僕と狼姉様の十五夜幻想物語 ー温泉旅館から始まる少し破廉恥な非日常ー
第15節4部—山にお酒を貰いに—
「ただーいまー! 銀露ー、ご飯だよー?」
一真と別れて、母さんと伊代姉でお昼ご飯を商店街で買いつつ家に到着。
リビングにいるであろう銀露に声をかけると。
「よい匂いがしておったと思えば、やはり帰ってきたか! 暇じゃったぞ、千草ーほれほれ、はよう、はよう飯を食おう!」
リビングからひょこっと顔だけ出した銀露が、喜びからか頭の獣耳をせわしなく動かし、尻尾を振りながらそんなことを言ってきた。とっても嬉しそうだな。
靴を脱いで玄関からリビングに。僕が脱いだ制服の上着を、銀露がとってくれた。ふわりと浮かべると目に付いたハンガーに掛けてくれたんだ。こういうところ、さすがお姉さんだなあ。
お腹減っているからといって、自分のことだけを考えずに気をつかってくれるんだ。
「おかえり千草。にゅーがくしきとやらはどうであった?」
「うん、思ったより緊張したよ! 友達にも会えたし楽しかったなあ。でももっと友達できるといいな」
「ぬしならすぐにできるじゃろうて。裏もなく毒もないぬしならの」
そう言って、後ろから肩を持って僕の顔を覗き込んでくる銀露。頰に触れる銀色の髪がとてもいい匂い……ドキドキしちゃう。
「ご飯の準備できたわよ!」
と、伊代姉が声を荒げて割り入ってきた。う、銀露のひっつきっぷりが気に障ったのかな……?
まあそんなこんなで、少しばかり騒がしい昼食となってしまったけど、無事に済ませて、僕は銀露に呼ばれて日本庭園をゆっくり歩いていた。
「へぇ……死角の世にある稲荷山かぁ。なんだかすごい規模の大きなものがあるんだね」
「うむ。この時期になると、その山の参道に行列ができるのじゃが……何故じゃと思う?」
「それは……参拝する方がいるの? 神様とかが? まさかあ」
「参拝する……というか、そうじゃな……酒をの。もらいに行くのじゃ」
「お酒?」
「うむ。酒じゃ。……ぬしが割った酒瓶に入っていたあれじゃ」
「うっ……!!」
銀露の声が少し威圧してくるような低さになった……。迷い童たちがいた小屋、そこで割ってしまった酒瓶には少しばかり光を放つ液体……お酒が入っていたんだ。
「あれは霊吟醸、または神酒と言っての。たいへん貴重な酒なのじゃ。稲荷霊山の神気をたっぷり吸わせ、醸造したものでの。味もさることながら、強く清い力が宿っておる。その酒を受け取りに、みな稲荷霊山へ行列を作るのじゃが……」
「じゃが?」
「儂もそこに行くつもりじゃ。ついてくるかの? 千草」
「え、行きたい行きたい!! 行ってもいいの!?」
わーいっ、と。たいへんよろしい反応を返した僕を見て嬉しかったのか銀露は満面の笑みで言った。
「よいぞ。しかしまあ、たまに厄介な神などが混じるでな。しっかりついてくるのじゃぞ?」
「死角の世に銀露付きでいけるのかぁ……やったぜ」
「ぬし、聞いておるのか?」
不思議空間に行けるということで、僕はもう有頂天だった。
一真と別れて、母さんと伊代姉でお昼ご飯を商店街で買いつつ家に到着。
リビングにいるであろう銀露に声をかけると。
「よい匂いがしておったと思えば、やはり帰ってきたか! 暇じゃったぞ、千草ーほれほれ、はよう、はよう飯を食おう!」
リビングからひょこっと顔だけ出した銀露が、喜びからか頭の獣耳をせわしなく動かし、尻尾を振りながらそんなことを言ってきた。とっても嬉しそうだな。
靴を脱いで玄関からリビングに。僕が脱いだ制服の上着を、銀露がとってくれた。ふわりと浮かべると目に付いたハンガーに掛けてくれたんだ。こういうところ、さすがお姉さんだなあ。
お腹減っているからといって、自分のことだけを考えずに気をつかってくれるんだ。
「おかえり千草。にゅーがくしきとやらはどうであった?」
「うん、思ったより緊張したよ! 友達にも会えたし楽しかったなあ。でももっと友達できるといいな」
「ぬしならすぐにできるじゃろうて。裏もなく毒もないぬしならの」
そう言って、後ろから肩を持って僕の顔を覗き込んでくる銀露。頰に触れる銀色の髪がとてもいい匂い……ドキドキしちゃう。
「ご飯の準備できたわよ!」
と、伊代姉が声を荒げて割り入ってきた。う、銀露のひっつきっぷりが気に障ったのかな……?
まあそんなこんなで、少しばかり騒がしい昼食となってしまったけど、無事に済ませて、僕は銀露に呼ばれて日本庭園をゆっくり歩いていた。
「へぇ……死角の世にある稲荷山かぁ。なんだかすごい規模の大きなものがあるんだね」
「うむ。この時期になると、その山の参道に行列ができるのじゃが……何故じゃと思う?」
「それは……参拝する方がいるの? 神様とかが? まさかあ」
「参拝する……というか、そうじゃな……酒をの。もらいに行くのじゃ」
「お酒?」
「うむ。酒じゃ。……ぬしが割った酒瓶に入っていたあれじゃ」
「うっ……!!」
銀露の声が少し威圧してくるような低さになった……。迷い童たちがいた小屋、そこで割ってしまった酒瓶には少しばかり光を放つ液体……お酒が入っていたんだ。
「あれは霊吟醸、または神酒と言っての。たいへん貴重な酒なのじゃ。稲荷霊山の神気をたっぷり吸わせ、醸造したものでの。味もさることながら、強く清い力が宿っておる。その酒を受け取りに、みな稲荷霊山へ行列を作るのじゃが……」
「じゃが?」
「儂もそこに行くつもりじゃ。ついてくるかの? 千草」
「え、行きたい行きたい!! 行ってもいいの!?」
わーいっ、と。たいへんよろしい反応を返した僕を見て嬉しかったのか銀露は満面の笑みで言った。
「よいぞ。しかしまあ、たまに厄介な神などが混じるでな。しっかりついてくるのじゃぞ?」
「死角の世に銀露付きでいけるのかぁ……やったぜ」
「ぬし、聞いておるのか?」
不思議空間に行けるということで、僕はもう有頂天だった。
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