連奏恋歌〜求愛する贖罪者〜
第17話:サード・コンタクト⑦
黒髪に白肌の女を、クオンは知っていた。
かつて、あの女は皇帝に商談と称して話を持ちかけ、“神楽器”である小太鼓がバスレノスにやってきたからだ。
腕が骨と化したその姿は幼子であったクオンにとって恐怖でしかなく、はっきりと彼女の事を覚えていた。
彼女こそが“魔王”である、と。
そして――神楽器が手に入ったことで、バスレノスは変わっていったのだ――。
全ての元凶であり、幼き頃から鬼胎する魔王に、彼女は自然と顔を下げてしまった。
直視しているのが、怖いから――。
『……フ。そう残念そうにするな。其方等に危害を加えるつもりはない。余はただ、助言をしに来ただけだ』
「……助言?」
『別に、大したことではないのだがな……』
フォルシーナはそこまで言って、クオンに背を向けた。
月夜を仰ぎ、辺りが静まり返る。
少しの間を残し、彼女は空に向かって呟いた。
『きっとミズヤは、今宵の事を悲しむだろう。ヤケになるかもしれない。しかし、そんな彼をどうか支えてやってくれ』
「――――」
それはミズヤを想うメッセージだった。
少年を憂い、魔王はこのバスレノスまで足を運んだ――その事実に、クオンは驚愕せずにはいられなかった。
「貴女は……ミズヤの、なんなのですか?」
気が付けば問いただしていた。
ミズヤはまだ幼き少年、魔王という摩訶不思議な存在にそこまで愛される人物だというのが誰に信じられるだろう。
フォルシーナは下を向き、何かを考えるように腰に手を当てて、こう答えた。
『……別に、ただの知り合いさ』
僅かに悲しみを含んだ言霊を残し、フォルシーナは瞬く間に姿を消すのだった。
◇
2つの黒い星が煌めき、刹那の間をおいて衝突する。
その瞬間、2つの光は爆発を起こし、黒い雲の塊が空へと登って行った。
「ほらほらどうしたぁーっ!!?」
煙の中から1つ、黒甲冑を着込んだ堕天使が姿を表す。
否、その中身は異世界より召喚されし“魔人”であり、黒い大剣を両手に生み出す。
「グルァァァアアアアアア!!!」
煙の中から、新たに黒い流星が姿を表す。
悪幻種たる少女はその手に環奈と同じ大剣を携えており、振りかぶった。
お互いに武器は同じ、後は力の競り合いだ。
「【黒天の血魔法】――」
「シネェ!! シネシネシネェェエ!!!」
「【悪苑の剣戟】!!!」
再び爆発が2人を中心に渦巻いた。
黒魔力を圧縮して作った大剣を爆発させる――それが【悪苑の剣戟】。
もくもくと上がる黒煙は空をさらなる混沌へ塗り替え、地上への危害はない。
否――環奈はそのために上空で戦っているのだ。
先ほどまで奮起していたヤーシャでさえ、今は地上で拳を握ることしかできないのだから。
遠距離は槍の投擲による大爆発、近距離は大剣による大爆発、喰らえば誰であろうと即死なのだ。
ヤーシャは【緑魔法】を得意とするため、土のある地上で戦う事が得意である。
だが負傷者のいる地上で戦う事など、皆目不可能なのだ。
ラージイグソーブでの援護射撃、そんなものがあの魔物に当たるはずもなく、ここは待つしかなかった。
「あんな化け物……私達なんかじゃ……」
悔しさに拳を震わせる中、屈辱に悶えるのだった。
一方、上空では環奈が黒煙から飛び出す。
「ふぅ――」
息を吐きながら宙を舞い、距離を取るようにピタリと止まる。
直後、敵対する少女もまた飛び出してきた。
今度はその両手に漆黒の槍を携え、ハァハァ息を切らしながら、開ききった瞳が環奈を映す。
「……もう止めよ。【黒天の血魔法】じゃ、この防具は壊せない。もともとこの鎧は、自分の【黒天の血魔法】から身を守るためにあるんよ。無駄に魔力使ったって仕方ないさね」
環奈は飽きたと言わんばかりに手をぷらぷら遊ばせ、欠伸を1つした。
悪幻種のこの鎧は彼女の言うように、【黒天の血魔法】の強大な魔力爆発に耐える鎧である。
当然のことながら、通常の魔法でさえ彼女には効かない。
しかし――環奈の拳の力は――
「乙女の顔面がどーのとか、言える相手じゃないよね〜……。できれば【羽衣正義】でワンチャンあって欲しいけど……」
その前に、アンタが死んでるかな――
死を宣告に近いその言葉は少女の目を見張らすには十分で、現場をむき出しにした怒りの表情を作り上げた。
「グォォオオオオオオ!!!」
咆哮とともに少女が空を駆ける。
怒り、悲しみ、憎しみ、どれとも形容しがたい狂気を含みながら、槍を掲げて一直線に向かって行く。
その単調すぎる動きは、環奈にとって虫が止まってるに等しく――
「【赤魔法】」
全身を強化した直後に、環奈は姿を消した。
誰もが見失う少女の姿。
ひと瞬きの後に、もう1人の黒鎧が基地の屋上へと叩き落されるのだった。
◇
深き森の中、暗闇には不釣り合いな空間パネルが黒髪の女に光を浴びせていた。
パネルに映るのは黒甲冑の女子による戦いであり、今まさに決着が着いたように見えた。
空中で禍々しいオーラを放ち続ける強者は依然として佇み、感情を見せぬその姿にモニターを見る彼女は驚いていた。
『ノール……』
ポツリと魔王は呟く。
ノールという名、それは環奈が初めて生を請け負った時の名である。
この【サウドラシア】で死ぬまで用いた名前、千堂環奈として【ヤプタレア】に転生し、この世界に召喚された少女。
彼女がサウドラシアで亡くなる時、魔王はまだ普通の少女で、ただのフォルシーナとしてノールと話をしていた。
友人というには怪しかったかもしれない、それでも懐かしい顔を見て驚かずにはいられない。
 
『……よもや再び、その顔を見ることになるとはな。長く生きると色々あるものだ』
死んだ者と会う事は魔王といえど無かった事、それが【悪幻種】という稀な種である事が自然と納得させるも、本当の理由はそこじゃない。
「嫌な事を考えるものだな、貴様は」
『!?』
背後からの声に、魔王はおもわず振り向いた。
明かりの届かぬこの場で振り向こうと、その姿は見えないというのに、それほどのインパクトが今の言葉にあったのだ。
なんせ、彼女は結界を張っているにも関わらず、人が背後に立ってるだから。
『……貴様、何者だ?』
暗闇に向かって問う。
すると、楽天的な返事が返ってきた。
「僕? なんだ、忘れたのか。……といっても、150年近く経ってたっけ? どっちでもいいけど」
『! そうか、貴方は――』
口ぶりからフォルシーナが理解するも、それと同時に少年の周りを淡い黄緑の光が照らす。
ワイシャツに肩章の着いた赤マントを羽織り、帯を巻いた胴体から下はグレーの軽杉を履いている。
ミズヤと瓜二つの顔付き、その正体こそ、この世界に【ヤプタレア】の者を導いた神。
「自由律司神、アキュー・ガズ・フリースト。みんなからは自由とかアキューとか呼ばれてるよ。よろしくね、魔王になっちゃったフォルシーナさん……」
ニコリと笑って一礼するアキューに対して、魔王は拳を構えることをしなかった。
からかう言葉に怒りを覚えることもできない。
自由を冠るこの少年に、どんな感情を抱けばいいのか、わからないのだから。
『……。147年前は、ヤラランの事とこの世界の事、ありがとうございました』
「いやいいんだよ。もとはと言えばウチの嫁が悪いんだからね」
『…………』
アキューは、今やこの世界の悪意を1割弱担うヤララン・シュテルロード封印に立ち会っていた。
原因はアキューの妻なのだが、フォルシーナは彼が復縁した事など知る由もない。
『それで、其方は何の用だ。他世界の神である其方が、こんな所でブラブラしていい筈があるまい』
「結構暇なんだけどね。神といっても僕は自由の神だし?」
『……暇潰しに来たのか?』
「んー、少し違うかな。暇なのもそうだけど、心配だったからね」
『……?』
自由律司神の言葉の意味が、フォルシーナにはわからなかった。
心配、他界の神が何をこの世界で気にする事があるのかと。
そんな彼女に向けて、少年は指を立てながら呟いた。
「ミズヤだよ。ミズヤ・シュテルロード。彼と最近この世界に召喚された4人は、僕の世界出身なんだ」
『は? 何を言うか、ミズヤ達は知らぬが、ノールはこの世界出身であろう』
「彼女なら死後、僕の世界に転生させたから。今は千堂環奈の名前で通ってるから、よろしくしてあげて?」
『……それで彼女が今、生きているのか』
神が転生させたといえば死者の蘇生も納得がいき、フォルシーナは胸の重荷が消えるようだった。
そして、自分の世界の人間を心配して他世界に来た、と。
『……結局は暇なんじゃないか』
「暇なのもそうだと言っただろ? 君だって暇そうな癖に」
『余は動くぞ。悪意の増幅のために神楽器を2台も差し出したんだ。さらには悪幻種までもがノール……いや、カンナに倒されては敵わん』
「君が攻撃すると?」
『このままなら、な』
と、そこで漸く彼女は視線をモニターに戻した。
神と話している間にも、事態は進んでいるらしい。
『……ついに出会ったか』
「……ん? これは」
モニターの向こうを、思わず自由律司神も覗いてしまう。
画面に映るのは漆黒の鎧を纏った少女と、先ほど彼等が口にした名の少年が居た。
「ミズヤ……様……?」
頭から血を流す彼女の口から、淡く、狂気の無い純粋な声で、その少年の名を呟く。
名を言い当てられた少年は、恐る恐る彼女に問うた。
「まさか……メイラ、なの……?」
かつて、あの女は皇帝に商談と称して話を持ちかけ、“神楽器”である小太鼓がバスレノスにやってきたからだ。
腕が骨と化したその姿は幼子であったクオンにとって恐怖でしかなく、はっきりと彼女の事を覚えていた。
彼女こそが“魔王”である、と。
そして――神楽器が手に入ったことで、バスレノスは変わっていったのだ――。
全ての元凶であり、幼き頃から鬼胎する魔王に、彼女は自然と顔を下げてしまった。
直視しているのが、怖いから――。
『……フ。そう残念そうにするな。其方等に危害を加えるつもりはない。余はただ、助言をしに来ただけだ』
「……助言?」
『別に、大したことではないのだがな……』
フォルシーナはそこまで言って、クオンに背を向けた。
月夜を仰ぎ、辺りが静まり返る。
少しの間を残し、彼女は空に向かって呟いた。
『きっとミズヤは、今宵の事を悲しむだろう。ヤケになるかもしれない。しかし、そんな彼をどうか支えてやってくれ』
「――――」
それはミズヤを想うメッセージだった。
少年を憂い、魔王はこのバスレノスまで足を運んだ――その事実に、クオンは驚愕せずにはいられなかった。
「貴女は……ミズヤの、なんなのですか?」
気が付けば問いただしていた。
ミズヤはまだ幼き少年、魔王という摩訶不思議な存在にそこまで愛される人物だというのが誰に信じられるだろう。
フォルシーナは下を向き、何かを考えるように腰に手を当てて、こう答えた。
『……別に、ただの知り合いさ』
僅かに悲しみを含んだ言霊を残し、フォルシーナは瞬く間に姿を消すのだった。
◇
2つの黒い星が煌めき、刹那の間をおいて衝突する。
その瞬間、2つの光は爆発を起こし、黒い雲の塊が空へと登って行った。
「ほらほらどうしたぁーっ!!?」
煙の中から1つ、黒甲冑を着込んだ堕天使が姿を表す。
否、その中身は異世界より召喚されし“魔人”であり、黒い大剣を両手に生み出す。
「グルァァァアアアアアア!!!」
煙の中から、新たに黒い流星が姿を表す。
悪幻種たる少女はその手に環奈と同じ大剣を携えており、振りかぶった。
お互いに武器は同じ、後は力の競り合いだ。
「【黒天の血魔法】――」
「シネェ!! シネシネシネェェエ!!!」
「【悪苑の剣戟】!!!」
再び爆発が2人を中心に渦巻いた。
黒魔力を圧縮して作った大剣を爆発させる――それが【悪苑の剣戟】。
もくもくと上がる黒煙は空をさらなる混沌へ塗り替え、地上への危害はない。
否――環奈はそのために上空で戦っているのだ。
先ほどまで奮起していたヤーシャでさえ、今は地上で拳を握ることしかできないのだから。
遠距離は槍の投擲による大爆発、近距離は大剣による大爆発、喰らえば誰であろうと即死なのだ。
ヤーシャは【緑魔法】を得意とするため、土のある地上で戦う事が得意である。
だが負傷者のいる地上で戦う事など、皆目不可能なのだ。
ラージイグソーブでの援護射撃、そんなものがあの魔物に当たるはずもなく、ここは待つしかなかった。
「あんな化け物……私達なんかじゃ……」
悔しさに拳を震わせる中、屈辱に悶えるのだった。
一方、上空では環奈が黒煙から飛び出す。
「ふぅ――」
息を吐きながら宙を舞い、距離を取るようにピタリと止まる。
直後、敵対する少女もまた飛び出してきた。
今度はその両手に漆黒の槍を携え、ハァハァ息を切らしながら、開ききった瞳が環奈を映す。
「……もう止めよ。【黒天の血魔法】じゃ、この防具は壊せない。もともとこの鎧は、自分の【黒天の血魔法】から身を守るためにあるんよ。無駄に魔力使ったって仕方ないさね」
環奈は飽きたと言わんばかりに手をぷらぷら遊ばせ、欠伸を1つした。
悪幻種のこの鎧は彼女の言うように、【黒天の血魔法】の強大な魔力爆発に耐える鎧である。
当然のことながら、通常の魔法でさえ彼女には効かない。
しかし――環奈の拳の力は――
「乙女の顔面がどーのとか、言える相手じゃないよね〜……。できれば【羽衣正義】でワンチャンあって欲しいけど……」
その前に、アンタが死んでるかな――
死を宣告に近いその言葉は少女の目を見張らすには十分で、現場をむき出しにした怒りの表情を作り上げた。
「グォォオオオオオオ!!!」
咆哮とともに少女が空を駆ける。
怒り、悲しみ、憎しみ、どれとも形容しがたい狂気を含みながら、槍を掲げて一直線に向かって行く。
その単調すぎる動きは、環奈にとって虫が止まってるに等しく――
「【赤魔法】」
全身を強化した直後に、環奈は姿を消した。
誰もが見失う少女の姿。
ひと瞬きの後に、もう1人の黒鎧が基地の屋上へと叩き落されるのだった。
◇
深き森の中、暗闇には不釣り合いな空間パネルが黒髪の女に光を浴びせていた。
パネルに映るのは黒甲冑の女子による戦いであり、今まさに決着が着いたように見えた。
空中で禍々しいオーラを放ち続ける強者は依然として佇み、感情を見せぬその姿にモニターを見る彼女は驚いていた。
『ノール……』
ポツリと魔王は呟く。
ノールという名、それは環奈が初めて生を請け負った時の名である。
この【サウドラシア】で死ぬまで用いた名前、千堂環奈として【ヤプタレア】に転生し、この世界に召喚された少女。
彼女がサウドラシアで亡くなる時、魔王はまだ普通の少女で、ただのフォルシーナとしてノールと話をしていた。
友人というには怪しかったかもしれない、それでも懐かしい顔を見て驚かずにはいられない。
 
『……よもや再び、その顔を見ることになるとはな。長く生きると色々あるものだ』
死んだ者と会う事は魔王といえど無かった事、それが【悪幻種】という稀な種である事が自然と納得させるも、本当の理由はそこじゃない。
「嫌な事を考えるものだな、貴様は」
『!?』
背後からの声に、魔王はおもわず振り向いた。
明かりの届かぬこの場で振り向こうと、その姿は見えないというのに、それほどのインパクトが今の言葉にあったのだ。
なんせ、彼女は結界を張っているにも関わらず、人が背後に立ってるだから。
『……貴様、何者だ?』
暗闇に向かって問う。
すると、楽天的な返事が返ってきた。
「僕? なんだ、忘れたのか。……といっても、150年近く経ってたっけ? どっちでもいいけど」
『! そうか、貴方は――』
口ぶりからフォルシーナが理解するも、それと同時に少年の周りを淡い黄緑の光が照らす。
ワイシャツに肩章の着いた赤マントを羽織り、帯を巻いた胴体から下はグレーの軽杉を履いている。
ミズヤと瓜二つの顔付き、その正体こそ、この世界に【ヤプタレア】の者を導いた神。
「自由律司神、アキュー・ガズ・フリースト。みんなからは自由とかアキューとか呼ばれてるよ。よろしくね、魔王になっちゃったフォルシーナさん……」
ニコリと笑って一礼するアキューに対して、魔王は拳を構えることをしなかった。
からかう言葉に怒りを覚えることもできない。
自由を冠るこの少年に、どんな感情を抱けばいいのか、わからないのだから。
『……。147年前は、ヤラランの事とこの世界の事、ありがとうございました』
「いやいいんだよ。もとはと言えばウチの嫁が悪いんだからね」
『…………』
アキューは、今やこの世界の悪意を1割弱担うヤララン・シュテルロード封印に立ち会っていた。
原因はアキューの妻なのだが、フォルシーナは彼が復縁した事など知る由もない。
『それで、其方は何の用だ。他世界の神である其方が、こんな所でブラブラしていい筈があるまい』
「結構暇なんだけどね。神といっても僕は自由の神だし?」
『……暇潰しに来たのか?』
「んー、少し違うかな。暇なのもそうだけど、心配だったからね」
『……?』
自由律司神の言葉の意味が、フォルシーナにはわからなかった。
心配、他界の神が何をこの世界で気にする事があるのかと。
そんな彼女に向けて、少年は指を立てながら呟いた。
「ミズヤだよ。ミズヤ・シュテルロード。彼と最近この世界に召喚された4人は、僕の世界出身なんだ」
『は? 何を言うか、ミズヤ達は知らぬが、ノールはこの世界出身であろう』
「彼女なら死後、僕の世界に転生させたから。今は千堂環奈の名前で通ってるから、よろしくしてあげて?」
『……それで彼女が今、生きているのか』
神が転生させたといえば死者の蘇生も納得がいき、フォルシーナは胸の重荷が消えるようだった。
そして、自分の世界の人間を心配して他世界に来た、と。
『……結局は暇なんじゃないか』
「暇なのもそうだと言っただろ? 君だって暇そうな癖に」
『余は動くぞ。悪意の増幅のために神楽器を2台も差し出したんだ。さらには悪幻種までもがノール……いや、カンナに倒されては敵わん』
「君が攻撃すると?」
『このままなら、な』
と、そこで漸く彼女は視線をモニターに戻した。
神と話している間にも、事態は進んでいるらしい。
『……ついに出会ったか』
「……ん? これは」
モニターの向こうを、思わず自由律司神も覗いてしまう。
画面に映るのは漆黒の鎧を纏った少女と、先ほど彼等が口にした名の少年が居た。
「ミズヤ……様……?」
頭から血を流す彼女の口から、淡く、狂気の無い純粋な声で、その少年の名を呟く。
名を言い当てられた少年は、恐る恐る彼女に問うた。
「まさか……メイラ、なの……?」
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