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穴の空いた靴下

32章 背水の陣

 自分の命をかけた戦い。
 命をかけてでも手に入れたいものが俺にはある。
 負けることは許されない。
 絶対に勝たねばならない戦いがここにはある。

 『諦めることなく再び我の前に立つとは勇者の名は伊達ではないな!』

 「今度こそ倒す!」

 『フハハハハハ!痛みに泣き叫び逃げ出したものとは思えぬな!』

 あ、さっきの勇者は皮肉だったのね、あんがいちゃんと受け答えするじゃない、

 「覚悟は決めた、今度は以前のようには行かないからな!」

 『良かろう、我を楽しませてみろ!!』


 戦闘が始まると一気にウーニャが距離を詰める、
 絶対神の豪腕が唸るがウーニャはすでにその場にいない、
 背後のウーニャに対応させる隙は俺が与えない!
 即座に反応する絶対神、以前の戦いでは大振りな強力な一撃が多かったが、
 牽制のようなジャブを織り交ぜて防御は更に難しくなる。

 (これは完全に学習してるな、何回も戦うと不味い……)

 学習するのはこちらも同じ、さらにフェイントや捌きなどまだまだ負ける気はない!
 俺は冷静さは忘れず、自分自身も攻撃に参加する、ウーニャは前回よりも防御も忘れずに二人で攻防3:7くらいのバランスを保ち、絶対神と対峙する。

 『ようやく逢えた好敵手、我は今歓喜を感じておる!素晴らしいぞ!』

 体力を50%ほど削ったところで絶対神が語り始めた、
 加速状態でも普通に聞こえたのが謎だが、それはすぐに解ける。

 ブオン!!

 目の前を今までとは段違いの攻撃が通過する、

 『お主らの世界はこうなっておるのか、なるほどこれは素晴らしい!』

 加速状態で絶対神が襲い掛かってくる!
 流石に同等に近い速度で流しきれるほどの実力差はない!

 (ウーニャ、今回で決めないと不味い使うぞ!!)

 (仕方ないニャ!!)

 俺は超加速状態に移行する、以前の鼻血ぶっ倒れ状態にならないように、
 思考はクールに冷静にだ!

 (この状態に相手が突入してきたらあとは根性だな……)

 やはり超加速を長時間維持していると知恵熱のような状態になるらしく、
 体全体が火照っているような感覚を覚える。
 攻防はすでに5:5、ここで押し切らないと不味い!
 相手の体力を削る速度はますが、ジャブのような攻撃はいくら超加速状態でも全て回避ができているわけではなく、当然、被弾も増える。
 完全回避はあるが、クリティカル攻撃が来れば当然被弾する。
 もし、あの痛みに怯んで多段攻撃を連続で喰らえば”死”もあり得る。

 ブルッ

 ビビったわけじゃない。
 俺はワクワクしていた、
 やってやる、そのリスクを乗り越えて絶対神こいつを倒す!!

 その瞬間、

 (!!)

 すさまじい痛みが襲う、とうとう被弾したのだ。
 相手のジャブがかすっただけだがHPの殆どを持って行かれている、
 ここで少しでも怯めば防御の壁はたやすく破られてしまう。

 (男の子だから痛くなーーーーーーーーーい!!!!!!!!!!)

 歯を食いしばり防御の手も攻撃の手も休めない、
 非常に危険だが防御に集中して被弾を捌き切り、
 スキル切り替えでリジェネによる回復を図らなければいけない、
 全力で防御に傾ければなんとかなる!

 なんとかする!!

 (ウーニャ!完全防御形態にするから相手のリジェネで回復出来ない程度の攻撃に留めてくれ!)

 (わかったニャ!ここが踏ん張りどころニャ!)

 迫り来るすさまじい速さの攻撃を紙一重で受けて捌く、一度でも被弾すればいくら防御特化していても死ぬかもしれない。

 極限の集中を見せた俺の前に不思議な光景が突如広がった。

 敵の攻撃が来る前にわかる、見えるんだ。
 半透明な拳が近づいて来る、そのほんの少し後にハッキリとした拳がついてくる、そんな感じだ。
 一瞬ではあるがだいぶ楽になる。
 どこに来るかわからないで対応するより、ここに来るとわかって対応するのは遥かに楽だ。
 さらにそこに来るとわかればもっと別の対応もできる。

 俺の拳が深々と絶対神に突き刺さる、

 カウンターだ。

 ジャブの合間に来る強力な攻撃にカウンターを取ることが出来る、
 余裕ができるとできることが増える、フェイントでさらに攻撃させる場所を誘導させてやるのだ、それにより未来視とも言えるその残影と実際の攻撃に隙間ができる。余裕があればより強いカウンターを放つことが出来る。
 いままで遅々として進まなかったダメージが突然跳ね上がる。

 (すーーーーーごーーーーーーいーーーーーーにーーーーーーゃーーーーー)

 変に間延びしたウーニャの声が聴こえる、
 だけど今は止まれない、今しかない、俺は攻撃力特化へ換装を行う。
 HPは少しは回復しているが、この装備で被弾すればきっと一撃死だろう。
 だが、俺に迷いはなかった、
 永遠とも思える静止した時間の中でジャブの一つ一つにもカウンターをあて、
 ジャブを打とうとする手を穿ち、攻撃の準備を潰し、一方的に攻撃を当て続ける。左手がジャブを打とうとすれば肩を穿ち、足を刈ろうとする膝を蹴り抜き、
 もう何度攻撃したのかわからない頭で考えるよりも先に攻撃が繰り出される、
 目の前は真っ赤になっている、ウロボロスの血も赤いのか……
 そんなことを考えた時、

 ドンッ

 と何かの体当たりを受けて俺は倒れた、タカシの身体で、

 「もうダメにゃ!! それ以上は駄目ニャ!! 倒したニャ!!」

 悲痛な叫び声をウーニャはあげている、今の体当たりはウーニャか……
 おかしいな、まだ目の前が真っ赤だ……

 俺の記憶はそこで途切れる。

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