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穴の空いた靴下

39章 剣神

 タカシはモンスターと対峙している。
 塔の10階の中ボス、リザードキング である。
 身長は3メーターを越す巨体、鍛え上げられた肉体と巨大な両手剣を自由自在に扱う強敵だ。

 ぐおんっ!とタカシに向けて振るわれる巨刀、
 一方タカシも今日は武器を装備している。
 神刀 ムラマサ
 今までは意味のなかった装備系アイテムも新世界ではきちんと役目を果たすことができている。
 旧世界を攻略しているタカシは大量のアイテムや装備品をそのインベントリに貯めてきている。
 その中にはいわゆる伝説級の装備と言える物も多数あり、
 このムラマサも刀系装備の最上位装備だ。

 タカシは次々に振り下ろされ薙ぎ払われる攻撃を難なく避けている、
 ウーニャやサオリは一人でやりたいというタカシに任せて見学中。

 「マスターの動きが明らかに良くなっているニャ」

 「職業とスキルのおかげでしょうね」

 タカシは剣士系の中でも刀を使うことを選んだ。理由は当然。

 「刀は男のロマンだからだ!」

 と力説していた。

 「男の子好きだよね刀とか忍者とか」

 「わかるニャ、ロマンニャ」

 何度か攻撃を避けていたが、もう試す時間は終わった。

 「さて、だいたい慣れてきたし倒しますかー」

 簡単に言っているが、ここは塔。種族ダンジョンの90階くらいの敵がうろうろしていて、ボスももちろん強い。
 たぶんサオリたちのパーティが初めて対峙したなら、やられることはなくても苦戦は間違いない。
 特に同時に現れたリザードナイト達の数で押されていたことは想像に容易い。

 タカシが刀を抜く、すーっと美しい刀身が滑るように静かにその姿をあらわす。息を呑むような美しさ、またその所作が見事でサオリは完全に目を奪われた。
 その瞬間タカシの身体がぶれたように見え、そして消えた、

 「え!?」

 「キングの背後ニャ!」

 タカシは一足でキングの背後に移動していた、
 そしてキングは上半身と下半身がずれて、そのまま光輝き消えていった。

 「……かっこいい……」

 「美しいニャー」

 完全に見惚れてしまった。刀が好きって理由がはっきりと理解してしまった。

 「すっごいなー! なんか身体が勝手に動く感じだよ! てか、このクラスのボスを一撃ってどうかと思うぐらい強いな!」

 自分のやったことに興奮しながらタカシが帰ってくる。

 「凄いのニャ! マスターがバッて行ったらスルーって切れたニャ!」

 「カッコ良かった……」

 思わず口にしてしまっていた。

 「えへへへへ~」

 さっきまでの剣神が、くちゃっと顔を歪ませて頭を掻いて照れている。
 こういうギャップに余計惚れちゃうんだよねー……

 「さて、どうする?まだまだ行けるけどお昼だよね?」

 「一回出てご飯食べて休憩してからもう10階くらい今日は行きましょう。」

 「それがいいニャ!」

 まるでピクニック気分で塔の攻略を進めていく、
 規格外のタカシとウーニャがいるからだけど、私が暇ね……
 自分が何が出来るかもう一度考えないと、タカシの力になれるように。

 「そんなに強かったんだ刀持ったタカシ君は。」

 今日のお昼はトシアキさんとアンリさんと一緒に食べている。

 「タカシの姿が消えたと思ったら、ボスが真っ二つになって死にました。」

 「な、なんか冗談みたいなはなしね……」

 「まー、俺らは俺らのペースで楽しんでこうぜ!」

 「そうね、タカシ君を基準に考えること自体がおかしいのよね。」

 「ハハハハ」

 なんか俺が化物みたいな扱いだなぁ、まぁ、化物なんだけどね。

 「経験値的にも美味しいからパワーレベリングとかも出来そうでした。」

 「ああ、それは一部の人には嬉しいかもね、もっと強くなりて~って言ってる奴多いから、3人枠余ってるんだよね?」

 「ええ、今度塔に遊びに行きましょう!」

 簡単に言っているけど普通は種族ダンジョンの50階位でも一般プレイヤーだと結構な準備が必要になるんだけどね、まぁ、タカシだからね。

 「サオリちゃんもレベル上がったんだね」

 「ええ、結構上がりにくくなっていたのにタカシと一緒にいるとあっという間ですね。」

 今私はLv 94 大賢者になっている。JobLvはまだ34、上位の職ほど必要な経験値が多くなる。大賢者になってスキルもたくさん開放された。特に思考加速はタカシやウーニャちゃんみたいな超高速戦闘を理解するのにとても助かった。

 「このままいくとサオリちゃんも人外になっちゃうね」

 「そうじゃないとタカシの隣は歩けませんから」

 「わー、ごちそうさま~。うちのトシアキももう少ししっかりしてくれればなー」

 「お、俺だって俺なりに頑張ってるじゃん。」

 「危なっかしくてな~、ま、支えてあげますよワ・タ・シが!」

 「恩にきりますアンリ様」

 最近なんというか付き合いだす人が増えているそうだ、
 俺が来たことで何らかの変化があるだろうって噂と、
 俺が示したゲームの仕様変更が、いままでなんとなくそういう関係だった人達の起爆剤になった、らしい。
 やはり、なんとなく生かされているという感覚は言葉が違えど持っていて、
 それが生きていくって言う目標を得てそういう結果になったのかな?
 ちょっと、嬉しいな。


 その後食事を終え領土で午後の準備をすることにした。
 久しぶりにゆっくりと泳いで昼寝でもするとサオリに告げると、
 私もハンモックで寝たい! と今はプールサイドでハンモックに揺られながら読書をしてるサオリをプールのなかから眺めている。
 ダンジョンの外でもスキルなどの補助は有効で、もう肉体的にはとんでもない速度での遊泳も可能だけど、そんなことしたらプールが滅茶苦茶になるから自重している。

 「手加減というか日常生活のためにもこの訓練はちゃんとやっておかないとなー」

 実際にはバトルモードと生活モードで切り替えられるんだけど、それに気がつくのはもう少しあとになる。
 サオリとデート中に転んで地面にクレーターみたいな穴を開けた時にサオリに指摘されて知ったのだった。

 

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