みんな無課金俺課金(課金するとは言っていない)

穴の空いた靴下

41章 水辺の語らい

 「なんだか毎日驚かされてばかり……楽しいけど、ちょっと疲れたかも……」

 サオリはプールサイドのチェアに横になってそうつぶやいた。

 「そうだね、確かにちょっと急ぎすぎてるかもね。」

 タカシも振り返ると走り続けていた日々を思い出し、同意する。

 「そうだ、明日は一日オフにして、そ、そのデートしようよ!」

 「え!? う、うん。嬉しいです……」

 耳まで真っ赤になりながらサオリはそう答えてくれた。

 「話したいことも、明日言うよ。」

 「うん……」

 「今はこの贅沢な時間を楽しもう。自宅のプールサイドでくつろぐなんて、
 この世界じゃないと出来ないからね!」

 「そうね、この場所、タカシを助けるために戦っている時も何度も来た。
 タカシとの思い出の詰まった大切な場所……」

 無言で頷く。
 俺がサオリに逢うためにサオリの気配の感じる部屋がどれだけ助けになったことか、きっとそれはサオリも同じだったんだろう。

 その後、別々の世界にいた時でも同じ空間にいるとお互いの気配を感じて、
 それがどれだけ助けになったか、そしてお互いが同じ想いで戦ったことを確かめ合い、二人はよりお互いの気持を通じ合わせて、いつの間にか寝てしまっていた。

 「おはよ」

 俺が目を覚ますとサオリはすでに着替えてテーブルでお茶を飲んでいた。
 白いワンピースに可愛い花のついた白いサンダル。ひと目にみておしゃれをしてきている。とっても可愛い。

 「先に目が覚めたから自分の部屋で準備してから戻ってきたの。」

 「ご、ごめん。すぐ準備するね!」

 「ゆっくりでいいよー」

 俺はドタバタと大急ぎで準備をする。
 そしてふと気がつく。デートに着ていく服がない。

 「あのーサオリさん、今日洋服見に行きませんか? 私サオリさんみたいな可愛いおしゃれな服がなくて、申し訳ないっす。」

 「……うん。」

 なぜかサオリは耳まで真っ赤になってる、なんでだ?
 ウーニャは今日は兄弟と遊ぶニャ!と言って猫屋敷で過ごすと言っていた。

 買い物なら女神の街が一番栄えている、洋服もいわゆるブティックみたいなブランド店を髣髴とさせるような店から大衆向けまで様々なお店がある。

 「うーん、上品だね。」

 「そうね、上品ね。」

 女神の街は白を基調としたローブとかワンピースみたいな上品な服装が多い。
 基本的にジーパンにTシャツみたいな服装が好きなので、いまいちピントこない。
 試着をしてみても

 「かっこいいけど、なんか気取った感じでタカシっぽくない。かっこいいけど。」

 と、不評であった。(不評ではない)

 「よく考えれば、それこそ人神様のとこがいいよな。」

 「確かに。」


 と、言うわけで人神様の街で一通り買い物を終えて、参考までに人神様のとこはユニ○ロとかG○Pみたいなお店があってそういうとこの品がちょうどよかった。
 お昼もそのまま人神様のとこでファストフード、ハンバーガーにした。

 「私ハンバーガーはモ○バーガーが一番だと思ってたけど、
 ちゃんと作ってると美味しいね。」

 「バンズもお店で焼いてるし、パティもこれはすでにパティじゃなくて高級なハンバーグを挟んでいると言ってもいいよね。トマトやレタスも新鮮な野菜を使っている。少し控えめなソースの味も素材の美味しさを引き出すことに成功している。なぜ俺は今までこの店にこなかったんだろうか、って、向こうは店員さんいないから食べられなかったのか、このバーガーに出会えたことも帰ってきて良かったと思える一点だな。」

 「な、なんかハンバーガーに並々ならぬ情熱を感じる。」

 「あ、うん。大好きなんだハンバーガー。女神の街のもいいけどこの少しジャンクな感じが生かされているここの方が俺は好きだ。」

 「う、うん。」

 その日の昼食は俺にとって素晴らしい出会いであった。
 食後は一回家に戻って着替えたいと提案して一時帰宅した。
 珍しく濃い目のタイトなジーンズに茶色の革ブーツ、薄い青のジャケット、白いシャツと綺麗目なコーディネートにする。サオリの爽やかな服装とのバランスをタカシなりに考えての事だった。

 「……」

 「へ、変かな?」

 かっこ良すぎて鼻血が出そうとは答えられないサオリであった。


 その後街同士の移動はワープポータルですぐできるので今日の夜ご飯に、
 ハンバーガーのような素敵な出会いがないか探したり、
 各街のお店を改めてめぐったりして楽しく、そしてゆったりとした時間を過ごすことに変えようもない幸せを感じていた。

 いろいろ考えたけど、俺達はここだなということで月影亭で夜ご飯を食べることになった。

 「なんだかんだで久々だよねここ。」

 「私も……」

 「あれ? そうなんだ? こっちにいたらちょこちょこ来そうだけど……」

 「は、恥ずかしくて……なんとなく……」

 「あ、ああ、なるほど……」

 二人して顔を赤くしてうつむいてしまった。
 その後適当に注文をして久々の月影亭の料理に舌鼓を打って過ごした。

 「長いようで、あっという間だったなぁ振り返ると。」

 「そうね、ほんとにそう。」

 「大変だったけど、苦しくはなかったなぁ……」

 「そうなの?」

 「うん、目的があったからね。サオリにもう一度会いたいっていう。」

 そういいながらタカシはサオリの手をとった。

 「こないだきちんと相談しないであんな事言ってしまったけど、
 改めて聞いて欲しい。俺はサオリのことが好きだ。大好きだ。
 出来るなら君のそばにずっといたい。まだまだ自分がガキなこともわかっている、それでも俺はサオリのそばで君を支えたい。だから今すぐは無理だろうけど、その、落ち着いたら? 結婚して欲しい。」

 「……不束者ですが。よろしくお願いします。でも、なんか死亡フラグみたいだよねタカシの言い方だと。」

 不器用ながら真っ直ぐなタカシの言葉を、照れ隠しに茶化してしまったけど、
 真剣に返事をするサオリ。
 二人は実年齢は高校2年生と中学3年生と若い。しかし、この世界ですでに5年以上。
 タカシは一人で戦うという偉業を、サオリは沢山の人を率いて戦うという経験をしている。二人の精神年齢は外見とは異なっていたのだ。

 「おめでとー!!!」「おじさんは感動した!」「サオリちゃんおめでとう!!」「うおーーーーーーかんぱーーーーい!!」

 突然周囲から祝福をされるタカシとサオリ。
 二人がこのお店に入ることを見た誰かがいろいろな連絡網によって、
 タカシとサオリを知る人達がこっそりと集まっていたのだ。

 「う、うわわ! な、なにこれ!?」

 「いやータカシ君男だねぇ! オニーサンは感動したよ! 飲め飲め!!」

 「サオリちゃんおめでとう! よかったね~、もう泣いちゃったよ~」

 「ヒマワリちゃん……」

 「「「わーっしょいわーーーっっしょい!!」」」

 いつの間にかタカシは胴上げされていた。
 その後なし崩し的にまた飲み会が始まり、沢山の人に祝福されて、
 この世界のタカシとサオリなりの結婚式になった。

 すっかり潰されてしまったタカシは家に放り込まれて、
 こないだの一件から禁酒にしているサオリはこの世界で出来たたくさんの大切な友人たちと楽しく幸せな時間を過ごして、タカシの隣で眠りについた。


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