僕と狼姉様の十五夜幻想物語 ー温泉旅館から始まる少し破廉恥な非日常ー
19節ー丸くなった銀狼様ー
「わっちゃあ……どれほど忌み嫌われようと、氏子たちが幸せに暮らせていけるのなら……それでもよいと……」
自分が穢れを集めて溜め込むことで、氏子たちが綺麗な土地で生を営んでいけるのなら。
誰も社に来ず、いくら寂しい思いをしようとも構わない。
蛇姫様は、そう思いながら神として存在していたんだ。
でも、まさか燃やし潰されてしまうほどだったとは。
「わっちゃあ……まだ、消えとうありんせん……」
蛇の長としての立場もあり、高圧的な態度を崩さなかった蛇姫様がようやく己の中の心境を吐露してくれた……ような気がした。
銀露が蛇姫様の頑なな心を折ったんだろう。
8割程度神気が戻っているとはいえ、全開じゃない銀露にここまでこっぴどくやられて、しかも緋禅桃源郷のど真ん中で倒れてるんだから。
もう保つ体面も無くなったといったところなのかな……。
「ふん……くだらぬ。いくら理由があったとはいえ、千草を奪って良いことにはならんじゃろうが……」
銀露はそう言いながら、蛇姫様に近づこうとした……その時だった。
この桃源郷の遊女さんたちが、物陰からだっと出てきて銀露の前に立ちふさがったんだ。
そう、それはまるで蛇姫様を守るかのように。
その中には僕がお世話になった槐さんの姿もあった……。
「申し訳ありません、銀狼様。うちの姫様わがままで高慢ちきだけれど、この緋禅桃源郷がいまこうして存在して、あたしたちが生活できてるのは姫様のおかげなんです」
槐さんも、その他の遊女さんたちも昔の銀露を知っていて、ちゃんと敬っているし慕っている。
けれど、やっぱり蛇姫様は蛇姫様で、特別な存在なんだろうな。
ただ蛇姫様を庇いに来ただけでなくて……蛇姫様を助けてあげてくださいとお願いもされてしまった。
「きさんらには関係ありんせん……退きなんし」
「話は神使方に聞きました。蛇姫様、最近籠ってたのはのっぴきならない事情があったんだね。あなたにはあたしら全員、結構な恩があるのさ。初めから言ってくれていれば、あたしらだって手伝ってたよ」
下手に巻き込みたくなかったんだろうねぇと。槐さんは小さく呟いた。
そんな状況だから、銀露は心底呆れた様子で頭を掻き……大きくため息をつく。
「のう、ぬしよ……」
「うん、なに? 銀露……」
「いや、よい、ぬしのその顔を見てようわかった」
「あはは、見なくてもわかってたくせに」
蛇姫様が変異してしまうのを止めたい。そんな僕の気持ちを読み取って、銀露はさらに呆れてしまった。
「ふん。じゃが、まあ蛇姫が神下りすれば厄介な化け物になっておったじゃろうからの。仕方なくじゃ」
そう銀露は言うけれど、蛇姫様をかばっていた遊女さんたちは声を上げて大喜びだ。
蛇姫様はぽかんとした表情で、僕らを見ながら……。
「な、なにを言っておるのかや。わっちは……」
「もう強がるでないわ、蛇姫。うぬが己の性質のせいで思い悩んでおったのはよう知っておった。よかったのう、千草と出会う前のわしならば、確実に喰ろうておったところじゃぞ」
自分が穢れを集めて溜め込むことで、氏子たちが綺麗な土地で生を営んでいけるのなら。
誰も社に来ず、いくら寂しい思いをしようとも構わない。
蛇姫様は、そう思いながら神として存在していたんだ。
でも、まさか燃やし潰されてしまうほどだったとは。
「わっちゃあ……まだ、消えとうありんせん……」
蛇の長としての立場もあり、高圧的な態度を崩さなかった蛇姫様がようやく己の中の心境を吐露してくれた……ような気がした。
銀露が蛇姫様の頑なな心を折ったんだろう。
8割程度神気が戻っているとはいえ、全開じゃない銀露にここまでこっぴどくやられて、しかも緋禅桃源郷のど真ん中で倒れてるんだから。
もう保つ体面も無くなったといったところなのかな……。
「ふん……くだらぬ。いくら理由があったとはいえ、千草を奪って良いことにはならんじゃろうが……」
銀露はそう言いながら、蛇姫様に近づこうとした……その時だった。
この桃源郷の遊女さんたちが、物陰からだっと出てきて銀露の前に立ちふさがったんだ。
そう、それはまるで蛇姫様を守るかのように。
その中には僕がお世話になった槐さんの姿もあった……。
「申し訳ありません、銀狼様。うちの姫様わがままで高慢ちきだけれど、この緋禅桃源郷がいまこうして存在して、あたしたちが生活できてるのは姫様のおかげなんです」
槐さんも、その他の遊女さんたちも昔の銀露を知っていて、ちゃんと敬っているし慕っている。
けれど、やっぱり蛇姫様は蛇姫様で、特別な存在なんだろうな。
ただ蛇姫様を庇いに来ただけでなくて……蛇姫様を助けてあげてくださいとお願いもされてしまった。
「きさんらには関係ありんせん……退きなんし」
「話は神使方に聞きました。蛇姫様、最近籠ってたのはのっぴきならない事情があったんだね。あなたにはあたしら全員、結構な恩があるのさ。初めから言ってくれていれば、あたしらだって手伝ってたよ」
下手に巻き込みたくなかったんだろうねぇと。槐さんは小さく呟いた。
そんな状況だから、銀露は心底呆れた様子で頭を掻き……大きくため息をつく。
「のう、ぬしよ……」
「うん、なに? 銀露……」
「いや、よい、ぬしのその顔を見てようわかった」
「あはは、見なくてもわかってたくせに」
蛇姫様が変異してしまうのを止めたい。そんな僕の気持ちを読み取って、銀露はさらに呆れてしまった。
「ふん。じゃが、まあ蛇姫が神下りすれば厄介な化け物になっておったじゃろうからの。仕方なくじゃ」
そう銀露は言うけれど、蛇姫様をかばっていた遊女さんたちは声を上げて大喜びだ。
蛇姫様はぽかんとした表情で、僕らを見ながら……。
「な、なにを言っておるのかや。わっちは……」
「もう強がるでないわ、蛇姫。うぬが己の性質のせいで思い悩んでおったのはよう知っておった。よかったのう、千草と出会う前のわしならば、確実に喰ろうておったところじゃぞ」
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