東方狐著聞集

稜さん@なろう)

百十四尾 加速する嗜欲

 霊夢が起きるのを待って私たちは門番のようなものが守っていたであろう洞窟へと入った。


「ラグナがいたら百人力だな」

  そう笑いながら言う魔理沙に私は笑いながら首を振った。


「いや、この異変はお前たち三人で解決してもらおうと思っているんだ。だから、三人で力を合わせて頑張ってくれ」


「えっ!? ラグナさん、戦わないんですか?!」


  前を歩いていた妖夢が驚いた様子で聞き返してくる。 どうやら、私が異変解決をすると思っていたようだ。 

「本来異変解決は人間の仕事だからな。霊夢が異変解決に出向いていないのなら私が解決しても良かったんだがな」


  「ちょっと待ってください。人間が解決するのなら半分幽霊の私も手を出さないほうがいいんじゃ――」



   妖夢の言葉を遮るようにどこからか弾幕が放たれた。


「あらあらあら、不意打ち失敗しちゃいましたわ」

「む、お前は……さっき見たような」

  魔理沙は首をかしげながら残っていた弾幕を避けていた。そして、弾幕をすべて避けると思い出したように声を上げた。

 「あぁ、ここの入り口を守ってたやつを回収してたやつか。不意打ちなんてひどいことしやがる」

「うふふ、私は霍青娥。今は普通の仙人をしております」


「匂うな。それも物凄く」

 私がそう言うと横にいた霊夢が鼻をすんすんと鳴らした。どうやら私の言った匂いを勘違いしているようだ

「そう? 別に匂いなんてしないわよ」

「そう言う意味の匂いじゃないと思いますけど……でも確かにあの仙人は胡散臭いです」

 「あらあらあら、酷い言われようですね。しょうがないですね。ここから先に行きたいのなら私を倒してから行きなさい」

「しょうがないのかな? まぁ、いいでしょう。ならば、私が相手をします!」

「生きては返しませんよっ! 道符【タオ胎動】」

  白く大きい丸型弾幕が妖夢に向かって飛んだ。
だが、妖夢はその弾幕を自身の持つ刀で打ち返した。

「っ!? あらあら、私の弾幕が打ち返されてしまうなんて、でもまだ終わりじゃなくてよ」

 さらに弾幕が放たれた。そして丸型弾幕は妖夢を上から囲むようにじわじわと増えていく。

「ふわふわ飛んでる弾に被弾すると思われるなんて、
こちらもスペルカードを使わせてもらいますよ!断迷剣【迷津慈航斬】」


  妖夢の放った剣技は囲んでいた丸型弾幕をすべて斬り捨て、さらに霍青娥に当たった。


「これでトドメです! 人鬼【未来永劫斬】!」

「やーらーれーたー」


 棒読みで地面に墜落した霍青娥を魔理沙と霊夢はあきれた様子で眺めていた。


「胡散臭い奴だ」

 そう言って魔理沙は土煙が収まるのを待たずに先に進んでしまった。

「妖夢、さっきのやつならもう消えたわよ。早く進みましょう」

 「そうみたい。ところで霊夢、魔理沙は?」

「ラグナと先に行ったわよ」

「えっ!? 私たちも早く行きましょ!」

「はいはい」
 
 そして、妖夢と霊夢は先に行った二人を追いかけるために洞窟の奥を進んでいった。


つづく

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