。
「えっ? 誰? 愛人? も、もっ、もしかしてこれは修羅場!」
先輩が格闘するポーズを取っていたので、誤解を解く。
「いやいや、違いますよ。先輩……落ち着いて」
「えっ? どういうこと?」
首を傾げながら彼女が言った。
「こいつは俺の妹だ! 恵美挨拶をしろ」
「はぁ〜い、お兄ちゃん。どうも初めまして妹の篠山恵美です。よろしくお願いします」
「あ…あの……それは失礼しました。私はり……リクくんとお付き合いさせて頂いている。花園雪と申します。よろしくお願いします」
初めて、生徒会長が緊張している所を見た。
意外とこういう時は緊張するんだな。
「いえいえこちらこそ」とエミは言いながらもなぜか悲しそうな顔をしていた。
なぜだろうか?
「あのー……朝ご飯の支度ができましたので朝ご飯をみんなで食べませんか?」
「「さんせーい」」
そして俺等は朝ご飯を食べる事になった。
ちなみに俺はユキが作るご飯を初めて食べる。
今日のメニューはご飯と味噌汁と焼き魚と玉子焼きという学園ドラマ定番メニューだが、こんな美しい人が作るご飯だけあって食欲をそそるものがあった。
「「いただきまぁーす」」と俺とエミ。
「………」
「えっ?どうしたの? 不味かった?」
「………」
「どうしたのよ……何か言ってよ」
「う……うまい……あの……おかわりあるか?」と俺。
「うん! あるよ! たくさん食べてね。エミちゃんはどうだったかしら?」
「クッ………負けた……」
恵美がぼそっと誰にも聞こえないように言った。
「ん? どうしたの?」
「とってもおいしいです……」
ニコッと恵美が笑いながら答えた。
それはよかったわ沢山食べてね」
生徒会長のスマイルが恵美に飛んできたが、それを普通に避ける恵美。
あまりにも美味しくてびっくりした。
最初は毒でも入ってんじゃねぇーかなとか思っていた俺が馬鹿でした。
✢✢✢
「行ってきますー」と一言恵美に伝え俺は家を出た。
先輩は茶碗を洗ってから家を出ると言っていたのでまだ一緒に家を出ていない。
本当は一緒に家を出る予定だったが、「ベタベタするのはだるい」と言われ別々に登校となった。
っていうか、元々ベタベタするのがだるいなら俺の家に来んなよ、と言いたいが絶対に彼女の前ではこんな事は言えない。
そんなことを思って、道を曲がると何かにぶつかった。
ぶつかったモノに前屈みになって倒れ、俺の手にはプリンのようにぶるるんとしていて少しの温かみを感じた。
それにぶつかった瞬間「むにゅ」というような効果音があったかもしれない。プリンの様に柔らかくて、少しの温かみ、『むにゅ』という効果音。
「ありがとうございました!」
俺は自分がぶつかった人に謝ろうと口を開いたつもりだっのだが、俺の口から出た言葉は建前よりも本音が先立った。そんな言葉を言ってしまった自分への反省と彼女にちゃんと謝ろうと俺は押し倒している彼女の顔の方へ視線を移す。そこには顔を真っ赤にしている金髪碧眼美少女が倒れ込んでいた。
彼女から俺への恐怖心と殺気に満ち溢れた何かを感じる。
「へ、へんたいぃーーーーーー」
学校に登校している人は誰一人いないが、近所の人に聞かれたら俺は痴漢にしか見えない。
「ちょっと待て!」
「こ、こっちに来んな! 変態!」
彼女が俺に警戒している。
そりゃそうだ。
「俺の話を聞いてくれよ」
俺が近づく。
「ぎやぁぁぁぁぁぁぁぁーーーー」
彼女が猛ダッシュで逃げた。
俺は彼女を追いかけようとしたが、追いかけれなかった。
人間って本当に危険な時ってこんなにスピードが出るんですね。
***
その後、特に登校中には何も無く、いつもと変わらない校門をくぐり自分の靴箱を開ける。
その中には『死ね』や『会長は俺のもんだ!』とかいう紙と『付き合って下さい』という紙もあった。
まぁ、これが俺の日常である。
俺はその紙を自分の鞄の中に入れる。
鞄に入れるまでの作業はもう慣れたもんだ。
靴からシューズに履き替えて、俺は自分の教室である、1年B組に向かう。
ドアを開けるーーそこにはあの娘がいた。
「あっ!! あんた、朝のへ……」
俺が彼女の口をさっと押さえ込み黙らせた。
「お、篠山と知り合いだったのかぁ〜」
担任である、本田鈴がニヤニヤしながら言った。
なんだよ……こんなニヤニヤしやがって……。
「……うっ……苦しい」
俺の腕をボンボン叩く金髪碧眼美少女。
「ご、ごめん……」
俺が言うと彼女が俺から避けてこう言った。
「ごめんじゃないわよ……もう……」
「お前ら仲良しだな、ははっ」と鈴先生が笑いながら言った。
「先生、こいつと私は仲良くなんてありません!! だってこいつ……」
彼女が言おうとしたがーー言うのを止めた。
「まぁ、いいわ。私の名前は音坂琴美、これからよろしくね」
彼女が教室の皆に挨拶をする。
男子共の飢えた声が響く。
ったく……この学校は男共は飢え過ぎだろ。
性欲万歳かよ。全くよぉー。
「っていうか……転校生なのか?」
俺が彼女に向かって言った。
「そうよ……へ、あんた名前なんて言うの?」
「俺の名前は篠山陸空だ。
これからよろしくな!!」
俺が彼女にイケメンスマイルを送りながら言った。
「まぁ、よろしく」
彼女がそう言いながら、自分の席を担任である鈴先生に聞いて席に着く。
彼女が座ったのは窓側の1番後ろから2番目の席だった。
ちょっと、待てよ!
俺の隣かよ!!
「ほら、ささやまぁー。お前も座れ」
鈴先生に言われ、俺は自分の席へ向かう。
「げっ!?」という様な顔をした音坂を見て、俺は苦笑いしながら座る。
「あんた……何? 狙ってんの?」
本当に嫌そうな顔をしながら彼女が言う。
「いや、そんなわけでは……っていうか前から俺の席ここだし!!」
「へぇ〜、あんたのせいではないのね。それは良かったわ」
彼女が少し一安心したような顔をして、頬が紅くなった。
しかし、しかしだ。
いつもいつもこの偽彼女《花園雪》のせいで俺は謝りに行きたくても行けなかったのだ。おまけに彼女は俺から避けているみたいだったので近づくことができなかった。
俺ってもしかして……嫌われてんのかな?
いや、嫌われたのか。
「はぁー。最悪だぜ」
自室のベットに大の字になって、呟く。
そろそろ起きて、学校に行く支度でもするとしよう。
そう思い、身体を起こした瞬間。
――ガチャガチャ。
明らかに何か物音がした。
「ん?なんだ?この音は?」
俺の両親は今、海外に旅行中で家には俺と妹しかいないはずなのだが妹がこんな、早い時間に起きているはずがない。今、海外に旅行中という如何にもラノベの主人公みたいな設定だけど俺には可愛い幼馴染は居ない。
「はぁー、おかしいぜ」
二つの意味のおかしいという言葉を胸に慌てて下に降りる。そして恐る恐る音がしている台所に向かうと、
「イタタ……手切っちゃったよぉ。
あっ……おはようございます! リクくん!」
そこには、制服にエプロン姿という花園雪がいた。
「あっ……うっ……うん……おはよう……」
とりあえず、挨拶は肝心だよな。
うんうん。挨拶は大事大事。
「って、おい!? いやいやいや……今自分でこれが当たり前の日常だと思ったけど、違うよね? これは違うよね?
どう勘違いしてもどう解釈してもおかしいよね?
朝起きたら、家族ではない女の子が料理作ってるとか明らかにおかしいだろ! ラノベかよぉー!」
「ん? どうしたの? いつもこうじゃん……」
真面目な顔で先輩が応える。
「えっ? そうだったっけ?」
「うん。そうだよ! もう~リクくんったら…」
少し照れながら雪が言った。
「わかった ちょっと顔洗ってくるわ」
そう言って、俺は洗面所へ向かい顔を洗う。
二週間の間に色々と時間が進み、俺達の気持ちの進展を進んだのだろう。
水はとても冷たく、そして目にしみる。
あぁー気持ちいい………最高だぜ……
「…………」
鏡を見て、我に振り返る。
「いやいや……普通に考えてなんであいつ家にいるんだよ!」
そして俺は慌てて台所に向かう。
「おい!これはどういうことだ?」
「どういう訳もないわよ。ただ好きな人に朝ご飯を作りに来ただけよ」
「あぁーそうか……それなら納得! っていくかバカ!」
我ながらナイスノリツッコミだと思う。
「テヘッ許してちょ!」
右手をピースをして少し前に体重をかけて、胸元が見える。
「可愛いけど、なんかうざい……」
ちょっと頬を赤くしながら俺は言った。
というか今更だけど女の子のエプロン姿を見れるというのはそれはそれで中々ポイントが高いのではないのだろうか。
「うざいは余計だぞっ!」
「はいはい……わかったから理由はわかった。
ならどうやって入った?」
「うーん……っとね……私は魔法少女だから玄関の鍵を魔法で開けたの!」
「へぇーそうか……魔法少女ねぇー……そんな嘘で騙されるほど俺は馬鹿じゃねぇーぞ」
「はいはい……わかりましたよ。もう、ユーモアのユも分からないぼっちはこれだから困るわね。普通にドアが開いてたわよ」
で、出たな。本性。
彼女について少しばかり説明を入れておこう。
彼女の名は――花園雪。現生徒会長だ。
歳は俺の一個上であり、生徒や先生からの評判は高い。
表の顔は皆の相談に良く乗り、皆のからの人望も厚い人だが、裏の顔は口がめちゃくちゃ悪く、ぼっちの俺が昔書いていた黒歴史本をどこからか入手してそれをネタに俺を扱き使う悪魔ということにオレペディアに二週間前載せた、というのが俺の知り得る彼女に関する事だ。
それよりも普通にドアが開いていただとそんなことは無い。昨日の夜は確かに玄関は閉めたはず。
俺がそんな大事な場所を閉め忘れるはずが無い。
で、でも……忘れていたのかもしれないし。
「あぁーごめん。それ嘘」
「なんだ……嘘かよ…」
ほっと一安心。
「でも私は玄関から入ってきたわ。」
「ん? どういうこと?」
「あっ……ちなみに私は鍵をかけたわけじゃないからちゃんと貴方は鍵をかけて寝ていたわよ」
さらに謎が深まる。
「ふーん……なるほどねぇー……さっぱりわからん……」
「やはり君は単細胞のようだね、ワトソン君」
「あの……そんな言い方しなくてもよくね?」
「ダメよ。貴方は私の彼氏なのよ。もっとシャキッとしなさいよ」
もっとシャキッとするのとワトソン君になるのは別だと思うけどな。
「はいはい……わかりましたよ。まぁ〜俺は偽彼氏ですけどね」
皮肉たっぷりに言ってやった。
これ日頃の恨みとかも入っている。
先輩は偽彼女さんの顔が少し引きつっていたからざまみろと思ってしまった。
ドアが開いて、第三者が現れる。
「おはーよう……お兄ちゃん」
妹の恵美が起きてきたようだ。
中学二年生の彼女は俺とは違い、若狭の至り病――つまる所、厨二病には感染していないので一安心だ。
「えっ? 誰? 愛人? も、もっ、もしかしてこれは修羅場!」
先輩が格闘するポーズを取っていたので、誤解を解く。
「いやいや、違いますよ。先輩……落ち着いて」
「えっ? どういうこと?」
首を傾げながら彼女が言った。
「こいつは俺の妹だ! 恵美挨拶をしろ」
「はぁ〜い、お兄ちゃん。どうも初めまして妹の篠山恵美です。よろしくお願いします」
「あ…あの……それは失礼しました。私はり……リクくんとお付き合いさせて頂いている。花園雪と申します。よろしくお願いします」
初めて、生徒会長が緊張している所を見た。
意外とこういう時は緊張するんだな。
「いえいえこちらこそ」とエミは言いながらもなぜか悲しそうな顔をしていた。
なぜだろうか?
「あのー……朝ご飯の支度ができましたので朝ご飯をみんなで食べませんか?」
「「さんせーい」」
そして俺等は朝ご飯を食べる事になった。
ちなみに俺はユキが作るご飯を初めて食べる。
今日のメニューはご飯と味噌汁と焼き魚と玉子焼きという学園ドラマ定番メニューだが、こんな美しい人が作るご飯だけあって食欲をそそるものがあった。
「「いただきまぁーす」」と俺とエミ。
「………」
「えっ?どうしたの? 不味かった?」
「………」
「どうしたのよ……何か言ってよ」
「う……うまい……あの……おかわりあるか?」と俺。
「うん! あるよ! たくさん食べてね。エミちゃんはどうだったかしら?」
「クッ………負けた……」
恵美がぼそっと誰にも聞こえないように言った。
「ん? どうしたの?」
「とってもおいしいです……」
ニコッと恵美が笑いながら答えた。
それはよかったわ沢山食べてね」
生徒会長のスマイルが恵美に飛んできたが、それを普通に避ける恵美。
あまりにも美味しくてびっくりした。
最初は毒でも入ってんじゃねぇーかなとか思っていた俺が馬鹿でした。
✢✢✢
「行ってきますー」と一言恵美に伝え俺は家を出た。
先輩は茶碗を洗ってから家を出ると言っていたのでまだ一緒に家を出ていない。
本当は一緒に家を出る予定だったが、「ベタベタするのはだるい」と言われ別々に登校となった。
っていうか、元々ベタベタするのがだるいなら俺の家に来んなよ、と言いたいが絶対に彼女の前ではこんな事は言えない。
そんなことを思って、道を曲がると何かにぶつかった。
ぶつかったモノに前屈みになって倒れ、俺の手にはプリンのようにぶるるんとしていて少しの温かみを感じた。
それにぶつかった瞬間「むにゅ」というような効果音があったかもしれない。プリンの様に柔らかくて、少しの温かみ、『むにゅ』という効果音。
「ありがとうございました!」
俺は自分がぶつかった人に謝ろうと口を開いたつもりだっのだが、俺の口から出た言葉は建前よりも本音が先立った。そんな言葉を言ってしまった自分への反省と彼女にちゃんと謝ろうと俺は押し倒している彼女の顔の方へ視線を移す。そこには顔を真っ赤にしている金髪碧眼美少女が倒れ込んでいた。
彼女から俺への恐怖心と殺気に満ち溢れた何かを感じる。
「へ、へんたいぃーーーーーー」
学校に登校している人は誰一人いないが、近所の人に聞かれたら俺は痴漢にしか見えない。
「ちょっと待て!」
「こ、こっちに来んな! 変態!」
彼女が俺に警戒している。
そりゃそうだ。
「俺の話を聞いてくれよ」
俺が近づく。
「ぎやぁぁぁぁぁぁぁぁーーーー」
彼女が猛ダッシュで逃げた。
俺は彼女を追いかけようとしたが、追いかけれなかった。
人間って本当に危険な時ってこんなにスピードが出るんですね。
***
その後、特に登校中には何も無く、いつもと変わらない校門をくぐり自分の靴箱を開ける。
その中には『死ね』や『会長は俺のもんだ!』とかいう紙と『付き合って下さい』という紙もあった。
まぁ、これが俺の日常である。
俺はその紙を自分の鞄の中に入れる。
鞄に入れるまでの作業はもう慣れたもんだ。
靴からシューズに履き替えて、俺は自分の教室である、1年B組に向かう。
ドアを開けるーーそこにはあの娘がいた。
「あっ!! あんた、朝のへ……」
俺が彼女の口をさっと押さえ込み黙らせた。
「お、篠山と知り合いだったのかぁ〜」
担任である、本田鈴がニヤニヤしながら言った。
なんだよ……こんなニヤニヤしやがって……。
「……うっ……苦しい」
俺の腕をボンボン叩く金髪碧眼美少女。
「ご、ごめん……」
俺が言うと彼女が俺から避けてこう言った。
「ごめんじゃないわよ……もう……」
「お前ら仲良しだな、ははっ」と鈴先生が笑いながら言った。
「先生、こいつと私は仲良くなんてありません!! だってこいつ……」
彼女が言おうとしたがーー言うのを止めた。
「まぁ、いいわ。私の名前は音坂琴美、これからよろしくね」
彼女が教室の皆に挨拶をする。
男子共の飢えた声が響く。
ったく……この学校は男共は飢え過ぎだろ。
性欲万歳かよ。全くよぉー。
「っていうか……転校生なのか?」
俺が彼女に向かって言った。
「そうよ……へ、あんた名前なんて言うの?」
「俺の名前は篠山陸空だ。
これからよろしくな!!」
俺が彼女にイケメンスマイルを送りながら言った。
「まぁ、よろしく」
彼女がそう言いながら、自分の席を担任である鈴先生に聞いて席に着く。
彼女が座ったのは窓側の1番後ろから2番目の席だった。
ちょっと、待てよ!
俺の隣かよ!!
「ほら、ささやまぁー。お前も座れ」
鈴先生に言われ、俺は自分の席へ向かう。
「げっ!?」という様な顔をした音坂を見て、俺は苦笑いしながら座る。
「あんた……何? 狙ってんの?」
本当に嫌そうな顔をしながら彼女が言う。
「いや、そんなわけでは……っていうか前から俺の席ここだし!!」
「へぇ〜、あんたのせいではないのね。それは良かったわ」
彼女が少し一安心したような顔をして、頬が紅くなった。
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