僕と狼姉様の十五夜幻想物語 ー温泉旅館から始まる少し破廉恥な非日常ー

稲荷一等兵

第17節11部ー満足していない姉ー

——……。


 なんだか伊代姉がしおらしい。しおらしいというか、とても弱々しい。こんな伊代姉は初めて見た。少なくとも、僕が東京へ行く前にはこんな伊代姉見たことがなかった。
 どこか儚げで、女性らしい弱さを僕は伊代姉に見た。

「昔は、もっと……」
「昔は、なあに? ……? ……うわああ!! 伊代姉! お尻、お尻揉まないでよ!!」

 かと思っていたら、密着状態で思いっきり僕のお尻が揉みしだかれた。

「あんたが私を慰さめるなんて十年早いわよッ、生意気な!」
「ええ……っ。ちょっ、お腹! お腹はくすぐったいから!あはっ、あははは!」

ばしゃばしゃと温泉を波だてながら、僕は伊代姉の魔の手から逃れて、さっきまでとは一転、威嚇体勢に。

「はぁ、はぁ……。なんだよ伊代姉、いきなり元気になっちゃってさ!」
「私はあんたの前ならいつだって元気よ。だからこっち戻ってきなさいよぉ」
「……もうくすぐらない?」
「くすぐらないけど。お尻は触らせて欲しいわ」
「……仕方ないなぁ」

 多分、伊代姉は少し無理をしてる……ような気がする。表情に少しだけ陰りが見えるからそう思うのかもしれないけど。でも、気丈に振る舞いたい理由があるんだろうな。
 なら僕もこれ以上は何も言うまいと、黙って伊代姉の近く温泉に肩まで浸かった。

「伊代姉お尻触りすぎだよ」
「あんたのお尻ほんとにいいわよね。私が言うんだから間違いないわよ」
「伊代姉のおっぱいもすごいよね。おっきくて柔らかい」
「触りたいなら触ってもいいのよ? ほれほれ」

 すでにお湯に浮いてた伊代姉の胸。それを、自ら持ち上げて僕に勧めてきた。だからとりあえずつついておいた。うーん、柔らかい……。
 いやいや、お互いの体触りあって何してるのさ、僕らは。でもま、これもまたスキンシップということで……。

「千草、泳いでないでこっちきなさい」

 昔を思い出して、この広い温泉でちょっと泳いでたんだけど……それを微笑ましく遠くから見ててくれた伊代姉がそう急かしてきた。
 言われるがままに伊代姉のところまで行くと……。

「そろそろあがりましょ」
「え、あがるの? もう少し入ってよーよ」
「もうそろそろご飯でしょ。でもその前に、可愛がらせてね。私まだ満足してないから……」

 と、いうことで僕は後ろから伊代姉に抱きこまれながら残り時間を過ごすことになった。遠慮なしに抱き込むものだから、おっぱいやら何やら背中にあたりまくりだけど……。まあ、伊代姉がそうしたいって言うんだから仕方ないよね。
 久しぶりの姉弟水入らずだし、僕も伊代姉も好きにスキンシップをとっておこう。



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