東方狐著聞集
十四尾 五封の印
 大黒猫は一度しかしたことのないであろう後悔をしていた。 それも無理はないだろう、大黒猫は慢心して力の差を気づけなかったからだ。
ナ、ナンナンダ、奴の雰囲気が急変した? どういうことだ? もしや、奴は……いや、ありえない!
だが、この人間は狂ったように笑いながら霊力で作り出したと思われる剣を振っている。
「ホラ、逃げなきゃアたるワよ? アハハハ」
ラグナの持っている霊力でできた剣、霊剣が凄まじい速度で空を切る。
「ギャオ!」
しかし、その剣筋をしっかりと読み、かわし、ラグナの隙を突いた大黒猫は自身の血液を鋭い刃に変化させたものを首に直撃させた。
「お姉さま!?」
「五月蝿い、スコシ離れテ」
ラグナの首は飛ぶことはなく傷一つついていない。それどころか首から顔にかけて模様のようなものが浮かび上がっているではないか。
「は、はい」
「オマエ ニンゲンジャナイナ?」
「サァね」
そんな問いかけをはぐらし再度切り込む。
何度かの鍔競り合いをした後、大黒猫が呟くような声で言った。
「ツギノイチゲキデオワラセテヤル!」
そう言うと大黒猫は自身を妖力の炎で包みラグナに向かって突進した。
「猪のヨうに突進をするのカ? ワラわせるなよ? 霊双『五封剣』
霊双『五封剣』とはラグナの扱う霊器という霊力で作り出した武器の一つでありこの霊双は五つの霊器の奥義の一つであり、歪な形をしている双剣だ。この剣で切られたものは五つの機能を封印される。
「ナァ!? ソレハ、レイリョクヲアヤツルヨウカイガウミダシタブキノヒトツジャナイカ!?」
「ほう、コレヲ知っているトはナァ。だが、コレを抜いた以上はこの世から消えたほうがマシな痛みを味合わせてヤロウ」
そういうと握った剣を大黒猫に投射し始めた。投げては作りを繰り返し気づくとそこには瀕死に落ちいった大黒猫が倒れていた。
「ふん、呆気ナカッったな。さて、この世から消える準備ができたか?」
「ヤ、ヤメロ! ワタシ、ワタシヲコロシタラドウナルカワカラナイノカ?!」
「うーんそうね。なら全てを奪ってから下に落とそうかしら?」
いつもの雰囲気に戻ったラグナの顔は妖艶な笑みを浮かべていた。
「雪夢!」
「は、はい! なんでしょう!」
いままで木の裏に隠れていた雪夢が飛び出してきた。
「例の奴、準備できた?」
「あぁ、あれですか。対妖怪用巫術でしたっけ?」
「いいから早く」
「はい!」
雪夢は棒切れのようなもので地面に何かを書き始めた。それは円のようだが所々が角張っており不可思議な形をしている。
「うーん。これは修行あるのみね。まぁ今回は何も言わないわ。さて、またせたわね」
「ヤ、ヤメテクレ! チテイニイクグライナラシンダホウガ……ッガ!?」
「黙れ。巫術『五封の印』今回は、その身の封印と妖力を半分に封印だ」
「ウギャアアアアアア……アア」
大黒猫は叫び声をあげるとそこに大黒猫は存在しなかった。大黒猫は地底と呼ばれる忌み嫌われし妖怪たちが封印されている場所に封印されたのだ。
「まぁ、歯ごたえのある敵ではあったな。さて帰るぞ、雪夢」
「はい! お姉ちゃん!」
「じゃあ、行こうか」
木の裏に隠れていた雪夢は
「お姉様からあんなこと言われるなんて……興奮しちゃった!」
とか言ってたとかなんとか
つづく
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