僕と狼姉様の十五夜幻想物語 ー温泉旅館から始まる少し破廉恥な非日常ー
第16節11部ー奪われた目的の物ー
しばらくすると、あの巨大なヘビも白い人たちも消えていて……拘束されてた子鞠も自由になっていた。
その場に残ったのは、畳の上にぺたんと座った僕と子鞠、黒髪狐の男の子をつまみ上げてる狐面の九尾様と、煙管をだして口にくわえた銀露だけ。
外は随分と騒がしい。どうやら、山道に化けて頂上にたどり着けないようにしていた巨大ヘビがいなくなったおかげで、神様の行列が続々とここへ向かってきているようだった。
「子鞠、ようやったの。随分良い遠吠えじゃった」
「あにさまたいへんだったから、こまりがんばった……」
「くふふ、そうかそうか、千草によう懐いたのう」
そして、僕も子鞠に感謝の意を表そうとお礼を言うと……。
「うん……!」
頭の小さなお耳をぴこぴこと動かして、尻尾を嬉しそうに大きく激しく振るものだから、とてつもなく愛らしい反応に……かわいいなあ。
やっぱり狼と言っても子供なんだよね。汰鞠や銀露はどことなく怒らせたらヤバい感じというか、こう……目の奥に眠るギラギラとした獣感というかが見て取れるけど、子鞠は全くそんなことないもんなあ。
「ふん、しかし千草が狙いでこんな騒ぎを起こしたとはのう。どこぞで監視でもされておったか」
「ごめんね銀露……」
「うん? ぬしが気に病むことではないぞ? くふふ、落ち込んだぬしも愛いの!」
ぐりぐりと頭を撫でられながら、艶っぽい声でそう言う銀露。気分が少し落ち込んでしまったかと思いきや、うまく拾い上げてくれた。
「なんじゃ金毛の……その反応は」
「銀狼様の、そこな人の子に対する反応が気持ち悪いと」
「なんじゃと山神ぃぃ!!」
「僕じゃないですぅぅぅっ、きゅーびさまがぁぁ、ふぃたいれふぅぅあわわわわ」
ドン引きしている……っぽい狐面の人につまみあげられている、幼い山神様の頬を両手で思いっきり引っ張ってる銀露。
うわあ、伸びる伸びる、もちもちだあ。
いや、それよりなにより、狐面の人の引き具合が面白いな。なんだろ、銀露ってそんなに他の人を可愛がったりすることはなかったのかな?
「わしとて気に入ったものを愛でることくらいするわ! まったく……それよりほれ! 酒じゃ、酒! 山神、酒をもらいに来たのじゃ!」
「あわわわわわ」
「……? 何を慌てておる。怒っとるわけではないのじゃぞ? 酒を分けてくれと言っておるのじゃ。このいけすかん狐にも許可は取って……」
「あ、あのあの……その……神酒が……」
その走り出しの言葉を聞いて、銀露と……そして狐面の人も同時に動揺しだしたみたい。
空気が少し張り詰めたもの。
「無い……とは言わんじゃろうな?」
「い、いえ……あることにはあるんですぅぅ……。で、でもでも、低階位、中階位の皆様にお配りする神酒はあるんです……。ですがそのぉ……、高階位の皆様にお配りする分が……蛇姫様に持って行かれてしまってぇぇ……!」
「んじゃとォ!?」
銀露激おこだよ……。神様の中でもとても偉い、偉い、微妙に偉い的な階級があって、それぞれにふさわしいグレードの神酒があるんだって。
銀露は一番上のグレードの神酒をもらえるはずなんだけど、ただでさえ少ないそのお酒は蛇姫様がかっぱらって行っちゃったみたいで……。
「ぐぬうううう……!!」
「うわぁあんっ、どうしましょうきゅーびさまぁあ」
鬼の形相を浮かべてとてつもない負のオーラを放つ銀露に怖がって、山神様泣いちゃった……。
助けを求められた狐面の人はどうするんだろうか?
その場に残ったのは、畳の上にぺたんと座った僕と子鞠、黒髪狐の男の子をつまみ上げてる狐面の九尾様と、煙管をだして口にくわえた銀露だけ。
外は随分と騒がしい。どうやら、山道に化けて頂上にたどり着けないようにしていた巨大ヘビがいなくなったおかげで、神様の行列が続々とここへ向かってきているようだった。
「子鞠、ようやったの。随分良い遠吠えじゃった」
「あにさまたいへんだったから、こまりがんばった……」
「くふふ、そうかそうか、千草によう懐いたのう」
そして、僕も子鞠に感謝の意を表そうとお礼を言うと……。
「うん……!」
頭の小さなお耳をぴこぴこと動かして、尻尾を嬉しそうに大きく激しく振るものだから、とてつもなく愛らしい反応に……かわいいなあ。
やっぱり狼と言っても子供なんだよね。汰鞠や銀露はどことなく怒らせたらヤバい感じというか、こう……目の奥に眠るギラギラとした獣感というかが見て取れるけど、子鞠は全くそんなことないもんなあ。
「ふん、しかし千草が狙いでこんな騒ぎを起こしたとはのう。どこぞで監視でもされておったか」
「ごめんね銀露……」
「うん? ぬしが気に病むことではないぞ? くふふ、落ち込んだぬしも愛いの!」
ぐりぐりと頭を撫でられながら、艶っぽい声でそう言う銀露。気分が少し落ち込んでしまったかと思いきや、うまく拾い上げてくれた。
「なんじゃ金毛の……その反応は」
「銀狼様の、そこな人の子に対する反応が気持ち悪いと」
「なんじゃと山神ぃぃ!!」
「僕じゃないですぅぅぅっ、きゅーびさまがぁぁ、ふぃたいれふぅぅあわわわわ」
ドン引きしている……っぽい狐面の人につまみあげられている、幼い山神様の頬を両手で思いっきり引っ張ってる銀露。
うわあ、伸びる伸びる、もちもちだあ。
いや、それよりなにより、狐面の人の引き具合が面白いな。なんだろ、銀露ってそんなに他の人を可愛がったりすることはなかったのかな?
「わしとて気に入ったものを愛でることくらいするわ! まったく……それよりほれ! 酒じゃ、酒! 山神、酒をもらいに来たのじゃ!」
「あわわわわわ」
「……? 何を慌てておる。怒っとるわけではないのじゃぞ? 酒を分けてくれと言っておるのじゃ。このいけすかん狐にも許可は取って……」
「あ、あのあの……その……神酒が……」
その走り出しの言葉を聞いて、銀露と……そして狐面の人も同時に動揺しだしたみたい。
空気が少し張り詰めたもの。
「無い……とは言わんじゃろうな?」
「い、いえ……あることにはあるんですぅぅ……。で、でもでも、低階位、中階位の皆様にお配りする神酒はあるんです……。ですがそのぉ……、高階位の皆様にお配りする分が……蛇姫様に持って行かれてしまってぇぇ……!」
「んじゃとォ!?」
銀露激おこだよ……。神様の中でもとても偉い、偉い、微妙に偉い的な階級があって、それぞれにふさわしいグレードの神酒があるんだって。
銀露は一番上のグレードの神酒をもらえるはずなんだけど、ただでさえ少ないそのお酒は蛇姫様がかっぱらって行っちゃったみたいで……。
「ぐぬうううう……!!」
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