オレハ、スマホヲテニイレタ
1-3 オレハ、タイシニエラバレタ
「ん、うんっ。
やめろクソ猿がぁ!はっ!ここは?」
 目を開けるとそこは見覚えの無い、薄暗い部屋だった。
「はぁ、はぁ。まさかムキムキの猿にお姫様抱っこされる夢を見るとか。悪夢でしかないな。どうせならボン、キュッ、ボンのバニーガールに抱っこされたいぜ。取り敢えずこの部屋から出るか。クラトー。クラト?あいつどこ行った?」
 俺はひとつ身震いをしたあと首元に居るはずのスライムを探すため部屋を出る。
ガチャ
「おぉーい、クラトー?っ!」
 寝室から出た俺を迎えたのは、
 奴だった。
「ウキーッ。」
「クソ猿!?くそっ、ここはお前の寝床か!はっ、お前、もしかして俺が寝てる間に俺の初めてを奪ったりしてねぇだろうな!俺の処女はドSなおねぇさん以外にやるわけにはいかねぇんだよ!」
 そういって俺が猿と睨み合っていると、(睨んでるのは悠斗だけ。)部屋の隅に動くものを見つける。
「メェーー。」
「くっ!やっぱりお前も居たのか。ピンク羊!クラトもお前たちが始末したのか?くそっ、2対1じゃ分が悪い。いいかっ!これは決して逃亡じゃない!戦略的撤退だ!」
パリィン
 俺はそういうとファンシーシープが居る壁とは逆側の壁にある窓から身を投げ出す。
ガシッ
「ぐえっ!」
 そして遅い来る衝撃に身を固めていると何かに襟元が引っ掛かり空中で停止する。
「くっ、なんだ!?奴の罠か!くそっ、巧妙なクソ猿め!」
「全く、分かってはいたがとんでもなく面倒な奴だな。」
 俺が喚いていると頭の上から、いや、正確に言うと俺の襟首を掴んでいる人物から声が降ってくる。
「女!?」
 俺はその声にようやく自分は女性に持ち上げられていることに気づき恐る恐る顔をあげる。瞬間、
 ・・・・・世界が変わった。
 俺を持ち上げる腕は女性特有の力を入れれば折れてしまいそうなほっそりとした腕だった。
 腕から肩、首へと視線をあげる。
 その女性は白衣に身を包んでおり、その下には大きな胸を惜しげもなく晒すかの様な大きく開けた衣装を纏っていた。
 絵に書いたかの様な完璧なスタイル。
 だが、俺は騙されない。
 これまでAVでスタイル抜群と言う言葉に何度騙されたことか。
 大事なのはそのスタイルに負けない顔!
 確かにスタイル抜群ならそれだけで良い!
 だが、やはりいくらスタイルが良くても、いや、スタイルが良いからこそ顔もハイレベルを求めてしまうと言うのが男の性だ!
 女性慣れしていない俺は、それこそ壊れたブリキ人形のようにゆっくりと女性の顔を見上げる。
 そこには女神がいた。
 ほっそりとした顎、薄い唇にスラッとした鼻筋。
 切れ長の黒と赤のオッドアイに整った眉。
 胸元まである長い艶のある金髪。
 そしてなによりものすごい存在感を放つ頭のウサミミ!
 そのまさに理想的な姿に俺は思わず、
「あgぇはとてfこふg!」
 テンパった。
 それはもう何をしゃべっているのか自分でもわからないほどテンパった。
 それを見て女性は、フフッと笑う。
「待っていたぞ、ネクラユウト。落ち着け、と言っても無理な話だろうからせめて小屋に戻ってくれ。」
 そういって女性は俺を優しく下ろすと小屋へと歩いていってしまう。
 その女性の甘い残り香に誘われるかのように俺はフラフラとした足取りで一度は撤退を決意した小屋の中へと戻っていく。
 小屋へ戻ると、せっせと飛び散った窓の破片を掃除しているクソ猿、椅子に座った先程の女性、その足元で横になっているピンク羊、そして何より女性に抱き抱えられているクラトの姿があった。
「クラト!?なんて羨ましいことを!」
 クラトを見て思わず俺の口から心の声が漏れる。
 するとクラトを撫でていた女性の手が止まり、手招きするように動く。
「ん?ネクラユウトもしてやろうか?」
「あげdぇらbsふぇっ!」
「ふふっ、何を言っているのかは分からないが何を言いたいかは解る。遠慮しないでもネクラユウト、君は私の未来の・・・いや、これは黙っておこう。」
 女性の言葉から感じられる優しさにどうも顔の熱さが抜けず見つめられるだけで逃げ出したい気持ちに刈られる。
 これが恋!?
 ・・・おい、誰だ!童貞くせぇーって思った奴、出てこい!
「あああああ、あの、な、なななぜ貴女たたは、おおおお俺のののの、なななめぇをを?」
 そんな気持ちを隠しながら俺はポーカーフェイスで疑問を口にする。
 あ?何言ってるか分からない?そんなわけ無いだろうが!
「名前か?さぁ、何でだろうな?私は何でも知ってるぞ?君の事ならな。」
 ほら、女性に伝わったと言うことはきっちりポーカーフェイスで話せたと言うことさ。
 女性の相手はこうでないとね。
 女性はそう言ってウィンクをしてくる。
「らtまこふjoむぢwが!」
バタンッ
 ウィンクの威力に負けた俺はそう言ってさっきまで俺が寝ていた寝室へ飛び込みドアを閉める。
「ふぅ、ふぅ、おおおお落ち着け。あのウサミミ美人はどういうわけか俺を誘っている。ここでガッついたら童貞だと笑われるだろう。ここはクールに。頭はクールに、心はヒートに。だ!」
ピコンッ
 「俺が精神を落ち着けているとスマホが鳴る。」
「ん?クラトか?」
 俺がこの世界に来てすでに聞きなれた通知音だ。
 ごしゅじんさま、ヴィエラさんがそのままでいいから、これからのことをせつめいしたいっていってるよ?
 クラトからのメッセージでようやく肝心なことを思い出す。
ヴィエラさんっていうのか。そうかー。あれが4Kの美しさか!
これからのことってなんだろう?あれか?
さっきヴィエラさんが言ってた俺がヴィエラさんの未来のーって言葉に関係してるのかな?
もしかして貴女は未来の私の旦那様なんです!みたいな!?
やっべ、どうしよう。旦那さんってことはヴィエラさんと同じ布団で寝ても良いんだよね?
その時すこーし手が滑ったりして体に当たったりしても笑顔で?
手以外が滑っても!?
じゃあ・・・
 ハズもなく一人トリップしていた。
ピコンッ、ピコンッ、ピコンッ
「あー、もう!人がせっかく良い未来を思い浮かべているのに!」
 鳴り止まない通知音に我に返った俺はスマホを開く。
「おぉう、通知100越えてるし。いつのまに。」
「ヴィエラさん、クラト、ごめんなさい。気を取り直したから話をしましょうか。」
 クラトからの100件に及ぶメッセージを読む気力がなかったので俺は扉越しに声をあげる。
 何で扉越しかって?
 そんなの、ヴィエラの4Kが美しすぎて上手く話せないからに決まってるだろ。
「・・・ようやくか。まぁ初日はこんなものか。まず状況説明の前に、私は光の正体が君だということを知っている。」
!?
 呆れ顔のヴィエラさんから放たれた言葉に俺の頭は一瞬フリーズする。
 この人は何て言った?
 あの光が俺だと知っている?
 なんでだ?クソ神の遣い?
 いや、あのクソ神がそんなものを寄越すとは思えない。
 じゃあ何故!?
「そう警戒しなくても良い。何故こんなことを知っているのか、君のことを知っているのか。それが私の力だからだ。」
「ヴィエラさんの力?魔法的な?」
「魔法とは違うな。これは先天的な物で魔力を消費しないからな。この国では"祝福"と呼ばれている力だ。・・・私としては到底"祝福"なんて思えないがね。」
 ヴィエラさんの最後の言葉は扉越しで聞くには小さく、聞き取れなかったがクラトが丁寧に教えてくれた為分かった。
「さぁ、これで私に君が隠し事する必要はないとわかってもらえたと思う。時間もないしそろそろ君をカンキとメープルに連れてきてもらった理由を話そう。
君と私でこの世界を救うぞ。」
 ヴィエラさんの言葉に俺は、
 あー、あのクソ猿とピンク羊はカンキとメープルっていうのかーと現実逃避を始める。
「おい、聞こえなかったか?ネクラユウト。君と私で世界を救うんだ。」
 あー、俺はあのクソ神に騙されたのか。
 この世界は地球の次に平和だとか抜かしやがって。
 来て早々世界の救済を押し付けられたんだけど!?
「あのクソ神めっ!クレームの電話入れてやる。クーリングオフじゃ!」
ティトト、ティトト、ティトト、ティン
ティトト、ティトト、ティトト、ティン
プツッ
 き・り・や・が・っ・た!
ティトト、ティトト、ティトト、ティン
ティトト、ティトト、ティトト、ティン
ティトト、ティトト、ティトト、ティン
ティトト、ティトト、ティトト、ティン
ティトト、ティトト、ティトト、ティン
ティトト、ティトト、ティトト、ティン
ティトト、ティトト、ティトト、ティン
 不在通知
ブチッ
「あんの、クソ神がぁぁぁあああ!」
 いきなり小屋中に轟いた俺の声にヴィエラさんが扉を蹴破って入ってきて、ひんやりとしたクラトに首から上を包まれ窒息死しそうになったところで、俺はようやく正気に戻る。
「ごぼっごほっ、クラト。正気に戻してくれたことは有り難いけど変わりに死ぬとこだったから次からは別の方法で頼むわ。ごほっ。」
ピコンッ
 「ぼくはいやだっていったんだけど、ヴィエラがやれっいうから。ごめんね。」
「ヴィエラさんも、次は別の方法でお願いします。」
「そうか?でもこれは効果抜群だったろ?」
 ヴィエラさんは俺の言葉にさも、普通のことをしただけだといった風に答える。
 その小首を傾げる仕草で頭についたウサミミも横に垂れる。
「落ち着けー、俺。目の前に憧れのケモミミがあるとしてもさすがに初対面で触れるのは駄目だ!
ここでヴィエラさんに嫌われて追い出されたら、こんな完璧な美女にもう死んでも二度と出会えないと思え。そうだ、俺はチャンスを物にする男なんだ。こんなところでつまず、ぐぼぁ、ゴボゴボ。」
 俺が一人の世界にトリップしていると再びクラトが顔を包み込む。
 急いで顔から引き剥がそうとするがクラトの体が半液状の為、中々掴むことが出来ない。
「グラドー、ばなれろ!じぬぅー、ゴバッ。」
 あ、死ぬ。
 俺の意識はクラトに包まれるかのように沈んでいった。
「・・・って上手くねぇよ!はっ!ん?何処だ?小屋じゃない?」
 俺が再び目覚めるとそこは先程までの薄暗い小屋ではなく、きらびやかな広間だった。
 周囲を見渡すと倒れている俺の横にヴィエラさんが腕組をして立ち、その腕の上に爆を付けても足りないくらいの大きな胸が乗っており、腕と胸に挟まれるようにクラトが抱かれていた。
「なんとっ!クラトの奴、さっきから毎回毎回うらやま、けしからん!後で感想を1200文字以上で寄越しやがれ!」
「ほっほっほっ、確かに面白い奴のようだの。だが本当に貴女とこの少年に任せても大丈夫なのか?」
 俺が親の敵のようにクラトを睨んで、序でにヴィエラさんの大きな胸を凝視していると、ヴィエラさんの視線の先からお年寄りの声がする。
 そちらを振り向こうとしてようやく俺は自分を取り囲む状況に気がつく。
 広間だと思っていたこの部屋の両方の壁際に同じ鎧を身に纏った屈強な兵士達。
 金髪をライオンのたてがみのように逆立てたイケメン、その横に見たことのある顔ぶれ。
「って、レグルスさんとご飯君以下愉快な兵士達!」
 そして兵士に守られるよう少し高くなった台の上に置いてある豪華な椅子。
 その椅子にふんぞり返るように座る偉そうな老人。
 この状況から俺のスーパー頭脳はいち早く答えを見いだす。
 すなわち、
「俺とヴィエラさんの結婚し、」
「違うわ馬鹿者。」
 俺の完璧な回答に食いぎみにヴィエラさんからのツッコミが飛んでくる。
「え?だってあの偉そうな老人って牧師さんじゃないの?」
「馬鹿者、あの爺はこのウィンブルス王国の国王だ。」
 俺は即座に華麗な土下座を披露した。
「・・・・・ごめんなさい。」
 ようやく俺が落ち着いた頃、国王は何事もなかったかのように述べる。
「先程、可とされたが一応もう一度言っておこう。魔女兎ヴィエラ、光の子ネクラユウト。両名にガロティス帝国へのウィンブルス王国からの調査報告書の伝達を命じる。」
 有無を言わせぬ物言いに一市民でしかない俺は否と答える間もなく国王は去っていく。
 こうして俺が気絶している間にウィンブルス王国の大使に任命されていた。
「えっ!俺の意思は!?」
「そんなものはない。それに、お前は私と旅をするのは嫌なのか?」
 ヴィエラさんとの旅!?
 二人旅?
 国の使者ってことは経費は節約しないといけない。
 なら道中の宿代節約のため同室になるのはやむ終えない。
 若い男女が1つ屋根の下。
 過ちが起こらないはずか無い!
 ヴィエラさんの言葉を聞き、俺の意思は固まる。
「やります、いえ、その役目やらせていただきます!」
やめろクソ猿がぁ!はっ!ここは?」
 目を開けるとそこは見覚えの無い、薄暗い部屋だった。
「はぁ、はぁ。まさかムキムキの猿にお姫様抱っこされる夢を見るとか。悪夢でしかないな。どうせならボン、キュッ、ボンのバニーガールに抱っこされたいぜ。取り敢えずこの部屋から出るか。クラトー。クラト?あいつどこ行った?」
 俺はひとつ身震いをしたあと首元に居るはずのスライムを探すため部屋を出る。
ガチャ
「おぉーい、クラトー?っ!」
 寝室から出た俺を迎えたのは、
 奴だった。
「ウキーッ。」
「クソ猿!?くそっ、ここはお前の寝床か!はっ、お前、もしかして俺が寝てる間に俺の初めてを奪ったりしてねぇだろうな!俺の処女はドSなおねぇさん以外にやるわけにはいかねぇんだよ!」
 そういって俺が猿と睨み合っていると、(睨んでるのは悠斗だけ。)部屋の隅に動くものを見つける。
「メェーー。」
「くっ!やっぱりお前も居たのか。ピンク羊!クラトもお前たちが始末したのか?くそっ、2対1じゃ分が悪い。いいかっ!これは決して逃亡じゃない!戦略的撤退だ!」
パリィン
 俺はそういうとファンシーシープが居る壁とは逆側の壁にある窓から身を投げ出す。
ガシッ
「ぐえっ!」
 そして遅い来る衝撃に身を固めていると何かに襟元が引っ掛かり空中で停止する。
「くっ、なんだ!?奴の罠か!くそっ、巧妙なクソ猿め!」
「全く、分かってはいたがとんでもなく面倒な奴だな。」
 俺が喚いていると頭の上から、いや、正確に言うと俺の襟首を掴んでいる人物から声が降ってくる。
「女!?」
 俺はその声にようやく自分は女性に持ち上げられていることに気づき恐る恐る顔をあげる。瞬間、
 ・・・・・世界が変わった。
 俺を持ち上げる腕は女性特有の力を入れれば折れてしまいそうなほっそりとした腕だった。
 腕から肩、首へと視線をあげる。
 その女性は白衣に身を包んでおり、その下には大きな胸を惜しげもなく晒すかの様な大きく開けた衣装を纏っていた。
 絵に書いたかの様な完璧なスタイル。
 だが、俺は騙されない。
 これまでAVでスタイル抜群と言う言葉に何度騙されたことか。
 大事なのはそのスタイルに負けない顔!
 確かにスタイル抜群ならそれだけで良い!
 だが、やはりいくらスタイルが良くても、いや、スタイルが良いからこそ顔もハイレベルを求めてしまうと言うのが男の性だ!
 女性慣れしていない俺は、それこそ壊れたブリキ人形のようにゆっくりと女性の顔を見上げる。
 そこには女神がいた。
 ほっそりとした顎、薄い唇にスラッとした鼻筋。
 切れ長の黒と赤のオッドアイに整った眉。
 胸元まである長い艶のある金髪。
 そしてなによりものすごい存在感を放つ頭のウサミミ!
 そのまさに理想的な姿に俺は思わず、
「あgぇはとてfこふg!」
 テンパった。
 それはもう何をしゃべっているのか自分でもわからないほどテンパった。
 それを見て女性は、フフッと笑う。
「待っていたぞ、ネクラユウト。落ち着け、と言っても無理な話だろうからせめて小屋に戻ってくれ。」
 そういって女性は俺を優しく下ろすと小屋へと歩いていってしまう。
 その女性の甘い残り香に誘われるかのように俺はフラフラとした足取りで一度は撤退を決意した小屋の中へと戻っていく。
 小屋へ戻ると、せっせと飛び散った窓の破片を掃除しているクソ猿、椅子に座った先程の女性、その足元で横になっているピンク羊、そして何より女性に抱き抱えられているクラトの姿があった。
「クラト!?なんて羨ましいことを!」
 クラトを見て思わず俺の口から心の声が漏れる。
 するとクラトを撫でていた女性の手が止まり、手招きするように動く。
「ん?ネクラユウトもしてやろうか?」
「あげdぇらbsふぇっ!」
「ふふっ、何を言っているのかは分からないが何を言いたいかは解る。遠慮しないでもネクラユウト、君は私の未来の・・・いや、これは黙っておこう。」
 女性の言葉から感じられる優しさにどうも顔の熱さが抜けず見つめられるだけで逃げ出したい気持ちに刈られる。
 これが恋!?
 ・・・おい、誰だ!童貞くせぇーって思った奴、出てこい!
「あああああ、あの、な、なななぜ貴女たたは、おおおお俺のののの、なななめぇをを?」
 そんな気持ちを隠しながら俺はポーカーフェイスで疑問を口にする。
 あ?何言ってるか分からない?そんなわけ無いだろうが!
「名前か?さぁ、何でだろうな?私は何でも知ってるぞ?君の事ならな。」
 ほら、女性に伝わったと言うことはきっちりポーカーフェイスで話せたと言うことさ。
 女性の相手はこうでないとね。
 女性はそう言ってウィンクをしてくる。
「らtまこふjoむぢwが!」
バタンッ
 ウィンクの威力に負けた俺はそう言ってさっきまで俺が寝ていた寝室へ飛び込みドアを閉める。
「ふぅ、ふぅ、おおおお落ち着け。あのウサミミ美人はどういうわけか俺を誘っている。ここでガッついたら童貞だと笑われるだろう。ここはクールに。頭はクールに、心はヒートに。だ!」
ピコンッ
 「俺が精神を落ち着けているとスマホが鳴る。」
「ん?クラトか?」
 俺がこの世界に来てすでに聞きなれた通知音だ。
 ごしゅじんさま、ヴィエラさんがそのままでいいから、これからのことをせつめいしたいっていってるよ?
 クラトからのメッセージでようやく肝心なことを思い出す。
ヴィエラさんっていうのか。そうかー。あれが4Kの美しさか!
これからのことってなんだろう?あれか?
さっきヴィエラさんが言ってた俺がヴィエラさんの未来のーって言葉に関係してるのかな?
もしかして貴女は未来の私の旦那様なんです!みたいな!?
やっべ、どうしよう。旦那さんってことはヴィエラさんと同じ布団で寝ても良いんだよね?
その時すこーし手が滑ったりして体に当たったりしても笑顔で?
手以外が滑っても!?
じゃあ・・・
 ハズもなく一人トリップしていた。
ピコンッ、ピコンッ、ピコンッ
「あー、もう!人がせっかく良い未来を思い浮かべているのに!」
 鳴り止まない通知音に我に返った俺はスマホを開く。
「おぉう、通知100越えてるし。いつのまに。」
「ヴィエラさん、クラト、ごめんなさい。気を取り直したから話をしましょうか。」
 クラトからの100件に及ぶメッセージを読む気力がなかったので俺は扉越しに声をあげる。
 何で扉越しかって?
 そんなの、ヴィエラの4Kが美しすぎて上手く話せないからに決まってるだろ。
「・・・ようやくか。まぁ初日はこんなものか。まず状況説明の前に、私は光の正体が君だということを知っている。」
!?
 呆れ顔のヴィエラさんから放たれた言葉に俺の頭は一瞬フリーズする。
 この人は何て言った?
 あの光が俺だと知っている?
 なんでだ?クソ神の遣い?
 いや、あのクソ神がそんなものを寄越すとは思えない。
 じゃあ何故!?
「そう警戒しなくても良い。何故こんなことを知っているのか、君のことを知っているのか。それが私の力だからだ。」
「ヴィエラさんの力?魔法的な?」
「魔法とは違うな。これは先天的な物で魔力を消費しないからな。この国では"祝福"と呼ばれている力だ。・・・私としては到底"祝福"なんて思えないがね。」
 ヴィエラさんの最後の言葉は扉越しで聞くには小さく、聞き取れなかったがクラトが丁寧に教えてくれた為分かった。
「さぁ、これで私に君が隠し事する必要はないとわかってもらえたと思う。時間もないしそろそろ君をカンキとメープルに連れてきてもらった理由を話そう。
君と私でこの世界を救うぞ。」
 ヴィエラさんの言葉に俺は、
 あー、あのクソ猿とピンク羊はカンキとメープルっていうのかーと現実逃避を始める。
「おい、聞こえなかったか?ネクラユウト。君と私で世界を救うんだ。」
 あー、俺はあのクソ神に騙されたのか。
 この世界は地球の次に平和だとか抜かしやがって。
 来て早々世界の救済を押し付けられたんだけど!?
「あのクソ神めっ!クレームの電話入れてやる。クーリングオフじゃ!」
ティトト、ティトト、ティトト、ティン
ティトト、ティトト、ティトト、ティン
プツッ
 き・り・や・が・っ・た!
ティトト、ティトト、ティトト、ティン
ティトト、ティトト、ティトト、ティン
ティトト、ティトト、ティトト、ティン
ティトト、ティトト、ティトト、ティン
ティトト、ティトト、ティトト、ティン
ティトト、ティトト、ティトト、ティン
ティトト、ティトト、ティトト、ティン
 不在通知
ブチッ
「あんの、クソ神がぁぁぁあああ!」
 いきなり小屋中に轟いた俺の声にヴィエラさんが扉を蹴破って入ってきて、ひんやりとしたクラトに首から上を包まれ窒息死しそうになったところで、俺はようやく正気に戻る。
「ごぼっごほっ、クラト。正気に戻してくれたことは有り難いけど変わりに死ぬとこだったから次からは別の方法で頼むわ。ごほっ。」
ピコンッ
 「ぼくはいやだっていったんだけど、ヴィエラがやれっいうから。ごめんね。」
「ヴィエラさんも、次は別の方法でお願いします。」
「そうか?でもこれは効果抜群だったろ?」
 ヴィエラさんは俺の言葉にさも、普通のことをしただけだといった風に答える。
 その小首を傾げる仕草で頭についたウサミミも横に垂れる。
「落ち着けー、俺。目の前に憧れのケモミミがあるとしてもさすがに初対面で触れるのは駄目だ!
ここでヴィエラさんに嫌われて追い出されたら、こんな完璧な美女にもう死んでも二度と出会えないと思え。そうだ、俺はチャンスを物にする男なんだ。こんなところでつまず、ぐぼぁ、ゴボゴボ。」
 俺が一人の世界にトリップしていると再びクラトが顔を包み込む。
 急いで顔から引き剥がそうとするがクラトの体が半液状の為、中々掴むことが出来ない。
「グラドー、ばなれろ!じぬぅー、ゴバッ。」
 あ、死ぬ。
 俺の意識はクラトに包まれるかのように沈んでいった。
「・・・って上手くねぇよ!はっ!ん?何処だ?小屋じゃない?」
 俺が再び目覚めるとそこは先程までの薄暗い小屋ではなく、きらびやかな広間だった。
 周囲を見渡すと倒れている俺の横にヴィエラさんが腕組をして立ち、その腕の上に爆を付けても足りないくらいの大きな胸が乗っており、腕と胸に挟まれるようにクラトが抱かれていた。
「なんとっ!クラトの奴、さっきから毎回毎回うらやま、けしからん!後で感想を1200文字以上で寄越しやがれ!」
「ほっほっほっ、確かに面白い奴のようだの。だが本当に貴女とこの少年に任せても大丈夫なのか?」
 俺が親の敵のようにクラトを睨んで、序でにヴィエラさんの大きな胸を凝視していると、ヴィエラさんの視線の先からお年寄りの声がする。
 そちらを振り向こうとしてようやく俺は自分を取り囲む状況に気がつく。
 広間だと思っていたこの部屋の両方の壁際に同じ鎧を身に纏った屈強な兵士達。
 金髪をライオンのたてがみのように逆立てたイケメン、その横に見たことのある顔ぶれ。
「って、レグルスさんとご飯君以下愉快な兵士達!」
 そして兵士に守られるよう少し高くなった台の上に置いてある豪華な椅子。
 その椅子にふんぞり返るように座る偉そうな老人。
 この状況から俺のスーパー頭脳はいち早く答えを見いだす。
 すなわち、
「俺とヴィエラさんの結婚し、」
「違うわ馬鹿者。」
 俺の完璧な回答に食いぎみにヴィエラさんからのツッコミが飛んでくる。
「え?だってあの偉そうな老人って牧師さんじゃないの?」
「馬鹿者、あの爺はこのウィンブルス王国の国王だ。」
 俺は即座に華麗な土下座を披露した。
「・・・・・ごめんなさい。」
 ようやく俺が落ち着いた頃、国王は何事もなかったかのように述べる。
「先程、可とされたが一応もう一度言っておこう。魔女兎ヴィエラ、光の子ネクラユウト。両名にガロティス帝国へのウィンブルス王国からの調査報告書の伝達を命じる。」
 有無を言わせぬ物言いに一市民でしかない俺は否と答える間もなく国王は去っていく。
 こうして俺が気絶している間にウィンブルス王国の大使に任命されていた。
「えっ!俺の意思は!?」
「そんなものはない。それに、お前は私と旅をするのは嫌なのか?」
 ヴィエラさんとの旅!?
 二人旅?
 国の使者ってことは経費は節約しないといけない。
 なら道中の宿代節約のため同室になるのはやむ終えない。
 若い男女が1つ屋根の下。
 過ちが起こらないはずか無い!
 ヴィエラさんの言葉を聞き、俺の意思は固まる。
「やります、いえ、その役目やらせていただきます!」
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