【コラボ企画】シャッフルワールド!!×同居人はドラゴンねえちゃん
第2話 状況分析
公園のベンチに腰掛け、サイドテールの少女――風月みゆきというらしい――に傷の手当をしてもらいながら、お互い状況を包み隠さず話して整理整頓した。
それで見えてきたこと。まず、ここは日本の京都府京都市らしい。いつから京都はこんなカラフルな髪色をしたやつらが跋扈するようになったのかとツッコミたいが、それも当然。ここは俺の知っている日本じゃないんだ。
異世界。それも、恐らくはパラレルワールド的な。
この世界では影や隙間からシェイドっていう怪物が現れて人々を襲うことがある。さっきのゾンビもどきがそうだ。それは一般人も普通に認知している事実で、そのシェイドと戦う人間をエスパーと呼ぶらしい。エスパーはシェイドを屈服させて契約し、様々な特殊能力を得ているんだと。
で、この公園でシェイドと戦っていたエスパーの青年――東條健が突然開いたブラックホールみたいな穴に吸い込まれ、代わりに俺が出てきた。
「状況を考えると、その東條健ってやつはたぶん俺の世界にいるだろうな」
リーゼたちが勢い余って殺ってなきゃいいが……まあ、そいつもけっこうな実力者みたいだから大丈夫だと信じよう。セレスもいるし、ちゃんと監査官の対応マニュアルに従ってくれてりゃ戦闘にはなってないはずだ。東條健が凶暴なやつでなければな。
「健が消えたのはお主のせいではなかったのだな。突然襲いかかってすまなかった。ほれ、まり子も」
「……ごめんなさい」
シロちゃん――本当はアルヴィーという名前の巨乳姉ちゃんに言われ、まり子ちゃんも渋々といった様子でちょこんと頭を下げた。この二人はエスパーではなく、シェイドだという。といっても人間を襲うような獣的危険因子ではなく、高い知能と意思力を持った上級シェイドで、どちらかと言えば人間の味方をしている。東條健はこのアルヴィーと契約してエスパーになったとか。まあ、俺にはどうでもいい話だ。
「傷、大丈夫? えっと、零児くんだっけ?」
風月が心配げに訊ねてくる。彼女は一般人だが、エスパーの東條健の恋人なんだそうだ。……リア充め。
「ああ、このくらい問題ないよ。なにせいつも殺されかけてるから」
異世界に来たから、もう、あのメイドさんに命狙われることもないよね。うん。あ、でもリーゼの魔力疾患が心配だなぁ。イヴリアの時みたく早く帰れるといいんだけど、下手すりゃ二度と戻れなくなるし……。
遠い目をする俺に、風月はきょとんと小首を傾げていた。
「レージさんが自分の世界に戻れば健お兄ちゃんは帰ってくるの?」
まり子ちゃんが訊いてくる。子供っぽい口調とは裏腹に俺を見る目が非常に冷たいのは気のせいだと思っておこう。
「それはわからんけど、ただ俺が元の世界に帰るだけじゃダメだと思う。たぶん、俺がこっちに来た方法と同じじゃないと」
「フフッ、レージさんを殺せば健お兄ちゃん帰ってくるかもしれないわね。試してもいいかしら?」
あれ? なんか俺この世界でも毎日命の危機な予感……。
「これ、やめんかまり子」
「はぁい。ちょっと言ってみただけよ」
アルヴィーに叱咤されて大人しく引き下がるまり子ちゃん。俺、ほっとする。だって、まり子ちゃん目が本気だったんだもの。
よし、気を取り直して状況を思い出してみよう。そもそも、俺はなんで異世界に飛ばされたんだ? あのブラックホールみたいな穴はなんだったんだ? 確かあの時、いつも通り門から現れた異獣を迎撃して……あっ。
「そうだ、思い出した。そういや変な物拾ったな」
虹色の水晶みたいな鉱物だ。アレが光り輝いてから異変が起きた。関係しているとしか思えない。それと表面に謎な文字が刻まれていたな。ドラゴンがねえちゃんでなんとかっていう……はい、正直覚えてません。
どこやったっけ? 落としたかもしれんけど。そう思いながら適当にズボンのポケットやらなにやらをまさぐってみたら……あった。どういうわけかブレザーの裏から落ちてきた。
「おかしいな、入れた覚えはないんだけど」
拾いながら呟く。無意識にそうしたのかもしれん。
「あれ? それって」
風月が俺の手元を覗き込んでくる。この虹色の水晶を見たことあるっていう反応だ。
「知ってるのか?」
「ううん、知らないけど」
風月は首を横に振った。
「けど?」
「形はちょっと違うけど、これと同じ物を健くんも拾ったわ。そのすぐ後にブラックホールみたいな穴に吸い込まれちゃって……ぐすん」
「なんだって?」
俺と同じじゃないか。風月は恋人が消えた瞬間を思い出したのか、目尻に薄らと水滴を浮かべて今にも泣き崩れそうだった。
「やっぱりこれが関係してるみたいだな」
だが、今度はいくら待っても虹色の水晶が輝くことはなかった。
「なあ、こういうのに詳しい人とか知らないか?」
「そうだの……一人だけ心当たりはある」
アルヴィーが大きな胸をたくし上げるように腕を組んだ。まり子ちゃんも閃いた顔をする。
「白峯さんね」
「え? 俺?」
名前呼ばれてびっくらこいた俺は思わず自分を指差した。
「違うわよ。白峯とばりさん」
その人物のフルネームを言ってくれるまり子ちゃん。へえ、同じ苗字の人か。なんとなく漢字が違ってるような響きだったけど。
「あ、じゃあわたしが電話しておくね」
そう言って風月が涙を拭い、携帯電話を取り出した。どこかで見たことのありそうなデザインの携帯電話に、俺は今異世界に来ているという事実を忘れそうになる。
本当に、逆に戸惑ってしまうくらい日本だな、ここは。
それで見えてきたこと。まず、ここは日本の京都府京都市らしい。いつから京都はこんなカラフルな髪色をしたやつらが跋扈するようになったのかとツッコミたいが、それも当然。ここは俺の知っている日本じゃないんだ。
異世界。それも、恐らくはパラレルワールド的な。
この世界では影や隙間からシェイドっていう怪物が現れて人々を襲うことがある。さっきのゾンビもどきがそうだ。それは一般人も普通に認知している事実で、そのシェイドと戦う人間をエスパーと呼ぶらしい。エスパーはシェイドを屈服させて契約し、様々な特殊能力を得ているんだと。
で、この公園でシェイドと戦っていたエスパーの青年――東條健が突然開いたブラックホールみたいな穴に吸い込まれ、代わりに俺が出てきた。
「状況を考えると、その東條健ってやつはたぶん俺の世界にいるだろうな」
リーゼたちが勢い余って殺ってなきゃいいが……まあ、そいつもけっこうな実力者みたいだから大丈夫だと信じよう。セレスもいるし、ちゃんと監査官の対応マニュアルに従ってくれてりゃ戦闘にはなってないはずだ。東條健が凶暴なやつでなければな。
「健が消えたのはお主のせいではなかったのだな。突然襲いかかってすまなかった。ほれ、まり子も」
「……ごめんなさい」
シロちゃん――本当はアルヴィーという名前の巨乳姉ちゃんに言われ、まり子ちゃんも渋々といった様子でちょこんと頭を下げた。この二人はエスパーではなく、シェイドだという。といっても人間を襲うような獣的危険因子ではなく、高い知能と意思力を持った上級シェイドで、どちらかと言えば人間の味方をしている。東條健はこのアルヴィーと契約してエスパーになったとか。まあ、俺にはどうでもいい話だ。
「傷、大丈夫? えっと、零児くんだっけ?」
風月が心配げに訊ねてくる。彼女は一般人だが、エスパーの東條健の恋人なんだそうだ。……リア充め。
「ああ、このくらい問題ないよ。なにせいつも殺されかけてるから」
異世界に来たから、もう、あのメイドさんに命狙われることもないよね。うん。あ、でもリーゼの魔力疾患が心配だなぁ。イヴリアの時みたく早く帰れるといいんだけど、下手すりゃ二度と戻れなくなるし……。
遠い目をする俺に、風月はきょとんと小首を傾げていた。
「レージさんが自分の世界に戻れば健お兄ちゃんは帰ってくるの?」
まり子ちゃんが訊いてくる。子供っぽい口調とは裏腹に俺を見る目が非常に冷たいのは気のせいだと思っておこう。
「それはわからんけど、ただ俺が元の世界に帰るだけじゃダメだと思う。たぶん、俺がこっちに来た方法と同じじゃないと」
「フフッ、レージさんを殺せば健お兄ちゃん帰ってくるかもしれないわね。試してもいいかしら?」
あれ? なんか俺この世界でも毎日命の危機な予感……。
「これ、やめんかまり子」
「はぁい。ちょっと言ってみただけよ」
アルヴィーに叱咤されて大人しく引き下がるまり子ちゃん。俺、ほっとする。だって、まり子ちゃん目が本気だったんだもの。
よし、気を取り直して状況を思い出してみよう。そもそも、俺はなんで異世界に飛ばされたんだ? あのブラックホールみたいな穴はなんだったんだ? 確かあの時、いつも通り門から現れた異獣を迎撃して……あっ。
「そうだ、思い出した。そういや変な物拾ったな」
虹色の水晶みたいな鉱物だ。アレが光り輝いてから異変が起きた。関係しているとしか思えない。それと表面に謎な文字が刻まれていたな。ドラゴンがねえちゃんでなんとかっていう……はい、正直覚えてません。
どこやったっけ? 落としたかもしれんけど。そう思いながら適当にズボンのポケットやらなにやらをまさぐってみたら……あった。どういうわけかブレザーの裏から落ちてきた。
「おかしいな、入れた覚えはないんだけど」
拾いながら呟く。無意識にそうしたのかもしれん。
「あれ? それって」
風月が俺の手元を覗き込んでくる。この虹色の水晶を見たことあるっていう反応だ。
「知ってるのか?」
「ううん、知らないけど」
風月は首を横に振った。
「けど?」
「形はちょっと違うけど、これと同じ物を健くんも拾ったわ。そのすぐ後にブラックホールみたいな穴に吸い込まれちゃって……ぐすん」
「なんだって?」
俺と同じじゃないか。風月は恋人が消えた瞬間を思い出したのか、目尻に薄らと水滴を浮かべて今にも泣き崩れそうだった。
「やっぱりこれが関係してるみたいだな」
だが、今度はいくら待っても虹色の水晶が輝くことはなかった。
「なあ、こういうのに詳しい人とか知らないか?」
「そうだの……一人だけ心当たりはある」
アルヴィーが大きな胸をたくし上げるように腕を組んだ。まり子ちゃんも閃いた顔をする。
「白峯さんね」
「え? 俺?」
名前呼ばれてびっくらこいた俺は思わず自分を指差した。
「違うわよ。白峯とばりさん」
その人物のフルネームを言ってくれるまり子ちゃん。へえ、同じ苗字の人か。なんとなく漢字が違ってるような響きだったけど。
「あ、じゃあわたしが電話しておくね」
そう言って風月が涙を拭い、携帯電話を取り出した。どこかで見たことのありそうなデザインの携帯電話に、俺は今異世界に来ているという事実を忘れそうになる。
本当に、逆に戸惑ってしまうくらい日本だな、ここは。
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