東方狐著聞集
百九尾 狐と妖魔本
 最近、霊夢が読書にはまっている。しかし、この神社に本なんかあっただろうか? それも、霊夢がはまるような本が。
 これは、本人に聞いてみるしかないな。
「というわけで、その本はどこから持ってきたんだ?」
「どういう訳よ……あー、この本はね。人里にある鈴奈庵ってところで借りてきたのよ」
「鈴奈庵といえば貸本屋だったか?」
「そうよ。あんたもこの本読む?」
「いや、今日の用事が決まったから出かけてくるよ」
「あっそう。夕食までには帰ってくのよ」
  霊夢から話を聞いた私は自分の部屋に一旦戻ってから神社を後にした。
  私自身は鈴奈庵には行ったことがないが妖魔本やら外来本が置いてある貸本屋だと天狗の記者に聞いた覚えがある。
「しかし、妖魔本か。昔、いろいろ書いてたな……おっと、そろそろ人里か」
  私は空中から地面に着地し、人里の入り口へと向かった。
「あ、これは、ラグナさん。今日は里にどのようなご用件ですか?」
 私が人里に入ろうとすると見張りの若い青年が声をかけてきた。
「あぁ、鈴奈庵に用があって来たんだ」
「ラグナさんもですか」
「わたしも?」
「えぇ、昨日、博麗の巫女様がいらっしゃってましたので、博麗の巫女様も、鈴奈庵に用があると言ってました」
「そうか、それじゃあ私は行くとするよ。見張り頑張ってくれ」
「はい。お気をつてけ」
  里に入った私は、まっすぐ鈴奈庵を目指した。決して途中寄り道などしてはいない。団子など食べてはいない。
 
「さて、鈴奈庵に着いたわけだが……普通だな。とりあえず入るとしようか」
  店の中に入った私が最初に感じたのは様々な妖力だった。 
 この力を感じさせる妖力は……鬼の妖力か?
 「いらっしゃいませぇー?! よ、妖怪!?」
「あ、君がここの店主かい?」
「そ、そうですけど」
  霊夢より小さくレミリアと同じくらいの身長の少女が怯えながら机の裏に隠れていた。
 
「ここには、妖魔本があると聞いて来たんだが。鬼の妖魔本も置いているのかい?」
「え、えぇ。鬼の妖魔本も置いてますけど……あなたは?」
「あぁ、自己紹介が遅れた。私の名前はラグナだ」
「私は、本居小鈴です。えっと、ラグナさんは鬼の妖魔本を求めてきたんですか?」
「いや、そういうわけではないが……居候させてもらってる奴がここで本を借りていてな。私も何か読んでみようと思ってきたんだ」
「そうでしたか……なら、この推理小説なんかどうですか?」
  そういって小鈴は本棚から本を抜き出し渡してきた。
 これは、霊夢がはまっていた小説の作者と同じ作者の本か。
「ならそれを借りようか……そうだ、いらなくなった本なんかの買い取りなんかしてないのかい?」
「してますよ?」
「なら、この本を」
 私は、懐から一冊の本を出して小鈴に渡した。
「えーと【妖狐図鑑】ですか……書いたのは空狐!? まさか、あなたはあの読めない妖魔本を書いた空狐なんですか?!」
 私が本を渡した結果、小鈴が興奮してしまった。
 私が渡した本は昔、なんとなく書いた観察日記のようなものだ。それ以外にも人間には読めない本を書いてみたりしたのだが、この店に置かれていたとは
「空狐か、懐かしいな。そんな時代もあったよ。読めない本があるということは読むと死ぬ本も置いてあるのかい?」
「やっぱり、あなたなんですね!  読むと死ぬ本も置いてありますよ!  開かないように厳重に保存していますけど」
「その本を譲って貰えないだろうか。あの本は危険すぎる」
  読むと死ぬ本。これも昔、私が呪いなどにはまっていた頃に編み出した術を本に施したものだ。紙に書いている文字を見ただけで死ぬ呪いで効果が凄まじかったので封印していたのだが、封印は解けてしまっていたようだ。
「はい、わかりました。危ない本なのでどうしようか悩んでいたんですよ。今持ってくるので待っていてください」
「そうだ、詫びとしてその図鑑はタダで譲るよ」
「えぇ! いいんですか!?」
「あぁ、ここに置いておいてくれ」
 私がそう言うと小鈴は飛び跳ねながら店の奥に消えてしまった。途中、何かをぶつけるような音がした気がするが気のせいだろう。
「あいたた。はい、これです」
 小鈴から差し出された本を受け取り、表紙を見る
表紙には私の字で【見たら死ぬ本】と書かれていた。
「うん、これだ。迷惑をかけたね。それじゃあ。この本は私が処分しておくよ」
「はい、あと、借りていく本を袋に入れておきました」
 そう言って小鈴はパンパンに膨らんだ袋を差し出してきた。
「……こんなにあるのか?」
「えぇ、どれも面白いので。1週間以内に返してもらえれば延滞金は発生しないので」
「あ、あぁ。それじゃあ行くよ」
「またのお越しをお待ちしてまーす」
  鈴奈庵から出た私は袋を神社に起き霧の湖に向かった。
本を燃やすためにだ。別に神社でもよかったのだが万が一に備えて水辺の場所を選んだというわけだ。
「ここらでいいか。とりあえず結界を張って……と。よし、結界は完成だ」
 私と地面に置いた本を囲むように結界を張ると、私は読むと死ぬ本に向かって炎をぶつけた。妖力5霊力5の半々の力を混ぜた炎をだ。
 しかし、本は燃えることなく私に向かってその炎を跳ね返してきた。
「っち……付喪神になりかけているのか。もしこのまま放置していたら完全に自我を持って暴れていただろうな」
  本が少しずつ捲れる。だが、完全にめくれる前に本は燃えてしまった。妖力でも、霊力でもない神力の炎が本を燃やしてしまったのだ。
「まぁ、私が放置していたらの話だがな。はぁ、久しぶりの神力は疲れる。この力だけは回復しないからなぁ」
 本を燃やし終えると、私は帰路に着いた。
私は今回の件を反省して、私が書いて放置した危険な妖魔本を全て、燃やすことに決めた。一応、どこにあるのかは全てはっきりとわかっているから苦労はないだろう。
 「まさか、こんなことになるとは思わなかったなぁ」
 博麗神社に戻った私は徹夜で借りてきた本を読み終えた。感想を述べると霊夢がはまる理由がよくわかる内容だった。
つづく
 これは、本人に聞いてみるしかないな。
「というわけで、その本はどこから持ってきたんだ?」
「どういう訳よ……あー、この本はね。人里にある鈴奈庵ってところで借りてきたのよ」
「鈴奈庵といえば貸本屋だったか?」
「そうよ。あんたもこの本読む?」
「いや、今日の用事が決まったから出かけてくるよ」
「あっそう。夕食までには帰ってくのよ」
  霊夢から話を聞いた私は自分の部屋に一旦戻ってから神社を後にした。
  私自身は鈴奈庵には行ったことがないが妖魔本やら外来本が置いてある貸本屋だと天狗の記者に聞いた覚えがある。
「しかし、妖魔本か。昔、いろいろ書いてたな……おっと、そろそろ人里か」
  私は空中から地面に着地し、人里の入り口へと向かった。
「あ、これは、ラグナさん。今日は里にどのようなご用件ですか?」
 私が人里に入ろうとすると見張りの若い青年が声をかけてきた。
「あぁ、鈴奈庵に用があって来たんだ」
「ラグナさんもですか」
「わたしも?」
「えぇ、昨日、博麗の巫女様がいらっしゃってましたので、博麗の巫女様も、鈴奈庵に用があると言ってました」
「そうか、それじゃあ私は行くとするよ。見張り頑張ってくれ」
「はい。お気をつてけ」
  里に入った私は、まっすぐ鈴奈庵を目指した。決して途中寄り道などしてはいない。団子など食べてはいない。
 
「さて、鈴奈庵に着いたわけだが……普通だな。とりあえず入るとしようか」
  店の中に入った私が最初に感じたのは様々な妖力だった。 
 この力を感じさせる妖力は……鬼の妖力か?
 「いらっしゃいませぇー?! よ、妖怪!?」
「あ、君がここの店主かい?」
「そ、そうですけど」
  霊夢より小さくレミリアと同じくらいの身長の少女が怯えながら机の裏に隠れていた。
 
「ここには、妖魔本があると聞いて来たんだが。鬼の妖魔本も置いているのかい?」
「え、えぇ。鬼の妖魔本も置いてますけど……あなたは?」
「あぁ、自己紹介が遅れた。私の名前はラグナだ」
「私は、本居小鈴です。えっと、ラグナさんは鬼の妖魔本を求めてきたんですか?」
「いや、そういうわけではないが……居候させてもらってる奴がここで本を借りていてな。私も何か読んでみようと思ってきたんだ」
「そうでしたか……なら、この推理小説なんかどうですか?」
  そういって小鈴は本棚から本を抜き出し渡してきた。
 これは、霊夢がはまっていた小説の作者と同じ作者の本か。
「ならそれを借りようか……そうだ、いらなくなった本なんかの買い取りなんかしてないのかい?」
「してますよ?」
「なら、この本を」
 私は、懐から一冊の本を出して小鈴に渡した。
「えーと【妖狐図鑑】ですか……書いたのは空狐!? まさか、あなたはあの読めない妖魔本を書いた空狐なんですか?!」
 私が本を渡した結果、小鈴が興奮してしまった。
 私が渡した本は昔、なんとなく書いた観察日記のようなものだ。それ以外にも人間には読めない本を書いてみたりしたのだが、この店に置かれていたとは
「空狐か、懐かしいな。そんな時代もあったよ。読めない本があるということは読むと死ぬ本も置いてあるのかい?」
「やっぱり、あなたなんですね!  読むと死ぬ本も置いてありますよ!  開かないように厳重に保存していますけど」
「その本を譲って貰えないだろうか。あの本は危険すぎる」
  読むと死ぬ本。これも昔、私が呪いなどにはまっていた頃に編み出した術を本に施したものだ。紙に書いている文字を見ただけで死ぬ呪いで効果が凄まじかったので封印していたのだが、封印は解けてしまっていたようだ。
「はい、わかりました。危ない本なのでどうしようか悩んでいたんですよ。今持ってくるので待っていてください」
「そうだ、詫びとしてその図鑑はタダで譲るよ」
「えぇ! いいんですか!?」
「あぁ、ここに置いておいてくれ」
 私がそう言うと小鈴は飛び跳ねながら店の奥に消えてしまった。途中、何かをぶつけるような音がした気がするが気のせいだろう。
「あいたた。はい、これです」
 小鈴から差し出された本を受け取り、表紙を見る
表紙には私の字で【見たら死ぬ本】と書かれていた。
「うん、これだ。迷惑をかけたね。それじゃあ。この本は私が処分しておくよ」
「はい、あと、借りていく本を袋に入れておきました」
 そう言って小鈴はパンパンに膨らんだ袋を差し出してきた。
「……こんなにあるのか?」
「えぇ、どれも面白いので。1週間以内に返してもらえれば延滞金は発生しないので」
「あ、あぁ。それじゃあ行くよ」
「またのお越しをお待ちしてまーす」
  鈴奈庵から出た私は袋を神社に起き霧の湖に向かった。
本を燃やすためにだ。別に神社でもよかったのだが万が一に備えて水辺の場所を選んだというわけだ。
「ここらでいいか。とりあえず結界を張って……と。よし、結界は完成だ」
 私と地面に置いた本を囲むように結界を張ると、私は読むと死ぬ本に向かって炎をぶつけた。妖力5霊力5の半々の力を混ぜた炎をだ。
 しかし、本は燃えることなく私に向かってその炎を跳ね返してきた。
「っち……付喪神になりかけているのか。もしこのまま放置していたら完全に自我を持って暴れていただろうな」
  本が少しずつ捲れる。だが、完全にめくれる前に本は燃えてしまった。妖力でも、霊力でもない神力の炎が本を燃やしてしまったのだ。
「まぁ、私が放置していたらの話だがな。はぁ、久しぶりの神力は疲れる。この力だけは回復しないからなぁ」
 本を燃やし終えると、私は帰路に着いた。
私は今回の件を反省して、私が書いて放置した危険な妖魔本を全て、燃やすことに決めた。一応、どこにあるのかは全てはっきりとわかっているから苦労はないだろう。
 「まさか、こんなことになるとは思わなかったなぁ」
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