連奏恋歌〜求愛する贖罪者〜
第10話:フォース・コンタクト②
「こんなだだっ広い城でたった4人を探すのは、さすがに骨が折れるなぁ、皆の衆」
「主君よ、緊張感をお持ちください」
「その"皆の衆"もトメス様含めて4人っスけどね」
「こんな時ばかりは側にいてやるだけ有難いと思えよトメス」
「流石は俺の側近、なんの容赦もないな!」
元気よく血濡れた廊下を歩くトメスタス一向は周りの様子とは裏腹の陽気さであった。
敵が4人と知っているのは、既にヘイラがアークと対峙している事を知っているから。
残る3人を、4人は探していた。
「被害は甚大だなぁ。ははは、ラナめ、ぶっ殺してやる」
「ん? トメスが姉にそんな事言うとはねぇ」
「あぁ、逆賊なぞ家族ではない。これだけ仲間を殺されて仲間だと思う事は不可能だからな。はっはっは!」
仲間である褐色肌の女が気にかけるも、トメスタスは笑い飛ばすだけだった。
だが、目は全く笑っていない。
怒りが一周回って笑うしかないのだった。
それは彼にとっても、姉は偉大な存在だった証――。
「とにかく、殺す気でやると言うことだ。お前らも元仲間だからってぬかるんじゃないぞ?」
『御意』
声を揃えて肯定する。
しかし、そこへ忍び寄る影が1つあった。
(まったく、目立つように歩き回ってて何言ってるんだか……)
天井から生える影――そこに映るは栗色の髪を持つ少女。
アイラインを太く塗った目の大きい、黄色のドレスを身に纏っていた。
(ここはもうあたしの"巣"なんだょね〜……。イグソーブ武具なんてなんの意味もない、蜘蛛の巣の中だってぇの〜っ)
少女は嘆くように肩を落とし、また影に身を潜めた。
もはや見るまでもないということなのだろう。
少女は暗闇の中、ひっそりと呟いた。
「【緑魔法】【縄嵌術・蒼天】」
設置式の魔法術は、ギリギリと音を立てて作動した――。
◇
一方、第2会議室では剣戟が繰り広げられていた。
包丁型の大剣を振り回すアークに、ヘイラはラージ・イグソーブを剣替わりに振るう。
ラージ・イグソーブは、魔法を無効化する障壁を貼ることができるイグソーブ武具。
これを持ってヘイラは圧力攻撃を無効化していた。
ギィンと鉄と鉄が鳴り響き、弾いてできた隙間は一瞬で埋まる。
幾度となく響く金属音にアークは舌打ちをし、ヘイラは目を光らせて笑った。
(コイツ……【赤魔法】も使えねぇのに、俺の速さについてくるとはなぁ)
ヘイラは笑いながらも、内心愕然としていた。
【赤魔法】による身体強化で、ヘイラは目にも留まらぬ攻撃の雨を当てている。
しかし、攻撃はすべていなされている。
力では絶対にアークは勝てない。
元々の筋肉量が違うのだからそれについては目に見えてわかっていた。
だからこそいなされる。
ヘイラの振るう鉄の筒は大剣により擦れ、傷ばかりを追う。
今まで金属音は鳴っている――が、それは全て豪快な音ではなく、金属が擦れ合う摩擦で鳴る音だった。
(強え……速い上にこの剣技、炎を消しちまう圧力と温度操作……。視界は熱気で歪んでるはずなのに、)
ヘイラは体感することとなる。
皇族の近衛兵の強さというものを――。
「――まぁこんなもんか」
そして、実力を知ったからこそわかるのだ。
「俺の方が強い」
「ッ!?」
刹那、床がうねった。
バランス感覚など無意味となる事態に、アークは前のめりの倒れる。
「くっ……!」
「もらった!!!」
そこへ躊躇なくヘイラはラージ・イグソーブを叩きつける。
ガインッと、初めて鳴る音が変わった。
「ぐっ……」
だが、その一撃は致命傷まではいかなかった。
間一髪でアークは左腕を盾にし、攻撃を防いだのだ。
それでも生身の腕を鉄パイプで殴られればタダでは済まない。
左腕は折れ、ぷらぷらと体にくっついているだけだった。
「生粋の炎使いかと思いきや、汚いマネを……」
「あぁん? なーにぬりぃこと言ってんだ? 戦いに汚いもクソもねーよ」
視覚を奪い、足場も奪う。
徐々に相手を侵食していくことこそ、ヘイラの戦いであった。
「【氷結】」
アークは曲がった左手を空気を曲げて固定し、周囲の空気を昇華させて凍らせて左腕を固定した。
骨が折れ、筋繊維ないくつかブチ破れた……にしては痛みを表情に表さず、アークはむしろ、折れた腕も使って剣を握り締める。
「おいおい、少しは痛がってくれよ」
「嫌だけど? お前はすぐ調子に乗るからな。バカが調子乗ってるのを見るの、嫌いなんだ……」
「ハッ!!!」
挑発に乗り、再びヘイラはラージ・イグソーブを振るう。
力任せに、豪快に、それでいて反撃もさせず、視界と足場を歪めての攻撃。
アークは避けるだけでも精一杯か、剣で受けることもあり、その度に力の差から体が浮いた。
「オラオラどうしたぁ!!!?」
「…………」
アークは何も言わず、一歩引く。
その距離も詰められるが、刀で受けた反動で壁へぶつかり――
「【青魔法】【霧消】」
――そうになるすんでの所で壁に正円に切り抜く。
【霧消】は対象を泥濘ませる魔法、豆腐を切るかのように刃は通った。
「ヘイラ、君は面倒だ」
今もなお迫るヘイラに向け、アークはクールに言い放つ。
「多少魔力は食うが、仕方ない……【無色魔法】――」
そして、魔法系統最強の【無色魔法】で、一気に決めに掛かった。
「――【超密度化】」
「主君よ、緊張感をお持ちください」
「その"皆の衆"もトメス様含めて4人っスけどね」
「こんな時ばかりは側にいてやるだけ有難いと思えよトメス」
「流石は俺の側近、なんの容赦もないな!」
元気よく血濡れた廊下を歩くトメスタス一向は周りの様子とは裏腹の陽気さであった。
敵が4人と知っているのは、既にヘイラがアークと対峙している事を知っているから。
残る3人を、4人は探していた。
「被害は甚大だなぁ。ははは、ラナめ、ぶっ殺してやる」
「ん? トメスが姉にそんな事言うとはねぇ」
「あぁ、逆賊なぞ家族ではない。これだけ仲間を殺されて仲間だと思う事は不可能だからな。はっはっは!」
仲間である褐色肌の女が気にかけるも、トメスタスは笑い飛ばすだけだった。
だが、目は全く笑っていない。
怒りが一周回って笑うしかないのだった。
それは彼にとっても、姉は偉大な存在だった証――。
「とにかく、殺す気でやると言うことだ。お前らも元仲間だからってぬかるんじゃないぞ?」
『御意』
声を揃えて肯定する。
しかし、そこへ忍び寄る影が1つあった。
(まったく、目立つように歩き回ってて何言ってるんだか……)
天井から生える影――そこに映るは栗色の髪を持つ少女。
アイラインを太く塗った目の大きい、黄色のドレスを身に纏っていた。
(ここはもうあたしの"巣"なんだょね〜……。イグソーブ武具なんてなんの意味もない、蜘蛛の巣の中だってぇの〜っ)
少女は嘆くように肩を落とし、また影に身を潜めた。
もはや見るまでもないということなのだろう。
少女は暗闇の中、ひっそりと呟いた。
「【緑魔法】【縄嵌術・蒼天】」
設置式の魔法術は、ギリギリと音を立てて作動した――。
◇
一方、第2会議室では剣戟が繰り広げられていた。
包丁型の大剣を振り回すアークに、ヘイラはラージ・イグソーブを剣替わりに振るう。
ラージ・イグソーブは、魔法を無効化する障壁を貼ることができるイグソーブ武具。
これを持ってヘイラは圧力攻撃を無効化していた。
ギィンと鉄と鉄が鳴り響き、弾いてできた隙間は一瞬で埋まる。
幾度となく響く金属音にアークは舌打ちをし、ヘイラは目を光らせて笑った。
(コイツ……【赤魔法】も使えねぇのに、俺の速さについてくるとはなぁ)
ヘイラは笑いながらも、内心愕然としていた。
【赤魔法】による身体強化で、ヘイラは目にも留まらぬ攻撃の雨を当てている。
しかし、攻撃はすべていなされている。
力では絶対にアークは勝てない。
元々の筋肉量が違うのだからそれについては目に見えてわかっていた。
だからこそいなされる。
ヘイラの振るう鉄の筒は大剣により擦れ、傷ばかりを追う。
今まで金属音は鳴っている――が、それは全て豪快な音ではなく、金属が擦れ合う摩擦で鳴る音だった。
(強え……速い上にこの剣技、炎を消しちまう圧力と温度操作……。視界は熱気で歪んでるはずなのに、)
ヘイラは体感することとなる。
皇族の近衛兵の強さというものを――。
「――まぁこんなもんか」
そして、実力を知ったからこそわかるのだ。
「俺の方が強い」
「ッ!?」
刹那、床がうねった。
バランス感覚など無意味となる事態に、アークは前のめりの倒れる。
「くっ……!」
「もらった!!!」
そこへ躊躇なくヘイラはラージ・イグソーブを叩きつける。
ガインッと、初めて鳴る音が変わった。
「ぐっ……」
だが、その一撃は致命傷まではいかなかった。
間一髪でアークは左腕を盾にし、攻撃を防いだのだ。
それでも生身の腕を鉄パイプで殴られればタダでは済まない。
左腕は折れ、ぷらぷらと体にくっついているだけだった。
「生粋の炎使いかと思いきや、汚いマネを……」
「あぁん? なーにぬりぃこと言ってんだ? 戦いに汚いもクソもねーよ」
視覚を奪い、足場も奪う。
徐々に相手を侵食していくことこそ、ヘイラの戦いであった。
「【氷結】」
アークは曲がった左手を空気を曲げて固定し、周囲の空気を昇華させて凍らせて左腕を固定した。
骨が折れ、筋繊維ないくつかブチ破れた……にしては痛みを表情に表さず、アークはむしろ、折れた腕も使って剣を握り締める。
「おいおい、少しは痛がってくれよ」
「嫌だけど? お前はすぐ調子に乗るからな。バカが調子乗ってるのを見るの、嫌いなんだ……」
「ハッ!!!」
挑発に乗り、再びヘイラはラージ・イグソーブを振るう。
力任せに、豪快に、それでいて反撃もさせず、視界と足場を歪めての攻撃。
アークは避けるだけでも精一杯か、剣で受けることもあり、その度に力の差から体が浮いた。
「オラオラどうしたぁ!!!?」
「…………」
アークは何も言わず、一歩引く。
その距離も詰められるが、刀で受けた反動で壁へぶつかり――
「【青魔法】【霧消】」
――そうになるすんでの所で壁に正円に切り抜く。
【霧消】は対象を泥濘ませる魔法、豆腐を切るかのように刃は通った。
「ヘイラ、君は面倒だ」
今もなお迫るヘイラに向け、アークはクールに言い放つ。
「多少魔力は食うが、仕方ない……【無色魔法】――」
そして、魔法系統最強の【無色魔法】で、一気に決めに掛かった。
「――【超密度化】」
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