Re:勇者召喚
第一話
 
「これで終わりだ、クソッタレ!!」
「ぬ、ぐわぁぁぁぁぁ!!??」
俺の放った剣閃が、魔王を縦一文字に切り裂いた。
俺の名は小鳥遊 彰。ひょんなことから異世界に召喚されちまった元平凡な高校生だ。
「私たちの世界を、お救い下さい!!」
なんて言われた時には異世界召喚されたということに狂喜乱舞したものだが、目の前に突き付けられたのは国土が魔王軍にほとんど侵略され、明日には国がなくなるかもしれないという事実。高校生の身に背負わせるには少々厳しい現実だろう。
それからは試練の日々が続いた。召喚時に貰ったチートとも呼べないチートを駆使してひとまず魔王軍を追い払ったり、パーティ内の連携がガタガタだったり、他国の勇者と鉢合わせしたり、etc、etc…。
強者との力の差に嫌になり、逃げだしたいことも数えきれないほどあった。
それでも仲間と歩み、人の強さに触れたから、俺はここまで来れたんだ。
ついに体を保てなくなった魔王が崩れ落ち、それでも俺へと怨嗟の言葉を投げかける。
「く、ははは…無駄なことを。我ら魔族を根絶やしにせぬ限り、魔王は何度でも現れるぞ? 貴様らごときが魔族を絶やすことなど不可能…ガフッ」
言いたいことだけ言って魔王は倒れこみ、虚空へと溶けていく。
「…テンプレ台詞どーも」
肩に剣を乗せながら溶けた魔王に向かって言う。その言葉が届くかは知らないが、言いたいことを言って奴は消えたのだ。こちらも捨て台詞を吐くぐらいは許されるだろう。
「終わった、のですか…」
「あー、きつかった…」
「まったく、辛すぎるのよ!!」
俺の元へ寄ってきたのはパーティーメンバーの三人。全員個性的過ぎて初めは統率が全くとれなかったのもいい思い出だ。
「ああ、これでやっと、戦争が終わる」
俺はみんなに感謝の笑顔を浮かべる。万感の思いを込めながら―
「ちょっと、え!? なんなのよ一体!?」
そんな空気をパーティーの一人、エルフのサーシャが打ち破る。
彼女の驚きの声につられて見てみれば、魔王の玉座。その横に置いてある紅の宝玉。
それが振動を始め、魔王の霧散した体が吸い込まれていく。
「全員構えろ!! 何かがくるぞ!!」
俺の指示で全員獲物を構える。
黒を取り込み、その色を血の色に染めた玉は振動を止める。そして、一瞬の静寂。
パキン、と軽い音を立てて紅玉が割れ、その中から何かが俺へ向かって飛び出す。
避けることも叶わず、胴体へ直撃。魔法陣が展開し、俺の周囲だけを結界が包み込む。
『アキラ!!』
三人が結界ごしに叫ぶ。各々が武器を構え、壊そうと結界に攻撃を加えるが、一向に壊れる様子はない。魔王の残滓はそれほどに強いと言うことだろうか。もはや残滓というよりかは怨念だが、強ち間違ってもいないだろう。
「クソッ、魔王の最後っ屁ってことか?」
魔法陣はいよいよ輝きを増す。どうやら結界の解除は間に合わないようだ。舌打ちをしながら俺は座り込む。
「さあ、鬼が出るか蛇が出るか…いずれにしても魔王に比べりゃかわいいもんか」
最後に俺はあいつらに笑みを浮かべる。せめて最後は笑って、って決めてたしな。
「じゃあな。おまえら。意外と楽しかったぜ」
そして魔法陣は一際輝き、視界がホワイトアウトするほどの紅い輝きが魔王の玉座の間を満たした。
―聖王歴1009年。勇者達の手により魔王討伐。ただし勇者は生存確認不可能。
====================
「お願いします。私たちの世界を、お救い下さい!!」
「…へ?」
小鳥遊彰。十九歳。
また勇者召喚されてしまったようです。
      
「これで終わりだ、クソッタレ!!」
「ぬ、ぐわぁぁぁぁぁ!!??」
俺の放った剣閃が、魔王を縦一文字に切り裂いた。
俺の名は小鳥遊 彰。ひょんなことから異世界に召喚されちまった元平凡な高校生だ。
「私たちの世界を、お救い下さい!!」
なんて言われた時には異世界召喚されたということに狂喜乱舞したものだが、目の前に突き付けられたのは国土が魔王軍にほとんど侵略され、明日には国がなくなるかもしれないという事実。高校生の身に背負わせるには少々厳しい現実だろう。
それからは試練の日々が続いた。召喚時に貰ったチートとも呼べないチートを駆使してひとまず魔王軍を追い払ったり、パーティ内の連携がガタガタだったり、他国の勇者と鉢合わせしたり、etc、etc…。
強者との力の差に嫌になり、逃げだしたいことも数えきれないほどあった。
それでも仲間と歩み、人の強さに触れたから、俺はここまで来れたんだ。
ついに体を保てなくなった魔王が崩れ落ち、それでも俺へと怨嗟の言葉を投げかける。
「く、ははは…無駄なことを。我ら魔族を根絶やしにせぬ限り、魔王は何度でも現れるぞ? 貴様らごときが魔族を絶やすことなど不可能…ガフッ」
言いたいことだけ言って魔王は倒れこみ、虚空へと溶けていく。
「…テンプレ台詞どーも」
肩に剣を乗せながら溶けた魔王に向かって言う。その言葉が届くかは知らないが、言いたいことを言って奴は消えたのだ。こちらも捨て台詞を吐くぐらいは許されるだろう。
「終わった、のですか…」
「あー、きつかった…」
「まったく、辛すぎるのよ!!」
俺の元へ寄ってきたのはパーティーメンバーの三人。全員個性的過ぎて初めは統率が全くとれなかったのもいい思い出だ。
「ああ、これでやっと、戦争が終わる」
俺はみんなに感謝の笑顔を浮かべる。万感の思いを込めながら―
「ちょっと、え!? なんなのよ一体!?」
そんな空気をパーティーの一人、エルフのサーシャが打ち破る。
彼女の驚きの声につられて見てみれば、魔王の玉座。その横に置いてある紅の宝玉。
それが振動を始め、魔王の霧散した体が吸い込まれていく。
「全員構えろ!! 何かがくるぞ!!」
俺の指示で全員獲物を構える。
黒を取り込み、その色を血の色に染めた玉は振動を止める。そして、一瞬の静寂。
パキン、と軽い音を立てて紅玉が割れ、その中から何かが俺へ向かって飛び出す。
避けることも叶わず、胴体へ直撃。魔法陣が展開し、俺の周囲だけを結界が包み込む。
『アキラ!!』
三人が結界ごしに叫ぶ。各々が武器を構え、壊そうと結界に攻撃を加えるが、一向に壊れる様子はない。魔王の残滓はそれほどに強いと言うことだろうか。もはや残滓というよりかは怨念だが、強ち間違ってもいないだろう。
「クソッ、魔王の最後っ屁ってことか?」
魔法陣はいよいよ輝きを増す。どうやら結界の解除は間に合わないようだ。舌打ちをしながら俺は座り込む。
「さあ、鬼が出るか蛇が出るか…いずれにしても魔王に比べりゃかわいいもんか」
最後に俺はあいつらに笑みを浮かべる。せめて最後は笑って、って決めてたしな。
「じゃあな。おまえら。意外と楽しかったぜ」
そして魔法陣は一際輝き、視界がホワイトアウトするほどの紅い輝きが魔王の玉座の間を満たした。
―聖王歴1009年。勇者達の手により魔王討伐。ただし勇者は生存確認不可能。
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「お願いします。私たちの世界を、お救い下さい!!」
「…へ?」
小鳥遊彰。十九歳。
また勇者召喚されてしまったようです。
      
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