俺は異世界でブリーフをかぶる

川島晴斗

14話目「戦いの礼儀作法」

 とりあえず、俺としては魔族の侵攻とか勘弁して欲しい。
 俺がハーレムを作った後なら好きにしていいけどね。

「というわけで魔王様、侵攻とかやめてくれ。ほら、俺のブリーフあげるから」
「そんな薄汚いものを近付けるな」

 魔王ちゃんとそんな会話をする俺。
 今居るのは食堂っぽいところ。
 赤と金の椅子がずらりと並び、燭台がある長テーブル、暖炉もあるし絵画も飾ってある。

 ここって俗に言う魔王城だったんだなぁと今更ながらに思い知らされた。
 まぁそんな事気にせず、ハナホジするのだが。

 カエンちゃんは逃げ出してしまい、魔王は「勇者から逃げるわけには行かぬ」と止まっている。
 とても逃げたそうだけどね、王様は逃げないらしい。
 ヒセイは居るけど、俺の半径3mに入ってこない。
 俺のエリアに侵入した瞬間、ブリーフ被せるんだがな。

「まぁとりあえずさ、パイ乙見せてください」
「もう口を開くな」
「なら体で語り合うと?相手になろう」
「拳でなら語っても良いが?」
「痛いのはイヤン」

 自分を抱きしめてクネクネすると、また距離を取られる。
 おい魔王、勇者を恐れてどうする。

「恐れてるんじゃない、嫌悪感だ」

 左様でございますか。

「で、話が逸れに逸れてソレノイドなんだけど、マジで侵攻やめてくれない?俺と結婚して魔族も人間も仲良しとかどうよ?」
「貴様が口を開くたびに人間が嫌いになるんだが、何故なんだ」
「気のせいじゃね」

 俺のことは嫌いになっても、人間は嫌いにならないデッ!

「いやー、こうして魔王説得してる俺、マジ勇者だわ〜。国から報奨金貰って女の子とキャッキャウフフ、お子様には言えないことしまくりだわ〜」
「ここで死ぬのに何を言ってるんだ」
「そう言いつつ、俺に攻撃してこない件」
「何故私が手を下さなければならないんだ。今そのへんに生息する魔物を捕らえてきてもらい、ソイツに貴様を殺してもらおうと考えてるだけだ」
「スライムだったらフライ返しで魔王様にぶつけます。そしてみなさんお待ちかねのサービスタイムに突入☆」
「この場で頭をカチ割ってやろうか」

 きっと頭割ったらエロ本とかでてくるからやめてください。
 俺の脳内HDDは人様に見せられないぜ。

「でもさぁ、人間悪い事してなくね?お前らが勝手に「相容れぬ、解せぬ」とか言って人間から離れたんじゃん。人間ならロリショタ大歓迎だぜ?」
「種族が違うだけで殺し合いになるものだ。貴様は虫を殺すだろう?それと同じさ」
「俺たちは虫じゃない!俺、俺たちは変態だ!」
「害虫より厄介なのが面倒だな」

 ありがとうございます。
 魔王の罵りにそろそろ快感を覚えてきたが、ここでヒセイがパンパンと手を叩いた。

「魔王様。話し合うのは結構ですが、どうせ殺しちゃうならボクに戦わせてくださいませんか?」
「夜の対戦なら大歓迎だ!」
「あ、君は黙っててね〜」
「…………」

 黙ってろと言われたので考えてる銅像っぽいアレのポーズを取る俺。
 俺が考えるの全部妄想だけど。

「ヒセイ、こんなのと戦って何になる。手が汚れるだけだ、やめておけ」
「勇者とやらの実力を試したいだけです。人間が藁にもすがる思いで召喚した勇者……その実力を知りたいのです」
「ヒセイ、本当に藁にもすがる思いでコイツを召喚したと思うか?」
「あり得ないけど……いやでも、勇者の能力はあるから、ね?」
「……まぁいい。好きにしろ」
「ありがとうございます」

 なんだか話がついたらしい。
 ニコニコ笑いながらヒセイが俺のもとにやってくる。
 なんだなんだ。

「どしたん?」
「ねぇ勇者、ボクと戦ってよ」
「じゃんけん3本勝負とな?俺のパーはパンティーのパーだぜ」
「殺し合い、ね♪」

 幼女と殺し合いとか嫌すぎて泣ける。
 しかし、男なら勝負をふっかけられた以上、断るわけにはいかない。

「受けてたとう。場所は?」
「こっちだよ、勇者くんっ♪」

 ヒセイに連れられ、俺は移動する。
 何人かの魔族らしい幼児達と会ったが、みんな俺を見ると逃げ出した。
 なんで?俺は健全な上半身裸の勇者様なのに、おかしくね。

 そんなことを思っているうちに、だだっ広い中庭に出た。
 草ばっか生えててうざったいが、木などは全く生えてない。
 今日の天気晴れ、絶好のパンツ干し日和。

「フフッ、どこからでもかかって来なよ」
「まぁ待て。勝負には受けてやるが、戦いはこちらの礼儀作法に従ってもらう」
「……礼儀作法?」
「そうだ」

 そして、俺はブリーフを脱いだ。
 ブリーフを投げ、拾わせるために。
ブリーフじゃないけど、なんか投げて拾わせたら決闘というのがどっかの国のルール……だった気がする。
 しかし――

「なっ、なにっ!!?」

 俺の股間は、金色に輝いていた。
 光は城を金色に染め、草木を包み、ヒセイの全身を覆う。
 まさか――これは!?

「補正というやつか!?」

 俺は悟った。
 男のきったねぇ代物なんぞ、いろんなところで見せられない。
 だから、見えないようにあらゆる補正が入る。
 しかも目の前にはヒセイという幼女がいるんだ。
 補正のため、俺のゴールデンな部分はゴールデンに輝くんだ!

「…………」

 1度ブリーフを履き直す。
 光はおさまり、普通の昼時の景色に変わる。

「…………」

 ブリーフを脱ぐ。
 俺の股間は黄金に輝く。
 …………。

「まぁいい!そらぁあああ!!!」

 俺はブリーフを投げた。
 白いブリーフが脱げると共に、俺の股間は盛大な光を放つ。

「それを拾えヒセイ!それが戦いの合図だ!!」

 敵対する魔族の幼女に向けて叫ぶ。
 戦いたいというなら戦ってやる。
 打ち負かしてご褒美タイムじゃボケェエエ!!!

「……目、目が……」
「…………」

 しかし、ヒセイは戦う前から倒れていた。
 目を抑え、うずくまって震えている。
 俺のゴールデンフラッシュにやられ、開戦前からノックダウンのご様子だ。

「……大丈夫?」
「目が……腐る……」

 そう言い残し、ヒセイは気を失った。
 …………。
 ………。
 ……とりあえず、魔王の所に行くか。


 こうして俺は、再びブリーフを履いたのだった。

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