Re:勇者召喚

初柴シュリ

第十二話

俺、富塚優也は幼馴染みの雅や親友の優芽、そしてこのロタリア王国の第二王女パルメニア=ロタリアと共に王城の謁見の間を出た。


「はあ……昨日まで普通の高校生だったはずなんだけどなぁ」

「あんたが普通かどうかは怪しいところだけど概ね同意ね」

「右に同じく」

「……本当に同意してるのかい?」


雅と優芽、二人からの辛辣な台詞。思わず涙が出てしまいそうだ。


「えっと……だ、大丈夫ですよユウヤさん! ユウヤさんなら魔王も倒せますって!」

「パルメニアさんの優しさが身に染みます……」


あんまりフォローになっていない彼女の言葉。寧ろ俺を追い詰める結果になっているのは気のせいでは無いだろう。


「というか俺の事なんて今はどうでも良いじゃないか! それよりも気になることがあるでしょ?」

「……? 何かあったっけ?」

「さっき飛び降りた人がいたじゃん!!」


憐れさっきの人、優芽の記憶には残らなかったみたいだ。まあ、普段から自らの記憶容量をゲームに全振りしているような奴だから仕方ないと言えば仕方ない。


「あのむ、むむむむ胸を触らせろとか言ってきた変態の事ね! 即刻死んでしまえば良いと思うわ!」


……約一名の記憶には強く刻み付けられたようだ。但し合った瞬間命の保証はされない模様。


「ていうかそもそも生きてるのか? あれだけ自信満々だったから問題は無いと思うんだけど……」

「私はてっきりユウヤさん達の知り合いかと……」

「あんなのと知り合いなんて冗談じゃ無いわ!」


パルメニアの言葉を即座に否定する雅。この分じゃ相当嫌われたみたいだな。まあセクハラというのもどうかと思うし……自業自得かな。


「そうなると不思議だよなぁ……ここの世界の人じゃないのに高いところから飛び降りても生きてるんだろう?」

「生死は確認出来ていませんが……少なくとも死体はありませんでしたし、血痕も確認出来なかったのでそう考えていいと思います」


パルメニアさんからの補足。


「そうなると、あいつは俺達と同じ地球出身の筈なのに無傷……」

「魔法でも使ったみたいだね」


優芽の言葉ももっともだ。実際、この世界には魔法があるらしいし、この世界出身なら簡単に説明は付いたんだが……。


「……ああもう! あんな変態の事なんてどうでも良いわよ! それよりこれからの予定を立てるべきじゃないの!?」

「雅、少し落ち着く」

「ならあんたがセクハラされてみなさいよ!」

「大丈夫。私、小足見てから昇龍余裕だから」

「また訳のわかんない例を出して!」


まあ優芽の謎発言は今に始まった事ではないからな。

でもそうか……雅の言うことも最もか。


「確かに、あいつの居場所を確認しようが無い以上、これ以上の議論は無駄か」

「優也……」

「むう、気になるのに」


キラキラとした視線を向けてくる雅と、不満げな顔をする優芽。


「そんな顔するなって。埋め合わせになんかしてやるから」

「……そんなら許す」


ふう、どうにか優芽の機嫌は取れたようだ。


「……むっすー」


……対称的に雅の機嫌は急降下したみたいだが。


「えーっと、雅さん?」

「ふん、なによ」

「もしかして怒ってらっしゃる?」

「いいえ怒っていませんとも。ええ、これっぽっちも」


怒ってるじゃん……。こうなったら伝家の宝刀を出すしかない!


「な、なにかは知らんがごめんって……今度買い物とか付き合ってやるから」


これが伝家の宝刀、『今度買い物に付き合う』だ。昔からこれを言えば雅の機嫌が治るんだよなぁ。なんでかは不明。


「っ!? そ、そう……ならいいわ」


ほら、上機嫌になった。まあ俺の休日一つでこうなるなら……うん、等価交換かな。


「話はまとまったみたいですね! では、これから行きたいところがあるのですが……」

「行きたい所?」


これまた唐突な……。


「ええ、お父様からの手紙を届けに参りませんと。その護衛の一部として着いてきて欲しいのです」

「俺達が役に立つのなら喜んで! 皆は?」

「……愚問ね。付いていくに決まってるじゃない」

「イベント消化は、超大事……」


うん、二人の許可も貰えたみたいだ。


「それじゃ姫様、何処に行くんだい?」

「はい、これから行くのは我が国の同盟国ー」



「ーマギルス皇国です」



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「よし! それじゃ捜索を再開するかぁ!」


日が登り始めた頃に起き、鍛練ついでに行動を開始する。この習慣は異世界に来てからの習慣であり、日本にいた頃はバリバリの夜型人間だった。

しかし、異世界では夜はあまり活動できない。一度町の外に出れば野生の生物や魔物が闊歩し、命の保証はされないからだ。そのため、朝早くから行動する癖を付ける必要があった。今では立派な朝型人間である。実家のおじいちゃんにも負ける気がしねぇぜ! まあご老体に鞭打って戦うような事はしないからあくまで気がするだけだけど。


「今日こそ見つかるといいなぁ」


たった二日で見つかるほど甘くは無いと思うけど……。俺は決意と不安を胸に森へと入っていった。



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「……やっぱりだめだ」


森に入って改めて気配を探ってみるが、野性動物以外本当に見つからない。これでは手がかりもへったくれも無いではないか。


「せめて、せめて人質がいれば……」


エルフが一人くらい捕まえておけば楽になったのに、と厄体もない事を考える。今更考えても仕方がないが。


「あれは……また狼か」


この前同様に野生の狼みたいだ……ん?


「あいつも首輪つけてる……!!」


ということは……俺が殺ったのは別の奴!? ペットじゃない!? 来た!これで勝つる! これで罪悪感に苛まれずにすむぜ!


「いやー、ほんとに助かったわ。」


主に俺の精神的に。

え、じゃあ別の誰かのペットなんじゃないかって? 細けぇこたぁいいんだよ! 知り合いのペットじゃないってだけ知れりゃ十分なんだよ!

……あとよく考えたらあいつがエルフのペットって保証も無いな。

……精神衛生上あいつがエルフのペットということにしときます。

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