連奏恋歌〜求愛する贖罪者〜
第17話:ファースト・コンタクト③
数百のレーザーが夜を染める。
ラージ・イグソーブから放たれるレーザーの雨は、それでも建物を覆う結界を破れなかった。
「幾ら数を増やしても無駄だと、学習しない奴らめ……」
賭博場、屋上――そこから紫髪の男が花で笑うように言い放つ。
その瞳は黒に緑、赤を含む禍々しいブラッドストーンの色であり、うっすらと輝いていた。
「殿下」
カンカンと階段を上り、1人の少女がやってくる。
ゴシックドレスに青いボブカットの髪を持つレジスタンスの1人、フィサだった。
「ん、なんだ? 下が騒がしかったが、終わったのか?」
「……子供が迷い込んでたみたいで、それだけです。ドライブ・イグソーブが暴走してただけなので、心配なく」
「そうか……。あぁそれと、ヴァムテルがここに浸入している」
「!」
「時間を掛けていい、嬲り殺せ」
「……。承知しました」
またくるりと身を翻し、カンカンと踏み鳴らして階段を降りて行った。
「…………」
だが男には、フィサの後ろ姿に怨念のような、黒いオーラが見えていた。
怒りの塊――それはキュールが敗戦したことによる屈辱が呼び起こされてるようで――。
◇
フィサが最上階へと登った同刻――
「【晴天意】――!」
ミズヤの掲げた手が光り、宛ら朝日の如くフロア全体を輝かせる。
「捕捉」
そのうち、レジスタンスに当たらぬ無効な光は全て消え去った。
突如光を当てられたレジスタンス達は動揺するも、ミズヤに襲い掛かる。
「今日は殺さない戦いだから、こんな技でごめんね? ……【無色魔法】、【力の竜巻】」
光の射す方へ――全方向に竜巻が吹き荒れた。
各個全員に当たり、兵達が吹き飛んでいく。
3階は倒れる者ばかりとなり、ミズヤは一息つく。
「おいおい、こっちまで吹っ飛んできたぞ。あまり無茶な魔法を使うな」
同フロアからヴァムテルがドライブ・イグソーブを片手にミズヤの元へやってくる。
彼の居た場所には、レジスタンス達が泡を吹いて倒れていた。
彼の使った【青魔法】――その技で、一瞬にして倒したのだ。
2人でこの階を制圧するのに10秒もかかっていない。
それだけ2人の魔法は強力だった。
「それで、どうするんですか?」
「そうだな……。倒した奴らを集めたいが、まだ敵の巣に居る以上、不用意に動くのはよすか。ミズヤ殿、上に行こう。敵のトップを仕留めたい」
「はーいっ」
ミズヤは明るく返事を返し、歩き出すヴァムテルとは違って今一度フロア全体を見渡した。
火の回る戦場跡には幾つかの市民の死体と、たくさんのレジスタンス達が転がっている。
(……思ったより簡単だなぁ)
ミズヤとしては、内戦というだけあってそれなりの戦いを予期していた。
だが蓋を開けてみれば、レジスタンスは魔法一撃でのされている。
【晴天意】下では弱い魔法を使えない制限が課せられるが、3m程度吹っ飛ばされて全員立てなくなっていた。
勿論打ち所が悪いのもあるだろうし、普通は立てないが――
(鍛えてるものだと思ってたけど、そうじゃないか……。【赤魔法】で代用もできるしっ)
そう自己完結し、ミズヤも上へ続く階段の方を向いた。
途端に、ミズヤの動きは停止した。
「……フィサ、か。まったく、急に表れるでない」
「それは私のセリフ。降りようとしたら真下になんて……下着を覗くには、私のスカートは長いわよ?」
「フッ、冗談にしては笑えぬなっ!!」
ドライブ・イグソーブから魔力で出来た刀を出し、ヴァムテルとフィサが斬り合う。
ヴァムテルの両手で持った1本の刀は悉く躱され、フィサは両手に持つ刀で斬撃の雨を繰り出す。
「ツッ――!」
刀を躱しきれず、腕から血が噴き出す。
傷は浅いためすぐに治まるも、フィサは斬撃を浴びせ続ける。
「グッ――!」
ヴァムテルは防戦に回り、切り傷を作り続ける。
ただドライブ・イグソーブの魔法刀で防ぐだけのヴァムテルに、彼女は叫んだ。
「弱い……。魔法を使えばいいものを、何故使わない! こんな弱い貴様に勝っても、私は嬉しく無いっ!」
「ぬっ!?」
フィサはドライブ・イグソーブを両方前方に構え、魔法弾を連射した。
曲線を描く魔法弾の群れは爆発を生んだ――。
「ハァ……ハァ…………ハァ……」
怒りのせいか、フィサは息を切らしながら前方を見つめる。
粉塵が飛び視界がままならないが、それはすぐに晴れる。
「【無色魔法】、【力の結界(フォース・プリベンション】」
晴れた視界の先――ヴァムテルの前にはミズヤが半透明の結界を張って立っていた。
全ての攻撃を防ぎ、悠々として立っている。
「……なんかよくわからないけど、戦わないなら僕がやるよ?」
「貴様は……さっきの子供? 何故――」
「なんでもいいでしょ? それより、戦おっか。さっきは戦いとも言えなかったし、今度は本気で……」
ミズヤが刀を構えようとしたその時、
ガシッ
「え?」
ミズヤはヴァムテルに抱え上げられた。
わけがわからずに間抜けな声を出したが、ヴァムテルはそのまま180°回って全力疾走する。
「えっ、ええ〜!? なんでにゃ〜っ!!?」
「にっ、逃げるのかっ!! ふざけるなっ!!」
フィサが追いかけようと足を踏み込む。
だが、その足は地に着いた途端に沈んだ。
「なっ!?」
片足を泥沼に突っ込んだように抜け出せなくなり、その隙にヴァムテル達は姿を消すのだった。
「なんで逃げるのーっ?」
担がれながら、ミズヤはヴァムテルに尋ねる。
ヴァムテルは小さな声で、ミズヤの問いに答えた。
「アイツは……フィサは………………俺の妹なんだ」
ラージ・イグソーブから放たれるレーザーの雨は、それでも建物を覆う結界を破れなかった。
「幾ら数を増やしても無駄だと、学習しない奴らめ……」
賭博場、屋上――そこから紫髪の男が花で笑うように言い放つ。
その瞳は黒に緑、赤を含む禍々しいブラッドストーンの色であり、うっすらと輝いていた。
「殿下」
カンカンと階段を上り、1人の少女がやってくる。
ゴシックドレスに青いボブカットの髪を持つレジスタンスの1人、フィサだった。
「ん、なんだ? 下が騒がしかったが、終わったのか?」
「……子供が迷い込んでたみたいで、それだけです。ドライブ・イグソーブが暴走してただけなので、心配なく」
「そうか……。あぁそれと、ヴァムテルがここに浸入している」
「!」
「時間を掛けていい、嬲り殺せ」
「……。承知しました」
またくるりと身を翻し、カンカンと踏み鳴らして階段を降りて行った。
「…………」
だが男には、フィサの後ろ姿に怨念のような、黒いオーラが見えていた。
怒りの塊――それはキュールが敗戦したことによる屈辱が呼び起こされてるようで――。
◇
フィサが最上階へと登った同刻――
「【晴天意】――!」
ミズヤの掲げた手が光り、宛ら朝日の如くフロア全体を輝かせる。
「捕捉」
そのうち、レジスタンスに当たらぬ無効な光は全て消え去った。
突如光を当てられたレジスタンス達は動揺するも、ミズヤに襲い掛かる。
「今日は殺さない戦いだから、こんな技でごめんね? ……【無色魔法】、【力の竜巻】」
光の射す方へ――全方向に竜巻が吹き荒れた。
各個全員に当たり、兵達が吹き飛んでいく。
3階は倒れる者ばかりとなり、ミズヤは一息つく。
「おいおい、こっちまで吹っ飛んできたぞ。あまり無茶な魔法を使うな」
同フロアからヴァムテルがドライブ・イグソーブを片手にミズヤの元へやってくる。
彼の居た場所には、レジスタンス達が泡を吹いて倒れていた。
彼の使った【青魔法】――その技で、一瞬にして倒したのだ。
2人でこの階を制圧するのに10秒もかかっていない。
それだけ2人の魔法は強力だった。
「それで、どうするんですか?」
「そうだな……。倒した奴らを集めたいが、まだ敵の巣に居る以上、不用意に動くのはよすか。ミズヤ殿、上に行こう。敵のトップを仕留めたい」
「はーいっ」
ミズヤは明るく返事を返し、歩き出すヴァムテルとは違って今一度フロア全体を見渡した。
火の回る戦場跡には幾つかの市民の死体と、たくさんのレジスタンス達が転がっている。
(……思ったより簡単だなぁ)
ミズヤとしては、内戦というだけあってそれなりの戦いを予期していた。
だが蓋を開けてみれば、レジスタンスは魔法一撃でのされている。
【晴天意】下では弱い魔法を使えない制限が課せられるが、3m程度吹っ飛ばされて全員立てなくなっていた。
勿論打ち所が悪いのもあるだろうし、普通は立てないが――
(鍛えてるものだと思ってたけど、そうじゃないか……。【赤魔法】で代用もできるしっ)
そう自己完結し、ミズヤも上へ続く階段の方を向いた。
途端に、ミズヤの動きは停止した。
「……フィサ、か。まったく、急に表れるでない」
「それは私のセリフ。降りようとしたら真下になんて……下着を覗くには、私のスカートは長いわよ?」
「フッ、冗談にしては笑えぬなっ!!」
ドライブ・イグソーブから魔力で出来た刀を出し、ヴァムテルとフィサが斬り合う。
ヴァムテルの両手で持った1本の刀は悉く躱され、フィサは両手に持つ刀で斬撃の雨を繰り出す。
「ツッ――!」
刀を躱しきれず、腕から血が噴き出す。
傷は浅いためすぐに治まるも、フィサは斬撃を浴びせ続ける。
「グッ――!」
ヴァムテルは防戦に回り、切り傷を作り続ける。
ただドライブ・イグソーブの魔法刀で防ぐだけのヴァムテルに、彼女は叫んだ。
「弱い……。魔法を使えばいいものを、何故使わない! こんな弱い貴様に勝っても、私は嬉しく無いっ!」
「ぬっ!?」
フィサはドライブ・イグソーブを両方前方に構え、魔法弾を連射した。
曲線を描く魔法弾の群れは爆発を生んだ――。
「ハァ……ハァ…………ハァ……」
怒りのせいか、フィサは息を切らしながら前方を見つめる。
粉塵が飛び視界がままならないが、それはすぐに晴れる。
「【無色魔法】、【力の結界(フォース・プリベンション】」
晴れた視界の先――ヴァムテルの前にはミズヤが半透明の結界を張って立っていた。
全ての攻撃を防ぎ、悠々として立っている。
「……なんかよくわからないけど、戦わないなら僕がやるよ?」
「貴様は……さっきの子供? 何故――」
「なんでもいいでしょ? それより、戦おっか。さっきは戦いとも言えなかったし、今度は本気で……」
ミズヤが刀を構えようとしたその時、
ガシッ
「え?」
ミズヤはヴァムテルに抱え上げられた。
わけがわからずに間抜けな声を出したが、ヴァムテルはそのまま180°回って全力疾走する。
「えっ、ええ〜!? なんでにゃ〜っ!!?」
「にっ、逃げるのかっ!! ふざけるなっ!!」
フィサが追いかけようと足を踏み込む。
だが、その足は地に着いた途端に沈んだ。
「なっ!?」
片足を泥沼に突っ込んだように抜け出せなくなり、その隙にヴァムテル達は姿を消すのだった。
「なんで逃げるのーっ?」
担がれながら、ミズヤはヴァムテルに尋ねる。
ヴァムテルは小さな声で、ミズヤの問いに答えた。
「アイツは……フィサは………………俺の妹なんだ」
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