女神と契約した俺と悪魔と契約した七人の女の子
1
夏の暑さが残る太陽から、水分と元気を奪われながらの学校登校。
制服はまだ着慣れていない。
白のYシャツが身体から溢れ出す汗を吸収して着心地の悪さが増す。
俺の名前は、篠山陸空。
何を隠そう俺は、転校生だ。
転校生という言葉がいつまで有効なのかは定かでは無いが、まだ夏休みが終わってそんなに時間は経過していないので使っても良いだろう。
転校初日は一年生の二学期という微妙な時期もあり『謎の転校生』と呼ばれていた気がする。
しかし、現実ってのは上手くはいかない。
『謎の転校生』から『ぼっちのクラスメイト』という風になるのはそんなに時間が掛かる事は無かった。
真面目に授業は受け、昼食は好きなアニソンをイヤホンで聞きながら、パンを齧り、紙パックのカフェオレで流し込む。
そんな日々の繰り返し。
入学初日に誓った『リア充になるぜ!』という決意表明は無慈悲にも自分の部屋に飾られたままだ。
ごめんよ。あの時の俺。
もうお前の夢は叶いそうにはねぇーよ。
空になった紙パックとパンのゴミを持って、教室を出る。
教室を出て数歩行くとゴミ箱があり、そこにゴミを放り投げる。
「ねぇねぇ、図書室行かない?」
「いいね! 行こ行こ!」
女の子が二人、手を握って図書室へと向かう。俺はそんな二人を見て、百合最高と思いながら考えてみる。
図書室か。
もしかしたらラノベがあるかもしれん。
行ってみる価値はある。それに漫画もあるかもな。
俺はそう思って、女の子の後ろをつけた。
時折、後ろを女の子達からチラチラ見られたが無事辿り着くことができた。
メンタル的には無事では無かったが。
図書室は思っていたよりも広く、幅広いジャンルの本が置かれていた。人は静かに本を読んでおり、スクールカースト最上級の奴等は居ない。もしかしたらここはユートピアなのかもしれない。
漫画は超大物漫画家のSF作品と歴史漫画。以前の学校にも置かれていたものしかなかった。悪く言うと品揃えが悪い。
もしかして図書室の掟とかで必ずこれは置くべきと決まっているのだろうか。
しかし残念な事にここにある漫画は読み終えているので需要は無さそうだ。
もしも図書室相談ボックスという名の目安箱があるならば『漫画増やせ』と書いてやろう。
次はお待ちかね、ラノベのコーナー。
この図書室はオタクの為か、それともオタクを迫害しているのか、ラノベのコーナーと一般文芸とを分けていた。
ラノベと一般文芸の違いは無いだろと校内放送を貸し切って、全校生徒諸君、特に図書委員にクレームを入れたいぐらいだ。
ニヤニヤしながら物色していると、図書室のドアを開け、一人の女の子が入ってきた。
彼女が俺の側に近づくにつれ、彼女の姿がはっきりと見えた。
俺は時が止まったかのように息をするのを忘れていた。
これぞ、まさに運命的な出逢いとでも言うべきか。いや再開とでも言うべきか。
何を俺は言っているのだ。
再開など有り得ない。
「あのぉ〜? どうかしましたか?」
彼女をじっと見つめていたせいか喋りかけられた。
「いや……ちょっとね」
声までも似ている。
「大丈夫ですか? 顔色が悪いですよ」
彼女が俺に近寄って、ニコッと笑う。
仕草まで似ている。
「ゆ、ゆめ!」
俺は勢い余って、彼女の肩を掴んでいた。
驚いた顔をした彼女は「私の名前は桜ですよ」と顔を引きつらせた。
「ご、ごめん……その掴んだりして。
それに馬鹿デカイ声で」
「ビックリしちゃいました」
彼女がクスクスと笑い始める。
俺もそれに釣られて笑う。
「それより……ゆめって誰ですか?」
彼女が興味津々な目で尋ねてきた。
「あぁー。知り合いだよ」
俺はそう言って、誤魔化した。
あまりにも似すぎている。
瓜二つとしか言いようが無い。
だが彼女はゆめではない。
それは分かりきっている。
だけど俺はそんな彼女をただの瓜二つには見えなかった。
「あのさ、俺の名前は篠山陸空って言うんだ。よろしく」
あまりにもベタ過ぎたか。
でもな、こんな感じが一番好感度高いんだよね。
「私なんかと仲良くしてくれるんですか?」と彼女は顔を紅くし涙を流した。
あまりにも好感度高過ぎだろ。
そのせいか、周りのみんなからは俺が彼女を泣かしたみたいに見られているが、俺はそんな事を気にせずに「寧ろ、俺と仲良くしてくれるのか?」と尋ねる。
すると、彼女は満面の笑みを零して「はぁい」と小さな声で答えた。
「あの一ついいですか?」こちらを見てもじもじしながら桜が言った。
「何?」
「私と放課後、会ってくれませんか?」
「えっ……別にいいけど突然だな……」
「すいません。私、友達と一緒に帰るのが夢なんです!」
俺はこの言葉を察した。
桜には友達がいない。
「あぁ、いいよ。俺もこの学校に来て、初めての友達だしな」
こうして、俺と桜の放課後の予定が決定した。
俺にも春がやってきたようだ。
***
昼休みが終わり、自分の教室に戻る。
自分の座席に座り、次の授業の準備でもしようと思っていた俺に衝撃の事実を告げられた。
「生徒会長の花園先輩が貴方の事を好きっぽいから、放課後、体育館の裏で待ってますということです」とクラスの女子から事務的に言われ、頷いた。
えっ? それよりちょっと待った!
好きっぽいから?
体育館の裏で待ってますだと!?
何なの! この展開!
転校してきて、正解だった。
俺はこの日初めてそう思った。
制服はまだ着慣れていない。
白のYシャツが身体から溢れ出す汗を吸収して着心地の悪さが増す。
俺の名前は、篠山陸空。
何を隠そう俺は、転校生だ。
転校生という言葉がいつまで有効なのかは定かでは無いが、まだ夏休みが終わってそんなに時間は経過していないので使っても良いだろう。
転校初日は一年生の二学期という微妙な時期もあり『謎の転校生』と呼ばれていた気がする。
しかし、現実ってのは上手くはいかない。
『謎の転校生』から『ぼっちのクラスメイト』という風になるのはそんなに時間が掛かる事は無かった。
真面目に授業は受け、昼食は好きなアニソンをイヤホンで聞きながら、パンを齧り、紙パックのカフェオレで流し込む。
そんな日々の繰り返し。
入学初日に誓った『リア充になるぜ!』という決意表明は無慈悲にも自分の部屋に飾られたままだ。
ごめんよ。あの時の俺。
もうお前の夢は叶いそうにはねぇーよ。
空になった紙パックとパンのゴミを持って、教室を出る。
教室を出て数歩行くとゴミ箱があり、そこにゴミを放り投げる。
「ねぇねぇ、図書室行かない?」
「いいね! 行こ行こ!」
女の子が二人、手を握って図書室へと向かう。俺はそんな二人を見て、百合最高と思いながら考えてみる。
図書室か。
もしかしたらラノベがあるかもしれん。
行ってみる価値はある。それに漫画もあるかもな。
俺はそう思って、女の子の後ろをつけた。
時折、後ろを女の子達からチラチラ見られたが無事辿り着くことができた。
メンタル的には無事では無かったが。
図書室は思っていたよりも広く、幅広いジャンルの本が置かれていた。人は静かに本を読んでおり、スクールカースト最上級の奴等は居ない。もしかしたらここはユートピアなのかもしれない。
漫画は超大物漫画家のSF作品と歴史漫画。以前の学校にも置かれていたものしかなかった。悪く言うと品揃えが悪い。
もしかして図書室の掟とかで必ずこれは置くべきと決まっているのだろうか。
しかし残念な事にここにある漫画は読み終えているので需要は無さそうだ。
もしも図書室相談ボックスという名の目安箱があるならば『漫画増やせ』と書いてやろう。
次はお待ちかね、ラノベのコーナー。
この図書室はオタクの為か、それともオタクを迫害しているのか、ラノベのコーナーと一般文芸とを分けていた。
ラノベと一般文芸の違いは無いだろと校内放送を貸し切って、全校生徒諸君、特に図書委員にクレームを入れたいぐらいだ。
ニヤニヤしながら物色していると、図書室のドアを開け、一人の女の子が入ってきた。
彼女が俺の側に近づくにつれ、彼女の姿がはっきりと見えた。
俺は時が止まったかのように息をするのを忘れていた。
これぞ、まさに運命的な出逢いとでも言うべきか。いや再開とでも言うべきか。
何を俺は言っているのだ。
再開など有り得ない。
「あのぉ〜? どうかしましたか?」
彼女をじっと見つめていたせいか喋りかけられた。
「いや……ちょっとね」
声までも似ている。
「大丈夫ですか? 顔色が悪いですよ」
彼女が俺に近寄って、ニコッと笑う。
仕草まで似ている。
「ゆ、ゆめ!」
俺は勢い余って、彼女の肩を掴んでいた。
驚いた顔をした彼女は「私の名前は桜ですよ」と顔を引きつらせた。
「ご、ごめん……その掴んだりして。
それに馬鹿デカイ声で」
「ビックリしちゃいました」
彼女がクスクスと笑い始める。
俺もそれに釣られて笑う。
「それより……ゆめって誰ですか?」
彼女が興味津々な目で尋ねてきた。
「あぁー。知り合いだよ」
俺はそう言って、誤魔化した。
あまりにも似すぎている。
瓜二つとしか言いようが無い。
だが彼女はゆめではない。
それは分かりきっている。
だけど俺はそんな彼女をただの瓜二つには見えなかった。
「あのさ、俺の名前は篠山陸空って言うんだ。よろしく」
あまりにもベタ過ぎたか。
でもな、こんな感じが一番好感度高いんだよね。
「私なんかと仲良くしてくれるんですか?」と彼女は顔を紅くし涙を流した。
あまりにも好感度高過ぎだろ。
そのせいか、周りのみんなからは俺が彼女を泣かしたみたいに見られているが、俺はそんな事を気にせずに「寧ろ、俺と仲良くしてくれるのか?」と尋ねる。
すると、彼女は満面の笑みを零して「はぁい」と小さな声で答えた。
「あの一ついいですか?」こちらを見てもじもじしながら桜が言った。
「何?」
「私と放課後、会ってくれませんか?」
「えっ……別にいいけど突然だな……」
「すいません。私、友達と一緒に帰るのが夢なんです!」
俺はこの言葉を察した。
桜には友達がいない。
「あぁ、いいよ。俺もこの学校に来て、初めての友達だしな」
こうして、俺と桜の放課後の予定が決定した。
俺にも春がやってきたようだ。
***
昼休みが終わり、自分の教室に戻る。
自分の座席に座り、次の授業の準備でもしようと思っていた俺に衝撃の事実を告げられた。
「生徒会長の花園先輩が貴方の事を好きっぽいから、放課後、体育館の裏で待ってますということです」とクラスの女子から事務的に言われ、頷いた。
えっ? それよりちょっと待った!
好きっぽいから?
体育館の裏で待ってますだと!?
何なの! この展開!
転校してきて、正解だった。
俺はこの日初めてそう思った。
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