東方狐著聞集

稜さん@なろう)

百三尾 白玉楼の主と狐

妖夢が目をさますちょっと前、幽々子とラグナは雑談に花を咲かせていた。 

「紫ったらなんで帰っちゃったのかしら?」
「私たちの邪魔をしたくなかったんじゃないか? 」
  私は「そうなのかしらぁ?」と言いながら煎餅を頬張る幽々子を見て少し目柱が熱くなっていた。  
 妖怪の私が目柱が熱くなるのもおかしな話だが仕方ないのかもしれない。だって、生前の幽々子では考えれなかった光景だから。 

「そういえば幽々子はなんで冥界に居るんだ?」
 もともと幻想郷の外に住んでいた筈なのだが……まさか、幻想郷に近い場所に移り住んでいたとは。

「えーとねぇ。小さな閻魔様にたのまれたからよぉ〜」
 「ちいさな閻魔様?」
 「そうよ、えーとなんていったかしら、うーん……忘れちゃった。あ、でもあなたの名前を言っていた気がするわ」
「私の名前? いったい誰なんだろうか」
  小さな閻魔様……私に閻魔の知り合いはいないしそもそも小さな閻魔様など会ったら忘れる方が難しいだろう。 

「そういえば私の従者はどうだったかしら?」
「どうって見た目はすごく可愛いと思うよっ!? も、もちろん、幽々子も可愛いが」
 ふぅ……びっくりした。幽々子の従者を可愛いと言った瞬間、幽々子の目つきが鋭くなるとは……永林と同じ香りを感じるぞ?

「違うわ、妖夢は確かに可愛いけど私が聞きたいのは強さの方よ」
「あぁ、驚いたよ。あの若さであれほど剣を操れるとは」
  さすが妖忌さんの孫と言ったところだろうか。あのまま成長したらもしかすると負けるかもしれないな。

「そう、安心したわ。多分あの子もあなたとの戦いで何かを得たでしょうし。それより、これ食べない? 美味しいわよ〜」
「三色団子か、大好きだったな……いただくよ。はむ……んぐ……ゴクッ」
「ふぁむ? はむはむ」
  しかし、幽々子はよく食べるな。まさか三色団子を両手に三本ずつ持って食べるとは恐れ入った。
 そういえば先ほどから走る音が聞こえるな。

「幽々子様!」
  幽々子の従者の子が入ってきたと思ったらすぐに出て行ってしまった。

「あらあら、妖夢ったら」
「顔がすごく驚いていたな」
「呼んでくるわ」

  しかし、私を見た途端に目を見開いて飛び出すのはどうかと思う。少し傷ついたぞ?
 そんなことを考えてるといつの間にか幽々子が帰ってきていた。

「ごめんなさいね。うちの妖夢が恥ずかしがっちゃって」
「あぁ、気にしてないさ」
 なるほどあれは恥ずかしかったのか……なるほど。

「それで幽々子様、紹介したい方とは?」
 おや、幽々子は私を紹介する気なのか。   自己紹介をする機会ができたのは好都合だ。

「えぇ、私の隣にいる人なんだけどね。この方はラグナよ」
 なんともシンプルな自己紹介、まぁ、あとは自分でやれということなのだろう。

「ん、ラグナだ。よろしく」
「私は魂魄妖夢です。幽々子様の客人とは知らず無礼をお許し下さい」
「いや、気にしていないよ」
 いきなり土下座をして謝られたら怒るに怒れないしなんというか怪しさ満点の私が悪い気もする。 まあ、元の原因はうさんくさいやつのせいだが。

「そうよ〜妖夢。しっかりと見極めないとだめよ〜」
     あ、幽々子を見る妖夢の目が鋭くなった。

 それから私は妖夢を交えて雑談に花を咲かせて、そろそろ帰ろうかと思っていると妖夢が言った。

「あの、ラグナさん。もし、よろしければ私に稽古をつけてくれませんか?」
「いいのか?  私に教えれることなんてないと思うぞ?」
「そうね〜ラグナ、私からもお願いするわ。この子に稽古をつけてあげて」
「お願いします!」
  二人にここまで頼まれたら断れないな……仕方ない。

「いいだろう。だけど今度でいいか?」
「はい! お願いします!」
「それと、幽々子そろそろお暇するよ」
「そう〜? また来てくれると嬉しいわ」
「あぁ、また来させてもらうよ」
  そう言って私は懐に入れていた札を取り出し破いた。 

 ポンと音を立て私の目の前は煙に満ち溢れる。そして、煙が晴れるとそこは……

「あら、ラグナ。こんな時間までどこに行ってたのよ?」
  博麗霊夢の居る博麗神社に居た。

「あぁ、ちょいっと旧友と友達になりにな」
「ふーん。それよりご飯冷める前に食べちゃって」
「おや、私の分もあるんだな」
「そりゃそうよ、だって、私の感が帰ってくるって告げてたもの」

  私はそうかと言い霊夢の作っていた食事を食べ始めた。 

さて、明日はどこに行こうか。

つづく

「東方狐著聞集」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く