【コラボ企画】シャッフルワールド!!×同居人はドラゴンねえちゃん
第12話 京山踏索
京都のとある山奥に俺たちは足を踏み入れていた。
登山メンバーは俺と不破さん、それと葛城の三人だ。とばりさんは虹色の水晶を解析するために自宅の研究室に籠り、風月はその手伝い。アルヴィーとまり子ちゃんはミスター・レオ一派がとばり邸を襲う可能性を考えて護衛として残った。
地元民でもない俺たちが迷うことなく目的地へ辿り着けたのは奇跡だった――ということはなく、普通にタクシーの運ちゃんに行き先を告げて連れてってもらいました。
でもそっからは自分たちの足だ。監査官やらエスパーやらで体力に心配のいらない俺たちだが、広い山中を闇雲に探すことになるため骨が折れる。どうせならあの伊東って人に案内を頼んでおけばよかったな。
「おい零児、本当にここで合ってんだろうな?」
二時間くらい山道を歩き回ったところで不破さんが気だるげに訊いてきた。
「タクシーの運転手に訊いたんだから間違いない、はず」
俺は伊東さんから転送してもらった写メデータを確認する。山々の緑に囲まれた中に不釣り合いなほどメカメカしい機械の門が佇んでいる。伊東さん曰く門はもうなくなっているらしいので、それ自体を目印に捜すことはできない。
となれば、周りの風景か。二ヶ月前だから、若干景観は変わってそうだが……。
「あの、ここ、もしかして谷になっているのではありませんか?」
横から携帯を覗いていた葛城が画面の端を指差した。同じ携帯を覗いてるもんだから、その、顔が無防備に近い。山歩きで汗を掻いているはずなのに、植物系のいい匂いがするのは彼女が植物使いのエスパーだからかな?
「写真の枠外なのでわかりづらいですが、地面がここで途切れているように思えます」
言われてみれば、確かにそうだ。人工門の横は崖になっているのかもしれない。それも垂直レベルの急な崖だ。
納得したように不破さんが頷く。
「てことは、川だな。川を見つけて上流に向かってりゃそのうち着くかもしれん」
「どうやって川を見つけるんだ?」
「どうやってって……ほらアレだよ。山と山の間には川があるとかなんとか言うじゃねえか。なあ」
……不破さん、頼りないなぁ。
それに崖の下が川だって確証もない。地震とかで崩れたりした場所かもしれんし。
「川でしたら、ここから北へ少し向かった先にあるみたいですよ」
「「え?」」
あっさり過ぎるくらいあっさりと告げた葛城に、俺と不破さんのマヌケな声が重なった。
葛城は近くにある背の低い木の葉っぱを指で弄りつつ、さらに情報を言葉にしていく。
「それなりに急な渓流のようですね。最近雨でも降ったのでしょうか、水量がやや多いように思えます。川の周辺は切り立った崖になっているようですわ」
「なんでそんなことがわかるんだ?」
訊ねると、葛城は葉っぱから手を放して笑顔を見せた。
「わたくし、植物を介して周辺の探索を行えるんです。シェイドとの戦闘ではあまり役に立たない能力なんですが、こういう植物の生い茂る山奥での探索はけっこう得意なんです」
「待ってくれよあずみちゃん、それなら二時間歩きっぱなしじゃなくて最初からそうしてりゃよかったんじゃねえのか?」
「一応やってました。ですが明確な情報が『不思議な門』だけでしたので」
「当の門が存在しないとなれば、探知能力はその時点じゃ意味をなさないだろうな」
川よりも崖を見つけてくれたのが大きい。彼女の口ぶりからするとそう遠くではないようだし。
「葛城、案内頼めるか?」
「承りました」
葛城は首肯すると、今まで歩いてきた山道を外れて道なき道を進もうとした。
その時だった。
木々の影という影から、日本の山には似つかわしくないメスライオンの群れが飛び出してきた。
「シェイドですわ!」
「こいつら、ミスター・レオの配下だな」
葛城と不破さんが反射的に戦闘態勢を取る。流石は現役エスパー。俺も負けちゃいられない。
〈魔武具生成〉――長巻。
三尺ほどの幅広い刀身に四尺ほどの長柄をした武器だ。形状は薙刀によく似ているものの、野太刀の刃根元部分も握れるように巻物がついているところは大きく異なる。非常に重い武器だが使い勝手はよく、『槍に慣れぬ者は長巻を使え』と戦国時代に言われていたほどだ。
「不破さん、どうやらここで間違いなかったみたいだな」
「らしいな!」
最初に飛びかかってきたライオン型シェイドを不破さんがランスの一撃で薙ぎ飛ばした。それを合図に一斉に他のライオン型シェイドたちも躍りかかってくる。が、不破さんのランスと雷撃に吹っ飛ばされ、葛城のフェンシングソードに貫かれ、俺の長巻に両断される。
一対多の苦手な俺だが、仲間がいればその問題も解決する。
この世界に飛ばされて、もし一人だったら、俺は最初の公園でシェイドに食い殺されていたかもしれないな。
「こいつら、あずみちゃんが見つけた川の方へ俺たちを行かせないつもりか?」
「そのようですね」
「なんとか突破しようにも数が多過ぎるぞ」
ライオン型シェイドは木々の影から湯水のように溢れてくる。俺たちが駆逐するよりも明らかに増える方が多い。このままじゃゴールに辿り着く前に終わっちまう。
「ヘッ。こうなったら仕方ねえな」
不破さんが覚悟を決めた声で言う。
嫌な予感がした。
「不破さん、なにを……?」
「零児とあずみちゃんは先に行け。ここは俺一人で片づける! ――ギガボルトブレイク!」
そう叫んで不破さんは、ランスの穂先に轟く稲妻をまとわせそれで思い切り周囲を薙ぎ払った。。
不破さんの必殺技――ギガボルトブレイクが炸裂し、包囲していたライオン型シェイドの一角を一瞬で消し飛ばして大穴を穿った。
これほどの大技だ。バーゲンセールのようにほいほい使えるもんじゃない。今ので不破さんはかなり消耗したはずだ。
「不破さん!」
「行けっつったろ零児! もたもたしてっとまた増えてくるぞ!」
「零児さん、行きましょう!」
葛城に無理やり引っ張られる。
「だが……」
「彼も立派なエスパーですわ。周りにわたくしたちがいては使えない技もあるはず。今は彼を信じて先に進みましょう」
近接武具しか作れない俺は仲間がいなければ多勢とは戦えない。けれど、広範囲に雷を操ることのできる不破さんはそうじゃない。狭い山道だ。俺たちがいてはかえって邪魔になることも確かにあり得る。
「……そうだな。信じることは大事だ」
背後で今までにない白光と雷音が轟く中、俺は葛城の案内で川があるという方角に全力で駆けた。
草木を掻き分けることなく飛び越え、何度も躓きそうになりながらも走る。走る。走る。
追手は来ない。不破さんが上手く立ち回っているんだ。
「零児さん、この先に一体なにがあるんでしょうか?」
走りながら葛城が問う。
「人工門……はもうなくなってるはずだよな」
「ええ、それなのにシェイドはわたくしたちの邪魔をするように現れましたね」
「つまり、人工門はなくてもなにかが残ってる。もしくはやつらが人工門を隠してる?」
「そういうことだと思いますわ」
川はすぐに見つかった。
だが同時に、見つけたくないものも見つかってしまった。
「ニャッハハハァーッ! ようやく来やがったな異世界人! お連れのエスパーはその女一人かにゃん?」
流れが急な川に突き出した岩の上、そこにアフリカ系民族衣装を纏った金髪の女が曲芸師のように片足を上げて立っていた。
ジャッロレオーネ。
ミスター・レオの右腕(と思う)の上級シェイドだ。
「おめぇらの目的地はこの川を渡った先だ。そこにレオ様もおられる。行きたきゃあたしを倒してから行きな!」
「俺一人に負けたお前が二人同時に相手できると思ってんのか?」
「今までのあたしが全力だと思ったら大間違いだぞ、異世界人!」
獅子女はアフリカ系民族衣装の後ろ腰に両手を伸ばした。そしてそこに挿していた二本の剣を鞘から引き抜く。
湾曲した刀身に、小指に向かって緩やかなカーブを描く特徴的な柄。
ペルシア語で『ライオンの尻尾』と呼ばれる、振り下ろして断ち切るために直刀から形状を変化させていった剣。
シャムシールだ。
「まあアレだ。おめぇらは死ぬ前にあたしの華麗な剣舞を目にできてラッキーだな。長く見物できるようにじっくりと甚振りながら切り刻んでやんよ!」
二本のシャムシールで二刀流の構えを取るジャッロレオーネ。昨日今日に武器を手にした初心者じゃない。構えもオーラも達人級だ。身軽なあいつにシャムシールが加わればかなりの脅威になる。
だが、こちらは二人だ。
向こうは部下のシェイドを呼び出す気配はない。あくまで一人でここを通せん坊するつもりなのだろう。
「零児さん」
横の葛城が小声で言う。
「彼女には市役所前でぶん投げられた借りがありますわ。ここはわたくしにお任せください」
なに言ってんだ俺も戦うぞ、とは言えなかった。
葛城の目が本気だったからだ。強固な意思を持ってジャッロレオーネを睥睨している。
それに仲間を信じると決めたばかりだしな。
「わたくしが隙を作ります。その間に零児さんは向こう岸へ渡ってくださいな」
俺は小さく頷いた。川幅がそれなりにある急流だが、突き出た岩を飛び飛びに行けばどうにか渡れそうだ。
「まずは彼女をこちらに引き寄せますわ!」
「ニャ、作戦会議は終わりかい? だったらそろそろおめぇらの肉を解体してもいいかしらん?」
引き寄せるまでもなく、ジャッロレオーネは駿足で葛城へと切迫し刃を交えた。
轟々と鳴り続ける急流の音に混ざって、金属同士の衝突する音が高々に響いた。
登山メンバーは俺と不破さん、それと葛城の三人だ。とばりさんは虹色の水晶を解析するために自宅の研究室に籠り、風月はその手伝い。アルヴィーとまり子ちゃんはミスター・レオ一派がとばり邸を襲う可能性を考えて護衛として残った。
地元民でもない俺たちが迷うことなく目的地へ辿り着けたのは奇跡だった――ということはなく、普通にタクシーの運ちゃんに行き先を告げて連れてってもらいました。
でもそっからは自分たちの足だ。監査官やらエスパーやらで体力に心配のいらない俺たちだが、広い山中を闇雲に探すことになるため骨が折れる。どうせならあの伊東って人に案内を頼んでおけばよかったな。
「おい零児、本当にここで合ってんだろうな?」
二時間くらい山道を歩き回ったところで不破さんが気だるげに訊いてきた。
「タクシーの運転手に訊いたんだから間違いない、はず」
俺は伊東さんから転送してもらった写メデータを確認する。山々の緑に囲まれた中に不釣り合いなほどメカメカしい機械の門が佇んでいる。伊東さん曰く門はもうなくなっているらしいので、それ自体を目印に捜すことはできない。
となれば、周りの風景か。二ヶ月前だから、若干景観は変わってそうだが……。
「あの、ここ、もしかして谷になっているのではありませんか?」
横から携帯を覗いていた葛城が画面の端を指差した。同じ携帯を覗いてるもんだから、その、顔が無防備に近い。山歩きで汗を掻いているはずなのに、植物系のいい匂いがするのは彼女が植物使いのエスパーだからかな?
「写真の枠外なのでわかりづらいですが、地面がここで途切れているように思えます」
言われてみれば、確かにそうだ。人工門の横は崖になっているのかもしれない。それも垂直レベルの急な崖だ。
納得したように不破さんが頷く。
「てことは、川だな。川を見つけて上流に向かってりゃそのうち着くかもしれん」
「どうやって川を見つけるんだ?」
「どうやってって……ほらアレだよ。山と山の間には川があるとかなんとか言うじゃねえか。なあ」
……不破さん、頼りないなぁ。
それに崖の下が川だって確証もない。地震とかで崩れたりした場所かもしれんし。
「川でしたら、ここから北へ少し向かった先にあるみたいですよ」
「「え?」」
あっさり過ぎるくらいあっさりと告げた葛城に、俺と不破さんのマヌケな声が重なった。
葛城は近くにある背の低い木の葉っぱを指で弄りつつ、さらに情報を言葉にしていく。
「それなりに急な渓流のようですね。最近雨でも降ったのでしょうか、水量がやや多いように思えます。川の周辺は切り立った崖になっているようですわ」
「なんでそんなことがわかるんだ?」
訊ねると、葛城は葉っぱから手を放して笑顔を見せた。
「わたくし、植物を介して周辺の探索を行えるんです。シェイドとの戦闘ではあまり役に立たない能力なんですが、こういう植物の生い茂る山奥での探索はけっこう得意なんです」
「待ってくれよあずみちゃん、それなら二時間歩きっぱなしじゃなくて最初からそうしてりゃよかったんじゃねえのか?」
「一応やってました。ですが明確な情報が『不思議な門』だけでしたので」
「当の門が存在しないとなれば、探知能力はその時点じゃ意味をなさないだろうな」
川よりも崖を見つけてくれたのが大きい。彼女の口ぶりからするとそう遠くではないようだし。
「葛城、案内頼めるか?」
「承りました」
葛城は首肯すると、今まで歩いてきた山道を外れて道なき道を進もうとした。
その時だった。
木々の影という影から、日本の山には似つかわしくないメスライオンの群れが飛び出してきた。
「シェイドですわ!」
「こいつら、ミスター・レオの配下だな」
葛城と不破さんが反射的に戦闘態勢を取る。流石は現役エスパー。俺も負けちゃいられない。
〈魔武具生成〉――長巻。
三尺ほどの幅広い刀身に四尺ほどの長柄をした武器だ。形状は薙刀によく似ているものの、野太刀の刃根元部分も握れるように巻物がついているところは大きく異なる。非常に重い武器だが使い勝手はよく、『槍に慣れぬ者は長巻を使え』と戦国時代に言われていたほどだ。
「不破さん、どうやらここで間違いなかったみたいだな」
「らしいな!」
最初に飛びかかってきたライオン型シェイドを不破さんがランスの一撃で薙ぎ飛ばした。それを合図に一斉に他のライオン型シェイドたちも躍りかかってくる。が、不破さんのランスと雷撃に吹っ飛ばされ、葛城のフェンシングソードに貫かれ、俺の長巻に両断される。
一対多の苦手な俺だが、仲間がいればその問題も解決する。
この世界に飛ばされて、もし一人だったら、俺は最初の公園でシェイドに食い殺されていたかもしれないな。
「こいつら、あずみちゃんが見つけた川の方へ俺たちを行かせないつもりか?」
「そのようですね」
「なんとか突破しようにも数が多過ぎるぞ」
ライオン型シェイドは木々の影から湯水のように溢れてくる。俺たちが駆逐するよりも明らかに増える方が多い。このままじゃゴールに辿り着く前に終わっちまう。
「ヘッ。こうなったら仕方ねえな」
不破さんが覚悟を決めた声で言う。
嫌な予感がした。
「不破さん、なにを……?」
「零児とあずみちゃんは先に行け。ここは俺一人で片づける! ――ギガボルトブレイク!」
そう叫んで不破さんは、ランスの穂先に轟く稲妻をまとわせそれで思い切り周囲を薙ぎ払った。。
不破さんの必殺技――ギガボルトブレイクが炸裂し、包囲していたライオン型シェイドの一角を一瞬で消し飛ばして大穴を穿った。
これほどの大技だ。バーゲンセールのようにほいほい使えるもんじゃない。今ので不破さんはかなり消耗したはずだ。
「不破さん!」
「行けっつったろ零児! もたもたしてっとまた増えてくるぞ!」
「零児さん、行きましょう!」
葛城に無理やり引っ張られる。
「だが……」
「彼も立派なエスパーですわ。周りにわたくしたちがいては使えない技もあるはず。今は彼を信じて先に進みましょう」
近接武具しか作れない俺は仲間がいなければ多勢とは戦えない。けれど、広範囲に雷を操ることのできる不破さんはそうじゃない。狭い山道だ。俺たちがいてはかえって邪魔になることも確かにあり得る。
「……そうだな。信じることは大事だ」
背後で今までにない白光と雷音が轟く中、俺は葛城の案内で川があるという方角に全力で駆けた。
草木を掻き分けることなく飛び越え、何度も躓きそうになりながらも走る。走る。走る。
追手は来ない。不破さんが上手く立ち回っているんだ。
「零児さん、この先に一体なにがあるんでしょうか?」
走りながら葛城が問う。
「人工門……はもうなくなってるはずだよな」
「ええ、それなのにシェイドはわたくしたちの邪魔をするように現れましたね」
「つまり、人工門はなくてもなにかが残ってる。もしくはやつらが人工門を隠してる?」
「そういうことだと思いますわ」
川はすぐに見つかった。
だが同時に、見つけたくないものも見つかってしまった。
「ニャッハハハァーッ! ようやく来やがったな異世界人! お連れのエスパーはその女一人かにゃん?」
流れが急な川に突き出した岩の上、そこにアフリカ系民族衣装を纏った金髪の女が曲芸師のように片足を上げて立っていた。
ジャッロレオーネ。
ミスター・レオの右腕(と思う)の上級シェイドだ。
「おめぇらの目的地はこの川を渡った先だ。そこにレオ様もおられる。行きたきゃあたしを倒してから行きな!」
「俺一人に負けたお前が二人同時に相手できると思ってんのか?」
「今までのあたしが全力だと思ったら大間違いだぞ、異世界人!」
獅子女はアフリカ系民族衣装の後ろ腰に両手を伸ばした。そしてそこに挿していた二本の剣を鞘から引き抜く。
湾曲した刀身に、小指に向かって緩やかなカーブを描く特徴的な柄。
ペルシア語で『ライオンの尻尾』と呼ばれる、振り下ろして断ち切るために直刀から形状を変化させていった剣。
シャムシールだ。
「まあアレだ。おめぇらは死ぬ前にあたしの華麗な剣舞を目にできてラッキーだな。長く見物できるようにじっくりと甚振りながら切り刻んでやんよ!」
二本のシャムシールで二刀流の構えを取るジャッロレオーネ。昨日今日に武器を手にした初心者じゃない。構えもオーラも達人級だ。身軽なあいつにシャムシールが加わればかなりの脅威になる。
だが、こちらは二人だ。
向こうは部下のシェイドを呼び出す気配はない。あくまで一人でここを通せん坊するつもりなのだろう。
「零児さん」
横の葛城が小声で言う。
「彼女には市役所前でぶん投げられた借りがありますわ。ここはわたくしにお任せください」
なに言ってんだ俺も戦うぞ、とは言えなかった。
葛城の目が本気だったからだ。強固な意思を持ってジャッロレオーネを睥睨している。
それに仲間を信じると決めたばかりだしな。
「わたくしが隙を作ります。その間に零児さんは向こう岸へ渡ってくださいな」
俺は小さく頷いた。川幅がそれなりにある急流だが、突き出た岩を飛び飛びに行けばどうにか渡れそうだ。
「まずは彼女をこちらに引き寄せますわ!」
「ニャ、作戦会議は終わりかい? だったらそろそろおめぇらの肉を解体してもいいかしらん?」
引き寄せるまでもなく、ジャッロレオーネは駿足で葛城へと切迫し刃を交えた。
轟々と鳴り続ける急流の音に混ざって、金属同士の衝突する音が高々に響いた。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
0
-
-
111
-
-
3395
-
-
1168
-
-
15254
-
-
1512
-
-
141
-
-
125
-
-
55
コメント