311よりも前を知る私の思い………。
116は振り替え休日……。
翌日……二日酔いもならず、振り替え休日の月曜日は、家の近所の複合型商業施設の一角にある店舗にバイトに行った。
そこは裏で機械によってほとんど作られた商品を網に並べ、大きな油の入った機械に、入れて揚げていく。
そしてチェックが入り、形がいびつだったりしたものをはねていく。
はねる……これは、一種の棚落ち品であり、捨てるのではなく、バイトの休憩時のおやつになる。
それに、コーヒーや時間チェックですぎた商品も後ろの休憩室とは名ばかりの、倉庫に椅子を並べた所に送られる。
すべて、ギリギリ捨てられることなく、休憩室で食べる。
それに、当時、その店頭の見本展示品もほしい人がいれば持って帰っても良く、未だに財布のはいる程度のミニバッグは愛用している。
バイト先では二時間ごとに10分休憩がもらえた。
でも、二時間バイトでは、休憩はなく、そのまま帰る。
3時間働くと、二時間が過ぎると暇な時を見計らい、交代で休憩ができる。
その時に、コーヒーか決められた飲み物一杯と、いびつな商品だけではなく、機械操作が必要だが、好きなドーナツをもらうこともできる。
後ろに出来立てでいびつなものがあれば、それを食べるが、それがシナモン入りのドーナツだったときには、操作をしてもらうことにしていた。
一応、
「後ろにあります~?」
とコーヒーを手に尋ねると、
「シナモン~」
「いかんなぁ……じゃぁ、これもらいます」
二番目にお気に入りのドーナツを選ぶ。
それをのせた皿とコーヒーを手に奥に入った私は、一瞬顔をしかめた。
倉庫の奥……裏口、そして休憩所であり、店長が書類を記載する机を押し込んだ空間。
そこに出入り口ではこれからはいる大学生が入ってこられないと思い、ギリギリのところに四つ足の丸椅子を置いて、座ると、カップは倉庫の棚のすみ、お皿は膝の上に置いた。
逆L字に移動する空間の両側は天井まで棚。
私は、表の担当のため、ほとんどが分からない。
その逆L字の底に机が置いてあり、金庫などもあったと思う。
自分は、ギリギリのラインにいた。
警戒していた。
が、
「あぁ、休憩。お疲れ様」
手を止めて振り返るので、一応、
「はい、店長。お疲れ様です」
と、頭を下げている間に、机の備え付けの椅子が軋み、
「昨日、成人式。行ってきたんやろ?どうやった?」
「はぁ、まぁ、友人に会いましたが……」
「昔の彼氏でもおったとか?告白されたとか?」
はぁ?
呆れる。
「いえ、そんなことは……」
「彼氏おらんのやろ?探しに行くんが成人式やんか。それとも、年下は頼りないとか?」
「はぁ?私は、友人と……」
無視をすれば良かったのだと今では思うのだが、当時は若かった。
それだけでなく、
キモッ!
と思ったのは、椅子のきしむ音と、続く音で、離れていた店長が、近づいてきていたのだ。
「そんなのありませんよ。それでなくとも、友人たちは就職探しとか……」
「短大行くんは、見合いに箔が付くけんやろ?あそこ、その名目で親送り込むのに。知らんかったん?」
ムカッと来た。
友人たちはいろいろと勉強をして、保育士になったり、資格を持っているのに‼
言い返そうとすると、ゾゾゾッとする。
わざわざ膝にお皿を置いておいたのに、そこ以外の場所を触ってくる……。
「それになぁ、最近の女子大生は生意気や……偉そうに。それで何があって来れん、あぁ、この日は飲み会、サークル。わがままばっかりや……その点……」
一瞬、まだ温いコーヒーを頭からかけてやろうと思ったときに、扉が開いた。
「こんにちは~‼更衣室の鍵借りに来ました~‼」
「あ、こんにちは~‼」
ひとつ上で、大学3年生の先輩である。
販売担当でもサブリーダーで、最初は馴れない私を正社員のリーダーと根気強く教育してくれた人である。
「ねぇ、刹那ちゃん‼悪いんやけど、この荷物なんよ」
「はい。じゃぁ、鍵を持っていきますね‼では、店長。失礼します‼」
鍵を取り、一緒に出ていった。
更衣室は別にある。
そこはとても狭いのだが、入るとすぐ、
「うわぁぁ……刹那ちゃん。ほんとにセクハラされてたんだね‼いや、回りの子がね?刹那ちゃんが暗い顔で休憩室行くから、どうしたんだろっていよったんよ。で、あの時に飲み会で、あれみてさぁ……引いたわ。後で、男子、殴り飛ばしたよ。嫌がってるのに、何させてんねん‼女を馬鹿にしとんのか‼ふざけんな~‼って」
「……もう、毎回毎回触ってくるし……情けななって……お酒の勢いも借りて殴り飛ばせば止めると思ったのに……気持ち悪くて、硬直するんです……」
プルプルと震える。
鼻の奥がツーンとし、涙が決壊する。
「止めてくださいって……いよるのに……。それに、店長、結婚してるんでしょう?」
「そうやね」
「なのに、デートしよか言うて……来たりも……」
泣きじゃくる。
しゃがみこんで泣き出したあたしに、先輩は、
「販売リーダーに言うてくる。ここにおり」
制服に着替え、出ていった。
そしてしばらくして、リーダーが来て、
「もう帰っていいよ。その顔じゃ、立てんでしょ?」
と苦笑しながら涙を拭いてくれる。
「でも、今日は7時間……まだ二時間しか……」
しゃくりあげると、
「時間が来たらタイムカード押しておくから大丈夫よ。今着替えして、鍵を渡してくれたら、構わないから」
その言葉に、
「あ、ありがとうございます……リーダー。す、す、すみません」
泣きながら着替えをして、キャスケットを深くかぶり、出ていった。
「明日はこれるようなら来なさいね。休んでもいいわよ、と言うか、休みなさい」
肩を撫でられ、頷き、
「はい……そうします……」
と帰っていった。
そこは裏で機械によってほとんど作られた商品を網に並べ、大きな油の入った機械に、入れて揚げていく。
そしてチェックが入り、形がいびつだったりしたものをはねていく。
はねる……これは、一種の棚落ち品であり、捨てるのではなく、バイトの休憩時のおやつになる。
それに、コーヒーや時間チェックですぎた商品も後ろの休憩室とは名ばかりの、倉庫に椅子を並べた所に送られる。
すべて、ギリギリ捨てられることなく、休憩室で食べる。
それに、当時、その店頭の見本展示品もほしい人がいれば持って帰っても良く、未だに財布のはいる程度のミニバッグは愛用している。
バイト先では二時間ごとに10分休憩がもらえた。
でも、二時間バイトでは、休憩はなく、そのまま帰る。
3時間働くと、二時間が過ぎると暇な時を見計らい、交代で休憩ができる。
その時に、コーヒーか決められた飲み物一杯と、いびつな商品だけではなく、機械操作が必要だが、好きなドーナツをもらうこともできる。
後ろに出来立てでいびつなものがあれば、それを食べるが、それがシナモン入りのドーナツだったときには、操作をしてもらうことにしていた。
一応、
「後ろにあります~?」
とコーヒーを手に尋ねると、
「シナモン~」
「いかんなぁ……じゃぁ、これもらいます」
二番目にお気に入りのドーナツを選ぶ。
それをのせた皿とコーヒーを手に奥に入った私は、一瞬顔をしかめた。
倉庫の奥……裏口、そして休憩所であり、店長が書類を記載する机を押し込んだ空間。
そこに出入り口ではこれからはいる大学生が入ってこられないと思い、ギリギリのところに四つ足の丸椅子を置いて、座ると、カップは倉庫の棚のすみ、お皿は膝の上に置いた。
逆L字に移動する空間の両側は天井まで棚。
私は、表の担当のため、ほとんどが分からない。
その逆L字の底に机が置いてあり、金庫などもあったと思う。
自分は、ギリギリのラインにいた。
警戒していた。
が、
「あぁ、休憩。お疲れ様」
手を止めて振り返るので、一応、
「はい、店長。お疲れ様です」
と、頭を下げている間に、机の備え付けの椅子が軋み、
「昨日、成人式。行ってきたんやろ?どうやった?」
「はぁ、まぁ、友人に会いましたが……」
「昔の彼氏でもおったとか?告白されたとか?」
はぁ?
呆れる。
「いえ、そんなことは……」
「彼氏おらんのやろ?探しに行くんが成人式やんか。それとも、年下は頼りないとか?」
「はぁ?私は、友人と……」
無視をすれば良かったのだと今では思うのだが、当時は若かった。
それだけでなく、
キモッ!
と思ったのは、椅子のきしむ音と、続く音で、離れていた店長が、近づいてきていたのだ。
「そんなのありませんよ。それでなくとも、友人たちは就職探しとか……」
「短大行くんは、見合いに箔が付くけんやろ?あそこ、その名目で親送り込むのに。知らんかったん?」
ムカッと来た。
友人たちはいろいろと勉強をして、保育士になったり、資格を持っているのに‼
言い返そうとすると、ゾゾゾッとする。
わざわざ膝にお皿を置いておいたのに、そこ以外の場所を触ってくる……。
「それになぁ、最近の女子大生は生意気や……偉そうに。それで何があって来れん、あぁ、この日は飲み会、サークル。わがままばっかりや……その点……」
一瞬、まだ温いコーヒーを頭からかけてやろうと思ったときに、扉が開いた。
「こんにちは~‼更衣室の鍵借りに来ました~‼」
「あ、こんにちは~‼」
ひとつ上で、大学3年生の先輩である。
販売担当でもサブリーダーで、最初は馴れない私を正社員のリーダーと根気強く教育してくれた人である。
「ねぇ、刹那ちゃん‼悪いんやけど、この荷物なんよ」
「はい。じゃぁ、鍵を持っていきますね‼では、店長。失礼します‼」
鍵を取り、一緒に出ていった。
更衣室は別にある。
そこはとても狭いのだが、入るとすぐ、
「うわぁぁ……刹那ちゃん。ほんとにセクハラされてたんだね‼いや、回りの子がね?刹那ちゃんが暗い顔で休憩室行くから、どうしたんだろっていよったんよ。で、あの時に飲み会で、あれみてさぁ……引いたわ。後で、男子、殴り飛ばしたよ。嫌がってるのに、何させてんねん‼女を馬鹿にしとんのか‼ふざけんな~‼って」
「……もう、毎回毎回触ってくるし……情けななって……お酒の勢いも借りて殴り飛ばせば止めると思ったのに……気持ち悪くて、硬直するんです……」
プルプルと震える。
鼻の奥がツーンとし、涙が決壊する。
「止めてくださいって……いよるのに……。それに、店長、結婚してるんでしょう?」
「そうやね」
「なのに、デートしよか言うて……来たりも……」
泣きじゃくる。
しゃがみこんで泣き出したあたしに、先輩は、
「販売リーダーに言うてくる。ここにおり」
制服に着替え、出ていった。
そしてしばらくして、リーダーが来て、
「もう帰っていいよ。その顔じゃ、立てんでしょ?」
と苦笑しながら涙を拭いてくれる。
「でも、今日は7時間……まだ二時間しか……」
しゃくりあげると、
「時間が来たらタイムカード押しておくから大丈夫よ。今着替えして、鍵を渡してくれたら、構わないから」
その言葉に、
「あ、ありがとうございます……リーダー。す、す、すみません」
泣きながら着替えをして、キャスケットを深くかぶり、出ていった。
「明日はこれるようなら来なさいね。休んでもいいわよ、と言うか、休みなさい」
肩を撫でられ、頷き、
「はい……そうします……」
と帰っていった。
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