僕と狼姉様の十五夜幻想物語 ー温泉旅館から始まる少し破廉恥な非日常ー
第15節6部—銀狼様と自転車—
さてさて、今はお昼の13時。だけど、もうこの時間になると稲荷霊山の大行列は始まってるらしい。
体が疲れることはないってことだから、僕はとにかく歩きやすい靴を履いて向かうことにした。
場所は……。
「ここから北に行ったところにある山じゃの。このあたりで一山だけ、金色毛の狐が管理する山があるのじゃ。そこの頂上に寺があるのじゃが……知っておるかの?」
「ああ! 知ってる知ってる。弄月寺だ! すんごく長い石段があるんだよね。あそこの和尚様元気かなあ」
「寺には用はないのじゃぞ? 石段じゃ石段。数えて、150段目あたりに稲荷霊山への入り口が現れておるはずじゃが……場所は変わるからのう。もっと上かもしれんし、下かもしれん」
そんな不確定なものなの、稲荷霊山への入り口とやらは……。まあ、死角の世というくらいだから、それくらい朧げで、不安定なものでも納得できるけどさ……。
「でも、そっか。弄月寺まで行くなら自転車の方がいいかな……」
「じてんしゃ……ああ、ぬしが買ってもらったと見せてくれた、あの二輪の乗り物のことじゃったの。あれで向かうのか?」
「の、方が早いんだけど。二人乗りかあ……うーん」
銀露は着物姿だからなあ。自転車のペダルを漕がせるのは気が引けるし、頭の耳も、髪の色も目立つしなあ。
「儂の姿が目立って都合が悪いと?」
「都合が悪いってわけじゃないんだけど、その……頭に耳がついてたりお尻から尻尾が生えてるっていうのは、他の人に見られたくないんだよ。騒がれても困るし……何より、あんまり銀露を他の人に見られて取られたくない……と言ったら語弊があるかな。僕だけの銀……いやこれもおかしいな、あれえ?」
なんだろう。この形容できない気持ちは……。まさか、独占欲というやつなのか!
分かち合い精神を大切にしてきた僕が一人の神様を独占しようとしてるなんてそんな……。
と、一人悶々としてる僕をにやにやと隣で見つめてきてる銀露は、腰を曲げて僕の耳を口でくわえてきた。
「わああ……ッ」
「かかかっ! 随分良い反応じゃの、千草」
「なにすんのさ! もう、僕耳弱いんだからやめてよー」
「くふ、この儂を独り占めしようとするぬしが、なんともいじらしくての。心配せずとも、儂はぬしをしっかり見ておるよ」
「……うん。ありがと、銀露」
「ふむ……じゃがそういうことなら心配せずともよいぞ。ある程度、姿を隠すことは可能じゃ。主以外の者には見えんよう、気配を断っておこうかの」
そうして、僕は自転車を引っ張り出してきた。まだ新品同然、銀色フレームの26インチシティサイクルだ。銀色なのは、やっぱり銀露に影響受けたところが大きいんだよ。
僕の後ろに銀露は横向きに、荷台に跨がず上品な姿勢で乗った。なんだか絵になるな。
「おお、なんじゃ気分が高揚するのう。こんなものに乗るのは初めてじゃ」
「そうだよね。山じゃ走れないし、これ」
体が疲れることはないってことだから、僕はとにかく歩きやすい靴を履いて向かうことにした。
場所は……。
「ここから北に行ったところにある山じゃの。このあたりで一山だけ、金色毛の狐が管理する山があるのじゃ。そこの頂上に寺があるのじゃが……知っておるかの?」
「ああ! 知ってる知ってる。弄月寺だ! すんごく長い石段があるんだよね。あそこの和尚様元気かなあ」
「寺には用はないのじゃぞ? 石段じゃ石段。数えて、150段目あたりに稲荷霊山への入り口が現れておるはずじゃが……場所は変わるからのう。もっと上かもしれんし、下かもしれん」
そんな不確定なものなの、稲荷霊山への入り口とやらは……。まあ、死角の世というくらいだから、それくらい朧げで、不安定なものでも納得できるけどさ……。
「でも、そっか。弄月寺まで行くなら自転車の方がいいかな……」
「じてんしゃ……ああ、ぬしが買ってもらったと見せてくれた、あの二輪の乗り物のことじゃったの。あれで向かうのか?」
「の、方が早いんだけど。二人乗りかあ……うーん」
銀露は着物姿だからなあ。自転車のペダルを漕がせるのは気が引けるし、頭の耳も、髪の色も目立つしなあ。
「儂の姿が目立って都合が悪いと?」
「都合が悪いってわけじゃないんだけど、その……頭に耳がついてたりお尻から尻尾が生えてるっていうのは、他の人に見られたくないんだよ。騒がれても困るし……何より、あんまり銀露を他の人に見られて取られたくない……と言ったら語弊があるかな。僕だけの銀……いやこれもおかしいな、あれえ?」
なんだろう。この形容できない気持ちは……。まさか、独占欲というやつなのか!
分かち合い精神を大切にしてきた僕が一人の神様を独占しようとしてるなんてそんな……。
と、一人悶々としてる僕をにやにやと隣で見つめてきてる銀露は、腰を曲げて僕の耳を口でくわえてきた。
「わああ……ッ」
「かかかっ! 随分良い反応じゃの、千草」
「なにすんのさ! もう、僕耳弱いんだからやめてよー」
「くふ、この儂を独り占めしようとするぬしが、なんともいじらしくての。心配せずとも、儂はぬしをしっかり見ておるよ」
「……うん。ありがと、銀露」
「ふむ……じゃがそういうことなら心配せずともよいぞ。ある程度、姿を隠すことは可能じゃ。主以外の者には見えんよう、気配を断っておこうかの」
そうして、僕は自転車を引っ張り出してきた。まだ新品同然、銀色フレームの26インチシティサイクルだ。銀色なのは、やっぱり銀露に影響受けたところが大きいんだよ。
僕の後ろに銀露は横向きに、荷台に跨がず上品な姿勢で乗った。なんだか絵になるな。
「おお、なんじゃ気分が高揚するのう。こんなものに乗るのは初めてじゃ」
「そうだよね。山じゃ走れないし、これ」
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