連奏恋歌〜求愛する贖罪者〜

川島晴斗

閑話⑤:クオンの独白

 ミズヤが私の元に留まってくれて一年が経ちました。
 順調に事を進め、バスレノスと呼ばれていた国は今も安泰で、政権が変わっても平和を保っていました。

 西軍基地、ネグリジェに着替えた私はベッドの上で仰向けになり、天井を見つめながら考え事していました。
 兄様も姉様も死んで、なんで平和であれないのか、戦いが起きるのかなどを考えていました。

 戦い、それは意見の異なる者同士が力で勝負する愚かな行為。
 怒りなどの激しい感情が人を揺り動かし、同族であるにもかかわらず殺してしまうのでしょう。

 もっと穏やかであれば良いのに、何故怒りや憎しみが生まれるのか。
 それは人間の習熟具合や卑怯な真似をする心のせい。
 人の習熟度が足りないと、感情だけの生き物になってすぐに怒ります。
 卑怯な事をすれば、怒りを買います。
 騙す事で自分の立場を優位に持ってこうとしても、嘘をついて人を怒らせて、悪意を募らせる事の何が良いのでしょう。

 この世界を平和にしたい。
 怒りは鎖のように繋がり、次々と伝達されていく。
 それを止めて平和な世を作りたい。

 でも、そもそも平和とはなんなのでしょう。
 戦争がない事が一番の平和なのは理解できます。
 ですが、人同士で言論をして身の内にモヤモヤした感情を溜めたり、言葉だけで自殺に追いやったり、年に数百人、数千人がそのように苦しんで死ねば、平和とは言えないでしょう。

 平和、平和……私から見れば、今の世界は平和なのでしょう。
 我々上部の人間しか知りませんが、この世界は善意と悪意が平等で、フラクリスラルなんかは民を殺して悪意を貯めています。

 他人が死んでいたとしても、自分が安全なら平和なんでしょうか。
 いえ、きっとそれだけじゃない。
 私の周りの人も笑顔で、豊かで、安全が確保されていれば……それは、平和と呼べるのでしょう。

 だとすれば、この国は今現在平和なんです。
 争いはなく、安全は確保されてると言えましょう。
 バスレノスは極寒地方に位置するため、食料に困るもそれはナルー様が解決しますし、貿易だって行なっている。
 住居も立てるし、国は一つで画一性もあるから争いも起きにくくて……。

 でも、バスレノスをよく慕っていた人は、今のキュール人が治める政治に満足していない。
 私に訴えかける人は何人もいた。
  私から見て平和でも、民は平和ではないのですね……。

 原因を根絶させるためには、バスレノスを信奉する人にキュールの良さを伝えねばなりません。
 対立する心を無くせば、きっと平和になって行く。
 だから私は、人々の心から悪しき心を払うために生きようと思う。



 ◇



 恋って、異性の人を好きになる事。
 とても重い気持ちで、深い所で繋がってるような、そんな気持ち。
 深く、深く、心の奥底が震えて、体中に熱が篭もり、貴方の全てが欲しくなる。

 貴方の全てが欲しくなるって、その言葉はどこかおかしいと思っていました。
 全てって、なんなのでしょう。
 いろんな汚いものまで求めるのか、と。
 さすがにそうではないと思いますが――私は好きな貴方の、温もりも、声も、想いも、笑顔も、全てが欲しいと思えました。

 愛し、欲し、心に情熱が灯る。
 声には出さないのに、身の内に激しい想いが在り続けて――この気持ちは、いつまで続くのでしょう。



 好きです。
 もっと触れ合いたい、融けあいたい。
 でも、貴方には前世からのソウルメイトが存在する。
 私よりも大切な存在が居る。
 だったら諦めるべきなのでしょうか。

 でも、貴方はまだ、誰も好きじゃないと言うから……。

 この初恋は、まだ終わらせなくて良いでしょうか?

 私は四つ葉、本当の愛を求める1茎の草。

 幾多の暴風に揺らされようとも、咲かせてみせましょう。

 きっと咲きます。

 四つ葉には、沢山の白が詰まってるのですから――。

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