Re:勇者召喚

初柴シュリ

第十九話

兵士に先導を任せ、俺達は後を追いかけるように付いていく。ここだけでなく、あちこちから足音が響いている事から色々な所でパニックになっているようだ。


「そもそも賊ってどんな奴等なんだ? どうにも規模が賊ってレベルじゃないだろ」

「王の話によりますとエルフという話でしたが……」

「エルフ!?」


パルメニアの答えに愕然とする俺。この世界でのエルフは俺の知る物より随分とアグレッシブな存在のようだ。


「でも、エルフがなぜ……」

「そこまでは教えてくれませんでした……秘密という事なのでしょうか?」


秘密か……なにかきな臭い物を感じるが、今はそれどころじゃない。急いでマギルス国王の安否を確認しないと……!


「到着いたしました! こちらです」


衛兵が立ち止まったのは王宮最上階の一角。元は豪奢な飾りがあったのであろう廊下も、今では煤だらけとなり見る影もない。


「こいつは……」

「ドアも吹き飛んでる……TNT?」

「よくわかんないけど、きっと違うわよそれ……」


開けたドアから中を伺う。優芽は一緒に覗き込んできたが、パルメニアと雅は来ない。


「あ、あんた達よく中を見れるわね……死体を見る勇気はあたしには無いわ」

「わ、私もです……」

「ああ、気にしないでくれ。今回は出来る奴で探索するよ」

「グロ耐性、まっくす」


何故かブイサインで誇る優芽。

中を覗くと、当然のごとく内部はグシャグシャとなっている。

しかし、一つ重要なものが見当たらない。


「国王がいない?」

「……人っ子一人いないね」


そう、肝心の国王の死体が見つからないのだ。勿論、ここにいなかったという可能性もあるが……。


「兵士さん、国王が外出してたとか、そういう話はないですか?」

「いえ、私は一兵卒でしたのでそういうのは……」


うーむ、兵士からの情報は期待できないか。

そうこうしているうちに人が集まり始める。騒ぎを聞き付けてきたみたいだ。


「勇者様方! これは一体……」

「国王の部屋が爆破されました」


事実だけを簡潔に述べる。驚きを顔に浮かべた彼らはそのまま現場検証に入るようで、王の部屋へと入っていった。


「マギルス王は無事なのでしょうか……」

「わからんが……信じるしか無いだろうな」


はぁ、と溜め息をつく。異世界に来たばっかりだってのに、大事に巻き込まれてしまったみたいだ。


「……」

「ん? どうした優芽?」

「……なんでもない。ちょっと気になっただけ」


言葉を濁す優芽に首を傾げる。が、ここで問いただしても仕様のない事だろう。とりあえず何か手伝えることはないか、兵士に聞いてみようー


「何だこの騒ぎは?」


ハッ、と声の方向を振り向くと、何とマギルス王がいるではないか。幾人かの護衛を連れて俺達の元へ向かってくる。


「王! ご無事だったのですね」

「ああ。それより何があった?」


王の元に現場検証をしていた兵士の幾人かが駆け寄る。


「王の寝室が爆破されたもようです。恐らくは昼間仰っていた賊ではないかと」

「……何?」


驚き、というより訝しげな表情になる国王。そのまま何かを考えはじめてしまう。

と、その思考を邪魔するかのように優芽が国王の前に行く。っておい!?


「国王様、ちょっといい?」

「……なんですかな勇者様?」


慌てる俺達を尻目に会話を続ける優芽。なんとまあ、豪胆というか無謀というか……。


「国王の寝室って兵士皆知ってるの?」

「いや、一部の騎士団員や私の護衛しか知らないはずだ」


まあ確かに、安全の観点から見ても正しい事だろう。そんなことを聞いて優芽は何をしたいのだろうか?

優芽は何やら自分の中でしっくり来たのか、しきりに頷いている。そして俺達を案内した兵士へ向かっていった。


「ねえ、あなた犯人でしょ?」


……は?

一瞬時間が止まったかのような錯覚に見舞われる。一日でこう何回も時間を止められては堪ったものではない。


「……何を仰るので?」

「ごまかさなくてもいいよ? 少なくとも兵士では無いみたいだし」

「お、おいなに言ってるんだよ優芽。この人が犯人だなんて……」


俺がそういって優芽を止めようとする。が、その前に兵士が大きな溜め息をついた。


「一応聞きますが、いつから?」

「おかしいと思ったのは最初からかな。爆発したばっかりなのに指定した場所が正確だったから」

「ああ、それは不用意だったな。ミスったわ」


いつの間にか口調まで変わっていく兵士。ま、まさか本当にこいつが……!?

気付けば周りは他の兵士で固められ、彼は逃げられそうにもない状況だ。


「他にも色々あるよ? 論破してみる?」

「楽しそうだけど遠慮しとくわ。ていうか俺の台詞覚えてたの?」

「フラグは覚えとかないと損だから」

「そりゃまた楽しそうな理由で」


そういいつつ腰から剣を引き抜く偽兵士。周りの兵士も一斉に剣を構える。


「おーおー、殺気立ってるねぇ。でも、用があるのはそこのおっさんかなぁ」

「っ! 王をお守りしろ!」


護衛につれられ撤退する王に、殿のように賊の前に並ぶ兵士達。


「そうは問屋が下ろさないってね!」


が、賊が足元に棒状の何かを投げる。すると棒は地面に突き刺さり、機械のごとく展開する。


「なっ!?」

「これは……結界だと!?」


兵士達の驚きもよそに薄い膜が全体を覆ってしまう。先程から起きる出来事が衝撃的過ぎて付いていけん……!!


「これで俺らは出られないっと……」


兵士に囲まれて尚、その余裕を崩さない賊。懐から取り出したのは……銃? 


「さ、俺と遊んでもらおうか?」


チャキ、と銃口を正面に向ける。

開戦は、一発の号砲で始まった。



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はーいどもども、毎度お馴染み小鳥遊でっす。俺は現在王城へと侵入を果たし、大勢の兵士に囲まれていまーす。いやーこんな大人気になったの人生で二回目だわ。因みに一回目は生まれた時。その時なら親からの愛情はマックスだったと思うんだ。裏を返せばそれ以外は……いや、この話題は止めよう。

ていうか勇者パーティーのあの子優秀過ぎでしょ。ゲームばっかやってると思ったら、なんとも最近の若者は読みづらい。貧乳でゲーマー……なんともキャラが立ってる子だよなぁ。勿論普通乳ツンデレちゃんもキャラ立ってるけど、いかんせんテンプレ感が否めない。そこんところはサーシャも共通なので気を付けて貰いたい所だ。

気付いたら話が大幅脱線していた。そろそろ現実に戻るとしようか。

周りには兵士が八人。王とその護衛が遠くに。勇者パーティーはまだ動かない様子。こんなところか? サーシャお手製の結界があるとはいえ、時間を掛ければ脱出されるか……。


「速攻で蹴りを付ける!」


よし、めんどくさいからまずは目の前の敵を殲滅しよう。左の銃を乱射する。命中率がいくら低くても、流石に室内のこの距離ならば当てることは難しくない。


「ぎっ!」

「ぐあっ!」

「くっ、盾を構えろ!」


鎧を付けてるとはいえ、その衝撃は十分に大きい。当たり所が悪かったのか、早速二人ダウン。残りは盾を構えて銃弾に備える。うんうん、判断は悪くないね。

でも、良くもない。


「敵を視界から消すなよ」


廊下の壁を駆け上がり、三角飛び。一人の背後を取る。


「え……」

「遅ぇ」


剣の柄で首筋を打つ。これで三人目。


「くそっ!」


盾を構えたまま此方へ駆けてくる兵士。廊下の狭さを生かし、シールドバッシュを決める腹づもりなのだろう。

……面白い。真っ向から迎え撃ってやる。


「でやぁぁぁ!!」

「はぁっ!」


気合一喝。お互いの力が真っ正面からぶつかり合う。勝ったのはー


「う、嘘だろ……」

「悪いな」


ー俺だ。


「ぐっ!? バカ、な……」


盾の隙間に潜り込ませた銃口が火を吹く。これで四人目。


「よくも仲間を!」

「この野郎!」


二人一斉にかかってくる兵士。数で押せば力負けするとでも思っているのだろうか。

だとすれば、非常に認識が甘いと言わざるを得ない。


「「でぇぇぇぇい!」」

「ふっ!」


二人分のシールドを右腕と左腕、両方で押さえ込む。が、今回の敵はそこで終わらない。


「武器は使えまい」

「これでどうだ!」


振るわれる二つの凶刃。そのまま俺の体を切り裂く……ことにはならない。

何故なら、もう俺はそこにいないから。


「何っ!?」

「どうして!?」

「幻術だよ」


驚く二人に後ろから声を掛ける。即座に振り向くも、すでにその目に闘争心は無い。あるのは得体の知れない物に対する恐れのみだ。

ま、これでも勇者なんで。空間とかに作用する魔法は得意なのよ。


「んじゃ、ちょっくら眠っててくれや」


再び幻術で後ろへ忍び寄ると、そのままサーシャお手製眠りの粉を嗅がせる。良かったなお前ら、俺でも中々お手製の物は貰えないんだ。出血大サービスだぞ。

残りは二人だ。さあどうする?


「こいつ……一瞬で六人を……」

「守りだ! 守りに入れ!」


盾を構える兵士二人。やれやれ、またそれか?


「はぁ……それだけで俺を止められると本当に思ってんのか?」


兜の奥から兵士達を睨め付ける。


「うるさいぞ賊めが!」

「挑発には乗らん」


挑発? いいや事実だ。

剣を構えて力を込める。右腕から何かが流れ出る感覚。久々だなこの感じは。


「なっ!? 剣に魔力を纏わせているだと!?」

「くっ、魔力でバリアを……」

「甘ぇよ」


急いで魔力の防護壁を作ろうとしているみたいだがもう遅い。

ゾン!! と恐ろしい音を立てつつ剣を振るう。そのまま斬撃は彼らの目前へと迫りー


「『反動形成』!」


ーこちらの眼前、へ!?


「ぐっ!!」


出来るだけの回避はしたが、避けきれた訳ではない。俺の左腕を掠めていった斬撃は、そのまま結界へと激突する。

曲がりなりにも勇者の魔力を込めた一撃だ。ガラスが割れるような音を立てて結界が崩壊する。


「逃げてください! ここは俺達が引き受けます!」


そう言って俺の前に立ちはだかったのは、先程まで固まっていた勇者達。先程の攻撃は……能力名からしてあのツンデレちゃんだろうか。


「おお、助かりますぞ勇者様方!」


そう言い残すと足早に逃げていく王と護衛。


「あー……これは追うのは難しいかな?」

「これだけの狼藉……仮にも勇者として見過ごせない!」


おーおー、何とも頼もしいこって。俺の時とは大違いだね。

ま、問題はその意志をどれだけ貫き通せるか何だけど。


「まあ落ち着けって……そうカリカリすんなよ。牛乳飲め牛乳」

「戯れ言はいいわ。とっととお縄に付きなさい!」

「強敵イベント……負けイベ?」


ちょっと、仲間内で統率とれてないよ? 一人変なこと言ってるよ? 俺が言えたことじゃないけど。


「ま、でもこれも丁度いい機会か」


お前らがこの世界を背負うに相応しいか、ちょっくら見極めてやるよ。

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