僕のとなりは!?(僕とな!?)

峠のシェルパ

万年コートの高校生

さてここからは僕のターンだ、高校性で早くも寮という親と隔絶された環境に身を置けたことは、自分の中で沸々とマグマ溜まりのように溜まっていた独立心を爆発させる為の起爆剤となりかねなかった。
先に荷物は運ばれている様なので今日はあとしなければならないことは荷解きをして必要な物を取り出すだけである。
自分で全てをこなさなくてはいけない反面、時間を縛られなくて済むので
炭酸か何かが頭のなかに溶け出すような何とも言えない高揚感が血行から視力まで底上げしているようだよ・・・

「さて、鍵を閉めてと…まったく、モノの奴め我に相談もせずにイラスト部に入れよって
まだ学校も始まっていないと言うのに作品を出しに行くだと?
どれだけあやつは真面目なのだ…いや、はやりすぎか…」

階段を上がって行くと一人の長身の男が立っていた。
僕のとなりの部屋「302号室」からいましがた出てきたみたいなんだけど…
今日は小春日和に加えて無風状態、桜も満開に近いことからお花見日和だぜっていうくらいには天候はいい
にも関わらず腰にまで届きそうなほど長い真っ黒な外套と言うにふさわしいコートを着込んでいる
長身に痩せ型というか痩せ過ぎなんじゃないかな?
そう思ってしまうのは彼の格好がそう印象付けさせているせいかもしれない・・・。

「ん?D51でもない、旅人とか言う奴でもない・・・とするなら貴様は何者なるか?」
あちらも突然の来訪者(僕)に戸惑ったのだろう、黒い外套をわざと棚引かせながら
なんだろうかこの人は・・・高校性デビューとかで色々間違った方向に行ってる人?
遅れてやってきた中二病の人?
なんだか此方が反応に困ってしまう、完璧にキャラを演じていて
「我が名は真紅の暴君ウラド也!!」とか創作なら創作のキャラクターらしくしてくれれば突っ込みどころ満載でやりやすいのだかれど・・・
一先ずは何か僕も声をかけよう、そうだね!
折角第一寮生を見つけたんだから気の利いたセリフの一つくらい言ってやらないといけないね

「あのーすいません、その格好は暑くはないんですか?」

自分で後悔するからちょっと待って・・・
突然何言ってんの僕は!適当にキャラ演じて誤魔化すとか、さもありなんみたいに返すとか脳内選択肢があったでしょ!!
なんで意図せずに一番突っ込んじゃいけないとこに狙撃を食らわせるの!
穴があったら入りたいって?奇遇だね僕もだよ!!どうしろっていうのさ!
「あ・・・うんそうだな暑いわこれ・・・」
思考が頭のなかでああでもないこうでもないと始めたところで外套男から以外な返事が帰ってきて
僕は我に返ってきた。
ダメだね、きょうは大分頭が回っていない気がする。
きっといつもの頭脳明晰な僕ならこの灰色の脳細胞を回転させてこの男ともうまくファーストコンタクトを取れたっていうのに
「わ、我は微風久我と皆からは呼ばれる予定だ、みるからに今日はじめてここに来たという感じだが春季の講習会が有ったはずなのだがそれを聞くのはどうだろう
野暮になるのか?」
キャラづくりはどこへやら徐ろに外套を脱ぐともう一度部屋のドアを開けて黒い外套を華麗に投げ捨てたのである
「この外套は使えんなぁぁぁぁぁ!!!全く持って使えんなぁ!
これかなり重いんだが!暖かいし春一番さえ防ぎきる程度の能力を持っているのだがなぁ!!」

それにしても、そよかぜ・・・?管理人のマリアさんがそうだったけれどどう聞いても本名
で答えてこないのだろうこの寮特有のものなのかな?
「野暮にはならないよ、単に準備が揃わなくって来れなかったんだ。
引っ越しのめどが立たなくなっちゃって・・・何講習会って何か言ってた?」

会話のネタは僕にはアドバンテージがある此処で上手いこと知り合いを作らなくちゃ・・・
何でそんなことを考えているかだって?
既存の寮生内のコミュニティに上手いこと入り込めなければ
出遅れるというか、学校が本格的に始まった時に孤立してしまうじゃないか、
これから入る高校には付属の中学校もあるって聞くからね、
ただでさえ遠くの高校に来てしまったんだから知り合いなんて皆無なのだ
これから始まるのは自分の「僕」の腕試し(逃避行)

「講習会か・・・うむ、正直行かない方が平和的でよかったと思うぞ?
あれはアカン・・・」
おかしい、ただの事前指導なんだからそんなに思い出したくないようなことを
例えば「見ろ!新入生の皆さんはゴミのようだ!!」とか「学力たったの5かゴミめ」みたいなことを言われたわけじゃあるまいに何故微風は首を傾げるのだろうか

「ま、まあ詳しく聞かせてってほどの時間もないようだし急いでいたんじゃないの?」
微風は確か何か提出するためにこの廊下に立って
出掛ける為にドアを開けて僕に出くわすというこの結果に陥ったはずである、
茶飲み話はそれとしてもあまりに長居させてしまうと提出期限を過ぎてしまうことになってしまうと
悪いし・・・。

「んん?いや待て早とちりをするではない、
別に期限があるというわけでもなく自由に参加できてな、そこへたった二人で乗り込もうと
しているのだ・・・高校生の先輩などいるのにも関わらずそこへ道場破りとはやれやれだぜ・・・」

そう首を振る微風はいままで余り急いでいる様子ではなかったけれど
気乗りしない感じでは確かにあった。

「そうなんだ・・・えっとイラスト部って言ってたような気がしたんだけれどイラストを描くの?」

「モノ」と微風が言っていた人?
には悪いけれど急ぎでないなら少し立ち話をしても構わないだろう。
と少しの間だけだが話に春らしく花を咲かしてもらった。
「そんな絵を描くんだーー。」「そのキャラはな!?」

何分か話が噛み合い掛けては少しずれ込んだそんな会話だったが楽しいものであることに変わりはない、
文化系の知り合いが中学校時代にいた気がするがその時にした話を上手いこと利用させてもらったのでそこは良かった点である

「む…かなり話し込んでしまったな
まぁ、これから先も住んでいる場所はほぼ同じなんだ
また近いうちに語り合う事があればよろしく頼む」

うん、これからよろしくお願いいたします
わざわざ頭を下げなくとも…とは思ったのだけれど
ここは礼儀と言うとのがある、
本来であるならば蕎麦の一人前でも持っていくのが正解のようではあるが残念ながら手荷物の中の食料といえば粒のお菓子位であった。

「いやいや、頭を下げなくても良いからからな?
下げられてしまうと我としてはやりづらいのだ」

そうだったのか、知らなかった。
微風は僕と入れ替わるように一階に続く階段へと向かう、
近くを走る電鉄がまた近くを走るのか、遮断機のカンカンという音がいやにけたたましく感じる
微風は階段を少し降りて此方を振り替える

「悪いことは言わん、但し事実であるから言わせて頂こう
………D51には気を付けろ、講習会自体は普通の何ら変わらないものだったのだ。
講習会自体はな…。
ああそうだ、せっかくだから
それともうひとつ言っておこうかね…
背負っているバックの一番小さいポケットのチャックがわざとなのかは知らんが空いている、そして中から茶色の長財布が顔を出しているぞ?
盗ってくださいと言わんばかりではないが、意地の汚い連中のいいかもネギだから気を付けろ?
では!これからの我々の輝かしい未来を!希望を在らんことを!」

最初から最後までなんだかぶれにぶれぶれな微風のキャラクターはあまり嫌いじゃない。
それは誰しも人間なんだから時にはその軸から大きくずれたことをしたって、元の土台がちゅうぶらりんだって
それでも生きていけてしまう、生きることが出来るのが
今の世の中かのかもしれない
しかし、本当に「生きる」と言うのは軸がちゃんとしている人のことを言い、
僕なんてのは人の顔色ばかり伺ってしまうからいけないのかもしれない。
「軸がぶれている」ね…。
少しばかり何でも無いことで落ち込んでしまったけれど
気にしない気にしない!気を取り直して行こう!
微風の302号室を通り過ぎてこの寮のタイルの色を少しくすませた様な黒みを帯びたドアが目の前にあった。

「気負うことなんて無いからさっさと入ってしまおう、落ち着くのはそれからでも遅くない」
望んでいた新天地はココにある!!!

鍵はマリアさんから貰っているから後はこれを鍵穴に入れるだけ!!
何を緊張しているんだ?!
と何の気なしに目の前のドアに意識を向けると
何かドアの向こうから寒気にも似た何かを感じる
まるで異形の怪物が此方にその口を開けているかのような妙な間隔に襲われる
なんだこれ・・・?
悪寒に似た何かが背中から感じてしまえるのはおかしい・・・
いままで霊感なんて全く無かった。
よく言うのは霊的話をするとそれらしきものが集まってきて時たま悪さをする
百物語やらすると呪われるというのならその手の話を百ほどしてしまえば・・・
「こーいうお話をしているとね、良くないものがあつまってきちゃうのよーー!」
と母親に子供をからかう親の口調でこう言われたのを唐突に思い出したら何だか腹が立ってきた。

取り敢えず入るだけ入ってしまおう、事故物件なんてことはありえないし
・・・ありえないよね?
開けてしまおう!!開けたら何か居るのだろうか
まさか・・・

ありえない事象なんてものは今までの経験上会ったことがないし在り得ないし・・・
自分の小動物並の直感は当てにしないほうがいいのかもしれない

そんな事を考える必要は合ったかどうかはさておき、簡単な作業を再開しよう
要点は2つ

1 ドアノブをひねる

2 ドアを開ける

たったそれだけの簡単なる作業
後から考えてみればここで一旦落ち着いてしまえばよかったものをと思うけれど
だがしかし、この運命は絶対に変わらなかったのではないかって思う
この結末は・・・
最初から変わることはなかったのかもしれない
もし、春の講習会シーズンに此処にこれたとしてもだ

何故こんな事を長々言っているかと言うとアリバイの証明を皆さんにしてほしいからである、青い服の治安維持がご専門のお兄さん方に説明する時が来たのなら僕の無実を証明してやってほしい

ぎぃ・・・とはいかず無音で開いたドアの向こうにはなんともおぞましき光景が僕を待っていた・・・

ってあれ次回に続くの?ホントに?
殆ど話動いてないけどいいの?!
あーあ・・・尺稼ぎと来たかぁ・・・

次回に続く!!



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