幻の歯車公爵家の姫と水の精霊の末裔の騎士

ノベルバユーザー173744

マルムスティーンの皆様は金銭感覚はあるはずです?

 ウォルフは、本家と言っても、門は表向き別になっているが、回りの木々に隠されている、回廊を使い本家に入る。

 自分の家は元々子供の数の多い為に、当時の当主が11人の子供に本家と、分家と分けた。
 その10の分家でもレイル家は地味な方だったのだが、先代侯爵が末っ子の遊び相手としてウォルフを選んだことが運命を変えた。
 ウォルフは賢い少年だったので、先代侯爵とその弟や二人の子供たちに可愛がられた上に、ヴィクトローレと歳は9才違うのだが、ヴィクトローレは幼い頃からすでに国王夫妻が女の子が産まれた場合、その夫として最有力候補だった。
 その為に命を狙われる事を避ける為と、ヴィクトローレの『調教』の為にそばでビシバシ鍛え上げた。

 本当なら、年の近いシルベスターの側近として育つはずだったが、事情がありヴィクトローレになった。

 でも、ウォルフ曰く、シルベスターを『調教』できる要素がないのと、ヴィクトローレを『調教』する方が楽しいらしい。

「でもねぇ……ジェディンスダード家の子供がそう簡単に……」

と言いながら、途中で侍女に聞いた応接室に入っていく。

「失礼します。伯父上やルード兄上、シルゥ……何してるの?」
「ワァァン‼フィア~‼行っちゃ駄目‼行くのやめよう?ね?」
「駄目だよ?僕、シエラ兄様と約束したもん。シエラ兄様が戻ってきたらカズール家に婿養子に行くの。その為には、大学院は卒業したでしょ?まぁ、後幾つか論文提出して、博士号は欲しいから勉強は怠るつもりないし、そして、マルムスティーン家の人間として恥ずかしくない程度に、術師のランクをあげていってるから、多分20才までには、ヴィクトローレ叔父様の下位までは行けると思うんだ。だから、特にカズールに必要なのは剣の技術や武器全般、防御に、マナーに最低限のルールだよね。最近物騒だし。だからいってきまーす‼」
「イヤァァァ‼フィア行ったら、父さま泣く・゜・(つД`)・゜・」
「いや、もう泣いてるし……」

 フィアの無表情の突っ込みに、

「ワァァン‼エリー‼エリー‼フィアがいじめっこになっちゃったぁぁ‼」
「うーん、困りましたわね。じゃぁ、お姉さまとヴィクトローレお兄様に絞めて戴きましょう」
「エェ‼エリー……フィア締める……僕、嫌だよぉ」

シルベスターが半泣きになる。

「違いますわよ。即、セイラちゃんとルゥちゃんに、連絡しましょうね。ガデルちゃぁぁん?」

 主を亡くし、フィアの乗獣である娘夫婦と一緒にフィアに着いている、ガデルことナーガ・デール・フィルセラがオッドアイの瞳で嫌そうに振り返る。

「あらぁ?駄目よ?可愛い格好させてあげたのに。現在流行最先端のキグルミちゃんなのよ‼ガデルちゃんはウェディングドレス姿なの‼まぁ。お似合い」

 キャァ‼

とテンションが高い、しかし美少女の夫に負けない美少女はエリオニーレである。

「母様?ガデルは男の子だよ?アルフも男の子なのに……リアンロードは、ふわふわヴルヴル?」
「そうなのよぉ。可愛い子には可愛い格好‼私とシルゥ様もお揃い色違いなの」

 ちなみにヴルヴルは、現実世界で言うと牛と羊のあいの子のような感じで、大きな体にモジャモジャの毛をしたマルムスティーン領の獣で、大きな体で重いものを運び、冬に蓄えた毛は春に収穫、そしてモジャモジャになる。
 毛皮は高級な毛糸になり、体も大きく温厚で働き者の生物として知られている。

 そして、フィアは父の純白のワンピース姿に、

「あぁ、母様と色違いなんだね~。父さま似合う~‼」
「本当?ありがとう‼って言わないよ‼父様は男の子‼ドレス似合ってどうするの‼」
「と言うか、姉様よりも、似合うんだもん」
「……ガーン。ヴィク~‼フィアがいじめっこだよぉ‼」

わーんと泣きつく兄を(i_i)\(^_^)しようとしたヴィクトローレは、幼なじみに耳を引っ張られる。

「オラァ‼大事な用があると言って来た人間に、その態度はなんだ⁉」
「ギャァァ、ごめんなさい‼ウォルフ‼私が悪かったです‼」
「ならしゃんとして、話を聞きやがれ‼」
「はい‼」

と、ようやく話に入る。
 息子たちの様子を、長男の先代マガタ公爵ルドルフと楽しんでいた先代侯爵エドヴィンは、

「……アルファーナ・リリーねぇ……サラという尊称もついていて、地域も、失踪した地域と近いね……子供……になるのかな?」
「父親はファシオン・リネスではなく、アルファリスと言う、年もかなり若いです。31ですから」
「ファシオンは失踪した34年前には20に近かったから、50代……も若いけどね~。父さまもう、300近いし」

 アハハ~‼

と笑う、エドヴィンに、

「父上、マルムスティーンの人間は、水の精霊の力が関与する地域に住む程、年齢に準じた老化が抑えられるんですよね?」
「そうそう。成人も遅いんだよね。と言うか、ウォルフとシルゥが、2才違いとは思えないね」

互いの顔を見た二人は、

「仕方ないでしょ‼こんな化け物、60後半なのに15才ですって言ってもばれないのがおかしいんです‼私は普通です‼」
「違うよぉ‼ウォルフ兄様が老けてるのが悪いの‼2才上だからってひどいじゃないかぁぁ‼いっつもいっつも、ヴィクトローレは僕の弟なのに、何で取るの‼意地悪‼」
「意地悪じゃなく調教してるんだよ‼馬鹿でも国王の義理の兄なのに、何であの馬鹿に仕事を押し付けない訳?って、この程度の説教に『胃が痛い』とか言わないんだよ、ヴィクトローレ?お前はあの馬鹿が生まれる前から、国王の長女、王位に近い存在の婿として王家を支える役目になってたのに、今のこの状態は何?言ってみろ‼」
「……本気で胃が痛い……」
「言うな‼」

ウォルフは、拳で殴り、

「と言うか、ウィリアムの勘はかなりの確率で当たるので、ちょっと行ってみても良いですか?その間の仕事は妻子共々、アルファーナ・リリーに何を着せようか、目の色を変えてますので……」
「わ、私も行ってきますわ‼キャァァ。可愛い女の子にふわふわドレス‼ゴシックロリータ系も良いですし、エンジェル系も捨てがたいですわ‼着ぐるみも‼行ってきますわね‼」
「やだぁ‼僕も行く‼」
「いってらっしゃーい。じゃぁ、僕は、騎士の館に行ってきます」

フィアは淡々と頭を下げて、

「うーん。アルフ。リアンもお洋服脱ごうか?翼に邪魔だからね」

言いながら父親たちとは逆方向に歩き去っていった。

「時々思うけど……フィアとシルゥ取り換えたら?一応あの顔でも年相応に見えるよ?」
「それは言うな……シルゥはシルゥらしく、フィアはフィアらしくだ」

 ルドルフは呟いたのだった。

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