Re:勇者召喚

初柴シュリ

第七話

「さーて、それじゃあエルフの里への旅の始まりだ!!」


城門を抜け、意気揚々と街の外へ繰り出す。


「エルフの里ってどの辺にあるんだ?」

「マギルス皇国の南西にある『嘆きの森』ってとこ。ロタリア王国の大体北あたりにあるの。徒歩で一週間位の所」


ちなみに彼女には自己紹介こそしたが、俺が召喚された勇者、ましてや四百年前の英雄ということは話していない。話しても混乱させるだけだし、まだ他人に伝えるべき情報では無いからな。

しかしマギルス皇国か。知らない間に別の国が出来ているな。四百年も経っているのだから当たり前の事ではあるのだが。むしろ良くロタリア王国が続いているものである。


「マギルス皇国ってどんなところだ?」

「あんまりエルフとは仲良くないの。サーシャ様も結構怒ってたの」

「サーシャを怒らせたのか。もう衰退の一途を辿るだけじゃないかその国」

「まるでサーシャ様が国を滅ぼすみたいな言い方なの。否定はしないけど」


あいつがキレればそんぐらいは出来ると確信している。怒りをダイレクトに受け止めてきた俺が言うんだから間違いない。一体何度あいつの弓矢に貫かれたことか……まあセクハラした俺が悪いんだけど。止めるつもりもないけどな!!


「それよりサーシャ様の事を呼び捨てにしない方がいいの。ついもいじゃうの」

「何をもぐんだ……いや言わなくていい止めろ」


獄炎のオーラを放ちながら拳を鳴らすエーロ。こいつ本当に何で奴隷になったんだ。そんなタマじゃ無いだろうに。


「しっかし北方面かぁ……ここ何門だったっけ?」


とりあえず適当に門を出たので現在地が把握出来ない。北に進もうにも北がわからん。


「ちょっと門番に現在地聞いてくるわ」

「ん。待ってるの」


そう言って先程の門まで戻り、門番に質問する。


「ん? ここは南門だぞ」


……。

お礼を言ってから門から離れ、エーロの元まで戻る。


「どうしたの?」

「……逆方向だった」


一気に出鼻が挫かれる。やる気が八割以上削れた。くそう、早くエルフの里に行きたいのに……そして美少女をたっぷりと視姦して……うへへ。


「何いやらしい顔をしてるの? やっぱりタカナシは変態だったの」

「し、してねぇよ!!」


慌てて伸びきった鼻を直す。変態は認めるけど。でも忘れちゃ駄目だよ。変態レベルはどっこいどっこいだからな?

幼女の眼前で妄想という端から見れば通報モノの所業を一端止める。こんなところでエロいこと考えても仕方ない。


「エーロ。ゆっくりたっぷりのんびりコースと超高速里帰りコース、どっちがいい?」

「いやな予感がするから前者なの」

「よし後者だな。俺に捕まれ」

「話を聞け、なの」


エーロの意見を一蹴し、無理やり肩に捕まらせる。いつもの変態思考だったら無理矢理という行為に多少なりとも興奮していただろうが、流石にロリには興奮しない。というかするような奴だったら地球時代に既にお縄である。


「いくぞ、空間移動ワープ!!」


一日三回しか使えない取っておきの魔法を唱える。目指すはロタリア王国の大体北辺り。

俺達の眼前の景色が一瞬にしてかき消え、次の瞬間には目の前の光景は森の中に。


「んー……ここはどこだ?」

「うぇぇぇ……」


横ではエーロが吐き気を催し、顔色が青くなっている。やべ、跳躍酔いのこと気にするの忘れてた。

跳躍酔いとは、ワープを初めて経験する物なら誰でも起こる事であり、空間魔法使用者なら誰でも抱きうるトラウマである。ソースは俺。

急な環境の変化に体が付いていかないというよくある理由なのだが、とにかく気持ち悪さが尋常じゃないのだ。具体的に言えば休日に遊園地に行くとき、車内でアクションゲームとレースゲームをした後、コーヒーカップを全力で回し、その後ジェットコースターに三回乗ったような気分と言えば伝わるだろうか。これで吐かない方が可笑しい。

かくいう俺も、昼飯の後に実験して痛い目に遭った。仲間の剣士が笑っていたので、捕まえてワープを発動させた所、二人仲良くダウンしたのは良い思い出だ。あそこで姫様とサーシャが助けてくれなければ自分の吐瀉物に溺れる所だった。因みに剣士は溺れた。ざまぁ。


「だ、大丈夫か?」

「これが、大丈夫に見えるなら、一度サーシャ様の弓を受けた方がいい、の……」

「そんだけ言えるなら大丈夫か」


何だかんだで逞しい奴である。


「あ、やっぱ無理……おえええ」

「あー、無理すんな」


木の根本にオロロロと吐いてしまうエーロ。気持ちは分かるので背中を擦りながら励ます。


「変態に元気付けられるなんて屈辱……なの」

「やっぱ元気じゃねぇか」


本当に可愛くない奴である。


「侵入者がこっちに?」

「ああ、結界に反応があった。サーシャ様特性の結界だ。間違いない」


そこにガサガサと誰かの話し声が。会話から察するにエルフか……どうやらビンゴのようだ。ここはエルフの里、というか嘆きの森とやらに違いない。

よし、そうと決まれば早速保護して貰いに……

はたとそこで気付く。今の状況を見られたらどう思う?

横には青い顔のロリエルフ。

地面には吐いた跡。

しかもエルフの首には奴隷の首輪。

ここから導き出される答えは一つ。


(ぜってぇ俺が悪人になる……!!)


せめてこいつの体調が良くなる迄は待機するべきだ。


「……アキラ、何してるの?」

「し、シーッ!!」


今バレたら不味いんだって!!


「ん? こっちから声がしたような……」

「本当か? 行ってみるか」


やべぇ気付かれた……


「と、とりあえずこっちこい!!」

「むぐっ」


エーロの口を押さえて木の裏へ隠れる。


「こっちか……?」

「いないな……」

(たのむ、あっちへ行け……!!)


心の中で必死に祈る。


(むぐぐ……)


俺の上で窮屈そうにエーロが身を捩る。そこで俺は気づいてしまう。

俺の息子の上にエーロの臀部が乗っている事に……!!


(やばい、これは別の意味でやばい!!)


まだロリとはいえ、いや、ロリだからこそ彼女のお尻は抜群の柔らかさを誇っている。彼女が身を捩る度に愚息が硬度を増してくるのも仕方のない事だ。ロリの軽い体重も息子にちょうど良い刺激を与えてくる。


(んっ……ふっ……)


耳元で聞こえる艶かしい声も問題である。童貞の妄想をこれ以上に掻き立てる物も少ないだろう。それに加えて、押さえた手のひらにはぷるぷるの唇の感触がダイレクトに伝わってくる。

『ロリでは興奮しない』。そんな考え方が根本から覆されようとしていた。ロリも十分に女であると、触覚から、聴覚から、そして何より息子からダイレクトに訴えかけられている。

まずい、このままでは目覚めてしまう。俺の息子も覚醒してしまう。頼む、早く行ってくれ!!


「うーん、やっぱりいねぇな。聞き間違いか?」

「大方、獣だったんだろう」


よし、やっといってくれるか……


(ちょっと、もう、無理……)

(え?)

(吐く)


股の上のエーロがそう訴えかけてくる。その顔はもう限界といった様子である。


(ま、待って!! もうちょっと耐えて……)

(……アウト)


そしてついにエーロはやってしまった。

彼女の胃液は俺の服と手のひらと地面を汚し、びちゃびちゃと水音を立てる。


「おい、こっちから呻き声が聞こえたぞ!!」

「ああ、俺も聞こえた。すぐ行くぞ!!」


正義感溢れるエルフの青年二人には完全に居場所がバレてしまった。もうちょっと職務に適当でいいよ。ていうかもうその仕事止めちゃえよ。ニートになれニート。

吐瀉物の匂いに包まれながら現実逃避をする俺。

拝啓地球の両親へ。

俺、前科ついちゃいそうですー。

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