東方狐著聞集

稜さん@なろう)

百十三尾 博麗の巫女

墓地の奥に行くとそこには見知った顔が二人いた。
その二人は誰かと弾幕ごっこした後のようだった。

「霊夢と魔理沙じゃないか。こんなところで何をしているんだ?」

「それは私が説明するよ。神霊共がこの墓地に集まってきていたから追ってみたらそこに倒れているやつに襲われたんだよ。それで、霊夢が退治したってわけだぜ」

 なるほど、二人も異変解決に出向いていたのか。そういえば、私が神社から出る時、霊夢の姿が見当たらなかったな。

 「それでだ、こんな所であったのも何かの縁だ。いつかの雪辱戦でもさせてもらおうか」

「いつか?なんのことだろうか」

 魔理沙は箒に飛び乗ると空中に上がった。そして、
自身の武器であるミニ八卦炉をこちらに向けた。


「いくぜ! 恋符【マスタースパーク】」

 ミニ八卦炉から極大レーザーが発射された。


「いきなりか!? 守符【三本尾の牢獄】」


   ズガガガガーー。と私の発動したスペルカードと魔理沙の打ったマスタースパークが削りあう音が響く。


「ヒュー。さすがにやられてくれないか」

  突如前から陰陽玉が飛んでくる。それをひらりと避け、前を見るとそこには


「あんたたち、何やってんのよ。私も混ぜなさい」

 紅白の巫女服を着た少女、博麗霊夢が不敵な笑みを浮かべて立っていた。


「まてまて、霊夢も参戦するつもりか? さすがの私も勝てそうにないな……妖夢!」

「はい! 助太刀いたします」


 「魔理沙、妖夢の相手をお願いするわ。私はラグナをやるから」

「ちぇー。わかったよ」

  霊夢は四枚の札を構え空に浮かんだ。
なるほど、先に上をとることで私を牽制しようというわけか。

 「だが、霊夢。少し詰めが甘かったな」

 そう言って私は瞬間移動のように霊夢の斜め上に回りこみ弾幕を打ち込んだ。 放たれた弾幕が霊夢を飲み込み地面にぶつかり土煙が舞う。
 


土煙が晴れるとそこには誰もいない。

「――!? 」


「あら? ツメが甘いのはあなたの方じゃないの?」
 
  私の後ろ(・・・)にいた霊夢は持っていた四枚の札に霊力を込めて、その札を私に向けて投げつけた。弾幕に変わった札が私をえぐりとるように回転し目の前で爆発した。
 




「………危ないな。私じゃなかったら被弾していたぞ?」


「煙でよく見えなかったけど、どうやってあれを避けたのかしら?」

「ふ、なに、簡単なことだよ。私の自慢の尻尾で守っただけさ。それより、後ろに注意がいってなかったみたいだな」

「っ!? 」

「遅いです。切り捨て御免!」

「させないぜ? 避けろ霊夢! 恋符【マスタースパーク】!!」

「妖夢避けろ!」

 すぐに霊夢から避けると妖夢は私の隣に来た。
そして、魔理沙の放ったマスタースパークに飲まれた霊夢は平然とした顔で魔理沙の隣に浮いていた。

「別に避けれたわよ」

「そうか? 私には『斬られそう! 助けて魔理沙!』って顔にしか見れなかったぜ?」

「ところで魔理沙。私、妖夢を頼むって言ったわよね。なんで、妖夢が私の後ろにいたのかしら?」

「何言ってんだ。お前が私たちの戦闘割り込んできたんだろ?」

「っ……そういうことね。魔理沙、ここからは二人でやるわよ」

「わかったぜ!」

 おっと、霊夢に作戦がばれてしまったようだ。

「妖夢、奇襲作戦失敗のようだ。ここからは二人で戦うよ」

 「わかりました」

「先手必勝ってな! 恋符【マスタースパーク】」

「一気に終わらせるわよ。霊符【夢想封印】」

「っ――。ラグナさん! 」

「大丈夫だ、後ろに隠れていろ! 守符【五本尾の護符剣】」

   解放された五本目の尾が霊夢と魔理沙のスペルカードを防いだ。 
    そして、尻尾をどけるとそこには魔理沙だけが浮いていた。


 「やっぱり防ぐか……だけど、ラグナ! 弾幕ごっこ中に敵を見失うのは良くないぜ!」

 そう叫ぶと後ろにいた妖夢が吹き飛んだ。
 

「 ックハッ――――!?」

 「残念ね、妖夢。あなたはここで失格りたいあよ」


 まずい、妖夢がやられてしまった。さすがに二人を相手にするのはきつい。せめて、一対一なら



「私だけ、やられてたまるか!」

  すると地面に吹き飛んだ拍子に上がった土煙の中から何かが飛び出した。
 飛び出した何かは魔理沙に被弾する。


「いたた。なんだこれはって、妖夢の横に浮いてる霊魂か!」

 飛んできた霊魂を妖夢の倒れている場所に投げ返そうと魔理沙が触れた瞬間、それは光り、爆発した。
 爆発に飲み込まれた魔理沙は気を失ったのかそのまま地面に落ちた。

「よくやった妖夢。 さて、霊夢、一対一だ」

「そうね。でも、ラグナ、あんたの負けよ!夢符【二重結界】」

   霊夢はいつの間にか手に持っていた札に霊力を込めそれを私に向けて投げた。

「その札は、まさか!?」

 札は私を囲むように増え、結界を張ってしまった。

「やられたな。まさか、私の動きを封じ込めるとは」

「本当は相手を囲んだりする技じゃないんだけど、貴方対策にこんな風に発動したのよ。そして、閉じ込めるだけじゃないわよ!」


 霊夢から放たれた弾幕が結界丹触れた途端私の後ろからその弾幕が現れた。

「おっと、後ろか」

「残念。後ろだけじゃないわよ」

 気がつくと私の視界は弾幕に覆われ、私を潰すように結界がだんだんと迫ってきていた。


「くっ! 」


「私の勝ちよ!」


 そして私は弾幕に飲まれた。











    「案外楽に勝てるもんね。さて、先に進みましょうか――――っ!? こ、これはお札?!」


「どこへ行くんだ、霊夢。まだ終わってないぞ?」


「な、なんで無傷なのよ!?」
 

   無傷で現れたラグナに霊夢は驚愕する。そして、理解する。

「まさか、結界に捕まったのは私の動きを封じるためにわざと……」

「まさか押しつぶされそうになるのは予想外だったがな。さて、これで終幕としよう。奥義【天翔天狐あまかけるてんこ】」

  霊夢が最後に見たのは天空を翔けるように飛んでくる弾幕の雨だった。




  「さすが霊夢だ。あと少し歳をとっていたら負けていたかもしれないな」

 
 地面に落ちた霊夢を抱えラグナは妖夢と魔理沙のいる所へと歩いて行った。





つづく
  

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