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穴の空いた靴下

15章 死闘

中央泉に隣接するレストランは
この街では一番の大きさと豪華な作りであった。
食事も豪華で味も最高だった。

でも今日は商業区の方へ出かけることにする
この一ヶ月位でたくさんあるレストランや食事もできる居酒屋的なところを
何箇所か開拓していた。
どの店も大変美味しく特に今日来ている月影亭は
和食を出してくれるので二人はすぐに気に入って
何回か来ていた。

タカシは落ち着かなかった、
サオリがいつもとは違う、なんというかすごく可愛い格好をして
待ち合わせに現れたからだ

スカートなんて初めて見た・・・
てか、なんかすごい可愛いんだけど、いや、そりゃ可愛いとは思ってたけど
こんなに

「変・・・かな・・・?」
「・・・!?ぜ、全然変じゃないすごい可愛いよ!びっくりするほど可愛いよ!」
「うん!ありがと!」

もう卑屈に捉えない。
タカシは素直にそう思ってくれている。
それを私は嬉しいと思っている。
だから ありがとう 
そう素直に伝える。
それだけの、そう、それだけのアタリマエのこと。

でもそのアタリマエのことを失っていた私に
アタリマエを教えてくれたのはタカシ。
私はタカシの邪魔にはなりたいくない・・・


満面の笑みでお礼を言われた。
心臓が爆発するかと思った。
今まで見たことがない素敵な笑顔だった。
たぶん今俺はゆでダコみたいになってるだろうな・・・
さっきから動悸が止まらない
サオリの顔もまともに見られない、
月影亭に行こうと言われても、
ふぁ、はい!と素っ頓狂な返事をするのが誠意いっぱいだった。
さすがに鈍い俺でもこ、これは今日なんかあるんじゃないか?
ってことぐらいはわかる。
でも、特に新しい事が起きるでもなく
食事は進んでいく。
何を頼んだのか、今自分が何を食べているのか
どんな味がするのかもよくわかっていない。
5回目の水のおかわりをしたことはなぜか覚えている。

「私は、たぶん母の現実って言うゲームの中の操作キャラだったんだと思う」
食事も終わって一息ついて緑茶を飲みながらサオリはそう話しだした。
「勉強がうまくいかないと、どうして私が言ったようにできないんだ、
運動も同じ、良い点を取れば当たり前だもっと頑張れ、
少しでも悪い点を取るとなぜ出来ないんだ、もっと頑張れ・・・」

いつの間にか俺はサオリの話に聞き入って
周りの音が聞こえなくなった。

彼女の母はある意味被害者でもあった
父とは高校時代からの付き合いで大学を出て社会人2年目の結婚
普通に考えれば幸せな夫婦なはずだった。
問題は母の家と父の家の格差であった。
父の家は裕福で父も一流の大学を出て一流の外資系商社に勤め
忙しく世界中を飛び回っていた。
母は貧しくはないが祖父が早くに亡くなっており
それなりに苦労をして短大を出て中規模な会社の事務に落ち着いた。
父は実家とは関係なく母を好きであったし愛してくれていた。
ただ父の実家は母を明らかに下に見ていた。
さらに父の海外勤務が多いせいも有り子宝にも恵まれなかった。
そのこともグチグチと言われ続けていた、
そして母が29の時に私が生まれた。
母は義実家からの攻撃から一時の開放をそれは喜んだ。
お腹の子供に感謝をした。

しかし、お腹の子が女であることがさらに彼女を不幸にした。
父の実家は跡継ぎでないことを隠すことなく不満を母にぶつけた。
母は一度休息を得てしまったこと、妊娠による体調の変化により
その攻撃で消耗してしまったのだ。
そうして生まれた私は、小さい頃から完璧で誰もが羨むような
母にとっての いい子 でいることを求められた。

結局死ぬほどの努力の結果日本でも有数の一貫校に入学して
成績も上位、これもたぶんすごいことなんだけれど
なぜ一位じゃないのかと咎められた。
私は努力し続けるしかなかった。
誰にも褒められない努力を。

それでも父の実家は誰しもが知る学校で優秀な成績を収めている孫を
前よりはかわいがってくれた、
しかし、男はまだか、次の子はまだかと母を攻撃することはやめなかった
その結果、母は私に攻撃的になった。
私は自分を守るために母にとっての いい子 でいつづけた。
中学1年の時、母が妊娠した。
父も少し立場が上になり日本にいることも多くなった
そしてお腹の子は男の子であった。
私の存在価値が亡くなった。
わたしなんかどうでもよくなった母は体裁のためだけに
私の勉学を緩めることはなかった。
しかし、何の期待もしていないことは以前よりも強く感じた。
ただ、ファンタを許されたのは私にとっては幸運だった。
結果、勉強以外の全てと言っていい時間をファンタのために使うようになった
その知識や経験はそれだけ私が一人である証でもあるので
誇るような気分にもならなかった、
それでもファンタにのめり込んだ。

そしてHMDによるファンタの続編が出ることが決まった。
流石にコレはやらせてもらえないかと思ったら
意外にも母はそれを与えてくれた。
高鳴る気持ちを抑えてゲームの世界に飛び込んだ私をまっていたのは
この一ヶ月のほんとうの意味での冒険だった。

一緒にこの世界にきたタカシは
なんか軽薄そうで最初に印象はよくも悪くもない悪い側って感じだった
しかし、彼はすごい力を持っていた。
すごく強力な仲魔をもって、輝石を無限に使えるというとんでもない力
最初はずるいとも思ったけど
いろいろなゲームの要素にだんだんそんなことはどうでも良くなっていった。

楽しかった。

タカシは私のことを褒めてくれた。
嫌味もなくまっすぐに私のことをすごいと言ってくれた、
そして私のことをかわいいって言ってくれた。
最初に会った時に小学生?って言われた時はムカついたけど
小さい子供がかわいいのと同じようなかわいいって意味かとも思ったけど
隠し事が出来ないタカシは素直な気持ちで可愛いって言ってくれていることは
すぐにわかった。
何よりも私のことを認めて、邪険にすることなく、優しくしてくれる。
ただそれだけのことが私にとって今まで最も欲しくて、
そして絶対に手にはいらないものだと諦めていたものだった。

「私にとってタカシは神様みたいな人なんだよ?」
私はいつの間にか泣いていた・・・
「それにね、私はタカシのことが好き。大好き。だからね・・・決めたの。」

彼女はとんでもないことをさらっと言った。
頭が沸騰してしまいそうだったが、次の言葉でそれは吹き飛んでしまった。

「これからはタカシだけでダンジョンに入って、
どんなに頑張っても私は足手まといにしかならないから。
ホントは気がついていたんだけど、タカシは優しいから。
私はここでタカシの応援してる。」

頭の中が一気に冷めていくのを感じる。
そして、急激に熱くなっていく

「だからね、タカ・・・」
「駄目だ・・・・」
「え・・・?」
「ダメだ!!絶対にダメだ!!!!俺はサオリと一緒がいいんだ!!
サオリがそばに居てくれないないならなんのためにダンジョンへ行くんだ!」

気がついたら俺は叫んでいた。

「サオリが好きって言ってくれてすげー嬉しかった!
俺もサオリが好きだ!大好きだ!!サオリより俺がサオリの事好きだ!!」

子供みたいに叫んでた
すでにサオリの話を聞いて涙と鼻水まみれだったから絵面は最悪だったと思う

「好きなら一緒にいてくれよ!サオリがいないと俺なんて全然ダメだよ!
一緒に戦ってくれ!!」

「ほんとに・・・いいの?」
「あたりめだろ!!」

大事なところで噛んだけど、まっすぐにその気持が伝わって
嬉しくてまた、泣いてしまった。

「そしたらこれからもよろしくねタカシ」
「うんうんうん!」

立ち上がって熱弁を揮ったタカシの胸にサオリは迷うことなく飛び込んだ
抱きしめ合う二人。

今ココにほんとうの意味でのパーティーとなった二人が生まれたのだ。

大喝采とともに

「「「「「うおーーーーーーー!!!」」」」」
二人は完全に忘れていた、今いるのは月影亭。
和食を出す店はこの世界では珍しく
勇者は日本人が多い
女神の領地は発展を遂げたため人気の観光地となっていた。
勇者の多くはここで食事を楽しんでいたのであった。

二人の話が始まると店内の音楽を止めて
かたずを飲んで出歯亀をしていた客達が
万雷の拍手と歓声で二人の初々しいやり取りを
幾人かは涙を流しながら聞き入っていたのである。

「いいねーいいねー」
「素敵ー><私もあんな事言われたいー!」
「いいぞ、坊主幸せにしてやれよ!」

散々に祝福され二人はゆでダコのようになりながらお店をあとにすることになる

この話はその後長い間勇者たちの間で語り継がれることになる・・・


そのあとサオリの領地のベンチで
あんなことやこんなことを我慢しながら
疲れて寝てしまい寄りかかってくるサオリを
ベットに寝かせて家に帰るまでの彼の頭の中

高校2年の男の子の大事にしたいとあんなことやこんなこと・・・
そのせめぎあいはまさに死闘であった。

現実に戻るまで我慢!

彼はこの日からダンジョン攻略の鬼となる



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