みんな無課金俺課金(課金するとは言っていない)

穴の空いた靴下

27章 苦戦

 「ひ、ひぃ……こ、怖い……」

 「マ、マスター……まだ7階なのニャ、こ、怖がってもしょうがないのニャ」

 俺の足にしがみつきながらそんなことを言っても説得力がない。

 2階で周囲や壁には見えない壁や床があって落下しないことは実験してわかっているんだけど、それとこれとは別だ!

 なんで、無駄にこうおしゃれな浮いた床とかのオブジェにするんだよ……
 たしかにゲームとかでこういう作りはグラフィックと相まってすごいなーとは思うけど、実際に登ってみるとこんな恐ろしい物は無いぞ……

 戦闘中でもおっかなびっくりで戦闘しているのでまぁグダグダで、
 ふと足元見ると透明床で腰が抜けて倒されたり、攻撃しようとしてその先が吹き抜けで力が抜けてしまったり……

 さすがにコレの解決策は慣れしかないんだけど、少しづつ慣れると、階層が高くなってきて、まぁそんな感じで無駄に時間をかけるハメになってしまった訳で……

 「うわーーーー!!」

 とうとう夢にまで高所が出てきて寝不足にも悩まされたり、
 せっかくの強力な力を生かせずに無駄に時間を浪費してしまった。

 モンスターに関してはハッキリ言って問題ない。
 今までの色違い、各種族ダンジョンからの寄せ集め、同じパターンのHPと攻撃力だけ上がっている。ただそれだけという印象だった。


 「うーん50階にもなると逆に現実感がなくなるんだね……」

 「いい加減落ちないことも身体に染み付いてきましたからニャ」

 そんなわけで3ヶ月もかかってしまったけど半分までの攻略に成功していた。

 「さて、50階のボスだ。気合入れていこう!」

 「はいですニャ!」

 破壊神の塔 50階層ボス

 塔の守護者 アスラ
 3つの顔、3対の腕をもつ神様。
 三面六臂さんめんろっぴ
 正面の顔:仏の教えに出会った瞬間(驚きと嬉しさのまじった表情)
 左側の顔:今までの自分を後悔している姿  又は  過ちを認めきれない姿(唇をかみしめている表情)
 右側の顔:人間界を哀れんでいる姿 又は  懺悔ざんげをしている姿(悲しげな表情)
 第一組の手 : 合唱している
 第二組の手 : 左手に日輪、右手に月輪  を持つ
 第三組の手 : 左手に弓、右手に矢  を持つ

 威風堂々とした佇まいは戦いの苦戦を予想させる。
 (でも、それ以上に今まで見たことのない敵の登場に心踊っちゃうのがゲーマー脳なんだろうな。)

 アスラはそこまでの巨体ではない、といっても3mくらいはあるんだけど、
 巨体じゃないからいいってことはない、逆に適した大きさのほうが強い。

 飛び交う日輪・月輪、弓を避けながら俺とウーニャは接近を図る。
 合唱した手からレーザーのような攻撃まである、苛烈極まる攻撃になかなか接近することができない。
 ウーニャは天井方向からも急襲できるが合唱した手をその対処に使用され、うまいこと懐には入れない。
 レーザーがこない分こちらが少し楽になるはずなんだけど、日輪・月輪が予想しづらいコースを取って飛んできて接近を拒む。

 『仕方ない、運の要素が絡むけどちょっと無茶する!』

 『わかったニャ!』

 念話で幸運型による完全回避を当てにした特攻を仕掛ける、少しでも裏をかいて接近できれば攻撃の糸口をつかめる!!

 てかさ、また不条理に強すぎだろこのボス!!

 神の奇跡で攻撃があたってもダメージを受けないことはわかっていても、
 飛んで来る武器が身体を貫くのはゾッとしない、
 できるかぎりは回避するけど無茶もする!!

 横っ腹を月輪が通過していくがダメージはない、一度懐に入れば投げるのではなく斬りつけるように使用方法を変えてくる、弓はこの距離なら打てない、
 近距離を維持しないといけない、俺とウーニャはつかず離れず攻撃を続ける。
 隙あらば転倒させたりもしたいけどこのアスラはそんな隙を与えてくれない、

 『今だ!』

 ウーニャの上からの攻撃の際に生じた隙でアスラの両足を蹴り払う、
 するとアスラは弓を離し転倒することなく日輪月輪で斬りかかってくる。

 『強い!』

 『ワクワクするニャ!』

 それでも近づいてからは終始俺らが押し気味に戦えている。

 体力が50%を切った時背中から新たな二本の腕が生えて上空からのウーニャの攻撃に対応してくる、

 『卑怯ニャー!!』

 それでも上下の攻撃を緩慢なく続けていく、

 『この被弾量から幸運型以外無理だから攻撃力がでないな!』

 『!! 違うにゃマスター攻撃力が出ないと思っているから出ないニャ!!』

 そうか!!
 俺はより強力な攻撃をする姿を想像する、強く強く想像していく!
 次第に俺の攻撃は鋭さと力強さを増していく。
 もっと、速く疾く! 強く毅く!!
 振り下ろされる月輪よりも速く! 叩きつけられる拳よりも強く!!

 『凄いニャ!さすがマスター力が溢れてくるニャ!』

 俺はさっさとこの塔を登って師匠とやらにあってサオリと元の世界に戻るんだ!邪魔をするなぁ!!

 俺らの攻撃の前にアスラはついに膝をついた。

 「勝ったニャー!!」

 「よっしゃ!」


 元の体に戻り、歓喜の声を上げた時、ズクンと痛みが走った。

 「ん?」

 「どうしたのってマスター大丈夫かニャ!?」

 「え……?」ポタポタポタ

 何だこの音?

 「マスター鼻血が凄いニャ!」

 言われて触ると確かに鼻血が出ている、すごい量だ。
 真っ赤な手を見ていたら気を失った……



 夢を見ていた……

 サオリが呼んでいる。声は聞こえないけど呼んでいる。
 場面が変わるとサオリは戦っていた、周りにはダイチさんとヒマワリ、
 みんななんかかっこいい装備をして戦っている。
 サオリはたくさんの人に囲まれて、寂しくはなさそうだ。

 良かった……

 「……!」

 なにか聞こえる

 「…タ……!」

 誰かに身体を揺らされている……
 俺は、何してたんだっけ?

 「マスターしっかりするニャ!!」

 「……ん?」

 「マスター心配したニャー!!」

 俺の身体の上でウーニャが飛んだり跳ねたりしていた。

 「マスターは自分の鼻血がついた手を見て気絶したニャ」

 「うっわ、シャツが血だらけ!」

 「顔は拭いたんだニャ、でも身体はこの姿じゃニャンとも」

 「いやいや、ありがとうウーニャ、どっちにしろ一回帰ろう。」

 自分の状態もちゃんと把握したいし、一度家に戻ることにした。


 「たぶん、加速に思考のオーバーヒートみたいなものだと思うニャ。」

 「知恵熱みたいなものか……」

 「ただ、このままだとヤバイニャ。マスターは休むことなく頑張りすぎたのニャ。少し休憩が必要なのニャ。」

 早くサオリには逢いたいけど、あんなことに毎回なっていたらそれどころじゃなくなるもんな……

 「わかった、とりあえず今日と明日はダンジョンに入るのはやめとく。」

 「そうして欲しいのニャ。」

 あと50階……待ってろよサオリ!



 

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