東方狐著聞集

稜さん@なろう)

百二尾 白玉楼の庭師

「うぅん……部屋? ……あっ!?」
 
 屋敷の廊下を全力疾走している私の名前は魂魄妖夢。ここ、白玉楼で剣術指南役兼庭師をしています。  そして、なんで走っているのかと思われている方もいると思いますので理由を言う主の元へ行くためです。

 「あぁ、もう! なんで部屋で寝ていたの?! 幽々子様〜!」
 私は幽々子が居るであろう部屋を目指して走りながら先ほどの事を考えていた。

  ◇

  私は幽々子様にいわれ無駄に長い階段を降りていた。 もちろん愚痴などこぼしてはいない

「別になにも感じないし侵入者もいないと思うんだけどなぁ」
 愚痴などこぼしてはいない……ごほん。

「あれ? この感覚は……妖力? だけど、ここ冥界に妖力があるのはおかしいわ。もしかして幽々子様の言った通り侵入者が?」
  幽々子様の妖力と最初は思ったが幽々子様の妖力が死に近い妖力とすると私の感じた妖力は生に近い妖力だった。 私は近づいてくる妖力の持ち主をその場で待っていた。

「来た……妖獣?」
   私は持っていた刀のうち長い方の刀、楼観剣を抜き構えた。

「黙りなさい侵入者。あなたのような生きた妖怪がここ、冥界に何の用ですか?」
「その刀を仕舞ってくれたら話してもいいが……仕舞う気はないんだろ?」
「当たり前です。あなたが善か悪かは切ればわかりますしね」
 そう斬ればわかるのです。私はさいど深く構え。斬った。

  手ごたえあり! と私は一瞬思ったがそんな考えは消えた。なぜなら私が斬っていたのは空だったからだ。
  すぐさま侵入者の立っていたところを見ると侵入者は笑いながら霊力を通した剣を二、三度振るった。
  私はこの剣を見て『奇妙』な感覚になりました。妖獣が霊力を使うこともおかしいですが、その剣の形に私は疑問を持ちました。 

「奇妙な剣ですね。西洋の剣もたくさんありますがあなたの持っているような剣は見たことがありません」

「まぁ、私も武器マニアだからな。いろいろ集めては霊力を纏わせて複製を作ったもんだよ」
  侵入者はまた霊力と口にしましたが武器については特に触れなかった。これ以上の会話は無駄と思い私は軽く構えた。

「そうですか。いざ!」
 
そして、同じように斬り込みましたが奇妙な剣で止められました。

「甘いな。ハァ!!」
「ッツ! 止めますか……ならこれなら」
  少し距離をとった私はもう片方の刀、白楼剣を抜き二刀流独特の構えをとった。

「二刀流か……ふむ。なら私も獲物を変えよう。霊装【妖刀】」
 「今度は刀ですか? それにその刀は…」
 名刀小狐丸じゃないですか。なんで、あんな妖獣が……?

「おや、こいつを知っているのか……そう、この刀は小狐丸の複製さ。昔、ある神社で見せてもらって作ったんだ。いくぞ? 最後までついてこいよ?」
  気配が変わった……くる!
  
「くっ!? 」
「ほう、あれを止めるか」
っちぃ!?  斬りにくい間合いをとられた?!
 いや、楼観剣ならいける! いや、斬る!
「破ァ!」
 その首とった!いや、またかわされた?!

「危ないな。殺す気か?」
「当たり前です。侵入者は斬るんですから!」

 私は無我夢中で斬りかかった。しかし、全て躱され隙を指摘される。すごく屈辱を味わっている気分になっていた。

「はぁ……はぁ。くっ……」
「なかなかの腕前だ。だがこれで終わりだ」
「なにをーーゴハッ!?」

 最後に何か言っていたような気がするが私の記憶はここで止まった。



「そういえばあの侵入者、昔お師匠様が見せてくれた剣技に似ていたような……んー?」
 まぁ、いいでしょう。幽々子様のお部屋に着きましたね。

「幽々子様!」

  私の目に入ってきたのは先ほどの侵入者と楽しそうに会話をする幽々子様でした。

「あ、失礼しまたした!」
   あ、咄嗟に閉めちゃった。しかし、どうして侵入者と幽々子様が? んーわからない。

「妖夢〜どうして閉めちゃうの?」
   あ、幽々子様、笑いをこらえてる。魂魄妖夢! 覚悟決めて部屋に突入します! 

「すいません。幽々子様、驚きのあまり閉めてしまいました」
 「妖夢、こっちにおいで。 紹介したい人がいるのよ」

   幽々子様が紹介したい人、侵入者の方ですかね?

「紹介したい方ですか?」
「えぇ、私の隣にいる人なんだけどね。この方はラグナよ」
「ラグナだ、よろしく」
  侵入者、改めラグナさんですか、そういえばどこかで聞いた名前ですね………んー?

「私は魂魄妖夢です。幽々子様の客人とは知らず無礼をお許し下さい」
「いや、気にしていないよ」
「そうよ〜妖夢。しっかりと見極めないとだめよ〜」
     幽々子様が『侵入者がいるわ〜』と言ってような気がするんですが……

「それに、妖夢との戦いが妖忌さんとの戦いを思い出したよ」
「え!? ラグナさん、お師匠のことをご存知なのですか!」
「あぁ、私が剣術をしっかりと学ぶきっかけになった人だな」
 あぁ、なるほど先ほどの疑問が解けました。たぶん最後の剣技は昔、お師匠様が見せてくれた技ですかね?

「最後に私に使った技はもしかして地ノ型という技ですか?」
「何をされたのかわかったのか?」
「はい、お師匠様から一度だけ見せてもらったので、ですが技がわかったのは先ほど目が覚めてからですけどね」
「そうか、ところで妖忌はどこに居るんだ?」
「あ、お師匠様は……」
「妖忌はね〜幽居したわ〜」
「そうだったのか……また、手合わせをしたかったが残念だ」
  ラグナさん、物凄く残念そうですね。それほどお師匠様と手合わせをしたかったのですかね?

「あの、ラグナさん。もし、よろしければ私に稽古をつけてくれませんか?」
「いいのか?  私に教えれることなんてないと思うぞ?」
「そうね〜ラグナ、私からもお願いするわ。この子に稽古をつけてあげて」
「お願いします!」
 
ラグナさんは少し悩んだ後、『いいだろう。だけど今度でいいか?』というと幽々子様に『そろそろ帰るよ』と言った後、ポンと音を立てた消えてしまった。

「よかったわね〜妖夢。それでね私、お腹がすいたんだけど」
「あ、今すぐ作ってきます!」

  私は大急ぎで台所に向かい幽々子様のお食事を作り始めました。 




つづく

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