みんな無課金俺課金(課金するとは言っていない)

穴の空いた靴下

2章 始めての町

 ∞

 無限大
 すさまじく大きな単位のその先にある無限
 有限がないこと

 つまり
 廃課金ともレベルの違う課金が可能になっているということ
 さらに自分以外のプレイヤーにはそもそも課金をすることが出来ない状態

 完全にチートじゃないか!!

 俺は思わず叫びそうになったけど、こんなチート野郎ってばれたら何をされるかわからないし、今はさっさと町に移動するべきだと頭を切り替える。

「顔芸の練習でもしてるの?」

 吹き出すのをこらえながらケインが話しかけてきた

「え……あはは。表情も作れるんだなーって感心してたんだよ」

 取り敢えず誤魔化すためにそう答えたけど、確かに表情も作れることに気がついた。
 表情だけではなく指先の一本一本までも思った通りに動かせる。
 思った通りにというか、これ自分のからだだよね。
 つねれば痛いし地面をさわれば砂や小石の感触まである。

 いろんなものを掴んだり顔を引っ張ったり、腕を回したりしてるプレイヤーが回りにもたくさんいる。
 自分の胸をもみしだいて恍惚とした表情をしている人もいるけどほっておこう。
 ついでに自分は性別は変えない主義なのである。だからアレもきちんとあった。

「すごすぎないこのゲーム……?」

「HMDひとつでここまで出来るんだから科学の力って凄いね」

 しばらく話して分かったんだけどケインはコミュ能力が高く、頭の回転が早かった。
 運営へのコールを試したり脳波を読み取ってリンクしている可能性とか、でもそれだと脳に直接情報を書き込んでいるのか、そんな機能あり得るのか? とか、正直良くわからないことをブツブツ言ってたりする。
 他にやることもないのでそんな言葉を聞きながら、町までの道を歩いていた。

「ゲームだとクリックして移動だけど歩くと結構あるよね」

 ゲームの体だというのに少し汗ばんだシャツをパタパタさせながら、ケインにそう話しかけたら、

「現実でもこうやって汗かいてたら臭くなりそうでやだなー」

 確かにそうだ、

「ん?」

 そこで気がついた。

「これ、トイレとかやばくない?」

 今は尿意はないけど、迂闊にゲームないでそういうことしたら、現実が大変なことになる!
 回りのプレイヤーたちも、あ……って顔してる。

「それにしてもGMコールも出来ないし、
ログアウトは相変わらず出来ないし運営の対応を待つしか出来ないよね」

「だよねー、しかしこれだけ期待されたゲームの最初がこれだと
ヤバイんじゃね?」

「確かに世界はすごいけどログアウト出来ないのは怖いね」

「現実の体を動かそうとしてもこっちの体が動いてしまうから
HMD外せないんだよね……」

 頭から何かをはずすようなしぐさをしながらケインはそう呟いた。
 確かにこんな状態だと現実の体に何かされてもなーんもできない。

「ベッド等の安全な場所で起動してくださいってのは確かに頷けるね」

「思ったよりもすごい機械だったんだねあれは」

「ちょっとすごすぎる気もするよね」

 確かに何の事前情報もなく発表から発売されたHMD、説明書からは今のような状況になる事は考えられなかった。視覚と音響によるVRを少し進めて思考による操作を可能に!
 って謳い文句は確かにあったけどゲーム内の触覚や、指先の繊細な操作を出来るほどと思いはしなかった。
 そのくせアバターはソシャゲと対して変わっていなくて、慣れ親しんだポリゴンになるかと思ったらまさかのグラフィック。
 世界がそこに広がって、プレイヤーが現れていた。
 いまだに回りを見渡すだけで感動してしまうから、それだけでもこのゲームをやってよかったなとか思っちゃっている。


そんなこんなでやっとこさ最初の町にたどり着いた。

んだけど何やら町の入り口で揉めているみたいだ。

「何でいれらんねーんだよ!運営ふざけんなよ!」

「MOBのくせに!」

「貴様らのような身元もわからんやつらをこんなに大量に通すわけにいくわけがないだろ!
今長おさが来るまで大人しく待っていろ!」

ゲームの中では優しく移動システムを教えてくれる町の衛兵Aさんが、顔を真っ赤にして怒鳴りつけていた……

「薬草くれそうな雰囲気じゃないね」

移動システムの説明が終わるとこれを持っていきなさいって薬草くれて、時間経過で薬草くれるのでプレイヤーからは薬草って呼ばれてるんだよね……

確かに同じ格好をした大集団が押し寄せてきたらびっくりするわな。

最初こそプレイヤー達もいきり立っていたけどしだいに、そりゃそうだよね、って空気と、ほんと運営しね!って感じになって大騒ぎするやつは少なくなっていった。

「なんじゃこの大量の人は……」

 町の中から現れた長が驚いたのも仕方ないよね。
 この長もゲームと同じ見た目で真っ白いアゴヒゲの人の良さそうな初老の男性だった。
 ゲーム内では各施設の場所や使い方なんかを教えてくれて、最初の仲魔の輝石を肩代わりしてくる皆がお世話になるキャラだった。

「女神の丘から女神に呼ばれてやってきたんだけど」

 先頭の方の誰かがそう答えた

「な!?まさか伝承の女神の勇者……?しかし、この数は……」

 確かにドン引きだよね。
 伝説の勇者が数万人(多分神殿には今も続々と現れている)押し寄せてきたら俺もそういう反応になる。

 というかMOBの反応が人間みたいだAIもかなり作り込んでそうだ。
 そうするとログアウト出来ないとかそんな致命的なエラーが残るかな……?

 少し嫌な予感がする……
 このゲームに入ってからなんだかんだ二時間くらい。
 いまだに運営から何の説明もないのはおかしいよな、女神も不穏なことを言っていたし……

「話がついたみたいだよ」

 少し不安になったけど動きがあったというケインの言葉に、その気持ちはすぐに消え去ってくれた。

 取り敢えず長は少しずつ町の中央にある女神の泉と、洞窟の入り口に連れていくことになった。
 この人数だとどれだけ時間がかかるんだろう……

「消えた!?」

 町の入り口でまた声が上がった。
 最初の人たちが町に入ったとたんにプレイヤーが消えたそうなのだ。

「完全にシームレスじゃないんじゃない?」

 そう言われてああやっぱりゲームなんだなと少し安心してしまった。

「じゃあいこうか」

 ケインと一緒に町の入り口に入った瞬間。

 目の前に荒れ果てた町と一人の少女が立っていた。

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