僕のとなりは!?(僕とな!?)

峠のシェルパ

消印と消し炭5!

私にははっきりした目標が出来たのはここ三日のことで自分の目の前に広がる光景をちょっと信じられないでいるんだけど誰かに聞いてみたいことがあるんだ。
別に大したことではないし「はい」か「いいえ」で答えてください。
殊の外単純で私でも応えられることだあら安心して聞いてね?
では…いっくよ~?




「貴方は今幸せを許容できますか?」






なんて自分でも答えを出せるかって言われたら多分出来ないんだけどね、えへへ…
幸せだなんて言っても人各々だからそれをおんなじにする事は無いけど、私に居場所ができた。そんな単純なことで喜んでいる自分がいて、それでもこれは胡蝶の夢なのだと思いながら私はいまこの時を過ごしている。
だって私の心の中には今でも巣食う暗い影が潜み家族から逃げ続ける生活を続けるわけにも行かない。
あぁ私にははっきりさせなきゃいけないことだらけだよ…。

 「ここの問題は火山岩がどんな火山で取れるのって聞きたいから…そうですね正解にたどり着くの言葉の字面だけではなくて出題者の意図を探すのが近道ですよ?」
いやはやお恥ずかしい独白はこのくらいにして話を続けることにするね、
今は中学生理科の地質の問題に首を傾げる微風さんに少し意識を向かながら今巷で密かに話題の作品とされている結構分厚い本を試しに手にとってみたの、
誰もが読んで面白いと思える本なのかなと思ってたんだけど私の正直な感想は月並みに言って「つまらない」の一言が頭の端でもやもやって浮かびつつあるんだ。
だってこの本キャラクターがいっぱい出てくるのはいいんだけど伏線の回収もそこそこに話が進んで…そこで思わせぶりにしてきた人物が死んじゃうんだもの!読み進めたら感想も変わるかも知れないけど私をときめかせるには修行不足だね!
私は読むの早い方と言ってもハードカバーの本だから分厚くって…

「ふぅ、流行と言うのは移ろいやすくまた儚いものなのですね…」
だなんて気取った口調で言ってみても私の幼い容姿じゃどうにも変に見えちゃうよね~、
やっぱり話題の本を読んでいたからだろうか旅人さんの視線がちらちらとこちらに向いている。

「レイピアさん、レイピアさんちょこっとばかしお聞きしたいことがあるんだけど良いかな?」 

なんだ分からないことがあるんなら私に任せて下さいと無い胸を張って見栄を張ったけど、質問をしたければ素直に聞いてくれて構わないのにね?

「あの…純粋な興味があって聞きたいので正直に答えてほしいことがあるんだぜ☆」 

う…ん? 問題と答えを見て旅人さんやってるのには目を瞑るとして…自分の糧にするかしないかは自由だと思うし勉強してる分野のことなのかな?

「レイピアさんと涼くんってどんな関係なのだぜ?」

んんんんーーーーー!? えッと、それはいましている旅人さんの課題と一体全体どういった関係があるのかな?!!
今まで冗長に読み進めていた話題の本の内容が今この瞬間にどこか春の空にFLY AWAYだよ!!
日本に来始めた燕か何かが咥えて目にも留まらぬ速さで掻っ攫っていったよ!
読んでる内容が全くと言っていいほど入らなくなってるんだけどこれは私が動揺しておるってことでいいのかな?!

私ことレイピアと北村涼の関係って言われたって「一言では表せない様な大人の事情のある関係」だなんて変な言い方したら学校に行って早々に周囲の人達目が怖くって絶対私学校行けなくなっちゃうよ!!
ってなんでこんな方向に考えが行ってるんだろ私! 落ち着いてこういうときこそリラックスしてラマーズ法だよ!
言い訳とか話題をぼかすのとか涼くんその手のこと得意だから知恵を借りたいところだけどもう既にこの場にいなし…どうしよ、控えめに言ってピンチだったりする私?

「純粋な興味からの質問に別に君は答えなくとも良いけどネー」
答えを見てなるほどさっぱりだと溜め息を片手に私にとって未知の男の子「旅人さん」はこちらに視線を向けると不敵にニヤッと…違うよこれ真顔というか素の顔だ!? なんにも考えなくてもこんな顔になるんだ!?
「り、涼くんとの関係ですか…」うーん、気の利いた冗談とかでやり過ごせたりしないかな…?微風を抱腹絶倒させることが仮に出来ればなんとかこの話題を逸すことも出来るんじゃないかなって思うんだけど…でも微風さんを抱腹絶倒ないしは笑いに持ち込む様な話とかしたことがないし私一ヶ月とかそこら前まで自宅軟禁を受けてたから今流行のものとか全っ然分かんないんだってば!駄目じゃん!

「おいおい、旅人やあんまり突っ込んだことをいきなり聞いてやるな、レイピア女史とていきなり初対面の男に「あの男とはどういう関係なんだ?」などと聞かれたら警戒もするし下手すら貴様の顔面にレイピア女史の手にした本の角とかがめり込むハメになるぞ、それでも良いのか?」「ナニソレコワイ」
よし、話が期せずして微風さんの方に逸れた!

「はぁまったく、興味は猫をも殺すとは言うが自分の興味で身を滅ぼしたら元も子もないぞ、女子のそのたぐいの話の伝染力を舐めないほうが良い。自分の手の及ばない範囲に瞬時に広まり収集がつかなくなるからな…旅人は良い奴では有るんだが集中力のムラと興味における行動力の行き過ぎがいい面でもあり悪い面でも有る、手綱を誤れば崖から真っ逆さまだ」
それはちょっと怖いなぁ…それにその言い方だと微風さんはもしかして経験が有ったりするのかなぁ?

「その言い方一つ取ってみると何だか旅人さんが犬とか馬とかそんな類に表現されている気がするんだがもっと相応しい言い方は無かったのぜ微風さん?」

微風さんに釘を刺された旅人さんが開いていた問題集から手を引いて一度ため息を吐いた。
「そんなことはわりとどうでも良くてだね微風君、旅人さんは興味を持ったことはトコトン知りたくなってしまうのだよ。
それがどれだけ自分に不幸を招くことになったとしても…というのは流石に飛躍しすぎだな訂正するんだぜ☆ということでレイピアさん、失礼でなければ質問に答えてもらっても?」

これはどうやら逃げ道は既に絶たれてるみたいだしうーんどうしよう…
微風さんに何て言ってあるんだっけ…?マリアの従兄弟…?それなら涼くんとマリアの関係は…あれ、どう説明すればいいんだろう?
上手くごまかせるかは分からないけど何とかやってみよう!!

「そうですね、先ず初めに私はマリアの従兄弟です。
そしてマリアの紹介もあって少し田舎の方からやって来ました、進路のこととかを考えるとどうしても都会の学校が情報の上で優位になるということもあって…
後…北村涼さんとの関係はそこまでまだ親しくも有りません、マリアの先輩のお子さんとのことで彼女からの紹介で先日来お付き合い…といっても新入生のよしみで色々と情報を交換をさせてもらっているのみでございます。」

自分で何を言ってるんだろうと思って言い終えたあとは静かに平静を装いながら本の黙読に戻ったんだけど言い訳にしたって出来すぎだよそれは…その後は私はボロを指摘されるんじゃないかって心拍数が上がっていて、話を聞きながら作業を続ける二人は私に視線を向け押し黙ると私にとって痛い沈黙が少しだけ流れる、私が話を続けるわけにもいかないし…
「そうか…なるほどな人の縁はどこで繋がるか分からないものだそうは思わないか旅人?」
「うーん、二人は知り合いではあるけどそこまで親しくはないのぜ?それにしては結構距離が近かった気がするんだけどなぁ…微風さんはどう感じたんだ?」
分析とかされちゃうと途端に対応に困るからしてほしくないんだけど旅人さんってのほほんとした表情の裏側にもしかして鋭い洞察力が隠れてるのかなって少しだけ思ったんだけどまさかね…?

「うむ…確かに一理あるとは思う、だがな旅人よレイピア女史と北村の距離は精神的に近い気もするがまぁよほど気が合ったのか人見知りなどは端から気にしない開けっぴろげな気質なのかもしれんし我々が彼らの関係に口を出したところで何も始まらん、良からぬことを企てられるような御仁ではないことは我が知り得る限りでは考えにくいぞ?」「うーむ、何か事情があるもんかと少し訝ってた旅人さんはやっぱり考えすぎだったかな?」
…複雑な事情があるような…無いような…私は既に涼くんとマリアそれにマスターまで私自身の問題に巻き込んでしまっている、加えてこの二人をそんなお悩み相談室みたいな感じで気軽に話して巻き込むわけにもいかないと私は一先ず旅人さんから問題ドリルの答えを取り上げて少し残念そうな表情の旅人さんに「ちゃんとやりましょうね」と小声で私は何気なく二人に接している中で涼くんは私との関係をどう思っているのだろうとふと頭の隅で考え始めていた。

「あぁ、旅人さんのチートアイテムが…」「やれやれ、そんなことばかりしていると授業についていけなくなるぞ、学校は週二回小テストが有るのだから身につけていかないと追試地獄で時間取られて楽しい学生生活()が台無しだぞ?」「部活とか立ち上げる気とか無いしなー、微風さんは美術部兼イラスト部だっけ?」
「兼部というか最早おんなじ物と捉えていいかもしれん、仮入部期間が学校始まる前からやっているのは良いのだが腕試しのつもりで4Por風景画のラフとか言うノルマを課してきているのでなんか吐きそう…」
絵を描く人もそうだけど何かを強制したところでその人のやる気が入るわけじゃないんだね。
微風さんは絵が描けるんだね、なるほど~覚えておくのと、なし崩し的に私から話題が逸れたからOKってことにしようね!!
「それでー北村涼君?について率直にレイピアさんはどんな風に思うのだぜ?」
お、追い討ちがきたー!?天災は忘れた頃にやって来るじゃないけど話が脇道へ行ったと思ったら戻ってきたし…

「そ、そうですね良いところの方が今ははっきりしていますね
頼りがいはあると思いますよ? 当の本人はあんまり気が進まない様ですけれど、進んで物事をやらなくても何処かであの人は重荷を分け合ってくれるそんな風に思いますぜーったいにしぶしぶなんでしょうけど」

私は自分自身の事をまだ良く分かっていない。
そんな中でふんわりとした彼に出会って…まだ間もないし確証なんてこれっぽっちも無いんだけど昨日の今日で涼くんが色んな事を考えながら私に接してくれていること位は私にも分かったんだ、出会ってまだ時間にして一日しか経って無いけどね。
涼くんが無理をしてこっちに合わせてなければ私にとっては居心地がいいんだけど…そこら辺を彼はどう思ってるんだろう、様々なことが背景にあったとしても最後私があの部屋に居ることを認めてくれたのは何を隠そうあのひとなのだから気になるところではあるよね?
「まだあんまり涼くんのこと知らないな…」
溜め息と一緒に贅沢な悩みの種が蒔かれたけど小声で言ったのを課題に勤しむ二人か気づいていないことを願いたいばかりだよ。

「真面目に課題とかしてるのは良いのだがもうそろそろ集中力が切れてきたな…」
それから私も流行の本を半ば流し読みしていたところで微風さんが理科の課題を終わらせにかかっていたから多分それが終わったのかな?大きく背伸びをして一度しんこきゅー、
「ん、そうだな少しばっかし休憩としますか…噂をしても戻ってこない彼は…何か怪しくはないですかい微風さん?」
「んぁ?この図書館には中規模の珈琲専門店が隣接されているからな、マスターのゆずのきブレンドに慣れてしまうとたまにはそういうのを飲みたくなるのだようんうん」
「えー旅人さんの欲しかった答えとちがーう」「貴様の場合は組織の陰謀に巻き込まれたやら実は彼は国家の秘密エージェントだと…?」「夢はでっかい方が見るだけなら楽しいものなのだぜ☆」
「その宛もない夢を大風呂敷広げて満足するだけでなく叶えて立体的にするためにはどうすれば良いのか施策してみた方がよいと思うぞ旅人よ」
「信条と妄想は何者にも縛られない自由かつ柔軟でないと折角の人の前を見る広い視野が台無しなのだぜ☆」
「意見の相違だな…」「視点と条件の違いでは?」
置いてきぼりを食らってしまってはいるけどレイピアは元気でーす!!まさかこの二人から考え方の話が突然飛び出してくるとは思っていなかったよー、涼くんとだと日常的会話が多いから微風さんと旅人さんの二人によってまた違った視点の話が飛んでくるからなんだか楽しいよね!!
「それでは休憩ついでに少しばっかし紅茶の一杯でも買って休憩スペースでちっと閑話休題と行こうかい?あんまり根を詰めてもいい結果は望めないからねぇ、常にメリハリを意識していないと肩が凝って今にも頭ガチガチのロックなヘッドになっちまうんだぜ?」
「…旅人そういう言い回しはどうかと思うぞ?」「えぇ…そうなん?」「我と貴様の間柄だからともかくレイピア女史がいるのだから紛らわしいのは勘違いされる」
勘違いだなんてしないけどねー、と荷物をまとめる旅人さんと微風さんを待ちながら思っていたけれどフラッと私達と別れた涼くんが帰ってこないなーって少しだけ不安に思ったけど…大丈夫かな?

「微風さん、それにレイピアさん俺少し席外すから先に喫茶店行っててほしいんだぜ☆」
旅人さんは赤いダウンコートジャケットを羽織るとすっとこの場を去っていった…
「北村君も旅人も放浪しないといけない呪いでも受けているのか…仕方ないレイピアさん、失礼でなければご一緒してよろしいかな?」
ええ、構わなくてよ!と明るい返事を返したんだけれどこのあと私は知ることになる、涼くんが中々戻ってこなかった理由と胸のもやもやとした感情を…

次回もお楽しみに!!

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