Re:勇者召喚

初柴シュリ

第二十九話

ガキィ!! と二本の剣が切り結ばれる。優也と黒フードの距離がほぼゼロまで近づき、切り結ばれた剣に力が籠められることで、辺りにギリギリと耳障りな音が響く。


「その仮面、趣味悪いぞ!!」

『フン、吠えてろ雑魚が』


膠着状態が続くのも一瞬、どちらからともなく切り結ぶのを解除して一歩後ろに下がる。黒フードは仕切りなおす為、優也は仲間の援護を受ける為。


「皆、頼むぞ!!」

「了解!! 《ファスティアル・アン・デル・ウィンデ》!!」

「ん、《ピアース・フォン・デル・ウィンデ》、サンレンダァ……」

「《ストレント・アン・エル・ファイア》!!」


速度の強化、力の強化、そして援護射撃の魔法がそれぞれ唱えられる。仲間の差はこういう場面で如実に表れるのだ。普通の相手ならばこの時点でかなりの苦戦は必至だ。


「えぼりゅーしょん……この先は版権的にダメかな?」


なんとも気の抜ける援護だが、風の槍に込められた魔力は一流の魔術師とほぼ同量。いくら黒フードが強者だったとしても直撃はまずい。が、彼は狼狽えない。あくまで余裕をもって右の剣を構える。


『先日の借りを返させて貰おうか……はあっ!!』


男が剣を振るうと、黒い波動が飛んでいき彼女の槍をすべて打ち消す。以前に魔力を吸収された意趣返しとでも言うべきか、以前と状況は逆転していた。

優芽は不満気に頬を膨らませるも、それ以上は追撃しない。なぜなら――


「はああああ!!」


――次は優也の番だったからだ。

先ほどよりも早くなった技に多少驚くも、落ち着いて対応する黒フード。再び剣を交えるが、今度は拮抗とはいかず、わずかに黒フード側が押され、足元の地面が抉れた。


『……面白いじゃないか』

「お褒めに預かり恐悦至極ってね!!」


一切の表情が見えない仮面に対して、にやりと笑う優也。

このままならいける。彼がそう確信した瞬間であった。



◆◇◆



少年が下がったと思ったら強くなって帰ってきた。何がおこってるか(ry

まあ冗談は置いておいて、とりあえず目の前の事に集中しよう。この五日間で少しは訓練したようで、中々いい統率がとれている。急造のパーティーにしては上出来ではないだろうか。少なくとも昔の俺たちの三倍はしっかりしてる。

うん。昔の俺たちが酷かったとも言うね。

とにかく、いくら俺でも魔力の強化が掛かった人間に真正面から対抗できるとは思っていない。胸を貸すつもりではあるが、ちょっと対抗するくらいなら問題ないだろ。


『魔術は貴様の専売特許ではないぞ?』

「わかってるさ!!」


再び拮抗状態に戻し、優也くんを挑発すると一層体が光り輝く。え、ちょ、なにこれ。凄いまぶしいんですけど。まさか効果目潰しなの? いや確かに有用だけどさ。


「皆!! 重ね掛け頼む!!」

「もう一回ね!! 《ファスティアル・アン・デル・ウィンデ》!!」

「えい!! 《ストレント・アン・エル・ファイア》!!」

「んー、三回まではいけるよね? 《ストレント・アン・エル・ファイア》」


背中にいくつもの強化呪文を受け、次々と身体能力が上がっていく勇者君。また力押しか? 


『芸がないな……その程度、造作もなく耐えられるぞ?』


魔力をさらに込めることでこちらも対抗。正直これで相手が魔力の操作まで覚えてたらきつかったが、この世界に来て数日のやつが覚えられる筈がない。さあどうする? 力押しでは俺には勝てないぞ?


「勿論これじゃ終わらないさ!! 行くぞ、《英雄挑戦ヒロイック・チャレンジ》!!」


彼がそう唱えると、彼を中心にして爆発的に魔力が集まってくる。なんだこの波動は!?


『チッ……』


視線は彼へと向けたまま、構えは解かないようにして後ろに下がる。魔力が集まっていく様子は例の魔族を思い出すが、こちらははるかに神々しい魔力だ。英雄の名は伊達じゃない、ってことか。



「はぁぁぁぁ!!」


雄叫びと共に彼が立ち上がる。纏っていた魔力は弾け飛び、その余波があたりの草木を揺らす。

ガシャ、と重々しい音を立てながら立ち上がった彼の姿は、まさに英雄と呼ぶにふさわしかった。


『ほう……』

「綺麗……」

「凄いですわ……」

「……何の鱗使ったのかな?」


全身がきらびやかな白銀の甲冑で覆われており、頭部には白銀のヘルム。その先端には馬の尻尾のような白の毛がたなびいている。重装甲だが、それでいてそれを感じさせない流麗なフォルム。これに剣を持たせて王女のそばに控えさせたらさぞや立派な騎士になるだろう。

あとゲーマー少女ちゃん? 君は一回ゲームから離れましょうね。


『……なるほど。中々美しいじゃないか。今からでも騎士に転向したらどうだ?』

「魅力的だが、お断りさせてもらうよ。今の俺は……勇者だからね!!」


そう言って自らの右手に巨大な幅広の剣を出現させる優也。普段の彼ならばとても持てないであろうサイズだが、今の彼は軽々と扱っている。これもスキルの恩恵だろう。

優也は一瞬で俺との距離を詰めると、その大剣を振るう。先ほどよりも一段早くなった斬撃が俺を襲うが、その程度の攻撃なら俺は何度も食らってきた!!


『フッ……』

「クッ、これも避けるのか!!」


ブン、ブンと風切り音が鳴るレベルで振るい続けるが、ただ早いだけの攻撃では俺に当てることは出来ない。それに大剣の使い方もなっちゃいないな。仲間だった戦士が見れば、鼻で笑うかお前を地獄の特訓に招待するかの二択だったぞ?


『そんなものに当たってやるほど俺は優しくなくてな……もっと考えて攻撃しろよ』

「クソッ……」


いつまでたっても当たらないからか、一度下がって態勢を整える優也。どれ、こっちも少しばかり面白いことをしてやるか。サービス精神は旺盛なんでね。


『お前が英雄になるなら……こっちはその逆の道を行こう。《叛英雄リベリオン》!!』

「なっ……!?」


意図的に周りから魔力をかき集める。まあこんな名前のスキルなんて持ってないんだけどね。単にオシャレで名づけただけ。ああっ!! やめてください引っ張らないで(ry

ネタはこのくらいにしておくか。かき集めた魔力を物質として体の周りに形成。あたかも鎧のようにすることで、俺が本当にスキルを発動させたかのように見せかける。

そうして俺を覆っていた黒い魔力が晴れ、鎧がその姿を現す。


「っ、これは……」

「まさか、優也と対になる……?」

「そんな、勇者様のスキルはオリジナルの筈なのに……」


真っ黒な甲冑に、ヘルムに入った赤いスリット。先端についている毛は赤と、目の前の勇者とは対照的な色彩をしている。それでいて形はそっくりなのだから驚きもするだろう。まあ意図的に作ったから当たり前なんだけどね。

するとゲーマー少女はぽつりと呟く。


「……それバーサー」


はい、そこまで。それ以上は版権危ないからね。

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