オレハ、スマホヲテニイレタ

舘伝斗

1-7 オレハ、シュンコロシタ

「どうか僕と妹を助けてくださいっ!」

  そんな言葉と共にいきなり土下座を決めた少年。
  よく見るとその頭にはちょこんとイヌミミが乗っていた。

  イヌミミ年下少年か。
  俺にそんな気はないはずだが中々どうして、これはクるものがあるな。
  ショタがお姉さんたちに人気が出るわけだぜ。

  だが騙されるな。
  俺はさっきこの少年にナイフを突きつけられたところじゃないか。
  綺麗なバラには棘がある、じゃないが可愛いショタには秘密があるに違いない。

「私は助けても良いが、ユウトはどうだ?」

  なん、だとっ!?

  ヴィエラさんの言葉に俺の心は葛藤を始める。
  ここで俺が何やかんやと文句をつけるとヴィエラさんに器の小さい男だと思われる。
  ということは・・・



「ユウト、お前は私の予知を越えて器が小さいようだな。器の小さい男はアレも小さいと相場が決まっている。私は小さい男とは寝所を共にしない主義なんだ。ユウトの小さい息子は一生右手をパートナーにしてるんだな。」

  ヴィエラさんの冷たい言葉。
  そしてうずくまる俺を見下す冷ややかな瞳。

「違うんですっ!待ってくださいヴィエラさん、これは貴女のためというか。とにかく待ってください!俺の息子は決して小さくないですから!
 ヴィエラさぁーーん!!」



 ヒュバッ

「がぼっ、びべばばぁん!ごばっ、ごほっごほっ。クラト、止めてそれ。」

  俺の妄想はクラトによって中断される。

「全く、で?こいつを助けるのか?」

  妄想から引き戻され目に飛び込んできたのは優しそうな表情のヴィエラさん。
  さっきの見下したような目じゃない。

「ヴィエラさん、その前に。小さい男でも大丈夫ですか?」

「何訳の分からんことを言ってるんだ。小さいも大きいも今関係ないだろうが。」

「いいえ!超大事です。ヴィエラさんは小さい男と寝所を共にしますか?」

「はぁっ!?寝所?」

 こくっ

  イヌミミ少年を放ったらかしにして俺はかなり深刻な顔でバカなことを尋ねる。

「ふむ、器の・・小さい男とは寝所を共にするのは抵抗があるな。」

「そうですか・・・やっぱりアレ・・の小さい男とは寝所を共にできないですよね。」

「ま、まぁ今のところ私はユウト以外と寝所を共にする気はないなっ!」

「っ!」

  私はユウト以外と寝所を共にする気はないなっ!
  ユウト以外と寝所を共にする気はない。
  ユウト以外とする気はない。

  がばっと音が鳴りそうな程の勢いで首を上げるとヴィエラさんは少し頬を赤くしてそっぽを向いていた。

「うぉぉぉおお!俺は、俺は何て幸せなんだ!もう、死んでも後悔はないっ!少年よ!俺たちに任せなさい!相手が髭面であれ、何であれ華麗に妹共々助けてやろう!」

  きまった!

  俺はヴィエラさんの言葉に一気にテンションが上がる。
  そして、優雅に、それでいて力強くイヌミミ少年に向けて救いの手を差しのべる。

  これでこの少年も俺に憧れの視線を・・・

「あの、お兄さん。スライムの体液まみれで汚いので、手を差しのべるなら取り敢えず拭いてもらっても良いですか?」

  ・・・この少年は中々毒舌なようだ。





 ゴオォッ

  手を差しのべた形で固まっていると髭面が逃げたであろう方角、林の奥から物凄い威圧感が吹き荒れる。

「っ、何だ!この魔力は。まさか、魔王か!?いや、でもまだ復活には時間が・・・まずこの辺りに魔王なんて・・・」

「あの方角にはニアが!」

  ヴィエラさんもイヌミミ少年も言葉は発するが額に大量の脂汗を浮かべていて動こうとしない。

  というかヴィエラさん、もしかして今魔王って言いませんでした?
  まさかこんな序盤で魔王と遭遇しちゃいます?
  俺なんかどんなゲームでも壊れないと有名な最強の初期装備、布の服+安いナイフなんですけど。

「ヴィエラさん、大丈夫ですか?今魔王とか言ってましたけど、逃げますよね?」

  俺は普通に歩いて・・・・・・ヴィエラさんの前に回り込み顔を覗き込む。

「ユウトっ!?何でこの濃密な魔力の中動ける・・・そうか。さっき垣間見た魔力の質は私の知る中では最高だった。なら抵抗力もそれなりにあるのは必然か。」


 ピコンッ

 「ぼくもだいじょうぶー。」

  クラトも俺の肩の上で体の一部を人の腕に変形させて力こぶを作って見せる。

  ってキモっ!
  俺の目の前ではもうしないでね。

  俺とクラトの様子を見てヴィエラさんの表情は少し和らぐ。

「ユウト、クラト。何故かは分からないが、これは恐らく魔王の仕業だ。しかもタイミングから見て正体はあの髭面。逃げることは不可能に近い。助かるには、お前に頑張ってもらう。」



  ヴィエラさんの言葉に俺は生唾を飲み込むのだった。





 ・・ゴォン

 ズガァン

 ズゴゴゴ

 ズゥゥン

  それから数分。
  この魔力の原因、魔王ヒゲヅラは林の奥から木々を薙ぎ倒しながら真っ直ぐこちらに近づいてくる。
  髭面の姿はすでに人のそれではなく、伸び放題だった髭や髪の毛はメデューサの髪の如く蛇、のような形をした先太りの触手。
  剥き出しであった腕の筋肉は更に膨らみ、倍以上になっており、身長も三倍近くなっている。
  皮膚の色は全体的に黒ずんでおり所々、極太の血管が脈を打っていた。

  その姿はまるでお伽噺に出てくる巨人だ。
  誰も元が人間だとは思わないだろう。

  その日、俺達は思い出した。
  巨人に支配されていた恐怖を!

「・・・頼むぞ。」

「ガチガチガチガチ。」

「・・・・・。」

  魔王ヒゲヅラの姿が近づくにつれ強まる魔力に、ヴィエラさんは体は動かないが心は負けないとばかりに睨み返し、イヌミミ少年は離れていても音が聞こえるくらいに歯を鳴らし、俺は取り敢えず立っていた。

  だってヴィエラさんとイヌミミ少年が言うほど魔王ヒゲヅラから恐怖を感じないんだもの。
  これもクソ神特製ボデーのお陰かね。

「ぼぁぁああ!おでのものになれ!おんなはぜんぶおでのものだぁぁぁぁ!」

  魔王ヒゲヅラは視界に俺たち、いや、多分視線的にヴィエラさんのみを捉えると地鳴りのような声で叫ぶ。

「ぼぁぁぁああ!」

  魔王ヒゲヅラと俺たちとの距離が十メートルを切ると、魔王ヒゲヅラはこれまでのようなゆっくりとした移動を止め、手に持つ既にその小指ほどの大きさとなった大斧を振り回しながら走り出す。

 ドスンッドスンッ

  あと五メートル。

 ドスンッドスンッ

  三メートル。

「今だっ!クラト!」

  俺の合図で林の間にいくつにも分裂していたクラトたちが一斉に魔王ヒゲヅラに向けて飛びかかる。

 ビトッビトトトトッ

「ぼぁぁぁああ!」

  クラトは魔王ヒゲヅラの体に付着するとその表面を徐々に覆っていく。

「ぼぁぁあ!おでは、おではぁぁあ!」

  魔王ヒゲヅラの断末魔を聞きつつクラトは完全に魔王ヒゲヅラをその体内に閉じ込める。

「スライムであるクラトならいけるだろうと思ったが、まさか本当にこんなあっさりと魔王を倒してしまうとは・・・」

  ヴィエラさんは自分で立案した作戦にも関わらず目の前で起こったことを簡単には飲み込めない様子だ。

「・・・・・・・・。」

  イヌミミ少年に関しては口を大きく開けて固まっている。
  下半身が濡れていることは見て見ぬ振りをするというのが大人というものだろう。

  ヴィエラさんの作戦は単純明快。
  俺たち三人が囮になり、スライムの固有能力"補食"で魔王ヒゲヅラに奇襲をかける。
  運が良ければそのまま補食。
  奇襲がバレてもクラトが時間を稼いでいる間に俺たち三人は逃げる。
  そういう作戦だった。
  結果はヴィエラさんの予想通りいや、予想を遥かに越えた快勝。

  ん?
  もし失敗していたらクラトを囮にするのは可哀想?
  いやいや、クラト、というかスライムは物理的な耐性が限界突破していて魔王ヒゲヅラにはクラトを殺しきることができないと考えての作戦だよ?
  考えてもみて欲しい。
  流動体のスライムにどうやって打撃ダメージを与えられるというのだろうか。
  マナスでもスライムは火魔法で燃やすしか倒す手はないと言わしめるレベルなんだぞ?
  まぁ蝋燭程度の火で燃え尽きるからマナス最弱の魔物って言われているけど。

  決してクラトが顔面ホールドを多用する仕返しとかではないと理解していただこう。


  だが魔王ヒゲヅラを補食した後、一つの重大な問題が発生した。

  クラトのサイズが魔王ヒゲヅラのサイズ・・・・・・・・・・になってしまったということだ。
  これは由々しき事態だ。
  何故かって?
  クラトの定位置は俺の首なんだぞ?
  こんな体長三メートルを越える巨体が首に巻き付いてみろ。
  脛椎脱臼どころか首チョンパだぜ?
  どうしたものか・・・

「それならクラトに分裂してもらえば良いだろう?」

  そこに響いた女神のいや、ヴィエラさんの鶴の一声。

「分裂 、ですか?」

「あぁ。待ち伏せの時にもしてただろう?クラトにこれまでのサイズに分裂してもらって残りはこの辺の魔物を適当に狩っていてもらえばいい。そうしたらクラトはどんどん強くなるぞ?」

「あれ?この世界ってレベルって言う概念があったんですか?」

「レベル・・・あぁ、ユウトが未来に言っていたな・・・・・・・・・。確か強さの指標、だったか。この世界にレベルと言う概念は存在しない。だから生まれてから同じ魔物を同じ数だけ狩った二人の強さが同じになることはない。才能がある奴は初戦闘でドラゴンも狩るし、逆に才能がない奴は何年経ってもガブリン一匹狩ることがやっとの強さだ。
 だがスライムに関して言えば魔物を多く狩った方が強い個体になる。"消化"があるからな。」

「消化・・・名前からして補食したものを自分の血肉に出来ると?」

「そうだ。スライムがガブリンを何度も補食すれば四足歩行の移動が可能になったり、ガブリンに擬態して更に強い魔物を狩ることも出来る。」

「・・・あれ?何か嫌な予感。クラトって今確か・・・。」

  俺はヴィエラさんに補食と消化について聞き、クラトを見る。

「魔王を補食したな。」

「ってことはやっぱり・・・」

「間違いなく過去最強のスライムになったはずだ。」

「デスヨネー。」

  俺はその事実に頭を抱える。

  ちょっと待て。
  クソ神特製の体を持つ俺が強くなるのはまだいい。
  でも最弱のスライムであるはずのクラトまで強くなったら確実に邪神に目を付けられるんじゃないか?
  俺はマナスで邪神のことは気にせず思う存分ケモミミをモフりたいだけなのに何でこう次から次へと邪神へ近づく階段をかけ上がってるんだよ!

  ヤバい。
  何がヤバいってこれ以上クラトに強くなられるのは困る。
  さて、どうしたものか・・・。



  ・・・いや、待てよ?
  クラトは既に魔王を吸収したんだよな?
  で、ヴィエラさんの反応からして魔王はゲームの世界みたいに一体じゃない。
  ならクラトに魔王狩りをしてもらって寧ろどんどん強くなってもらうのはどうだ?
  魔王も流石に三桁は居ないだろうけど十も補食すれば封印されて力の弱まっている邪神くらいなら余裕で勝てるんじゃないだろうか。

 ・・・
 ・・・・・
 ・・・・・・・
 ・・・・・・・・・これだっ!  

  いいぞ!
  俺がマナスで思う存分ケモミミをモフる道が開けた!

「クラト!命令だ。首巻きサイズは俺と一緒に。残りは世界に分散して強くなりつつ魔物と魔王、それと盗賊を片っ端から補食しろ!間違っても罪のない人間は守るべき対象として襲うなよ?いいな、目標は首巻きサイズで単身、真正面から魔王に勝てる強さだ。」


 ピコンッ

 「まかせてっ!ごしゅじんさまのためにどんどんつよくなるね!」

 ウゾゾゾゾッ

  クラトはそう言うと三メートルもある巨体から元の首巻きサイズ、二十センチほどのスライムとなり俺に向けて飛んでくる。

 だきっ

  俺は小さいクラトを受け止めると、少し縮んだ、ように見える残りのクラトは林の奥へと消えていった。

「ははは、スライムが魔王を倒した・・・。これは夢だ。そうに違いない。魔王を倒すスライムなんて、勇者ですら倒せないじゃないか。はは、ニア、早くお兄ちゃんを起こしてくれ。はは。」

  おっと、イヌミミ少年のことを忘れてたな。
  何か目の前で起きた現実を受け入れられずに壊れ気味だが、はて?悪いものでも食べたかな?

「悪いクラト、イヌミミ少年は任せた。」


 ピコンッ

 「まかせてー。」

 ヒュバッ

「ガボガボガボッ、ぷはっ!ごほっごほっ、何するんだ!」

  壊れていたイヌミミ少年にクラトの顔面ホールドが炸裂するとようやくイヌミミ少年は正気に戻る。

  顔面ホールド、最強かっ!

「何するんだ、じゃねぇよ。妹を助けにいくんだろ?手を貸してやるから早く案内しろよ。」

「っ!た、助けてくれるのか!」

「そういってるだろ?まぁもう盗賊もいないから俺たちの助けはいらないかもしれないけど、子供だけじゃなにかと不便だろ?」

「ぐすっ、ありがとう。」

  ようやく現実を受け入れられたイヌミミ少年はポカンとした後に膝から崩れ落ち泣き始める。
  その様子を見てヴィエラさんはうんうんと頷くだけで動こうとしない。
  あー、ヴィエラさんも子供をあやしたことないんですね。
  はいはい、俺やりますよっと。

「あぁ、もう。泣くな泣くな。俺は子供あやすとか経験したことないんだよ。それより早く妹、迎えにいこうぜ。」

「う、うん。ぐすっ。こっちだよ。」

  時々しゃくり上げるイヌミミ少年の先導の下、林の奥、人の立ち寄った形跡が無いほどの奥地にその小屋はあった。
  小屋の前にはいくつもの酒瓶や焚き火のあとがある。

「ニア!助けに来たぞ!」

  イヌミミ少年は小屋を見つけるや否や駆け出す。

  俺とヴィエラさんもイヌミミ少年に続き小屋に入るとそこにはイヌミミ少年と抱き合う片足を鎖で小屋の家具と繋がれた猫耳の少女がいた。

  ネコミミ幼女、だとっ!ぐふっ。
  マナスめ、中々やるじゃないか。

「お兄ちゃん、この人たちは誰だにゃ?」

  にゃ?、だとっ!?ごはっ。
  こいつ、語尾ににゃを付けるなんて、どれだけ俺のストライクゾーンを抉るんだ!

「あぁ、この人たちは僕たちを助けてくれた人だ。えぇーと、」

「私はヴィエラだ。こっちの・・・変な顔をしている男がユウト。ユウトの首に巻き付いてるのがユウトの従魔のクラトだ。」

「でゅふふっ。
 はっ、んん、ごほん。ネクラユウトだ。ユウトって呼んで構わない。で、これが俺の従魔。スライムのクラトだ。」


 ピコンッ

 「よろしくねー。」

  クラトは首巻きの形から小さい手を伸ばし握手をする。

「わっ、すごいにゃ!このくびゃっ、舌噛んだにゃ・・・」

  ネコミミ幼女は首巻きと言おうとして舌を噛み、涙目になる。

  げぼらっ!
  ネコミミ、幼女、語尾ににゃ、それにドジッ娘だとっ!
  くっ、マナスのネコミミは化け物かっ!

  俺がそんなネコミミ幼女を見てはぁはぁしていると即座にイヌミミ少年が俺とネコミミ幼女の間に割り込むようにして入ってくる。

「僕の名前はウル。妹の名前はニア。兄ちゃんたちには感謝してるけど妹に変なことしたら許さないからなっ!」

  ガルルっと今にも飛びかかってきそうなほどイヌミミ少年、ウルは俺を警戒している。

 バシッ

「てっ!」

「こらっ、お兄ちゃんダメだにゃ。命の恩人さんたちになんて態度とるのにゃ。」

  そんなウルの頭をネコミミ幼女、ニアが叩く。

「で、でもニア、兄ちゃんが、」

「むぅーー。」

「ご、ごめんなさい。」

「わかればいいにゃ。」

  ふむ、兄妹の力関係は分かりやすいほど妹の方が強いみたいだな。
  可愛いは正義だよねっ!

「さて、兄妹再開してすぐで申し訳ないが君たちはこれからどうするんだ?まさか二人で生きていけるとは思っていないんだろう?」

「うん。でもちょうどこんないい住みかが出来たんだ。僕たち二人でも、」

「ニアたちも連れていって欲しいにゃ!」

「ニア!?」

「お兄ちゃん、確かにこの人たちにこれ以上迷惑かけたくない気持ちは分かるにゃ。でもここで二人で暮らすのはちょっと無理にゃ。」

「なんでだよっ!」

「水がないにゃ。」

  兄貴に注がれる妹の容赦ない正論。
  そうだよね。
  生活には水が必須だけど、ここは林の奥地すぎて近くに水場がないもんね。
  ニアちゃん、君のことを侮ってたよ。
  しっかり周りを見てるなんて、流石だよ。
  ネコミミ、幼女、語尾ににゃ、ドジっ娘、しっかり者。
  属性がどんどん増えるね。

「そ、それくらい僕も分かってたよ。ヴィエラさん、ユウトさん、僕たち二人も連れていってくれませんか?足手まといだと言うなら責めて近くの町までても!」

「荷物持ちでも何でもするにゃ。この小屋に残るのは嫌にゃ。」

「ふむ、どうするユウト?」

「何で俺に聞くんですか。」

「いや何、器の大きいところを見せたいんじゃないかと思ってな。」

「どこまででもついてきなさい!お兄さんたちに任せておけば苦労はさせないさ!」

「っ!兄ちゃん。」

「ありがとうにゃ!ヴィエラお姉ちゃん、ユウトお兄ちゃん!」

  お兄ちゃん、だとっ!
  ネコミミ、幼女、語尾ににゃ、ドジっ娘、しっかり者、妹。
  だめだっ。

 ブハッ

「にゃにゃっ!」

「兄ちゃんっ!?」

「はぁ、やれやれ。」


 ピコンッ

 「ゆかがよごれないように、ちはうけとめるよっ!」

  俺は心地よい脱力感の中、鼻から大量の愛を吹き出しながら意識を闇へと沈めていった。

「本当に大丈夫なのかな?」

  ウルの台詞は聞かなかったことにしよう・・・










 -まさか我の力を僅ではあるが与えた魔王を瞬殺するとは。
  それにあの魔力。
  やはり奴の尖兵がこの世界に紛れ込んでいるようだな。

  ちょうどいい。
  これから帝国・・で行われる勇者召喚。
  少し力を貸してやるか。
  ふっふっふっ、人類は勇者召喚で魔王・・が生まれるとどんな反応を見せるのであろうな。
  序でに五星魔ペンタプルも目覚めさせるとするか。

  我の復活まで絶望に染まってくれるなよ。-





 第1章-完-

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