Re:勇者召喚

初柴シュリ

第二十四話

ふう、危ない危ない。エーロに変質者の魔の手が触れてしまうところだった。ナイスだ俺。前の世界で変身ポーズから練習していた甲斐があったぜ。


「ぐっ、貴様……トラップを仕掛けたはずなのに」

「あ? トラップ? んなもん知らねぇよ」


俺ジャンプで村ごと飛び越えてきたからな。

あ、サーシャのこと置いてきちゃった……ま、トラップ位気づくだろあいつなら。ていうか引っ掛かっても死ぬ用な奴じゃないし。いやホントに。旅の途中ダンジョンとかには即死トラップが散りばめられていたんだが、その悉くを発動させては無傷で生還してきてるんだぞあいつは。


「ま、なんだって良いんだよ。取り敢えずお前、ボコボコにするけど良いよね?」

「この、調子にーー」

「ーー答えは聞いてない!」


相手の言葉を途中で切り上げる。同時に懐から銃を抜き、その勢いのまま乱射。幾つもの魔力弾がフード野郎に迫る。


「チィッ」


舌打ちをしつつも後ろへと下がるフード。


「エーロ、今のうちに下がれ! サーシャが拾ってくれる!」

「っ! わ、わかったの!」


どこか惚けていたエーロに声を掛けて下がらせる。こうすれば後は気兼ねなく戦えるし、奴の目的も潰れるってわけだ。


「さ、これで一対一だな。久しぶりのガチ戦闘が出来そうだぜ」

「ぐぅ……おのれおのれおのれぇーーーー!! この私の崇高なる目的を阻むとは!! あと少し、あと少しだったというのに!!」


おーおー、発狂してやがる。ま、どうでもいい事なんだけどね。


「こうなったら私自ら手を下すとしよう……来い! 我が眷属共!」


奴が声を張ると地面から黒い泥があふれ出し、人型を形作る。魔法による眷属の生成だ。それが幾体も生み出される光景は、あまり見てて気分のいいものではない。

が、所詮は雑魚だ。動きものろく、パワーも少ない。せいぜいの利点は防御力が高い位か。俺を倒すには程遠い。


「おいおい、こんな雑魚で何をしようってんだ?」

「ふん、吠えていろ人間が」


ん? 言い方からすると人間ではないのかこいつは? となるとエルフか獣人か、それとも魔人か……。


「ま、七面倒なこと考えてもしかたねぇ。まずは目の前の奴らをぶっ叩く!」


無数に沸いている眷属共を、一刀のもとに切り伏せる。これだけで一気に半数が消し飛んだ。


「くっ、思ったよりスピードが速い。だがこいつを終わらせれば……」


何やらぶつぶつと呟いているフードの男。何か企んでいるみたいだが……


「その前にぶっ潰せば関係ねぇよなぁ!!」


剣に魔力を纏わせ、そのまま一振り。残りの半分も消滅する。再び泥は回復し始めるが、目の前の障害は現在皆無と言っていい。が、念には念を入れることにしよう。


「こいつでフィナーレだ。アツく飾るぜ!! 《キックストライク》!!」


俺の右足に炎が集まり、夜の廃村を赤く照らし出す。徐々に回復していく泥だが、許容量を超える一撃を食らわせれば根本から断つことができる。

月をバックに高く飛び上がる。体勢を整えた次の瞬間には、落下時の勢いを乗せて急降下。かって仲間から「彗星のよう」と評されたこいつの一撃、見せてやるぜ!!


「はぁぁぁぁぁぁ!! セイハァァァァ!!」


そして着弾。周りの泥を弾き飛ばすだけでは止まらず、そのまま地をも砕く一撃となって地面を揺らした。

後に残ったのは黒く焼け焦げた何かと罅の入った地面のみ。


「ふぃ~……あれ、あいつは何処に行った?」


気付けば奴の姿は消えていた。炭の仲間入りでもしたのか? とあたりを見回すが人の形をしたものは見当たらない。


「……ひょっとして、遊びすぎた?」


たらり、と一筋の汗が垂れた。



◆◇◆



「くそ、でたらめな奴だ……まさか私の眷属がああもあっさりと」


男は煤けた体を引きずりながら、魔法陣の描かれていた家屋までほうほうの体で逃げ出していた。

彼の眷属は曲がりなりにも高い防御力を誇っていたはずだ。計算上ならたとえ国一番の剣士と相対しても二分は持ちこたえられる。それも一体で。

にも関わらず、だ。あの男はあっさりと三十体の眷属すべてを倒してしまった。それも回復すらさせないほどのオーバーキルで。一体奴は何者なのだろうか? 男の脳内はその疑問で占められていた。


「くそっ、かくなる上は……」


己の作り出した魔法陣を睨む。

召喚先の憑代こそ逃げられたものの、魔王の力を引き出すという機能はまだ残っている。これを応用すれば……


「奴は必ず障害となる……ならばこの手で倒し、その後にあの小娘をもう一度さらうしかあるまい」


男は決意する。あの男を抹殺する決意を。



◆◇◆



「おらー!! 早く出てこんかいアホンダラー!!」


廃屋を一つずつ壊して確認していく。非常識? ばか、そんなこと考えてる余裕ねぇよ。調子のって主犯格逃したとかもうサーシャにぶち殺されてもおかしくないレベルだ。


「ああもう、早く倒して帰らねぇと……」


あまり時間をかけすぎると怪しまれてしまう。一体どこに行ったんだあいつは……まさかもう逃げてんじゃ!?


「そ、それはまずいって!!」


急激なペースアップ。危機感があると人間効率がよくなるのは本当のようだ。

が、日ごろの行いが良かったのだろうか。神は俺に微笑んでくれたみたいだ。

ドォォォォン!! と唐突にいまだ探していなかった家屋が爆発する。


「な、なんだ!?」


もうもうと立ち込める煙。その奥から巨大な影が出てくる。


『……ああ、これがあの御方の力か。なんとも心地いい……』


ズン、と大地を踏みしめる重々しい音。振動が体の奥まで響いてくる。


『さあ、断罪の時間だ。この俺を虚仮にした報い、その身に受けてもらおうか!!』


煙が晴れる。出てきたのは鬼のごとき面に、二対の腕。悪魔のような羽。そして魔族の印である巨大な角。


『――この魔王の力をな!!』


……やった! サーシャへの言い訳が増えたぜ!!

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