連奏恋歌〜求愛する贖罪者〜
第12話:サード・コンタクト②
フィサは再び対面したミズヤに、あくまで冷静な頭で質問した。
「何故ここに……? クオン皇女は……拠点の方に居るはず」
「ちょっと遊びに来てたんです。ここは、ねこさんがいっぱいだからねっ!」
「……。そう……」
理由を聞いて、フィサは小さく相槌を返す。
如何あれ、彼がここに居るという事は、ナルー確保が面倒になるのが必至なのだ。
「掛かってくるなら早くしてくださいね? みんなまとめて、ねこさんにしちゃいまーすっ」
「…………」
両手を広げて笑い、ナメくさった発言をするミズヤにレジスタンス達は今にも飛び出しそうであった。
そしてこの場の指揮を任されているフィサも、時間を無駄にはできない。
だから彼女は手を前に伸ばし、宣言した。
「総員、攻撃開始」
1つの教会を落とす為に集う300人の兵達が、ミズヤに襲い掛かる――。
◇
同刻、西方軍事拠点ではヤーシャ率いる軍人達が屋上に出れる限り集結していた。
真っ向から向かい合うレジスタンス達――トメスタスに向けて、ヤーシャが声を発する。
「あぁ、まだ死んでなかったのね、アンタ」
「随分なご挨拶だな、ヤーシャ卿」
「そりゃそうよ。それで何? ウチに喧嘩売りに来たってワケ?」
「クオン皇女を渡してもらえれば、何事もなく帰ってやるのだがな」
「……はぁ」
嘆きのため息がヤーシャの口から漏れる。
さも面倒そうな態度を取りながらも、既に決めていた事を口にした。
「クオン様を差し出すなどあり得ないわ。戦うんならさっさとしましょ? こちとら寝不足なんだから、早く寝たいの」
「ならば寝かせてやろう。尤も、二度と起きる事はないがな」
「口だけは一丁前じゃないの。ま、御託はいいわ。とりあえず――」
――全面戦争と行きましょう。
その一言がきっかけとなり、西軍兵が重機を手に飛び出すのであった。
戦いの火蓋は切られた、もうこの勢いは止まらない――。
◇
「死ねェ!!」
「うおらぁぁぁああ!!!」
数十もの衝撃波、魔法の雨がミズヤに向けて飛んでくる。
訓練とはまるで違う、1撃で死ぬだろう攻撃の雨。
しかし彼は恐れも見せず、ただ1つの魔法を発動した。
「【空天意】」
その魔法は攻撃を止めるでもなく、攻撃は彼の上に降り注いだ。
粉塵が舞う、1撃が即死クラスの攻撃を幾重にも受けたのだ。
誰1人として彼の死を疑いもせず――それこそが油断だった。
ヒュンッと粉塵から飛び出した鎖の数々、それらは的確にレジスタンス兵を縛っていった。
両手を銅に巻き付けられ、彼らの持つイグソーブ武器は落とす事を余儀なくされる。
「グッ!?」
「なっ!?」
拘束されたレジスタンス達は驚愕の連鎖を生むが、粉塵からゆっくりと歩き出でるミズヤは、何事もなかったかのように笑顔で現れる。
無傷の彼は攻撃を避けたのではない、自身を透過させることで、攻撃を流したのである。
「……うーん、めんどくさいですにゃー」
「どらぁ!!」
「んっ」
顔をしかめている側からイグソーブ・ソードでの斬撃を振るわれる。
しかし彼は飛んでそれを避け、剣を振るった男の右肩に蹴りを入れる。
ゴキッという音と共に肩の骨を砕かれ、男は絶叫しながら倒れ伏した。
既に、ミズヤに倒されたレジスタンスの数は100を超えていた。
その半分は魔法による拘束、もう半分は打撃による骨折などの重傷。
拘束は解けぬが魔法で怪我は治せる、しかしミズヤはそんな隙を与えない。
誰かが回復系の魔法を使うものなら【無色魔法】で吹き飛ばし、阻止するのだ。
殺しはしない、しかしそれなりに重傷で。
ミズヤはイグソーブ武器は使えない、だからこそ敵をノックダウンさせるにはそれ相応の手段を取るのだった。
「【晴天意】」
ミズヤの掲げた右手が光る。
それはギラギラと眩しい太陽の日差しのようであった。
四方に広がった指向性の高い光線の束が世界を照らした。
この光は攻撃ではなく、対象を選択するものである。
そして、この光を浴びた者は、次の攻撃を避けられない――。
「【束縛】」
眩しさに目を開けぬレジスタンス達に向けて、ミズヤは光に黒い鎖を乗せた。
環奈が教会で使って見せたものと同じであり、光を浴びたレジスタンス達を次々と拘束していく。
しかし、一部では違った。
人が拘束されて崩れ落ちるものとは別で、ジャラリと鎖が落ちる音がする。
やがて消えた光の代わりに月明かりがうっすらと世界を照らし、イグソーブ武器を構えた十数名のレジスタンスを映し出した。
彼らは回避できない【束縛】を弾き、または叩き壊して見せたのだ――。
無言のうちに、その1人がラージ・イグソーブからレーザーを放出する。
青い光を放つ2つのレーザーは真っ直ぐミズヤへ襲い掛かるが、彼は避けるでもなく刀を構える。
「【青龍技】――【静音吸引】」
剣先をレーザーに向けると、襲ってきたレーザーはミズヤの手前で消滅し、刀に粒子が吸い込まれていく。
【静音吸引】――その技は刀と羽衣の連動で持つ魔法であり、刀の手前にある物の魔力を奪う力がある。
【羽衣天技】だけが刀で発動できる魔法ではない。
この【青龍技】、そして【赤龍技】という【赤魔法】もがその世界最高峰の武器に付随する能力なのだ――。
「ガラ空きだぜっ!!」
「!」
しかし、刀を出していれば動けない。
ミズヤの脇にはイグソーブ・ソードを振るわんとする男が現れ、剣をフルスイングした。
しかし、その攻撃も空振りに終わり、男はラージ・イグソーブの光線をモロに食らうのであった。
「……【空天意】。学習能力がないのは、ダメなねこさんだよ?」
半透明なミズヤがレーザーの中から姿を見せ、宙へと飛んだ。
彼に追いつくために2人の戦士がドライブ・イグソーブを噴射する。
ごうおんを放ちながら迫る戦士たちに、ミズヤはにこりと笑い掛けて、
「【力の落下】」
飛んでくる戦士たちに、空気の塊を落とした。
目では見えない圧力の塊は的確に2人をとらえ、地上へ叩き落とす。
ズドンという音が2回響いた。
地面に叩きつけられたレジスタンスの2人はピクリとも動かず、目を回している。
「次どーぞ」
余裕綽々と構えるミズヤが笑顔で声を掛ける。
その様相はまるで悪魔のように映った。
幼い子供が相手――とは言えど、彼は傷一つ負わずに、既に200人を超える人間を倒したのだ。
魔法の拘束が殆どであるが、彼は今、神楽器を背負っているのだから、その魔力には勝てないのだ。
打ち破る事のできない拘束、7色全てが使える才能、僅か12歳の少年1人を前に、レジスタンスはなす術がなかった。
「……もういい。みんな、下がってて」
そう思われた時、フィサが前に出る。
凛とした立ち振る舞いで、1歩、また1歩とミズヤに向かう。
レジスタンスにおいてナルー確保班の先頭に立っていた彼女もその実力を示すかのように、傷1つなく、汗1つかかずに立っていた。
「次はフィサさんかぁ。お相手仕りますっ」
「……甘く見ないで」
ミズヤは刀を、フィサは2丁のドライブ・イグソーブをそれぞれ構えた。
お互いにまだまだ若い組織の主戦力が今、激突する――。
「何故ここに……? クオン皇女は……拠点の方に居るはず」
「ちょっと遊びに来てたんです。ここは、ねこさんがいっぱいだからねっ!」
「……。そう……」
理由を聞いて、フィサは小さく相槌を返す。
如何あれ、彼がここに居るという事は、ナルー確保が面倒になるのが必至なのだ。
「掛かってくるなら早くしてくださいね? みんなまとめて、ねこさんにしちゃいまーすっ」
「…………」
両手を広げて笑い、ナメくさった発言をするミズヤにレジスタンス達は今にも飛び出しそうであった。
そしてこの場の指揮を任されているフィサも、時間を無駄にはできない。
だから彼女は手を前に伸ばし、宣言した。
「総員、攻撃開始」
1つの教会を落とす為に集う300人の兵達が、ミズヤに襲い掛かる――。
◇
同刻、西方軍事拠点ではヤーシャ率いる軍人達が屋上に出れる限り集結していた。
真っ向から向かい合うレジスタンス達――トメスタスに向けて、ヤーシャが声を発する。
「あぁ、まだ死んでなかったのね、アンタ」
「随分なご挨拶だな、ヤーシャ卿」
「そりゃそうよ。それで何? ウチに喧嘩売りに来たってワケ?」
「クオン皇女を渡してもらえれば、何事もなく帰ってやるのだがな」
「……はぁ」
嘆きのため息がヤーシャの口から漏れる。
さも面倒そうな態度を取りながらも、既に決めていた事を口にした。
「クオン様を差し出すなどあり得ないわ。戦うんならさっさとしましょ? こちとら寝不足なんだから、早く寝たいの」
「ならば寝かせてやろう。尤も、二度と起きる事はないがな」
「口だけは一丁前じゃないの。ま、御託はいいわ。とりあえず――」
――全面戦争と行きましょう。
その一言がきっかけとなり、西軍兵が重機を手に飛び出すのであった。
戦いの火蓋は切られた、もうこの勢いは止まらない――。
◇
「死ねェ!!」
「うおらぁぁぁああ!!!」
数十もの衝撃波、魔法の雨がミズヤに向けて飛んでくる。
訓練とはまるで違う、1撃で死ぬだろう攻撃の雨。
しかし彼は恐れも見せず、ただ1つの魔法を発動した。
「【空天意】」
その魔法は攻撃を止めるでもなく、攻撃は彼の上に降り注いだ。
粉塵が舞う、1撃が即死クラスの攻撃を幾重にも受けたのだ。
誰1人として彼の死を疑いもせず――それこそが油断だった。
ヒュンッと粉塵から飛び出した鎖の数々、それらは的確にレジスタンス兵を縛っていった。
両手を銅に巻き付けられ、彼らの持つイグソーブ武器は落とす事を余儀なくされる。
「グッ!?」
「なっ!?」
拘束されたレジスタンス達は驚愕の連鎖を生むが、粉塵からゆっくりと歩き出でるミズヤは、何事もなかったかのように笑顔で現れる。
無傷の彼は攻撃を避けたのではない、自身を透過させることで、攻撃を流したのである。
「……うーん、めんどくさいですにゃー」
「どらぁ!!」
「んっ」
顔をしかめている側からイグソーブ・ソードでの斬撃を振るわれる。
しかし彼は飛んでそれを避け、剣を振るった男の右肩に蹴りを入れる。
ゴキッという音と共に肩の骨を砕かれ、男は絶叫しながら倒れ伏した。
既に、ミズヤに倒されたレジスタンスの数は100を超えていた。
その半分は魔法による拘束、もう半分は打撃による骨折などの重傷。
拘束は解けぬが魔法で怪我は治せる、しかしミズヤはそんな隙を与えない。
誰かが回復系の魔法を使うものなら【無色魔法】で吹き飛ばし、阻止するのだ。
殺しはしない、しかしそれなりに重傷で。
ミズヤはイグソーブ武器は使えない、だからこそ敵をノックダウンさせるにはそれ相応の手段を取るのだった。
「【晴天意】」
ミズヤの掲げた右手が光る。
それはギラギラと眩しい太陽の日差しのようであった。
四方に広がった指向性の高い光線の束が世界を照らした。
この光は攻撃ではなく、対象を選択するものである。
そして、この光を浴びた者は、次の攻撃を避けられない――。
「【束縛】」
眩しさに目を開けぬレジスタンス達に向けて、ミズヤは光に黒い鎖を乗せた。
環奈が教会で使って見せたものと同じであり、光を浴びたレジスタンス達を次々と拘束していく。
しかし、一部では違った。
人が拘束されて崩れ落ちるものとは別で、ジャラリと鎖が落ちる音がする。
やがて消えた光の代わりに月明かりがうっすらと世界を照らし、イグソーブ武器を構えた十数名のレジスタンスを映し出した。
彼らは回避できない【束縛】を弾き、または叩き壊して見せたのだ――。
無言のうちに、その1人がラージ・イグソーブからレーザーを放出する。
青い光を放つ2つのレーザーは真っ直ぐミズヤへ襲い掛かるが、彼は避けるでもなく刀を構える。
「【青龍技】――【静音吸引】」
剣先をレーザーに向けると、襲ってきたレーザーはミズヤの手前で消滅し、刀に粒子が吸い込まれていく。
【静音吸引】――その技は刀と羽衣の連動で持つ魔法であり、刀の手前にある物の魔力を奪う力がある。
【羽衣天技】だけが刀で発動できる魔法ではない。
この【青龍技】、そして【赤龍技】という【赤魔法】もがその世界最高峰の武器に付随する能力なのだ――。
「ガラ空きだぜっ!!」
「!」
しかし、刀を出していれば動けない。
ミズヤの脇にはイグソーブ・ソードを振るわんとする男が現れ、剣をフルスイングした。
しかし、その攻撃も空振りに終わり、男はラージ・イグソーブの光線をモロに食らうのであった。
「……【空天意】。学習能力がないのは、ダメなねこさんだよ?」
半透明なミズヤがレーザーの中から姿を見せ、宙へと飛んだ。
彼に追いつくために2人の戦士がドライブ・イグソーブを噴射する。
ごうおんを放ちながら迫る戦士たちに、ミズヤはにこりと笑い掛けて、
「【力の落下】」
飛んでくる戦士たちに、空気の塊を落とした。
目では見えない圧力の塊は的確に2人をとらえ、地上へ叩き落とす。
ズドンという音が2回響いた。
地面に叩きつけられたレジスタンスの2人はピクリとも動かず、目を回している。
「次どーぞ」
余裕綽々と構えるミズヤが笑顔で声を掛ける。
その様相はまるで悪魔のように映った。
幼い子供が相手――とは言えど、彼は傷一つ負わずに、既に200人を超える人間を倒したのだ。
魔法の拘束が殆どであるが、彼は今、神楽器を背負っているのだから、その魔力には勝てないのだ。
打ち破る事のできない拘束、7色全てが使える才能、僅か12歳の少年1人を前に、レジスタンスはなす術がなかった。
「……もういい。みんな、下がってて」
そう思われた時、フィサが前に出る。
凛とした立ち振る舞いで、1歩、また1歩とミズヤに向かう。
レジスタンスにおいてナルー確保班の先頭に立っていた彼女もその実力を示すかのように、傷1つなく、汗1つかかずに立っていた。
「次はフィサさんかぁ。お相手仕りますっ」
「……甘く見ないで」
ミズヤは刀を、フィサは2丁のドライブ・イグソーブをそれぞれ構えた。
お互いにまだまだ若い組織の主戦力が今、激突する――。
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